ルーマニアのデポジット制度、順調に進行

昨年11月30日に開始されたルーマニアのデポジット制度は、順調に進んでいるらしい。

今年1月だけで200万個以上の容器が回収されたとのこと。

https://www.romania-insider.com/deposit-return-system-romania-packages-january-2024?eType=EmailBlastContent&eId=5c983eb0-10c0-47a5-a076-cb8cde976f9f

デポジット制度の対象は0.1から3リットルまでのびん、缶、プラスチックだ。

デポジット額は0.50RON(日本円で16円から17円程度)。

消費者が小売店に容器を返却すると、手動の場合は現金で、自動回収機の場合は店のバウチャーか、銀行振込で返金をうけることができる。

ルーマニアのデポジット制度に関する法律は2018年に可決された。

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コカコーラ、「プラスチック汚染企業」6年連続1位

Break Free from Plastic(BFFP)の発表によると、2023年も世界で拾われたプラスチックごみのトップが、コカ・コーラだった。

8,804人のボランティアが、合計53万7719個のプラスチックごみを集め、メーカーを調べた。

世界のプラスチック汚染企業の上位を占めるのはコカコーラの他に、ネスレ、ユニリーバ、ペプシコなど。

https://drive.google.com/file/d/1YFyfRv4m_viZZXa8b1HdpucDX3WEwJzv/view

いずれも飲料や食品を使い捨てのプラスチック製容器包装で提供しているメーカーだ。

日本もドイツのようにこのようなすぐにごみになるものを生産する企業からは、公園や街路の「清掃費」をとるべきだ。

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オーストリア、2025年1月からデポジット制度開始 Sensoneo社の技術を選択

オーストリアは来年1月から飲料容器のデポジット制度を開始する。

対象は、0.1から3Lのペットボトルと金属缶で、デポジット額は0.25ユーロ(0.27米ドル)とのこと。

デポジット制度の複雑なITシステムは、やはりSensoneo社を選択した。同社の技術は現在、欧州のデポジット制度の要となっているようだ。

「オーストリアは、Sensoneoのソフトウェアソリューションを選択した6番目の国で、同社は、スロバキア、マルタ、アイルランド、ハンガリーのデポジット制度のシステムに加え、ルーマニアの世界最大の集中デポジットシステムを含む、ヨーロッパのデポジットシステム6つの公開入札をすべて獲得したと伝えられている」とのこと。

https://www.packaginginsights.com/news/austria-chooses-sensoneo-tech-for-national-drs-launch-in-2025.html?utm_source=Newsletter&utm_medium=email&utm_content=25+Jan+%7C+FEVE+talks+essential+PPWR+changes+%7C+Packmatic+secures+€15M+in+funding+%7C+Austria+chooses+Sensoneo+for+2025+DRS+launch&utm_campaign=2024-01-23+PI+Daily&eType=EmailBlastContent&eId=fcf337f9-7334-4876-920a-faaad2dad365

同社はスロバキアの会社で、2017年に創業。70ヶ国で事業を展開し、スマート廃棄物管理ソリューションを提供しているそうだ。

https://ameblo.jp/s2021751/entry-12801371634.html

昔はデポジット制度の運営は面倒でお金もかかったが、今はIT技術の進歩でだいぶラクにできるようになった。

上記パッケージングサイトによると、オーストリアの飲料容器回収率は現在70%。来年デポジット制度が開始されれば80%になると予想されている。2027年には90%になり、EU目標を達成できる。ペットボトル回収率のEU目標は、2025年までに77%、2029年までに90%だ。

日本もいつまでも「ペットボトル回収率は既に90%以上」などと、過大な予測をしていないで、早くデポジット制度で「真水」の90%回収を達成して欲しいものだ。

どうしてもデポジット制度を導入したくないのであれば、フランスのようにペットボトル使用を半分に減らす半減目標を立てるべきだが、日本は経済界に配慮し、どちらも選ぼうとしない。

ペットボトルから大量のマイクロプラ、だけどプラスチックに付着した化学物質はそれより怖いかも

米科学アカデミーの紀要(PINAS)に、大量のマイクロプラスチックがペットボトルから検出されたとの研究結果が掲載された。

https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2300582121

メディアはマイクロプラスチックのみに注目しているが、本当の問題はそこに留まらない。プラスチックに付着あるいは添加されていた化学物質が何か、ということも問題なのだ。

PET樹脂には可塑剤は使われないから安全だ、とよく聞くが、そんなことは決してない。ペットボトルから、いろいろな化学物質が検出されている。

例えば昨年、熊大の研究で分析されたフタル酸エステル類は、胎児や子どもの発達、生殖能力などにも影響を与える環境ホルモンだ。

熊本大学の研究チームの研究「Polymer types and additive concentrations in single-use plastic products collected from Indonesia, Japan, Myanmar, and Thailand」(インドネシア、日本、ミャンマー、タイから集められた使い捨てプラスチック製品の樹脂の種類と添加剤濃度)↓

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0048969723026049

しかも、PINAS論文によると、ペットボトルの水で見つかったプラスチックはPETだけではなく、ナイロンやポリプロピレン、ポリスチレン、塩ビまでもが見つかっている。ナイロンは水をろ過する際に使われたのかもしれないが、ポリスチレンや塩ビはなぜだろうか?ちょっと怖い気になる樹脂だ。

しかし、最近はコマーシャルの影響か、日本でも「水は買うのが当たり前」になっていると聞く。プラスチックに入れられた水の方がよほどアブナイと思うのだが・・。

「安心」な環境に慣れすぎたせいで、危険かもしれないプラスチックに心が動くのだろうか?怖い物みたさ?それとも「プラスチック中毒」の人が増えているのかもしれない。

米ニューハンプシャー州、生産者責任の下 デポジット制度法案進行中

アメリカ・ニューハンプシャー州では今年、デポジット制度の新たな法案が進められている。

下院法案1636は、プログラムを監督する生産者責任組織(PRO)を設立し、飲料生産者と流通業者を貢献メンバーとした。

制度を運営する費用は政府機関ではなく、生産者が負担するものとする。

法案の提案者の1人であるシェリー・ダジー・ローズ州下院議員は、「政府がシステムを設定して管理する従来のモデルは、とりわけ予算の制約上、ニューハンプシャー州では効果的ではない」と述べているそうだ。

https://www.sentinelsource.com/state_news/new-bottle-bill-shifts-responsibility-to-beverage-producers/article_e59a57d5-77c5-5163-89d8-0180aae5ac7e.html?eType=EmailBlastContent&eId=6cae144f-60cf-4ef9-a917-f14397808cc6

30年前に導入されたデポジット制度には生産者責任の考えが含まれていないものもあったが、これからのデポジット制度は当然、生産者責任の下で行われるべきだ。ニューハンプシャー州の法案に、生産者責任の考えが取り入れられたのは当然だろう。

米イリノイ州、公共施設に水筒の給水ステーション設置を義務づけ

アメリカ・イリノイ州は、面積5000平方フィート以上など一定の条件を満たした公共施設に対し、水筒に給水する設備の設置を義務づけた。

この新しい法案は、今日(1月1日)から施行される。昨年3月31日に全会一致で上院を通過し、5月9日に下院で85対23で可決されたという。

https://www.wandtv.com/news/new-illinois-law-requires-water-bottle-filling-stations-in-future-public-buildings/article_e2d9c1c4-a4f5-11ee-ada1-0fc8d68c892a.html?eType=EmailBlastContent&eId=a71b80ac-eec8-45c0-b1ef-92cedd3ae888

ペットボトルの消費を抑え、水筒の利用を促進するための法律が、アメリカでさえも施行されている。日本の自治体でもこの手の条例ができないものかと思う。

相模原市は昨年、給水器がやっと1台市役所に設置された。県からのお達しで設置されたと聞くが、市長はどの分野の環境問題に関心をもっているのか、そもそも環境への関心があるのか、知りたいものだ。

なぜペットボトルからフタル酸エステルが検出されるのか。キャップやラベルからの移行かも(追記)

「ペットボトルには、可塑剤としてフタル酸エステルは使われていない」ということをよく聞かされる。

しかし、それならばなぜペットボトルに入れた水などからフタル酸エステル類が検出されるのだろうか?

それについて、先日行われた環境ホルモン講演会に参加し、講師に聞いてみた。講師曰く「フタル酸エステルは移りやすい性質を持っているので、保管時に他の製品(例えば、消しゴムなど)からフタル酸エステルが移ったのではないか」とおっしゃった。

しかし、ある程度は他の製品から移行したものであるにせよ、これまで多くの論文がペットボトルのフタル酸エステルについて指摘・研究している。それら論文の著者が皆オマヌケで、保管場所など気にせず、保管により汚染されたペットボトルばかりを調べていたとはちょっと考えられない。

ペットボトルに入れられていた水などからフタル酸エステル類を検出する研究は、1つや2つではないのだ。

気になって、10本ほどの関連論文を調べたが、ペットボトルにフタル酸エステルがなぜどのように使われているかはわからなかった。しかし、ペットボトルを高温・長期間で保存するほどフタル酸エステル類はペットボトルから中身へ移行することは確かなようだ。

これについては複数の論文で言及されている。例えば↓

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2854718/

また、空になったペットボトルを個人で再利用するのもよくない。再利用により、フタル酸エステル類の一種であるDEHPが「驚くべき早さで移行」するそうだ。

https://bibgraph.hpcr.jp/abst/pubmed/32642892

1つ確かなことは、たとえフタル酸エステルが直接ボトル成形時に使われていなかったとしても、ペットボトルのキャップやラベル(インクや接着剤)に使われているため、そこから移行することだ。

この論文にもフタル酸エステルやビスフェノールAは、キャップやラベルから移行すると書かれている。

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0304389422001984

一部機械翻訳↓

「カラフルなラベルが付いたPETボトルや、使用されるキャップ(Cincotta et al., 2018)など、ブランディング目的と市場性のための包装慣行は、これらの物質の移行源である可能性があります」。

また、英紙ガーディアン(2022.3.18)によると、「広く使用されている種類のリサイクルペットボトルは、新しく製造されたボトルよりも潜在的に有害な化学物質を中身にもたらす、と研究者は警告している」そうだ。「ペットボトルから飲み物に浸出する150の化学物質を発見し、そのうち18の化学物質は規制を超えるレベルで発見された」。

https://www.theguardian.com/environment/2022/mar/18/recycled-plastic-bottles-leach-more-chemicals-into-drinks-review-finds

ちなみに、ペットボトルの中身からよく検出されているビスフェノールAは、ペットボトルのキャップが汚染源であることは確かなようだ。先述の論文でも指摘されていたが、Bach et al. (2012)も、「PETボトル入り飲料水の容器のキャップがBPAの供給源である可能性」を指摘している。

災害時の備蓄用としてペットボトルを使うのは仕方ないかもしれないが、普段の飲用にはやはり浄水器を通した水道水を飲むのが良さそうだ。

ちなみに我が家の備蓄用の水は、紙パック入りだ。飲む時は少々面倒かもしれないが、それは1リットル以上のペットボトルでも同じこと。なんとかなるだろうと思う。もちろん、紙パックのポリエチレンラミネートを100%信用しているわけではない。しかし、ビン入りを保管した場合のリスク(地震で割れてしまう可能性など)を考えると、他によい選択肢が思い浮かばない。

ニューヨーク州がペプシコを提訴、コカコーラは?

米・ニューヨーク州が州裁判所にペプシコを訴えた。

理由は、「州西部を流れるバファロー川が、ペプシコの商品に使われているプラスチックのボトルやキャップ、包装紙によって汚れ、飲料水が汚染され、生態系を傷つけていると指摘。同社はプラ容器などが健康や環境に与える潜在的なリスクに関して、消費者に警告を怠った」ためとのこと。

https://mainichi.jp/articles/20231116/k00/00m/030/026000c

ニューヨーク州のバファロー川流域は、ペプシコの商品がよく売れているようだ。

世界的に見れば、コカコーラがトップのプラスチック汚染企業だ。脱プラスチックネットワークBreak Free from Plastic主導の「プラスチック汚染企業調査」によると、コカコーラが5年連続トップの汚染企業だ。ペプシコのプラごみは2番目に多いが、コカコーラとの差は歴然としている。

プラスチック生産量や世界的なプラごみ散乱量がトップのコカコーラよりも、ニューヨーク州ではペプシコが最大の汚染企業だったわけだが、その理由として考えられることは、ニューヨーク州では以前から飲料容器を対象にデポジット制度が採用されていることだ。

ニューヨーク州のデポジット制度は金額が低く(わずか5セント)、しかも対象容器の種類も少ないため、最近はそれほど効果を発揮していないように見えるが、それでもペットボトルやアルミ缶はそれなりに回収されている。

そのため、飲料容器の量よりもスナック菓子の袋などの包装材が、ニューヨーク州の調査では多くカウントされたのではなかろうか。

コカコーラが何位だったのかはわからないが、どうせならばニューヨーク州にはペプシコだけでなく、トップ3までの企業をすべて提訴してほしかった。しかし、「見せしめ」の効果は大きいと思われる。

いずれにせよ、ニューヨーク州は早急にデポジット制度を見直し、対象を拡大すべきだ。おそらく1983年の施行以来、見直されていないのではないか。今どき、5セントでは効果が薄すぎる。回収拠点やボトルキャップの扱いについても再考すべきだ。

豪ビクトリア州でデポジット制度開始

11月1日、オーストラリアのビクトリア州でようやく飲料容器のデポジット制度が開始された。

デポジット額も返金額もどちらも10セント。返金は、現金でもバウチャーでも電子マネーでも可能なようだ。もちろん、寄付を選択することもできる。寄付先は、スキームに登録された慈善団体やコミュニティ組織などから選択できるそうだ。

容器の返却場所は、自動回収機や、小売店店頭、デポなど。

対象となる飲料容器は、150mL以上3L以下の飲料の入ったペットボトルやプラスチックボトル(HDPE)、ガラス、アルミニウム、スチール、板紙で作られた容器だが、牛乳などは例外となる。

オーストラリアでは既にほとんどの州でデポジット制度が実施されている。ビクトリア州が最後になる予定だったが、昨年導入開始が予定されていたタスマニアはどうなったのだろうか?無事開始されたのか、それともまだ延期されているのだろうか?

<出典>

https://www.energyportal.eu/news/community-celebrates-beginning-of-container-deposit-scheme/434889/?eType=EmailBlastContent&eId=d51b9f7e-3657-49c8-946e-6c9c90b0770f

ゼロ・ウェイスト宣言都市・独キールの取組とデポジット制度

ガーディアン紙にゼロ・ウェイスト(廃棄物ゼロ)宣言をしたドイツの都市を紹介した興味深い記事が掲載されていた。以下、一部抜粋。

ドイツ北部の港湾都市・キールは、ゼロウェイストヨーロッパにより、最も早く「ゼロ・ウェイスト」宣言されたドイツの都市だ。

子どもの紙オムツの代わりに布おむつを購入したい親は、自治体から最大200ユーロの助成金を受け取ることができる。

また、市最大のフェスティバルでは昨年、使い捨てカトラリー(フォークやスプーンなど)をやめ、代わりにデポジット制を取り入れたリユースできるカトラリーを採用した。

市議会は、公共施設での使い捨てアイテムの禁止や、公共の水飲み場の設置、小学生にごみについて教えるなど、さまざまなプロジェクトを発表している。また、プラスチック製ボトルに入った洗剤を使う代わりに固形石けんを使うなど、行動に簡単な変更を加えることも推奨する。

ドイツでは大半のガラス瓶がデポジット制度(保証金制度)の対象で、8から15セント多く支払って購入する。飲み終わった後、空のボトルをお店や自動回収機に返すことでお金(デポジット)を取り戻すことができる。そのガラスびんは、洗ってまた再利用される。

空の容器を返すのが面倒な人は、公園で飲んだ後そのまま放置したら、ボトルコレクターが拾ってくれる。コレクターの多くは、不安定な生活状況にあり、低賃金や年金を補うためにボトルを集めデポジットを手に入れる。このシステムは、通りを清潔に保ちながら、飲んだ人から貧困層にお金を少しシフトすることにも役立っている。

<出典>

英ガーディアン紙(2023.10.18)↓

https://www.theguardian.com/lifeandstyle/2023/oct/18/the-zero-waste-city-what-kiel-in-germany-can-teach-the-world?eType=EmailBlastContent&eId=3016872a-d659-411c-bc50-10a99ff3bdfb