太平洋ごみベルトにごみ8万トン集積 日本からは3割

北太平洋のカリフォルニア州沖からハワイ沖にかけてのごみが集まる海域「太平洋ごみベルト」に、約7万9000トンのごみが集まっているという。

オランダのオーシャン・クリーンアップ基金やデンマーク・オールボー大などのグループが2015〜2016年、船を使った採取調査や飛行機による上空からの観察を実施した。ごみ重量は、2014年に別の手法で試算した量の16倍。

ごみベルトに集まった94%がマイクロプラスチックと見られる。数は2014年の試算の約10倍。汚染が進行している可能性が高いとのこと。

ごみの種類は包装用の容器や漁網が多い。また、確認されたごみのうち、最も古いごみは1977年の生産。

表示などから製造場所が分かった386個のうち、日本のものが115個(約30%)と最も多く、中国の113個が2番目に多かった。

<出所>

日本経済新聞(2018.8.20)「北太平洋にプラごみベルト 8万トン集積 」↓

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34360420Q8A820C1CR8000/

海底でも分解するプラスチック 開発進む

従来型の生分解性プラスチックは、土中に好気性の微生物がいて、酸素もたっぷりあり、適当な温度もある環境でなければなかなか分解しなかった。

しかし、現在開発が進む生分解性プラスチックは、海の中でも分解が進むタイプ。レジ袋や食品容器など日用品向けへの応用を目指すが、海中と一言でいっても海面に近い所と海底では酸素の量が異なるため、それぞれ別々に開発が進んでいるようだ。

以下、日経新聞(2018.8.20)より

群馬大学は酸素が少ない環境でも壊れるよう工夫し、海底でも分解できるようにした。東京大学は微生物にプラスチックを作らせ、化粧品や研磨剤にも使えるようにした。

群馬大学の粕谷教授らは、耐久性を向上して、嫌気性の条件で切れるつなぎ目をプラスチックの中に入れて、海底で分解を促す技術を開発した。5年以内の実用化を目指す。

またカネカは、植物の油から微生物が合成する「PHBH」と呼ぶ種類の生分解性プラスチックを開発。海水中でも酸素が多いところならば、12週間で分解する。今月に入って生産能力を5倍にすると発表。

<出所>

日経新聞(2018.8.20)「生分解性プラ、海中でも分解
群馬大、少ない酸素で機能 東大、微生物の合成利用」↓

https://www.nikkei.com/nkd/industry/article/?DisplayType=1&n_m_code=071&ng=DGKKZO34268720X10C18A8TJM000

自宅から出るマイクロファイバーを減らす洗濯法

自社の商品が環境に与える影響に配慮する企業は少ない。そんな中、パタゴニアの取組には頭が下がる。

同社は、カリフォルニア大学の環境微生物学者パトリシア・ホルデン博士の指導のもと、研究プロジェクトを委託。その結果「マイクロファイバー汚染とアパレル産業」がまとめられた。

その結果などをもとに、マイクロファイバーを減らす洗濯方法を考える手掛かりとなりそうなことをあげて見た。

1.縦型(トップローダー式)洗濯機はドラム式(フロントローダー式)に比べ、7倍以上のマイクロファイバーを発生させる。縦型洗濯機を使う人は特に注意が必要。我が家の洗濯機は縦型なので、クズ取りネットのクズをよく取り、破れていないかもチェックしている。

2.できるだけ目の細かいネットに入れる。できればマイクロファイバー対応のパタゴニア製洗濯袋「グッピーフレンド」がよい。筆者は目の細かいしっかりした洗濯ネットを二重に使うなどしているが・・効果は不明。おそらくパタゴニア製と同じようなナイロン製がしっかりしていてよいと思われる。ヘタなものを使うと、洗濯ネット自体がマイクロファイバーの排出源になる。

3.安物の合成繊維の衣服は買わない。品質の低いフリースは、品質の高い製品(パタゴニア)に比べ、約170%多くマイクロファイバーが抜け落ちるそう。

4.乾燥機をできるだけ使わない。ガーディアンの記事によると、アメリカの水道水にマイクロファイバーが多いのは、野外に直接排気する衣類乾燥機が普及しているためではないかとのこと。日本の家庭用衣類乾燥機は、その仕組みによりけりだが、繊維クズをフィルターである程度除去できるタイプも多いようだ。しかし、コインランドリーの乾燥機は排気用ダクトを外に出し、野外に直接排気しているため、アメリカの衣類乾燥機同様、マイクロファイバーを野外に放出している可能性が高い。

他にもいろいろあるだろうが、とりあえず合成繊維の衣類は上記4点を念頭に洗濯すれば多少はマイクロファイバーの発生を防げるかもしれない。

できるだけ自然素材の衣類を購入するに越したことはないが、すべてを自然素材にするのは結構難しい。特に冬用は、ウール100%の手入れが面倒で、つい自宅で洗えるポリエステルやアクリルなどとの混紡に手が伸びる。

せめて、問題の多いポリウレタン製は避けたいと思いつつ衣類を選ぶが、最近は避けようがないほど多くの衣服に入っている。友人はこれについて「劣化の早いポリウレタンを入れるのは、早く買い換えさせるためのメーカーの戦略ではないか」と言っているが・・・そう勘ぐりたくなるほど、最近多くの衣類にポリウレタンが数%は入っている。

(補筆)

イオンでオーガニックコットン100%のタートルネックのセーターを見つけた。今年の冬はこれで乗り切れそうだ。

<参考>

patagonia「海の極小プラスチック繊維について私たちが知っていること」↓

https://www.patagonia.jp/blog/2016/07/what-do-we-know-about-tiny-plastic-fibers-in-the-ocean/

ガーディアンの記事(2107.9.6)Plastic fibres found in tap water around the world, study reveals;
https://www.theguardian.com/environment/2017/sep/06/plastic-fibres-found-tap-water-around-world-study-reveals

 

アディダス 社内でペットボトル禁止

アディダスは、海のプラスチックごみの削減活動に取り組むNGOと組んで、海から回収したプラスチックごみから糸を作り、それを生地にしたユニフォームやシューズの製品化に取り組んでいる。

海ごみに関心をもつ企業はペットボトル消費量にも関心を払うはず・・と思っていたら、やはりアディダスはドイツ本社をはじめ、日本を含む75カ所のオフィスでペットボトルを禁止しているそうだ。

もちろんレジ袋にも気を使い、2016年から直営店で段階的に廃止し、紙袋に切り替えているとのこと。

そういう企業が日本にも増えるといいなぁと思うが、あいにく会社訪問をしても、出てくるのはペットボトルと使い捨てカップの組合せ(プラスチック製の方が紙コップより安いそうで、プラスチック製カップが出るときのほうが多い)が多い。

CSRで環境を謳うなら「櫂より始めよ」で、自社で発生するプラスチックごみに気を使って欲しい。国や自治体も同じで、公共施設内でペットボトルやレジ袋使用を禁止するところがもっと増えてもよい。

環境省が入っている庁舎内のコンビニでは、未だに大量のレジ袋を無料配布しているし、ペットボトルも販売している。さらには、出入りの仕出し弁当屋が、使い捨てプラスチック製容器で毎日弁当を供給している。いかがなものだろうか。

<参考>

日経ビジネス(2018.7.6)「アディダス幹部「職場でペットボトルは禁止」」↓

https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16eco/042500006/070500014/?P=1

期待がもてないプラスチック資源循環戦略会議

第1回目の中央環境審議会循環型社会部会プラスチック資源循環戦略小委員会が開催された。

大きな期待は抱いていなかったものの、多少はまともに使い捨てプラスチックを減らす取組について話し合うのだろうと思っていた。

なぜならばこの会議は、カナダでのG7の「海洋プラスチック憲章」に署名しなかったことで、世界に知らしめた日本の海ごみに対する消極性を、G20で払拭するための会議、という位置付けだったはず。

ところが、まったく違ったようだ。

「東京23区のごみ問題を考える」に掲載されていた傍聴の感想を読むと、焼却炉を途上国に売り、プラスチックごみを焼却処理することが、日本のプラごみ戦略の目玉のようだ。

これでG20でリーダーシップが発揮できると本気で考えているならば、中川環境大臣もその取り巻きも「環境音痴」「外交音痴」と言わざるを得ない。環境省が、経産省や経済界に配慮した結果だとしても、これではやり過ぎで、会議の意味がない。

もちろん、経済効果を考えることは大事で、EUなどでも取組による経済効果を強調する。しかし、それはあくまでもプラスチックごみ削減という社会的に正しい取組をした上で、それにより発生する経済効果を謳っているのである。例えば、生分解性プラスチックを国内で生産した場合の効果やリサイクル促進で生じる雇用などによる経済効果を強調する。

それに比べ、昨日の会議は、日本の現状を反省し使い捨てプラスチック削減を検討する前に、何を売ったら儲かるか、の検討が先に立ったように見える(おそらく、そういう面しか考えない利益団体や御用有識者を正規の委員として加え、発言機会を与えることで、そういう方向に話が流れるように最初から仕組んでいた)。

このままでは、G20で日本はどこの国からも相手にされないだろう。

日経新聞によると、年内に7つの検討項目(使い捨てプラスチックの削減、使用済みプラスチックの回収とリサイクル、バイオマスプラスチックへの代替、プラごみの海洋流出の防止、など)に数値目標を盛り込んだ答申をまとめることになっている。

第2回目の会議では、利益団体の発言を封じ、他の委員のまともな意見を検討してほしい。

<参考>東京23区のごみ問題を考える「中央環境審議会循環型社会部会プラスチック資源循環戦略小委員会(第1回)傍聴しました~」↓

https://blog.goo.ne.jp/wa8823/e/d060360f82d7581980fef1c6aa31c8af

日本経済新聞(2018.8.18)「廃プラ削減で数値目標 政府検討、実効性が課題」↓

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3430850018082018MM8000/

<当日資料>環境省

http://www.env.go.jp/council/03recycle/y0312-01b.html

ガスト 年内にプラ製ストロー廃止、その他のすかいらーくHDは2020年までに廃止

ファミリーレストラン最大手のすかいらーくホールディングスは、2020年までに国内外3200店すべてでプラスチック製ストローを廃止する。日本の外食大手では初めてだ。

まず、年内に日本のファミレス「ガスト」の全1370店で廃止する。ガストの年間ストロー使用量は6000万本で、これまではドリンクバーにストローを置いていたが、それをやめる。ストローが必要な来店客や、スムージーなどストローを使うメニューでは提供するが、プラスチック製ではなく、代替品を検討しているそうだ。

すかいらーくグループの年間ストロー使用量は1億500万本。日本と台湾に店舗がある。

以上、日経新聞より。

明日はいよいよ第1回目のプラスチック資源循環戦略会議。今回のすかいらーくの決定は、国の動きのあまりの遅さに、企業が国を先導したということだろう。すかいらーくが日本以外で店舗をもつ台湾は、国としてプラスチック製ストロー禁止を決めている。明日の戦略会議では、ストロー以外の使い捨てプラスチックも「禁止」をベースに検討してほしい。

<出所>

日本経済新聞電子版(2018.8.16)「ガスト、プラ製ストロー全廃へ 外食大手初」↓

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3422281016082018MM8000/

フランス 2019年からリサイクルできないプラ製品に罰金

フランスでは、すべてのプラスチックをリサイクルするため、リサイクルできないプラスチック製包装材の価格を最高で10%まで上げるそうだ(罰金を上乗せ加算することで、プラ容器の価格を最高で10%まで上げる)。

これは、2025年までに国内で使用されるプラスチックを100%リサイクル可能なものにする方針の一環とのこと。

フランスでは、廃棄物になるものを市場に出す企業は、自社でリサイクルの仕組みを作るか、または環境分担金を支払わなければならない。

2020年1月から使い捨てプラスチック製カップや皿を禁止する法律が施行されるが、家庭用コンポストで堆肥化可能で、生物由来の素材を50%使う(2025年までには60%)以上であれば、禁止対象外となる。

<参考>

JIJI.COM(2018.8.14)「仏、来年からリサイクル不可のプラスチック包装材使用に罰金」↓

https://www.jiji.com/jc/article?k=20180814037526a&g=afp

AFP(2018.8.13)「仏、来年からリサイクル不可のプラスチック包装材使用に罰金」↓

http://www.afpbb.com/articles/-/3185897

(一社)環境研究金融機構

http://rief-jp.org/ct12/81812

ほか

日本の農薬使用量は世界1多い!?

『地球を脅かす化学物質』(木村-黒田純子著・海鳴社)によると、日本の単位面積当たりの農薬使用量は、ここ数年韓国と1位2位を争っているという。

スーパーで売られている国産農作物の安全性に疑問を抱きたくなる情報だが、自分で畑仕事をしない身としてはそれでも有り難く戴くしかない。

せめて、できるだけ加工品は避け、シンプルに野菜や魚、肉を戴くつもりだが、最近、私たちは農薬をダブルで食べているのではないかと不安になってきた。

農薬を使って作った作物と、畑から海に流れ出た農薬を吸着したプラスチックを食べた魚や貝を通してである。

化学物質を吸着したプラスチックを魚介類を通して人間が食べたとしても、今のところまだ健康への影響はないといわれている。しかし、より汚染が進むと被害がでる可能性がある。そのため、使い捨てプラスチックを減らそうということが世界中で言われ始めた。

プラスチック自体を減らすことに異論はないが、それだけでは不十分だろう。

化学物質も減らさなければ、あまり意味がない。海に流れ出るプラスチック流出量が減ったとしても、化学物質の量が増えては同じこどである。

有機リン系農薬やネオニコ系農薬などの使用量の基準がせめてEU並にならないものか。

このままでは、まるで日本が海外で禁止された農薬の在庫整理を引き受けているように見える。

プラスチックなどに使用する添加剤も、予防原則に立って見直して欲しい。

そうでなければ、仮に海に流れるプラスチック量が減ったとしても、人間への被害はやがて出るのではないだろうか。

農薬使用量は世界1位、プラスチック廃棄量は世界2位、それらを減らす対策特になし・・ではあまりにも情けない。

 

 

 

 

ドミニカ 来年1月からプラごみ禁止

カリブ海に浮かぶ島国・ドミニカ国では、来年1月から使い捨てプラスチックを禁止する方針とのこと。

対象は、まだ明確には決まっていないものの、プラスチック製ストローやフォーク、ナイフ、皿、発泡スチロール製のコップや食品容器になる予定。

ドミニカ国では、2015年にレジ袋に課税したため、レジ袋は大幅に減少しているそうだ。

ドミニカ国の周辺は、世界有数のマッコウクジラの生息地。マッコウクジラを守ためにも、プラスチックの排除が急がれるとのことである。

<出所>

CNN(2018.8.12)「ドミニカ国、プラごみを全面禁止 来年1月から」↓

https://www.cnn.co.jp/world/35123910.html

ナショナルジオグラフィック(2018.8.9)「ドミニカ国、2019年にプラスチック禁止へ」↓

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/18/080900357/

時代遅れの容リ法 ペットボトル回収にラベル剥がしを義務付け

世界は、使い捨てプラスチックを規制する方向で進んでいる。その動きはだいぶ前からあったが、オセロゲームの白黒が大きく反転し、規制が鮮明になったのは2015年頃だった。

環境に関心の高い団体や政府による脱使い捨てプラスチックの動きは、レジ袋、プラスチックカップ、ストローと続き、次のターゲットはペットボトルだ・・といわれている。

インドは既にペットボトルで最初の手を打った。世界で最も厳しい罰則でレジ袋を禁止したケニアでも、次はペットボトルだ、といわれている。オーストラリアでは既に大半の州で飲料容器のデポジット制を導入、あるいは来年までに導入することを決定した。欧州でも、まだデポジット制度を導入していなかった国々は、検討中かあるいはすでに採用を決めた(例えばイギリスやルーマニア)。

コカ・コーラやエビアンなど、危機感をもった海外メーカーは、次々と生き残るための手を打ち始めた。このままでは、メーカーへのデポジット制度義務付けどころか、政府による小型ボトルの禁止や、販売量規制、あるいは環境団体による不買運動が実行される気配が見えたためだ。

しかし、日本の動きは相変わらず鈍く、これまで缶やびんが主流だったものまでペットボトルに転換する動きが目立つ。それほどペットボトルにしたいならば、自主回収せよと抗議する環境団体に対し、それら飲料メーカーは「日本では、容器包装リサイクル法(容リ法)により、回収は自治体がおこなうこととなっています。弊社は同法を遵守しています」と容リ法を楯にして言い放つ。

環境行政も、日本は世界と真逆の方向へ進む。 その一例が、G7のプラスチック憲章署名拒否であり、また、2017年度(平成29年度)から変更された容器包装リサイクル協会の「市町村からの引き取り品質ガイドライン」である。

このガイドライン変更により、それまでペットボトルをラベル付きで回収していた自治体もラベルを剥がさないと、「適切な分別がなされていない」と判断されることとなった。

ラベル剥がしの主な理由は以下である。

http://www.jcpra.or.jp/Portals/0/resource/gather/h29/29moushikomi_s_09.pdf

最近の傾向としてPETボトル自体の軽量化により、キャップ に比べ、ラベルとボトルとの分離が従来以上に難しくなっており、ラベルなどの異物が除去 できずに再商品化製品に紛れ込むと商品価値が落ち、場合によっては再商品化製品利用事業 者から返品されることもあります。昨今、より高品質な再商品化製品の安定供給が求められ ており、再生処理事業者は、少しでも品質の良いベールを落札しようとする傾向があります。

しかし、容リ法による「指定PETボトル」か否かの見極めは、案外難しい。例えば、ノンオイルの青じそドレッシングはペットボトルとして回収すべき「指定PETボトル」だが、オイル入りのPET樹脂製ボトルはペットボトルではあっても容リ法上は「プラスチック製容器包装」であり、ペットボトルとして回収してはならない。しかし、自治体の回収に間違えて出す住民は多い。

回収後の選別を障がい者団体などに委託している自治体は多く、選別ラインでペットボトルか否かを見極めるのはマークが頼りだ。ラベルを剥がされてしまっては、そのマークが見えなくなる。

そのような自治体にとって今回の措置は実に困ったことだ。例えば、奈良市はそれまで市民に「ラベルを見ながら選別しているので、ラベルを剥がしてはならない」と周知してきた。それを昨年、「ラベルを剥がして」に無理矢理変更した。

もともと奈良市がラベルを剥がさなくてよいと決めていた背景には、奈良市のペットボトルをよく落札していた工場が、「剥がす必要はない」と言っていたことがある。大半の大手再生工場は「ラベルが付いていようといまいと、ほとんど関係ない」と言っていると聞く。

ボトルが薄くなったからボトルとラベルが選別しにくくなり、剥がさないと品質に重大な影響が出る、といっている再生工場を、あいにく筆者は知らない。しかし、そのような工場がもしあったにせよ、拡大生産者責任ということを考えれば、それは飲料メーカーが対処すべき問題であり、自治体や消費者にしわ寄せするべき問題ではない。

そもそも、ラベルは重要な情報であるから、世界では、ラベルを剥がしてはならないと規定する国も多い。例えば、デポジット制度を採用している国は、デポジット(預り金)の支払いを識別するため、ラベルで管理する。ラベルの付いたボトルを返却すれば返金を受けられるが、ラベルを剥がしたボトルを持参しても、返金を受けられない。デポジット制度を採用していない台湾にしても、メーカーが再生工場にリサイクル費用を援助するため、国内ボトルか否かは重要な情報である。従って、台湾でもペットボトルのラベル剥がしは禁じられている。

つまり、海外の再生工場では、ペットボトルはラベル付きのまま回収・リサイクルできている、ということである。日本の工場だけがラベル付きボトルのリサイクルを嫌がるのはなぜだろうか。

ラベル剥がしを消費者に強要する国は、消費者や自治体を下に見て、消費者にムリをいうのを当然のこととし、自治体に回収義務を負わせている日本だけではないか。回収のハードルを上げることで、面倒に思う消費者がペットボトルを焼却ごみに出したり、あるいはどこかに放置したりすることも十分考えられる。

飲料メーカーは、自社の利益のためにペットボトル需要をどんどん拡大させてきた。小型ペットボトルがこのように氾濫する前に(小型ペットボトル販売・製造の自主規制解禁と引き替えに)考えられた法律が容リ法である。それが今の状況、すなわち川や海にペットボトルが散乱する状況を招いたと考えられる。つまり、散乱は消費者の責任ではなく、回収・リサイクル方法の構造的な欠陥なのだ。

この容リ法を拡大生産者責任の視点にたって見直そうというならばわかるが、今回のガイドライン変更は、日本の環境行政が、ますます自治体と消費者を締め付ける方向に動いたことを示している。

増える一方のペットボトルを、自治体に税金で回収させた挙げ句、ラベルを剥がさないとランクを下げる、とはよくいえたものだ。

対抗措置として、自治体のすべきことは、容リ法からの決別であろう。

ペットボトルに関しては、独自ルートで最寄りの再生工場に売却することから初めて、徐々に回収頻度を減らし、近い将来、自治体はペットボトル回収をやめるのが良いのではないか。やれAランクだBランクだとランク付けされた挙げ句、Aランクでも大して合理化拠出金をもらえるわけではない。有償分(廃ペットボトル売却代金に相当)にしても、これまでも回収費用の数分の1だったが、中国ルートがなくなったことから国内処理量が増えたため、今後金額は下がる一方だ。容リ協会にしがみつくメリットはないといえる。

それよりも自治体は、最寄り企業と独自に協定し、キャップやラベルなどはその契約先と協議した上で、方針を決めるべきである。わけのわからないルールに振り回され、市民を混乱させてはならない。

もちろん、自治体回収を中止できるところは中止すべきである。自治体がペットボトル収集をやめても、住民はスーパーやコンビニへ持参すればよいので、たいして困らない。むしろ回収に税金を使わずに済めば、喜ぶ住民は多い。もしそれでペットボトルを焼却ごみに出し、回収量が低下するようなことがあれば、その時こそメーカーも自主回収に動くのではなかろうか。

拡大生産者責任を回避するメーカーに、未来はない。

国に希望をいうだけでは容リ法は変わらない。メーカーの自覚を促すためにも、自治体は容リ法から決別することも選択肢として考える必要がある。国が企業の利益に最大限配慮するならば、住民の利益を守るのは自治体である。