先日、栃木県内の景勝地を訪れたところ、意味不明の看板「ペットボトルはラベルとキャップをはずして燃えるゴミ箱へ!!」があった(写真)。
ペットボトルをごみ箱へ捨てろといっているように読み取れるが、おそらく、ペットボトルのキャップと外側のラベル(プラスチックフィルム)をごみ箱へ捨てろといっているのだろう。
他の人たちはどのように解釈しているのか?と辺りを見回したが、近くにごみ箱らしきものも、ペットボトル回収ボックスも見当たらないため、わからなかった。
夏になったら、ペットボトル回収箱とごみ箱が置かれ、観光客はおのおの分別して捨てるようになるのかもしれない。しかし、この大自然の中の風の強い場所で、ごみ箱に捨てたつもりのラベルが飛んでいかないか、ごみ箱からこぼれたキャップが散乱しないか、と気になった。
海外ではペットボトルをそのまま回収するのが一般的だ。
キャップを取る人もいるが、ラベルを剥がす人などはみたことがない。そもそも、デポジット制度でペットボトルを回収している国では、ラベルを剥がせばデポジット制度対象のペットボトルを購入したという証拠がなくなるため、支払ったデポジット(保証金)は戻らない。ラベル剥がしは厳禁なのだ。
日本では、容器包装リサイクル法上の品質基準が最近厳しくなったため、ペットボトルのラベルを剥がさないとランクの評価に影響が出るようになった。そのため、千葉市や奈良市など、それまでペットボトルを正しく分別するなどの理由で、ラベルを剥がさなくてよいと市民を指導していた自治体も、ラベルを剥がすようにと指導が変わった。容器包装リサイクル法では、油脂等の付いたペットボトルは回収対象の「PETボトル」ではないため、例えばノンオイルの青じそドレッシングはペットボトルとして回収されるが、フレンチドレッシングなどの入ったペットボトルは回収対象ではない。そのようなこともあり、自治体の中間処理施設でペットボトルを正しく選別しようと思うと、ラベルのPETマークが頼りであり、ラベルを剥がされてしまうと迷うものもある。このため、これまではラベルを剥がさないでほしいという自治体も存在したのだ。
容器包装リサイクル協会の品質基準を厳しくして、ラベル剥がしを住民に強要するようになった理由は、回収される廃ペットボトルの品質を向上させるためだと聞く。しかし、制度上ラベルを剥がさずに回収している台湾でも(注:台湾はデポジット制度ではない)、B to B(食品用ペットボトルから食品用ペットボトルへ)の高度リサイクルに対応する品質の原料を廃ペットボトルから生産している。
日本は住民にラベルやキャップを取らせ、その結果おそらく焼却ごみを増やしている可能性があるのではないか。その理由は以下である。
プラスチック製容器包装を分別回収している自治体ではラベルやキャップはリサイクルされるが、分別回収していない自治体ではそれらは可燃ごみになる。しかし、ペットボトルがそのまま分別回収されていれば、リサイクル工場でPET、PP、PE等機械的に選別され、ペットボトルはもちろんラベルもキャップもそれぞれリサイクルされる可能性が高い。
また、それらを別々に回収することで散乱リスクも高まる可能性がある。とりわけ、この写真のような屋外回収のケースでは、ラベルやキャップをペットボトルから外させることは、散乱の危険性を大きく高めるため、すべきではない。