昨年暮れ、国交省の目的不明の事業である下水道に使用済みの紙おむつを流す実証実験が、再び行われた。
行われたのは愛知県豊田市の特別養護老人ホーム三九(さんきゅう)園だ。
国交省が検討している方法は3通り。
Aタイプ(固形物分離タイプ):紙おむつを洗って汚物を分離させ、汚物と洗浄水は下水道へ流し、紙おむつは回収して処理
Bタイプ(破砕・回収タイプ):紙おむつを破砕し、脱水した固形物を回収。残りは下水道へ流す。
Cタイプ(破砕・受入れタイプ):紙おむつを破砕し、すべて下水道へ流す。
今回の実験はBタイプで、「水と塩化カルシウム溶液を混ぜて攪拌(かくはん)する。化学的に水分を分離させて下水に流し、紙おむつ成分は燃えるごみとして処理」するとのこと。(朝日新聞2021.12.10)
しかし、紙おむつはパルプとプラスチック、そしてプラスチックの仲間の高分子吸収体からできている。マイクロプラスチックの専門家によると、すべてのタイプで、下水道にマイクロプラスチックが流れ込むそうだ。
この野蛮な事業、2022年度にはガイドラインができる。実用化が近いようだ。
マイクロプラスチックがこれだけ大きな問題になっている時代に、なぜこのような事業を進んでいるのかわからない。しかし、下水道に流れ込んだマイクロプラスチックの97〜98%は下水処理施設の下水汚泥にたまり、残りは川へ流れていき、やがて海へ行く。魚も食べるはずだ。
それも嫌だが、下水汚泥にたまった膨大な量のマイクロプラスチックが、もし焼却処理されずに、堆肥や肥料にリサイクルされ、どこかの緑地や農地にまかれでもしたらもっと大変だ。緑地や農地から発生したマイクロプラスチックが空中に浮遊し、その一部を人間も吸い込むことになる。
こんな野蛮な事業をなぜ進めるのだろうか。
朝日新聞は、「介護者の負担軽減」などという2019年1月に国交省の担当者が苦し紛れに話したいいわけを、あたかも事業目的であるように載せている。しかし、少なくともAタイプは介護者の負担軽減にはならない。Bタイプもそれほど軽減するとは考えにくい。そもそも国交省が介護者の負担軽減のために事業を行うなどということはないはずだ。
https://www.asahi.com/articles/ASPD975T3PD1OBJB007.html
当初、事業目的として国交省がいっていたのは、「人口減で下水道に余力ができるから活用する」ということだった。
しかし、国交省のウェブサイト「なぜ今、広域化・共同化が必要なのか?」を読むと、「下水道施設の老朽化、技術職員の減少や使用料収入の減少といった様々な課題を抱える」と書かれている。
人口減で収入が減れば、老朽化した下水道を更新しにくいはず。余力ができるから活用するどころの話ではないだろう。
本当にわけのわからない事業の検討会が、「非公開」のまま進められている。
国土交通省「下水道への紙オムツ受入実現に向けた検討会」↓
https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/mizukokudo_sewerage_tk_000540.html
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https://env-eco.net/?s=下水道