業界団体 中学生のプラスチック授業を支援・・それって大丈夫??

中学校の理科教育のカリキュラムに「プラスチック」が加わり7年目になるそうだ。時間枠は3時間までで、PETやPPなど各樹脂の性質を教えることを求められているとのこと。

教員にはハードルの高い授業であることから、化学やプラスチックの業界団体が連携して運営する「プラスチック教育連絡会」が、先生方対象に出前授業や工場見学会などを行い、喜ばれているという。

見学会のお土産として、樹脂の違いを知るための実験キットなども人気が高く、授業を機に子どもたちにプラスチックの正しい使い方や処分方法も浸透させ、理科やプラスチックに関心をもってもらうのが狙い・・・と、よいことばかりに聞こえる。

確かに子どもたちは実験で好奇心を刺激される。それはそれで役立つだろう。だが、中学生のプラスチック授業のネタ提供を、使い捨てプラスチックを減らすことに消極的な業界団体にのみ任せることは不安がある。脱使い捨てプラスチックを進める市民団体にも出前講座などをしてもらうのがよいのではないか。

プラスチックは今のところ確かになくてはならないものだろう。しかし、その性質ゆえに、多くの問題を内包する。おそらく業界団体に任せていては、問題点は過小に、便利さが過大に、先生や子どもたちの頭にインプットされそうだ。

例えば、プラスチックに添加される化学物質の中には有害なものも少なくないことや、リサイクルしにくいため8割を越す日本のプラスチックリサイクル率は、実は焼却時のエネルギー利用と製鉄所の高炉やコークス炉での利用をも含めてリサイクルとしてカウントされたものであり、海外ではそれらはリサイクルとは呼ばれていないことなどは、子どもらに正しく伝わっているのだろうか?

また、焼却炉もプラスチックを燃やすようになってからは高度なダイオキシン対策が施されるようになり、それがひどく高額で、しかも焼却炉はほぼ30年で新しくしなければならないため、その度に多額の税金がかかり、しかも焼却場を作る場所もなかなか決まらない地域が多く、各地で紛争の種になっていることも伝わっているだろうか?

そして何よりも、マイクロプラスチックが海洋を汚染したことから魚介類も海鳥もプランクトンでさえもプラスチックを食べているため、人も魚介類を通してプラスチックを食べている可能性が高いこと、さらに大気や水もプラスチックで汚染されたことから、水道水にもビールにもハチミツにもマイクロプラスチックが入りこんでしまったことは正しく伝わっているだろうか?

これらはやはり業界団体による出前講座や見学会では困難で、きちんと伝えるには、やはりプラスチックの悪影響を学んだ市民団体などが適当ではないか。

使い捨てプラスチックは使うべきでないことを、しっかりと子どもたちに伝えるためにも、中学生がプラスチックについて偏ることなく学べる環境が必要だ。

<参考>化学工業日報(2018.8.22)

中学校でのプラスチック教育さらに

 

 

東京都 脱プラ製ストローのアイディア募集

東京都がプラスチック製ストローを使わずにすむための方法や代替素材のアイディアを募集している。使い捨てプラスチック削減について考えるためとのこと。

募集期間は9月3日から10月12日まで。

次回はぜひ、不要なプラスチック製品とそれをやめるための有効な方法についてのアイディアを募集してほしい。不要なプラスチック製品リストがあれば、企業も参考にするだろう。

脱プラ製ストローの公募についての詳細は東京都環境局↓

http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/resource/recycle/single_use_plastics/straws.html

 

石塚硝子 ペットボトル需要増で生産を拡大

缶コーヒーもペットボトルが増え、ノンアルコールビールもペットボトルで売出しはじめた。

使い捨てプラスチック削減のかけ声はあるが、ペットボトルは増え続けている。

石塚硝子がペットボトル需要の増加に対応するため、東京工場の生産ラインを1本増やし、全体の生産能力を5%引き上げることを決めた。これにより来年4〜5月頃から、年間3億5000万本もペットボトルの生産量が増えるそうだ。

既に同社は、岩倉工場でも生産ラインの増設を決めているとのこと。

近年ペットボトルのリサイクル工場も増設されているが、どんなにリサイクル施設を増やしても、それ以上にペットボトルが増える。

おそらく日本の場合、ペットボトルはプラスチックごみを減らす戦略会議の俎上にすら乗らないだろう。散乱ごみの見地でいえば、もっとも減らすべき製品であるはずだが・・・

<参考>

日本経済新聞(2018.8.31)「石塚硝子、ペットボトル増産 ボトルコーヒー需要増」↓

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34840190R30C18A8L91000/

ノルウェーのデポジット制度 高い回収率維持の理由

飲料容器の回収に、デポジット制を採用している国・地域は多い。ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、ドイツ、オーストリア、オランダ、イスラエル、アメリカ(10州)、カナダ(イヌイット自治準州を除いたすべての州・準州)、オーストラリア(実施あるいは実施予定のない州は2州のみ)・・・などなど、書き切れないほど多くの地域で、デポジット制度が実施されている。

それらはすべて異なる方法で行われている、といっても過言ではない。対象容器や回収方法、運営方法など、どの地域もそれぞれの考え方や状況に合わせ、少しずつ変化させている。

なかでもカナダのデポジット制度は、州ごとのバリエーションが豊かで、しかもデポジット対象容器の種類が多いので、私は最も気に入っている。しかし、「回収率の高さ」という点で、ノルウェーのデポジット制度を成功事例として取り上げるケースが多い。

確かにノルウェーのデポジット制度は回収率が高く、現在97%を超えている。デポジット制度実施国とはいえ、たまに8割を切るケースもある中、ノルウェーは恒常的に高い。

同国の高回収率の理由の一つに、国の税制が関係しているのではないか、とある記事(下記にURLを掲載)を読んで思った。

ノルウェーのプラスチック製造業者は、環境税を支払うことになっているが、リサイクル量が増えれば増えるほど税率は低くなる。95%を超えると環境税の支払いはゼロになるそうだ。既に7年間にわたり95%を超えたため、環境税を支払っていないという。

このことが、ペットボトルを利用する飲料メーカーの回収意欲を増している可能性がある。

デポジット制度を実施すると、回収率はたいてい急上昇するが、運営方法次第ではその後低迷するケースもある。デポジット額(預り金額)やリファンド額(払戻額)が物価と見合わなくなった場合や、回収ポイントの設置状況が適切でなかった場合には、回収率は当然低下する。

ノルウェーが恒常的に95%以上を維持できているのは、運営主体に高い回収意欲があり、常に回収率向上に気を配っていることが想像される。

ノルウェーの事例は、適切に課税し、正しくデポジット制度を実施することで、プラスチックでも100%近くの回収率が達成できることを証明している。

ひるがえって、日本の容器包装リサイクル法の下では、生産者は躊躇することなく、安易にペットボトルを採用することができる。回収量が多かろうと少なかろうとメーカーはほとんど関係ない。逆に、交通の便の悪い島などでヘタにペットボトル回収量が増えると、メーカーはかえって再商品化費用を余分に支払うハメになる。

これでは日本のメーカーは、売れれば売れるだけペットボトルを使い、回収には真剣に取り組まない。水やお茶、コーラ、果汁飲料、ノンアルコールビール、コーヒー、アルコール飲料・・・最近はお米までペットボトルに入れて売られている。

日本企業がペットボトルを好んで使う反面、デポジット制度を嫌がり、ペットボトルは散らかるままでよいと考える理由の1つは、いつまでも改正されないまま時代遅れとなった容器包装リサイクル法にあるのではないか。

<スウェーデンの環境税の参考>

HUFFPOST(2018.8.22)Norway Has A Radical Approach To Plastic Pollution, And It’s Working;

https://www.huffingtonpost.com/entry/norway-plastic-pollution_us_5b7c07e0e4b05906b41779ee

<関連記事>

デポジット制度:ノルウェーのペットボトルリサイクル制度

斑鳩町 ゼロ・ウェイスト方針は健在

先日、所要で奈良県斑鳩町(いかるがちょう)を訪れたついでに、同町のごみ分別体験ステーションを見学した(写真1・写真2)。

実は、ゼロ・ウェイスト宣言をおこなった町長の交代や、可燃ごみの処理を任せている民間施設所在地からのクレームにより、ゼロ・ウェイストからごみ焼却主義に方針を転換せざるを得なくなったのでは?と、その行方を危ぶんでいた。

しかし斑鳩町は、ゼロ・ウェイストへと続く道をまだ歩んでおり、ごみ減量に励んでいた。例えば最近、これまでパッカー車で収集していたごみ(粗大ごみ?)をトラックに変更したことで、ごみがそのまま運べるようになり(パッカー車だと壊れる)、施設内で分別しやすくなったとのこと。おかげで、リサイクル率も上がったそうだ。

現在、斑鳩町は奈良市や生駒市、大和郡山市、平群町と一緒に、奈良県が進めるごみ処理広域化についての勉強会をおこなっている(奈良新聞2018.8.27)。

<写真1>斑鳩町ごみ分別体験ステーション

<写真2>体験ステーション内の道路。文字部分は食器の、その他の部分はガラスびんのカレットが埋められている。

奈良新聞(2018.8.27)「広域化を軸に検討」↓

新聞記事(H300827奈良新聞)

<関連記事>

斑鳩町 ゼロ・ウェイストの危機(その1)

斑鳩町 ゼロ・ウェイストの危機(その2)

インドの州 6年後までに100%の自然農法をめざす

国連環境計画は、インドのアンドラプラデシュ州が6年後の2024年後までに耕作農地800万ha、600万戸の農家が「自然農法」へ転換する計画に着手したと発表した。

インド初の100%自然農法州を目指しているとのこと。脱農薬、脱化学肥料により土壌の生物多様性を豊かにし、生産性を向上させる。

インドは最近、プラスチック削減政策でも頑張っているが、農業分野でも頼もしい。

<出所>

環境展望台(2018.6.2)「【環境トピックス】インドの州、6年後までに自然農法に転換」↓

https://chikyumura.org/2018/07/post-19.html

環境省 インドネシアに廃棄物発電を支援

環境省は、インドネシア政府が進めている廃棄物発電技術のガイドライン策定を支援する。

環境政策対話に合わせ開催された日本・インドネシア廃棄物発電推進合同委員会で、同国西ジャワ州で計画されている廃棄物発電プロジェクトに、日本が協力するそうだ。

医療系廃棄物など焼却せざるをえないものがある以上、廃棄物発電もある程度はやむをえないとは思う。しかし、焼却する前に、インドネシアにはまず「使い捨てプラスチックの禁止をベースとしたプラスチック規制」を考えて欲しい。

最初に焼却ありきでは、インドネシアも日本と同様、安価な使い捨てプラスチックの呪縛から逃れられないのではないか、と心配している。

<参考> 電気新聞(2018.8.16)↓

廃棄物発電の指針に日本の知見を/環境省、インドネシアを支援

母乳しか飲んでいない赤ちゃんクジラからプラスチック片

今月、神奈川県鎌倉市の由比ヶ浜海岸に打ち上げられたシロナガスクジラの赤ちゃんを調べたところ、プラスチック片が見つかったとのこと。3センチ四方ほどに折りたたまれたプラスチックだ。

赤ちゃんは生後3ヶ月から半年ほどと見られ、まだ母乳以外は飲んでいない時期であることから、餌と間違えて飲み込んだのではなく、泳いでいる間に誤って飲み込んだと見られる。

それだけ海にプラスチックが浮かんでいる、ということだそうだ。

(補筆2018.10.22)

神奈川県の研究機関が、横浜の環境系イベントで写真を展示していたので聞いてみたところ、飲み込んでいたプラ片の材質はナイロンだったとのこと。おそらく業務用で使われたナイロンフィルムの切れ端だろうということでした。

<出所>

NHK NEWS WEB(2018.8.27)「漂着の赤ちゃんクジラからプラ片」↓

https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20180827/0017478.html

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180827/k10011596121000.html

 

日本はリサイクル大国?それとも焼却大国?

日本はリサイクル大国だ、と思っている人が多い。おそらく、消費者に細かく分別させ、手間をかけさせているためと、マスコミなどを通した情報の「スリコミ」のせいだろう。

マスコミで取り上げられるリサイクル率は、業界団体による「大本営発表」の数字である。

例えば、2018年8月22日付け日経新聞「海洋プラ問題に危機感」では、廃プラスチックの有効利用率は「8割を超え」、「リサイクル技術に強みを持つ」などとして紹介されている。

「環境問題は市場拡大の熱気を冷ましかねない。日本がアジアでリーダーシップを取るべきだ」。石油化学工業協会の森川宏平会長(昭和電工社長)は強調する。日本は廃プラスチックの有効利用率が8割を超えるなど、リサイクル技術に強みを持つ。越智仁副会長(三菱ケミカルホールディングス社長)も「アジア各国は日本の回収システムに強い興味を持っている」と、技術面でアジアの化学業界の支援に応じる考えをにじませる。

また、2018年8月25日付け毎日新聞のオピニオン「プラスチックごみ海洋汚染」においても、日本プラスチック工業連盟専務理事の岸村氏は「再利用率は84%」として、その正当性を主張する。

この8割という数字は、サーマルリサイクル(燃やしてそのエネルギーを利用)もリサイクル率に含める日本のプラスチック業界特有のカウント法がベースになっている。

海外ではリサイクル率というと、たいてい材料リサイクル(マテリアルリサイクル)を指すので、海外のリサイクル率と比較するならば日本のプラスチックリサイクル率は23%(2016年)だ(*)。

それにも関わらず、いつも堂々とこの8割(2016年は84%)が海外のリサイクル率(例えば、EUのプラスチックリサイクル率30%程度)と比較され、日本はリサイクル大国だ、という話に仕上がっている。

OECD統計を見ると、日本の廃棄物全体のリサイクル率はOECDの平均にも及ばない。例えば、堆肥化を含む廃棄物のリサイクル率は、日本が21%、OECD平均は36%(OECDヨーロッパ平均は43%)である。それに比べ、同統計のエネルギー回収した焼却率は、日本が70%とダントツだ(OECD平均は20%)。エネルギー回収しない焼却率は、日本が9%、OECD平均は2%。日本のリサイクル率は平均にも達しないが、焼却率はエネルギー回収の有無を問わず、ひたすら高い。

もちろん、廃棄物分野の統計は、国ごとに条件が異なるため、比較は困難である。例えば、日本の21%というリサイクル率は、自治体が回収する一般廃棄物(一廃)のリサイクル率であり、産業廃棄物(産廃)や事業系一廃を含まない(一部の自治体は事業系回収された一廃も家庭系と一緒にリサイクルするため含んでいるが、多くの自治体は含んでいない)。しかし、海外の廃棄物統計は一廃と産廃のくくりが日本と大きく異なり、ほとんどすべての廃棄物がリサイクル率の分母にも分子にも反映されている。

つまり、廃棄物関連の数字は何をカウントし何をカウントしないかが、各国必ずしも同じではないため、このOECD統計も正確ではないが、しかし、日本が「リサイクル大国」だというのは誤解で、実は「焼却大国」だ、という根拠には十分なりうる。

日本の「強み」はリサイクル技術ではなく、焼却技術であり、この強みは、実は日本がマテリアルリサイクルを進めない免罪符ともなっていることに注意が必要だ(その証拠に、マテリアルリサイクルしやすい製品プラスチックはいつまでもリサイクル法の対象にならない)。

プラスチック業界は、処理を焼却技術に頼るのではなく、本当の意味での「リサイクル」に取り組むべきときがきていることに、そろそろ気付くべきだ。焼却に頼っている限り、サーキュラーエコノミー(循環型経済)は実現できない。

*(一社)プラスチック循環利用協会によると、日本のプラスチックリサイクル率の内訳は、マテリアルリサイクル23%、ケミカルリサイクル4%、サーマルリサイクル57%、未利用16%。海外ではサーマルリサイクルという言葉はなく、エネルギーリカバリー、あるいはサーマルリカバリーなどと呼ばれる。ケミカルリサイクルも日本と海外では意味が若干異なり、日本のように高炉やコークス炉で利用するケースをケミカルリサイクルと呼ぶことは、海外ではおそらくない。

<参考>

(一社)プラスチック循環利用協会『プラスチックリサイクルの基礎知識2018』↓

https://pwmi.or.jp/data.php?p=panf

OECD. Stat;

https://stats.oecd.org

 

千葉工業大が水中プラの分離・分析技術を開発

千葉工業大学の亀田豊准教授らは、水中のプラスチックの微粒子を簡単に分離して測定する技術を開発したとのこと。

これにより、今までプラスチックと有機物の選別と識別にかかっていた時間を大幅に短縮できるため、細かいプラスチックを調べることがかなりラクになるだろう。

とりわけ、ナノサイズのプラスチックの環境への影響(人体への影響含む)の研究が容易になると考えられるので、期待したい。

<参考>

日本経済新聞(2018.8.24)「水中プラ、分離・分析簡単に 千葉工大が新技術」↓

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3453772024082018X90000/