海ごみ対策でデポジット制度急増、対象人口6億12百万人に

2018年以降、いくつもの国や地域で飲料容器を対象とするデポジット制度が開始された。昨年(2019年)は、欧州を中心に多くの国・地域が2022年から制度を開始すると発表した。

海洋プラスチック汚染についての認識が広まり、対策に乗り出す国・地域が増えたためだ。

CRIによると、2010年地点で2億7900万人(36国・地域)しかなかったデポジット制度を実施している地域の人口が、地域が急増することにより2022年には6億1200万人になるそうだ。

これは既に確定している地域の人口だけなので、今後もっと増えそうだ。

販売した量の空き容器をほぼ全量回収しないならば、ペットボトルや缶など使ってはならない、と考える人が増えた結果だろう。

世界は確実に循環型社会に向かっている。

 

ブルーボトルコーヒー、2020年末までに全米でごみゼロへ 日本の店は?

カリフォルニア生まれのコーヒーショップのブルーボトルは、全米で2020年末までに廃棄物ゼロを目指している。

手始めとして、カリフォルニア州サンフランシスコの2店舗で、使い捨てカップを廃止する方針を打ち出した。

コーヒーをテイクアウトしたい客は、マイカップを持参するか、それともデポジット(保証金)を支払い店で提供する再利用できるカップにコーヒーをいれてもらうことになる。

デポジット金額は、3〜5ドルとのこと。カップを返却すればデポジットは戻ってくる。

また、プラスチック袋入りのコーヒー豆は販売を取りやめ、コーヒー豆を購入したい人には容器を持参してもらう。

ブルーボトルコーヒーは「使い捨てカップをなくすことができることをお客様と世界に示したい」とのこと。

日本にもブルーボトルのコーヒーチェーンは何店舗かあるが、どうするのだろう?期待している。

<参考>

Los Angeles Times(2019.12.24)San Francisco cafes are banishing disposable coffee cups;

https://www.latimes.com/world-nation/story/2019-12-24/san-francisco-cafes-are-banishing-disposable-coffee-cups

 

 

誰がクジラを殺した?クジラの胃から100キロのプラごみ

英国スコットランドの海岸で11月に見つかったクジラの死骸を解剖したところ、お腹からロープやペットボトル、コップ、手袋など100キロものプラスチックごみが見つかったという。

100キロものプラスチックごみを飲み込んでいたのは、まだ10歳の若いクジラで、ハクジラの一種のマッコウクジラだ。ヒゲクジラは、ヒゲ板でエサをこしとるため、これ程のプラスチックを飲み込むことはないそうだ。

私たちがプラスチックを使い続け、海底に大量のプラスチックが沈んでいる限り、クジラの悲劇は終わらない。

海洋生分解性プラスチックも、海ですぐに分解するわけではないから、このような悲劇を終わらせる役には立たない。

社会システムが適切に整備されていれば、散乱ごみはそんなにひどいことにはならないはずだ。クジラを殺したのは、ごみを捨てた人だけの責任ではない。

プラスチックは大変便利で、現時点ではある程度は必要だと思われるが、パンドラの箱を開けてしまったような気がする。

早急かつ抜本的なプラスチックの大幅削減政策と、漁具や容器にはデポジット制度を中心とする徹底した回収・再利用政策が必要ではないか。

<参考>

SPUTNIK(2019.12.3)「スコットランドでマッコウクジラの胃の中から100キロのゴミ発見」↓

https://jp.sputniknews.com/incidents/201912036885623/

ナショナルジオグラフィック(2019.12.11)「クジラの胃に100kgのごみ、なぜプラごみ食べる?」↓

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/120900714/

 

 

イオン、来年秋からリユース容器で販売開始。LOOPにも参画

2020年5月からといわれていたLOOP(ループ)の実証開始が、2020年秋以降にずれ込むようだ。

ループとは、消費者がデポジット(保証金)を払いリユース容器入りの製品を購入し、容器を返却するとデポジットが戻る仕組み。テラ・サイクルが運営し、既にニューヨークやパリで開始されている。

日本では東京都が助成したにも関わらず、参加企業が5社しか集まらないとのことだったので、日本では失敗か、と思っていた。しかし、エコプロダクツでの発表によると、ようやく13社集まったとのこと。

現在、まだ交渉中の企業もあるそうで、今後もっと増える予定。

これまでの5社(P&G、サントリー、グリコ、ロッテなど)に加え、イオンや資生堂、キリンなども参加を表明した。

さらに、イオンは来年秋から、先行して東京都内の店舗でリユース容器に入れた商品の先行販売と容器回収を開始するそうだ。2021年には順次、東京以外の地域でも開始するとのこと。

イオンでは、2020年秋から、東京都の「イオン」「イオンスタイル」で、リユース(再使用)容器を利用した商品の先行販売と使用後の容器回収を開始する。2021年には順次、本州・四国の約400店舗への拡大を目指す。

フランスではカルフールが中心となって、LOOPでリユースを頑張っている。なぜ、イオンがLOOPに参加しようとしないのか、とずっといぶかっていたが、ようやくイオンもリユースに取り組む。

イオンは自宅から少し離れているため、これまで1〜2ヶ月に1度程度しか行かなかったが、リユース容器入り商品で販売開始したならば、もっと利用しようと思う。

<参考>

商人舎流通スーパーニュース(2019.12.6)「イオンnews|リユース容器使用の買物システム「loop」2020年秋開始」↓

イオンnews|リユース容器使用の買物システム「loop」2020年秋開始

資生堂ウェブサイト「資生堂、東京都が採択したショッピングプラットフォーム“Loop”に参加」↓

https://www.shiseidogroup.jp/news/detail.html?n=00000000002813&rt_pr=trf11

先進国ではメーカーが負担するペットボトル回収費用、日本では…。散乱ごみトップはサントリー、2位がコカコーラ

拡大生産者責任という言葉を、生産者自身から聞くようになり、喜んでいる。

例えば、ユニリーバは拡大生産者で、回収費用を自ら負担することを表明した。

一部他メーカーも追随する方向を示しているようだ。

マレーシアでは、日用品などをプラスチック容器包装に入れて販売していたメーカー自らが、リサイクル工場を建設する動きが活発だ。

しかし、日本のペットボトルを利用する飲料メーカーは相変わらずだ。ここまで来ると、さすがに日本の消費者もおかしいと思い始め、自動販売機からペットボトルをはずす動きが出始めた。

意識の高い鎌倉市もそうだが、富士通や積水ハウスなどもペットボトルから離れる動きを見せている。

それに対し、ペットボトルリサイクル推進協議会は、

ペットボトルのリサクル率は20年度以降、85%前後で推移。米国は20%台、欧州は30~40%台で、日本は世界最高水準という。さらに同協議会は今年、2030(令和12)年度までに、リサイクルのほか焼却熱の利用で100%有効利用する目標を定めた。幹部は「プラスチック製品の中で、ペットボトルはリサイクルのトップランナーで、自販機で販売をやめる動きには違和感を覚える」と疑問を投げかけている。

とのこと。

米国の20〜30%台、欧州の30〜40%台というのは、あくまでも平均で、人口の多い州や国に引きずられた結果。国により計算方法も異なり、単純に比較できない。

1960年台後半以降、空き缶散乱がひどかったため、世界各地でデポジット制度にしようという気運が盛り上がった。

それを飲料メーカーが猛反対し、一部の州や国でしかデポジット制度導入がかなわなかった。例えば、1回目は阻止され、2回目の議会で導入が決まった米オレゴン州では、全米から大挙して業界団体が押し寄せ、反対のキャンペーンをはったという。

デポジット制度を導入できたところでは、今でも高い回収率を実現しているが、導入を阻止されてしまったところでは回収率が低い。

日本は、導入を阻止されてしまった国の1つ。今でも京都市内でのデポジット制度導入をめぐる闘いは、生々しく語られることがあるほどだ。

しかも、日本は、いまだに時代遅れの容器包装リサイクル法で、税金による回収を正当化している珍しい国だ。

以前は、ペットボトル回収は税金の無駄遣いだと怒っていた自治体職員も、最近は諦め気味だ。中には、「ペットボトルは売れている」などという職員すらいる。売れている金額の何倍もの経費が回収にかかることは、頭にないようだ。

これほど税金でコマメに分別回収していてさえも、散乱も多ければ、集積所の燃えるごみに入っていることも多い。

これだけペットボトルが散乱したり、自治体の可燃ごみに混入したりしていながら、90%以上の回収率で、80%以上のリサイクル率など、一体誰が信じるというのか。

世界の散乱ごみ調査で、コカコーラは散乱ごみトップの企業。日本のグリンピースによる国内一部地域の調査では、1位がサントリー、2位がコカコーラ、3位キリン・・と飲料メーカーがズラリと並ぶ。

写真を見ると、圧倒的にペットボトルが多い。

ペットボトル業界は、税金やボランティアによるごみ拾いの善意の上で、「高い回収率を達成」などといつまでもあぐらをかいているのではなく、そろそろ社会的責任を果たしてはどうだろう。

<参考>

産経新聞(2019.12.3)「自販機からペットボトル排除相次ぐ 使い捨てプラ削減」↓

https://www.sankei.com/life/news/191203/lif1912030021-n1.html

ユニリーバ(2019.10.7)「ユニリーバ、廃棄物ゼロの世界を目指して新たなコミットメントを発表」↓

https://www.unilever.co.jp/news/press-releases/2019/unilever-announces-ambitious-new-commitments-for-a-waste-free-world.html

グリーンピース(2019.11.21)「プラスチック汚染の世界1位は2年連続であの企業。日本の企業は…」↓

プラスチック汚染の世界1位は2年連続であの企業。日本の企業は…

 

 

 

 

 

ラトビアでデポジット制度、2022年開始予定

10月24日、ラトビア議会でデポジット制度に関する法案が可決された。修正案への賛同議員は79名いたものの、反対はなかったとのこと。

開始は2022年2月1日からの予定。

<参考>

LETA100(latvian information agency) “Bottle deposit system to be introduced in Latvia in February 2022”

https://www.leta.lv/eng/home/important/0FE09B90-7738-4AE5-BD2A-D335BE4E61BA/

 

ニュージーランド、デポジット制度導入か

ニュージーランドのユージニー・セージ環境副大臣が、飲料容器のデポジット制度を導入すると発表した。

制度設計については、2020年8月までに政府に提示され、2022年までには実施される見込み。

対象は、プラスチック、アルミ、ガラスを使った飲料容器で、デポジット(保証金)金額は5から20セントの予定。

ニュージーランドでは、長らく産業界がデポジット制度導入に強く反対していた。

オーストラリアの影響か、ようやく導入が決まったようだ。

欧州連合内では、海洋プラスチックごみ対策の一環で、最近デポジット制度の導入、あるいは検討する国が相次いでいるが、ニュージーランドではムリだろうと思っていた。

しかし、ニュージーランドでも導入が決まったということは、日本もあきらめるのはまだ早いかもしれない、と勇気づけられる。

<参考>

stuff(2019.9.25)Government announces beverage container return scheme;

https://www.stuff.co.nz/environment/116070622/government-announces-beverage-container-return-scheme

スロバキアも飲料容器デポジット制度を導入、2022年から

欧州連合(EU)では、今年に入ってから飲料容器のデポジット制度を検討する国があとを絶たない。

スロバキアでも2022年から制度をスタートさせるようだ。

対象はペットボトルと缶。

ペットボトルのデポジット(保証金)は0.12ユーロ、缶のそれは0.10ユーロのようだ。

スロバキア人の86%が、このデポジット制度に賛成しているとのこと。

システム導入にあたり8000万ユーロの費用がかかると試算されている。これは「汚染者負担の原則」で生産者と売り手が支払うべきで、公的資金は使われるべきではない、という。

“The costs of the deposit return scheme should be shouldered by those who profit from the sale of drinks,” Miloš Veverka and Daniel Lešinský of CEPTA said, as quoted by SITA. This means sellers and producers ought to pay since the scheme represents the “polluter pays” principle in reality.

税金でせっせとペットボトルを回収した挙げ句、環境省までもがコンビニ店頭に設置する自動回収機に補助金を出す日本とは大違いだ、と感心している。

日本の環境政策は、産業界寄りの政治家により歪められ、産業界への「忖度」で溢れている。

<出所>

THE SLOVAK SPECTATOR(2019.9.11)Slovakia will introduce a deposit scheme for PET bottles and cans in 2022;

https://spectator.sme.sk/c/22210435/slovakia-will-introduce-deposits-on-pet-bottles-and-cans-in-2022.html

 

環境政策で欧州をけん引するフランス、「反浪費法」など新法続々

ヨーロッパ諸国には、スウェーデンやデンマーク、ドイツなど優れた環境政策をもつ国が多い。かつてのフランスは、そのなかでほとんど目立たない存在だった。

しかし、最近のフランスの環境政策は勢いがある。新しい手を次々と繰り出し、EU(欧州連合)をけん引している。

例えば、2015年に制定された売れ残り食品の廃棄を禁止する法律は画期的だった。これにより、店舗の面積が400平方メートルを超えるスーパーは、賞味期限切れなどの食品を勝手に廃棄処分できなくなった。代わりに、慈善団体へ寄付したり、動物の餌として活用することになり、話題を呼んだ。

使い捨てプラスチック削減分野でも、レジ袋の禁止(2016年7月)や、生鮮食品を包むレジ袋以外の使い捨てプラスチックの禁止(2017年1月)など、対応が早かった。

さらに先月(2019.6.4)、フランス政府は、売れ残った洋服や非飲食品の廃棄処分も、2023年までに完全に禁止することを決めた。この法律が施行されると、売れ残りの衣類などもリサイクルかリユース(寄付)などにより処理しなければならない。

「残ったら燃やせばいい、捨てればいい」という安易な大量生産がなくなりそうだ。生産現場でのスケールメリットは、必ずしもエコではない。

また、フランスは、拡大生産者責任の対象商品をさらに拡大する。

JETRO(2019.7.19)によると、現在、生産者の責任で回収・リサイクルが義務付けられている製品群(現行で義務付けられているカテゴリーは電気・電子機器、容器包装、衣料・靴、家具など14種)に、新たに建材、玩具、スポーツ用品、DIY・ガーデニング用品、たばこ、ウエットティッシュなどを加える、ということだ。

また、この法案で、企業から徴収する回収・リサイクルのための拠出金(日本でいうところの再商品化費用だが、フランスでは回収分もほとんど企業が支払っている)を見直す。以下、転載↓

環境に配慮した製品の拠出金は割引し、リサイクルの可能性が制限されている製品には拠出金を割り増しする制度の導入が盛り込まれた。割り増しまたは割引の金額は、製品の販売価格の20%を上限とする。また、特定の製品や資材の市場投入の条件にリサイクル材料の最低使用量を設定することを可能にする。

今朝の日経新聞に記載されている審議中の「新法(反浪費法)」というのは、これのことだろう。消費するプラスチックの量を大胆に減らすため、不要なプラスチックを多く作る企業にはペナルティを与え、環境に良い商品を作る企業は恩恵を受けられる仕組みを作る、とある。

この法律がどのような成果をもたらすことになるのか、とても楽しみだ。

加えてフランスでは、飲料容器のデポジット制度も検討中だ。EU目標である2029年までに90%以上のペットボトルを回収するという目標を達成するためである。そのためのプロジェクト推進委員会が作られた。

「容器の返還方法や対象容器の種類などの具体的内容について協議を重ね、9月から国会で審議予定の「循環経済のための廃棄物削減に関する法案」に盛り込む予定」(JETRO, 2019.6.28)とのこと。

しばらくフランスの環境政策から、目が離せない。

日本の容器包装リサイクル法は、フランスの制度をモデルにしたといわれている。当時のフランスの容器包装令は、企業負担分がドイツに比べ少なかった。ドイツは拡大生産者責任が100%達成されているが、フランスは50%程度だといわれていた。

そのため、生産者の負担を減らす方が制度を導入しやすい日本としては、ドイツではなくフランスをモデルにしたと考えられる。しかし、フランスではその後どんどん生産者の負担割合を増やしていった。

日本の容器包装リサイクル法は、生産者が負担すべき回収費用を自治体が負担しているという点で、1995年当時からあまり変わっていない。再商品化費用よりもはるかに高い回収費用を、相変わらず自治体が税金で負担しているのだ。日本の環境政策の後進性は、最近特に顕著だ。

<参考>

「反浪費法」については日本経済新聞(2019.8.1)「プラごみ汚染どう防ぐ」:「大胆な削減」へ法整備(仏環境副大臣)

https://www.nikkei.com/article/DGXKZO48022860R30C19A7TCS000/?n_cid=DSTPCS001

JETRO(2019.7.19)「生産者による回収・リサイクル責任を強化する循環経済法案を閣議決定」

https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/07/b9538c17bf66d373.html

JETRO(2019.6.28)「容器回収を促すデポジット制度導入に向け、委員会を設置」

https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/06/ecee09ae588092a9.html

 

 

スコットランド、2021年までに缶・瓶のデポジット制度を開始 英国の慈善団体は23億ポンド寄付が集まる可能性

英紙INDEPENDENT(2019.5.29)によると、スコットランドでは2021年までに缶やビン、ペットボトルを対象に、デポジット制度が開始される。

デポジット(預り金)20pが上乗せされた飲料を購入し、ペットボトルなどの容器を返すと20pの返金が受けられる。

ある世論調査によると、アンケートに答えた2000人以上の人のうち5分の1(20%)の人が、常に慈善団体にこの20pを寄付し、3分の1以上(19%)の人が、いつもではないが少なくともいくらかは寄付する、と答えたという。

近年、デポジット制度を採用する多くの国で、自動回収機による容器回収が増えている。たいていの自動回収機には、返金の用途を選べる機能が付いているためだ。

寄付かそのまま現金での返金か、あるいは機種によっては、銀行への自動振り込みやICカードへのチャージも選ぶこともできる。

世論調査の通りだとすると、イギリスの慈善団体は、23億ポンド以上をデポジット制度により調達できることになる。

デポジットは、正しい行動を奨励する(返却を促す)と同時に、困っている他人を支援できる制度でもある、ということだ。

スコットランドが、英国で最初にデポジット制度を導入することになりそうだ。

<参考>

INDEPENDENT(2019.5.29)DEPOSIT RETURN SCHEME ON DRINKS CANS AND BOTTLES IN THE UK COULD RAISE £2.3BN FOR LOCAL CHARITIES;

https://www.independent.co.uk/life-style/deposit-return-scheme-cans-bottles-england-scotland-charity-recycling-litter-a8934631.html