マイクロプラが人体に与える影響等を調査、東大・日本財団

東京大学が日本財団から約3.5億円(3年間)の助成を受け、海洋プラスチックごみ対策について研究する。

「科学的に確かな基盤を提供するため、海洋中のプラスチックの挙動や生体影響、さらには講じられる対策の社会科学的意義等に関する研究を展開」するとのこと。

生体への影響についての研究は、特に1ミリ以下のマイクロプラスチックが体内でどのように影響するのか等が研究されるようで、結果が待ち遠しい。

以下、ソーシャルイノベーションニュースより転載↓

中でも、柱の1つとなっているのが、「東京大学のご理解を頂きまして、今話題になっているマイクロプラスチックの問題について研究をして頂く」と、日本財団の笹川陽平会長が語ったように、マイクロプラスチックの調査。例えば、科学的なデータが少ないという1mm以下の海洋マイクロプラスチックの実態や、培養腸管モデルといったバイオ細胞などを用いて、マイクロプラスチックが人体にどんな影響を与えるかなどを調査するという。

そして、2021年に、こういった研究・対策の成果から海洋ごみについて新たな科学的知見を発表できることを目指している。そんなこのプロジェクトの総事業費は、なんと3億5000万円を超える。

<出所>

東京大学(2019.5.14)「東京大学・日本財団 海洋ごみ対策プロジェクトについて」

https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/press/z0801_00015.html

ソーシャルイノベーションニュース(2019.5.15)「東京大学と日本財団が連携 海洋ごみ対策について科学的に挑む一大プロジェクト」

東京大学と日本財団が連携 海洋ごみ対策について科学的に挑む一大プロジェクト

 

環境省、産廃の廃プラを自治体に焼却要請

環境省が、自治体に産廃の廃プラ焼却を要請する、という報道に愕然とした。

バーゼル条約の対象に、汚れた廃プラを加えることを日本とノルウェーが提案し、採択されたことから、G20に向けて、日本もようやくプラごみ対策に本腰を入れると思っていた。しかし、違っていた。

海外向けにはプラスチック対策をしています、という姿勢を示し、削減はほどほどにして、出てしまった廃プラは自治体の焼却炉で燃やしましょう、ということだったのか。

要するに、廃プラ焼却を国が奨励するということである。

これまで環境省は、容器包装リサイクル法の対象であるプラスチック製容器包装を分別回収から焼却に切り替えた和歌山市などの自治体を非難していた。しかし、これから先は非難できないだろう。今後、プラスチック製容器包装のリサイクルをやめ、焼却に切り替える自治体が増えることは間違いない。

廃プラの処理を依頼した企業から自治体が焼却代(処理費用)を取るのは当然だが、廃プラを受け入れた自治体には環境省が財政支援までするとのこと(毎日新聞2019.5.16)↓

関係者によると、家庭ごみの分別が徹底されてきたことで、自治体が所有する焼却炉は稼働率が低水準のものも多く、事業ごみの廃プラを焼却する余力があるという。このため環境省は、緊急避難的に廃プラの処理を市区町村に要請することとした。受け入れた自治体には財政支援をするほか、処理費用の徴収なども認める。

以前から、国が自治体に焼却施設の余剰について尋ねているというウワサは聞いていた。しかし、それはあくまでも緊急避難的措置で、現在溜まっているどうにもならない廃プラを焼却するだけだろうと思っていた。

自治体は今後産業界から出た廃プラまで燃やすことになるのだ。今は「お願い」という形だが、いずれは廃棄物処理法が改悪され、「義務化」される可能性もあるのではないか。

もしそうなれば、生産者責任など、少なくとも廃棄物処理に関しては、日本にはないということになる。

自治体にできることは、やはり脱焼却を目指し、焼却施設を作らない方向に舵をきることだ。

それにしても、日本の環境政策はなぜこれほど「退行」するのだろう?

欧州議会は、2020年から廃棄物処理や焼却施設への財政的支援を結束基金から排除する、と聞く。カナダでも、焼却施設の建設に、国から補助金が出ることはない、と聞いたことがある。

しかし日本は、焼却施設の建設に際し、国が補助金を出すのが当たり前になっている。国の補助金を使用していると、焼却施設に余力のある自治体は、今回の環境省による廃プラ焼却要請も断りにくいかもしれない。

<関連記事>

環境省による産廃廃プラ焼却推進論とデポジット制度反対論は同根

環境省の自治体廃プラ焼却要請の真実とG20に向けた海プラ関連ニュース(まとめ)

<参考>

毎日新聞(2019.5.16)「廃プラ、産廃も焼却要請へ 環境省、市区町村に 全体の8割占める」

http://topics.smt.docomo.ne.jp/article/mainichi/politics/mainichi-20190516k0000m010010000c?fm=topics

日本経済新聞(2019.5.16)「環境省、自治体に産廃のプラ焼却要請 来週にも通知へ」

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44900660W9A510C1000000/

<関連記事>

バーゼル条約の廃プラ規制、とりあえず採択

未来世紀ジパング、漂着クジラから出たプラごみの衝撃映像

5月8日に放送された未来世紀ジパングに、フィリピンの漂着クジラの解剖場面があった。

クジラのお腹から、バナナ農園で使われたプラスチック袋などが次々と出てくる。中にはまだ字が読めるレジ袋もあった。レジ袋には「生分解性」の文字も見える。

おそらくポリ乳酸を使用したレジ袋だろう。分解する前に海に落ち、分解されないままクジラに食べられ、クジラが栄養失調で死ぬ原因の1つを作った。

まさに衝撃映像だ。

頑張って作られた番組でなかなかよかったが、残念だったのは最後の司会者の言葉。

日本は焼却施設で支援できる、などと海ごみの原因者がまるで日本とは無関係であるかのような発言だった。

日本もフィリピンへ廃プラを輸出している。それもあるが、バナナ農園で使い捨てられる大量のプラスチック袋の責任は日本にもある。使い捨てて放置される理由は、袋の処理費用をバナナ価格に反映できないからではないか。

もう少しバナナを高く買うならば、バナナ農園も、バナナの房にかけるプラスチック袋について、使用後の処理などにも気を配れるようになるのではないか、と考えさせられた。

ダバオの副市長は、使い捨てプラスチックを禁止する政策を導入するといっていたから、これからはバナナ農園の袋もリユースされるようになるのかもしれない。

少々高くなっても、使い捨てられ、放置されるプラスチック袋とは無縁のバナナを買いたいと思う。

テレビ東京の公式配信で15日まで再放送が見られる↓

https://video.tv-tokyo.co.jp/zipangu/episode/00071040.html

 

オーストラリアのコカコーラ、年末までにペットボトルの7割を再生プラに

各州でデポジット制度の導入が相次ぐオーストラリアで、コカ・コーラオーストラリアが、「2019年末までに、コカコーラ社がオーストラリアで使うペットボトルの70%に再生プラスチックを使う」という画期的なプランを発表した。

これにより、2020年以降は毎年約1万6000トンの再生プラスチックを使うことになるそうだ。

日本コカ・コーラ社の2030年ビジョンは、「原材料としてリサイクルPETあるいは植物由来PETの採用を進め、PETボトル一本あたりの含有率として、平均して50%以上を目指します」である。

コカ・コーラオーストラリアのプランは、やはりデポジット制度により回収される品質のよいペットボトルがあるからこそ、立てられた計画だろう。

日本コカ・コーラも、回収を自治体任せにするのではなく、デポジット制度などにより、自治体に頼らない回収方法を早急に検討してほしい。

ある記事で「消費者は好きな容器を選べばよい、ペットボトルが嫌いならば他の容器を選べ」とあるメーカー(コカ・コーラ以外の飲料メーカー)がいっているのを読んだ。しかし、選ぶ容器によって、使われる税金の額や環境負荷が異なることを知らない消費者は多い。消費者が好きな容器を選べばよい、という前に、飲料容器による外部コストをなくす努力をメーカーにはしてほしい。

ペットボトルは、最も外部コストが高い容器の1つだ。

*外部コスト:値段に反映されない隠れたコスト。詳しくは↓

https://kotobank.jp/word/外部費用-1286970

<参考>

COCA-COLA AUSTRALIA(2019.4.16)How Coca-Cola in Australia is working toward a world without waste;

https://www.coca-colajourney.com.au/stories/coca-cola-australia-working-towards-world-without-waste

バーゼル条約の廃プラ規制、とりあえず採択

有害廃棄物の国境を越えた移動を規制するバーゼル条約の対象に、「汚れた廃プラスチック」を加えることが10日、スイスで開かれていた同条約締約国会議で採択された。

この汚れた廃プラスチックとは、「リサイクルに適さないほど」汚れたものであるとのことで、あまり厳密ではない。

朝日新聞(2019.5.11)によると、「環境省は、汚れた廃プラの対象について指針を定める方針。たばこの吸い殻が入ったペットボトル、使い終えたままのシャンプーの容器、土や石が交じった状態の農業用シートなどが想定される」とのこと。

実際の運用は各国に任され、2021年1月に発効する。

朝日新聞(2019.5.11)

https://digital.asahi.com/article_search/detail.html?keyword=バーゼル&kijiid=A1001120190511E001-04-009&version=2019051203

 バーゼル条約で汚れた廃プラスチックが規制対象になった背景には、プラごみによる海洋汚染が地球規模の問題として深刻化していることがある。

リサイクル資源として輸出入されている廃プラのうち、汚れがひどいものなどは輸入国で適切に処理されずに、海に流れてごみになっているものもある。紫外線や波で劣化して5ミリ以下の細かいマイクロプラスチックになり、魚や貝の体内からも見つかるようになってきた。

バーゼル条約の会合でも、廃プラへの関心が高まり、議論されてきた。廃プラ全体の規制には難色が示されたため、昨秋、ノルウェーは「リサイクルに適さないほど汚れた」ものを規制する付属書改正案を、今締約国会議に向けて提案。日本は賛同した。

これから、どのような国内処理が進むのか、相変わらずの「サーマルリサイクル」で、産廃の焼却施設が増えるのか、それとも「マテリアルリサイクル」を進めるべくリサイクル施設を増やすのか、気になるところだ。

輸出制限により国内での処理費用が高騰し、不法投棄が増えることも懸念されている(日本経済新聞2019.5.11)。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44690870R10C19A5EA2000/

しかし、まずは海外へ送る道がほぼ閉ざされたようで、よかったと思う。

<関連記事>

廃プラの輸出入禁止(バーゼル条約)について

 

海洋プラごみアクションプランと生分解性プラのロードマップ

経産省が、海洋生分解性プラスチック開発・導入普及のロードマップを策定した(経産省ニュースリリース. 2019.5.7)。以下、一部転載↓

https://www.meti.go.jp/press/2019/05/20190507002/20190507002.html

本年2月に内閣官房の下に「海洋プラスチックごみ対策の推進に関する関係 府省会議」を設置し、6月のG20サミットまでに、日本国政府としての具体的な取組を取りまとめた「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン(仮称)」を策定予定です。

経済産業省としても、廃棄物の適切な管理が何より重要であることを前提に、3R (リユース、リデュース、リサイクル)の着実な推進を行い、それでもなお廃棄物が 海洋流出するリスクに対応していくため、新素材・代替素材の技術開発を促進する等、イノベーションによる解決で世界への貢献を目指すことにしています。

アクションプランとは、各関係省庁が集まり、プラスチック海洋汚染防止のための検討会。以下の8つのテーマに沿って話し合われ、G20までに策定される。

〇プラスチックごみの回収・適正処理の徹底

〇ポイ捨て・不法投棄・非意図的な海洋流出の防止

〇ポイ捨て・不法投棄されたプラスチックごみの回収

〇海洋に流出したプラスチックごみの回収

〇イノベーションによる代替素材への転換

〇取組を促進するための関係者の連携協働

〇途上国等における対策促進のための国際貢献

〇実態把握・科学的知見の充実

第1回目は2019年2月26日に開催された↓

https://www.env.go.jp/water/marine_litter/mpl.html

気になるレジ袋有料義務化は、形(ポイント制でも認めるのか、零細な小売店も即対象となるのか、など)はどうなるかはまだわからないが、既にこのプランに織り込み済みなのだろう。

経産省の生分解性プラについてのロードマップを実現するためにも、プラスチック製レジ袋の大幅削減は必須だ。

そうでなければ、代替品の普及など進まない。

しかし、代替品も問題がある場合が多そうなので、よく考えて進めて欲しい。

食料と競合する植物を使用したものや、自然環境を破壊する可能性の高い石灰石を使ったものなどは、導入を見合わせるべきだろう。

リサイクルルートの確立も必須だ。

まずは大幅削減した上で、慎重に代替品導入を進めて欲しい。

ニューヨーク州、公式にレジ袋禁止を決定、米国で3州目

先日、アンドリュー・クオモ州知事が、使い捨てレジ袋禁止の法律(アースデイに関する法律)に調印したことにより、ニューヨーク州では公式にレジ袋禁止が決定した。

施行は来年3月とのこと。

アメリカでは、事業者や法律などに阻まれ、なかなか国全域での法規制は進まないが、これでようやく禁止する州はカリフォルニア州とハワイ州に続き3州目。

ニューヨーク州では毎年230億枚のレジ袋を使用している。このうち半分は、埋立地や街中や水路に集まっていると推定されている。

この禁止により、レジ袋だけでなく、ニューヨークでレジ袋の製造に使用される推定1200万バレルの石油も使わないですむとのこと。

<出所>

Forbes(2019.4.23)New York Officially Bans Plastic Bags;

https://www.forbes.com/sites/trevornace/2019/04/23/new-york-officially-bans-plastic-bags/?utm_source=FACEBOOK&utm_medium=social&utm_term=Valerie%2F&fbclid=IwAR1jRcTxy_oToeyTPqXAmdH412zDbL-J9CQVzNGAEfxhgFCCTNaYN9r9xiM#1333b5a15b77

 

 

 

 

廃プラの輸出入禁止(バーゼル条約)について

日本は、ノルウェーとの共同提案で、バーゼル条約に汚れた廃プラを加えることを提案している。

飲み残しの入ったペットボトルや泥のついたビニールシートなどを輸出入禁止にするため、とのことだ。

それについての会議が29日に始まった。

汚れた廃プラを輸出入禁止にするのはよいことだと思う。問題は、それを国内でどう処理するのか、そもそもそれらを発生しないようにする術はないのか、ということではないだろうか。

現状を見ると、発生量はそのままで、発生後の処理法はせいぜいが「サーマルリサイクル」だ。

もっと抜本的な対策も考えて欲しいと思う。

そうでなければ、たとえ汚れた廃プラを輸出入禁止にできたとしても、G20で日本がアピールできるような「成果」にはなり得ないのではないか。

<参考>

日本経済新聞(2019.4.30)「汚れた廃プラの輸出規制協議 バーゼル条約会議が開幕」

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44353440Q9A430C1000000/

「汚れた廃プラ、輸出入禁止に=バーゼル条約で提案-環境省」

https://www.nippon.com/ja/news/yjj2019022700342/

 

ペプシコ vs コカコーラ、ペプシコが自動炭酸飲料機で一歩リード?!

以前、米コカ・コーラが、回収100%を目指すとグローバルプランで表明したときは感心した。

しかし、日本コカ・コーラに回収意欲は、全く感じられなかった。少なくとも、その後発表されたビジョンを読む限りでは、自治体頼みの姿勢が透けて見えた・・

一方、ペプシコは昨年、脱プラスチックを表明しているソーダストリームを買収した。

ペプシコは、従来のペットボトル飲料が売れても、ペットボトルが売れずにソーダストリームの家庭用炭酸水メーカーが売れても、どちらでも儲かるようにしたのか?と思っていたところ、それだけではなかったようだ。

なんと、マイボトル用の炭酸飲料自販機(全自動炭酸飲料機)を開発したとのこと。

従来の給水器では、水のみだから、水以外を飲みたい人は、ペットボトルなどを購入する。

しかし、これならば、コーラやその他の炭酸飲料を飲みたい人でも満足できる。自分好みに甘さや炭酸濃度を調整できるならば、マイボトルを持つ人が格段に増えるかもしれない。

脱プラスチックに向けて、ペプシコの発想は素晴らしい。日本でも早く売り出して欲しいと思う。

日本コカ・コーラがこれを上回るには、自治体頼みの回収姿勢を改め、デポジット制度により販売したペットボトルを自ら100%回収するしかないのではないか。

<参考>

EXCITE ニュース(2019.4.26)「プラスチックごみ全廃をめざして!ペプシコが開発したマイボトル専用の全自動炭酸飲料機が話題に」

https://www.excite.co.jp/news/article/Techable_98654/

 

 

P&Gとユニリーバ、日本でもシャンプーをリユース容器で販売、デポジット方式で

米プロテクター・アンド・ギャンブル(P&G)と英蘭ユニリーバの日本法人は、2020年にも日本国内で、金属製など再利用できる容器で試験販売するそうだ。

世界は「脱プラスチック」に向かって進んでいるにも関わらず、日本では日本酒のペットボトル容器が、経済産業大臣賞を受賞(日本印刷産業連合会)するなど、相変わらずの「プラスチック礼賛」だと思っていたが、海外メーカーが日本でもやってくれるようだ。

運用は、アメリカのハーゲンダッツなどと同様(関連記事2019.4.20参照)、テラサイクルが行うようだ。

仕組みは、「牛乳配達方式」で、専用の通販サイトから注文すると、金属製やガラス容器に入った食品や日用品が届き、使い終わった容器は、新商品を受け取る際に配達員が回収する。回収した容器は、洗浄して再利用される。

利用者は、最初に容器のデポジット(預り金・保証金)を支払う。

2020年の試験運用には5000人規模が参加し、課題などを見極めるとのこと。

従来の詰替容器は、自分で詰め替えて、詰め替え終わった薄いペラペラのプラ包装(本当にリサイクルできるのか限りなく疑わしいフィルム状の袋)を、自治体の回収に出す必要があった。

しかし、この方式ならば、プラスチックを使い捨てるという罪悪感を感じずに済むので、とてもよい方法だ。

できれば近所の店で、デポジット方式で容器を回収し再利用してもらえると、より助かるが、最初はこの方式でテストするのは良いと思う。

<関連記事>

ハーゲンダッツとトロピカーナ、リユース容器で販売か

<出所>

日本経済新聞(2019.4.19)「P&Gなど、金属容器を再利用 日用品も脱プラ狙う」

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43971630Z10C19A4EA5000/