ピーファスって何?今さら聞けないPFASの基礎 Q&A

「ダイオキシン問題を超えた」と思うほど、私の周りはPFASで盛り上がっている。それもそのはず、相模原市には2カ所以上の汚染源がある、とPFAS研究の第一人者である京都大学の原田浩二先生から指摘されている。

しかし、「それ何?」という人もまだまだ多い。この聞き慣れない化学物質名の氾濫に戸惑い、腹立たしく(胡散臭く?)思っている人もいるようだ。メディアの報道でも、時々エッ?と思うようなことが書かれている。

そこで、PFASについて少し簡単に解説したい。

Q1.PFAS(ピーファス)って?

⇒国際的に定まった定義はまだありません。環境省は『有機フッ素化合物のうち、ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物を総称して「PFAS」と呼ぶ』といっています。難しい定義はともかくとして、簡単にいえば、炭素とフッ素が結合した有機化合物です。有名どころはPFOS(ピーフォス)とPFOA(ピーフォア)。PFOSもPFOAもPFASの一種です。

Q2.4700種とか1万種以上とかいろいろ違う数字が飛び交っていますが、どっちが本当?

⇒経済協力開発機構(OECD)の報告(2018 年)で約4700物質のPFASが特定されました。しかし、その後PFASの定義が変わったこともあり、今では日本の環境省も「1万種以上」といっています。

Q3.泡消火剤に入っていると聞きますが、家庭用の消化器にもPFASが入っているの?

⇒いいえ、家庭用の消化器にPFASは入っていません。

Q4.PFASはどういう害があるの?

⇒発がん性や環境ホルモン作用などが指摘されています。アメリカの科学者委員会は、PFOA曝露と高コレステロール値や腎臓がん、甲状腺疾患、海洋性大腸炎、妊娠高血圧症とは「関連性が高い」と結論付けています。デュポンでPFAS製造に関わっていた妊婦7人のうち、2人の赤ちゃんの目が生まれた時から明らかな異常がみられました。詳しくは『毒の水』(ロバート・ビロッド著, 花伝社, 2023年)をお読みください。

また、北海道のコホートに2002~2005 年に参加した母子 428 組を対象とした調査では、母体血清 PFOS 濃度と子どもの出生時体重に負の関連が認められたそうです。また、PFOSは早産のリスクとも関連が認められています。

スウェーデンや中国の調査でも、母体の血清中のPFOSとPFOA濃度は、赤ちゃんの低出生体重と関連が認められています。(食品安全委員会のパブコメ資料よりhttps://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc1_pfas_pfas_060207.data/pc1_pfas_pfas_060207.pdf)

Q5.なぜ「永遠の化学物質」と呼ばれているの?

⇒炭素とフッ素の結合が強く、自然環境下でなかなか分解しないためです。経済産業省の化学物質審議会に提出された資料では「自然環境条件下の水生環境内では、PFOAは92年以上(最もありえるのは235年)の半減期を持ち、直接的な光分解はみられない」と書かれています。また、「大気中の寿命は、短鎖ペルフルオロ酸のヒドロキシル反応による分解から、その分解半減期は約130日と推定されている」と書かれています。分解しにくく、高い蓄積性があります。

Q6.PFOSとPFOAはどう違うの?

⇒PFOSは撥水・撥油剤の原料や泡消火剤などによく使われています。汚染源が米軍基地や飛行場の場合、地下水はPFOS濃度が高いです。一方、PFOAはダイキンによると、界面活性剤としてフッ素樹脂製造時の助剤等に利用されていたそうです。また、PFOAを使用した化学製品は「撥水・撥油剤、防汚剤等、私たちの身近な製品(繊維、電子基板、自動車、食品包装紙、石材、フローリング、皮革、防護服等)に使われていました」とのこと。そのため、ダイキンやデュポン、3M(スリーエム)などのメーカーが汚染源の場合は、周辺の地下水はPFOA濃度が高いです。

⇒PFOSは2009年、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」(POPs条約)の「廃絶」等の対象に指定され、2010年には日本でも「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」(化審法)により、原則として製造・輸入が禁止されました。

PFOAは、2019年にPOPs条約の「廃絶」等の対象になり、2021年10月には化審法で製造・輸入が禁止されました。

⇒PFOSもPFOAも禁止されたとはいえ、いまだに高い濃度で検出されています。米軍横田基地では、代替品として導入した泡消火剤にもPFOSやPFASが使われていました。それぞれ1リットル当たり最大80万ナノグラム含まれていると米軍の製品説明書に書かれていたそうです(東京新聞2023.11.14)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/289798

Q7.他にどんなPFASがあるの?

⇒PFHxS(ピーエフヘクスエス)がPFOSやPFOAの代替品として使われましたが、PFHxSも2022年にPOPs条約会議で規制され、化審法でも2024年2月から原則製造禁止です。輸入禁止は同年6月の予定です。

また、フライパンのフッ素樹脂加工はPFTEが使われています。PTFEは分子量が大きいため、胃などの消化管を通り抜けることが難しく、体内に吸収されにくいそうです(PFOAは約400であるのに対し、PTFEは1万以上)。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/263505

しかし、体内に吸収されにくいとはいえ、フッ素樹脂加工のフライパンから放出されるマイクロプラスチック量は膨大なので、使わないに越したことはありません。

Q8.PFASの指針値は?

⇒河川・地下水等の水環境で PFOS、PFOAの暫定目標値は50 ng/L(1リットルあたり50ナノグラム)です。この他のPFASにはまだ指針値がありません。

Q9.汚染源から遠く離れて暮らしている人や、水道水が汚染されていない地域の人の血中からもPFASが検出されています。なぜ?

⇒食物からの汚染が多いと思われます。特に魚介類が多いといわれていますが、そうだとしても魚介類は体にいいので、食べた方がよいと原田先生もおっしゃっています。また、PFASは多くの製品にも含まれているので、口に入ったり吸い込んだり皮膚から吸収されたりします。

Q10. どんな製品にPFASが使われていますか?

⇒身近のものとしては、防水スプレー(スコッチガードなど)、汚れ防止機能や防水機能付きの繊維製品(制服、ソファー、アウトドア用品、飛行機の座席など)、調理器具(フッ素樹脂加工のフライパンなど)、包装材(ハンバーガーやフライドポテトの包装紙など)、化粧品(日焼け止めやファンデーション、アイメイク関連など)、その他さまざまなものにPFASは使われています。アメリカではコンタクトレンズや人工芝、サッカーボールなどのプラスチック製品からもPFASが検出されています。

とりあえず、10項目挙げました。今後も加筆予定です。

<主な参考>

環境省「PFOS、PFOA に関するQ&A集」(2023年7月時点)

原田浩二・藤井由季子「PFAS汚染とバイオモニタリング、 そこから見る健康リスクについて」『生活と環境』(2023.7)

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