ピート・マイヤーズ博士「化学物質のテスト対象は赤ちゃん」。リサイクルを促進するプラ新法はまるでプラ使用促進法

化学物質に詳しいピート・マイヤーズ博士の講演動画が見られる。

1つ1つは短いが、1から4まで自動再生され、4本見られる設定だ。

プラスチックなどに使われる化学物質は事前にテストされることなく、世の中に出回っているとのこと。

そのため、合法的に人体実験されているようなもので、環境ホルモンなどは赤ちゃんを対象にテストしているようなもの。

プラスチックはリサイクルする度に汚染物質が溜まるので、サーキュラーエコノミーには馴染まない物質だという指摘も納得できる。

翻って、最近の日本のニュースによると、プラスチックリサイクルのesaがグリーンケミストリー分野の先進研究機関である京都大学大学院総合生存学館(思修館)と共同研究を開始するそうだ。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000102225.html

この中でいわれている

「一般に使用されているプラスチックの多くは、多層プラスチックフィルムに代表されるように、機能・性能を持たせるために性質が異なる複数種類のプラスチックを複合して使用されています。しかし、複数種類が複合されたプラスチックのマテリアルリサイクル (廃プラスチックをそのまま原料にして、破砕・溶融などの処理を行った後に再生利用するリサイクル方法) 手法は確立されておらず、既存技術では再生原料として使用されることはほぼありません」

ということは、一般の人にはなかなか知られていない。

先日の環境省の人のセミナーでも、講師は

「昔と違って今は光を使ったセンサーなどで選別できている」

などとまるで自宅から回収したプラスチックの多くがリサイクルされているかのような説明をしていたが、そういう説明が一般の人の誤解を招いている。

確かに大昔に比べたら、リサイクル量は少しだけ増えた。最近のリサイクル工場は、センサーなど当たり前に装備している。だが、それでも複層の素材がリサイクルされることはなく、通常「残渣」として処理(熱回収)されている。

リサイクルをあまりに過大評価することは、プラスチックの使用を促進することに繋がる。

プラスチック資源循環促進法はまるでプラスチック使用促進法のように見える。

日本をダメにするプラ新法。市場は各国企業の草刈場に

プラスチック資源循環促進法には大きな欠陥がある。拡大生産者責任(EPR)の視点がないことだ。

そういうと必ず、国も同法に関わった研究者も「EPRは盛り込まれている」という。企業に自主回収を促しているからだ。

しかし、企業の自主回収などが本当に始まったら消費者は大変だ。これはあっちで回収、あれはこっちだ、とごみを持って右往左往しなければならない。

企業の自主回収などは、まったく現実的でない。

まともなEPRは、自治体が支払っている回収費用なども企業が支払うこと。つまり、回収からリサイクルまでの経済的負担を生産者が負うことだ。

物理的には自治体が回収などを行ったとしても、あくまでも責任は生産者にあるから、費用負担は生産者がすべき。そうでなければ、使い捨てなどは減るはずがない。

しかし、容器包装リサイクル法もプラ新法もそうなってはいない。

理由は、経済界が反対するからだ。EPRといっただけで、猛反発する事業者をこれまでいくつも見てきた。

その結果、製品プラスチックなどは、リサイクル費用もすべて自治体の責任だ。環境省などの説明は、製品プラは容器包装プラよりも生産者が多く、輸入品も多いから、捕捉しきれないので仕方ないという。

しかし、それは「やらない言い訳」に過ぎない。輸入品などは輸入業者に支払いを命じれば済むことだ。大手の輸入業者などそうは多くない。

最近、海外企業の日本進出が増えたように感じている。特に自国の規制が厳しい国からの進出が目立つ。

規制の緩い日本市場に進出し、使い捨て製品など自国では売れない安かろう悪かろうの粗悪品を日本で売りさばこうと思っているのではないか。どうせ処理は日本の自治体が税金を使ってやってくれると思われているのではないか、と心配している。

リタジャパン、プラ粒子が流出しない人工芝を開発。弾性材不使用

競技場などに敷く人工芝には通常、充填剤として廃タイヤや人工芝用プラ粒などのいわゆるゴムチップが使われる。

そのため、人工芝はマイクロプラスチック流出の温床で、EUではまもなくこれら意図的に添加されるマイクロプラスチックは規制される予定だ。

リタジャパンがこの度開発した人工芝には充填剤として、ゴムチップの代わりに目砂が使われるそうだ。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000052769.html

路盤はアスファルトではなく、砥石路盤にするとのこと。

人工芝を使う限り、完全な脱プラは無理だが、これまで川や海に流出し放題だったマイクロプラスチックなどの充填剤を使わないのはうれしい。

https://ritajapan.jp/service/rita-ecology-turf/

ケガもしにくくなるそうだ。

もちろん、天然の芝に超したことはないけれど、それが難しいならば、このような技術もよいかもしれない。

<追記2023.4.13>

「家」さんのコメントの通り、人工芝そのもののマイクロプラスチック流出を考えると、やはり人工芝は使いたくないです。しかも、人工芝にPFASが入っていることがわかった今は、室内使用にも反対したい。

東京も沖縄もPFAS汚染。日本の規制は緩いまま?

分解が困難で自然界に長くとどまり続け、拡散し、生体内に蓄積するPFASは、「永遠の化学物質」だ。

そのPFAS(有機フッ素化合物)の血中濃度は、沖縄で全国平均の最大14倍とのこと。信じがたい数値だ。しかも水道水を飲んでいる人ほど高い傾向があるようだ。ペットボトルを使用しないエコな人ほど厳しい状況だ。

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1041473

東京・多摩地域の人たちの血中濃度も、沖縄ほどではなさそうだが、やはり高い。そのため、「多摩地域の有機フッ素化合物汚染を明らかにする会」が今年8月に設立された。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/194662

近年は欧州だけでなく、世界的に規制が厳しくなってきた。アメリカでも昨年、PFAS規制を強化する方針が発表され、今秋にも新たな規制が公表される。

https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/06/3af2ad84751d41b8.html

アメリカの動向を見てから、日本のPFAS規制は決まるのだろうか?

PFASは環境ホルモンだから、せめて食品容器と調理器具、子ども用品、育児用品、化粧品などへの使用くらいは早急に禁じてほしいものだ。

(以下、追記)

ちなみに、ティナ・コル・イエンセン博士の講演(2022.8.3)によると、デンマーク政府は、食品の容器包装紙に含まれるPFAS の使用を禁止することを決定しているとのこと。全ての種類のPFAS について食品の容器包装紙への使用が禁止される。

EUにはまだこの動きはないが、いくつかの食品企業では自主的規制が始まっているそうだ。

<関連記事>

「古着でワクチン」は罪悪感なしでごみを捨てられるシステムか

「古着でワクチン」は、ワクチンを免罪符に、罪悪感なしでごみを捨てられるシステムではないか、と疑っている。

3300円払うと、Tシャツが100枚も入るキットが送られてくるとのこと。それに古着を入れて送ると、海外へ送られ、現地の雇用にも役立つそうだ。

さらに、同団体のウェブサイトによると

「「古着deワクチン」を注文するだけで、認定NPO法人 世界の子どもにワクチンを 日本委員会を通じて開発途上国の子どもたちにポリオワクチンが届けられ、一口につき5人の命を救うことができます」

とのこと。

しかし、ポリオワクチンの値段は1人分20円ほどだろう。5人分で100円だ。差額の3200円は送料と人件費ということか?

それならば、3300円をそのまま途上国へ送り、支援する方がよいのでは?と思う。

利用者は、断捨離してさらに寄付もできた、とよい気持ちになれる。

しかし、以前と違い、今は途上国には古着が余っているだろう。アフリカやフィリピンに古着を寄付すると、喜ばれた時代が確かにあった。

近年はファストファッションが激増し、そこそこの品質の新品の衣類が世界中に出回っている。よい古着を本当に困っている貧困層に直接寄付するならばよいだろうが、たいていの古着市場は既に飽和状態だ。

余りすぎて、古着が野外でプラごみの山を築いている地域もある。古着の多くは合成繊維製で、プラスチックだ。

同団体は「ジャパンSDGsアワード特別賞」も受賞しているようだ。しかし、本当にSDGsに貢献したい人は、古着を送って断捨離するよりも、まず服を頻繁に買うのをやめる必要があると思う。

中米の川に一面のプラごみ

中米エルサルバドルにあるスチトラン湖の動画を見て驚いた。

まさに一面のプラごみで、水面が見えないほどだ。

ぜひ、ここのAFP通信の動画をご覧ください↓

「中米の河川や浜辺覆うプラスチックごみ」

https://news.yahoo.co.jp/articles/b02f9297f1cad67146e932891d22168b4a773708

また、グアテマラを流れるモタグア川支流のラスバカス川からオモアに流れ着くプラスチックごみは、年間約2万トンで、大半はグアテマラ首都のごみ埋立地から流れ出したものとのこと。

ということは、このスチトラン湖のプラごみも、ごみ埋立地から流れ出したものだろうか。

そうであれば、ごみ処理インフラの整っていない国に、プラスチック入り容器に入った製品を売ったり、あるいは「リサイクル」名目で廃プラを輸出したりするのは、まさに「環境犯罪」だ。

美容師さん、マニキュアを使わないで!フタル酸エステルも怖いし

先日美容院でひどい目に遭った。長い爪で頭を引っ掻かれたのだ。

洗髪というより、まさに頭皮を引っ掻かれた感じ。痛みのあまり椅子から飛び上がってしまった。

「痛い!」というと、「では力を入れないようにします」とのこと。それからしばらくは撫でるような洗い方に変わった。「気持ちの悪いところはありませんか?」と聞かれ、全体に気持ち悪くて仕方がなかったが、一刻も早く帰宅して洗い直したかったので「ありません」と答えた。

本人には爪で引っ掻いたという意識は皆無だったようで、彼女曰く私の会員カードに「シャンプーは弱めに、と書いておきますね」だと・・。

私は弱めのシャンプーが好きなわけではなく、単に爪が痛かったのだ。指の腹で強めに洗ってもらえるならそれでいい。そう説明しつつ、ふと彼女の手を見たら、爪に赤や黒のマニキュアが施されていた。

以前、きれいなネイルアートをしたやはり爪の長い人にシャンプーされたことがある。その人は自分の爪の長さをわかっていたようで、爪が当たらないように洗髪してくれた。それでも時々爪が当たり不快だったが、苦情をいうのもはばかられ、ガマンした。

しかし、先日の美容師さんは、自身の爪の長さに無自覚・無頓着。思い切り爪を立てた。

職業柄、非常にマズイと思うが、マニキュアにはフタル酸エステル類も入っている。

フタル酸エステル類には内分泌かく乱(環境ホルモン)作用がある。本人の健康にも悪いけれど、もしその人に小さい子どもがいたらもっと悪い。フタル酸エステル類は、子どもの脳に損傷を与えるとか、早産を引き起こすとか、早死にリスクに関与しているなど、さまざまなことが指摘されている。

さらに、もしその子が男の子だとしたら、まさに「生殖危機」だ(これについては、シャナ・H・スワン著『生殖危機』(原書房, 2022年)をご参照ください)。

ネイルアートを楽しみたい人は、美容師になるべきでない。さらにいえば、子どもを産み育てたい人や、子どもと一緒に暮らしている人は、マニキュアをすべきでない。

仮にフタル酸エステル類フリーのマニキュアがあったとしても、代替品の安全性は証明されていない可能性が高い。

マクドナルドがようやく脱プラ

マクドナルドのワンウェイ(使い捨て)プラ対応がようやく決まったようだ。

これまでは一部の店舗で木製などを試していただけだったが、ようやく全国2900店舗でストローを紙製に、スプーンやフォークなどを木製に順次変えると発表した。

ハンバーガーチェーンのモスフードも今月以降、持ち帰り用のスプーンとフォークを順次バイオマスプラスチックを配合したものに切り替えるとのこと。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221004/k10013847691000.html

脱プラもいいが、ハンバーガーチェーンには最善のアニマルウェルフェアを遵守してほしい。できれば商品の過半をビジタリアン用に「脱獣」で。

もちろん、ゲノム編集されたような肉もどきではなく、大豆ミートなど従来のもので十分だ。

できるだけ肉らしい味に近づけようと、ゲノム編集までされてしまうと、ビジタリアンフードまで胡散臭くなってしまうので。ゲノム編集コオロギのせいで、昆虫食を胡散臭い目で見る人がいる。その二の舞は避けたい。

加えて、価格面で難しいかもしれないけれど、できれば、国産の非遺伝子組み換え大豆などを使ったメニューも加えてほしい。そうすれば、罪悪感なしで食べに行ける。

紙 vs プラ 配送パッケージのリユース化はうれしいけれど

世界で宅配の配送パッケージのリユース化がふえてきた。

欧米では複数の企業が数年前から採用し、韓国でも政府が検討している。(参考「韓国政府が環境保護のため、2024年から多回用宅配箱の普及事業を本格推進することにした」)http://www.tbnews.co.kr/news/view.php?idx=2297&mcode=m22q90v

日本でもメルカリがテスト中だ。

https://about.mercari.com/sustainability/creating-a-circular-economy/eco-pack/

それはとてもうれしいけれど、どのリユースパッケージをみてもプラスチック製。

ダンボールがどんなに頑張っても数回しかリユースできないけれど、プラスチックは何十回もリユースできるのだから、やむを得ないのだろうか・・。

ごみを減らそうと思ってプラスチックを使うのは、やむを得ないが気に食わない。

我が家の浴室で床洗い用に使っているエコショップで買った自然素材のブラシも、そろそろ寿命だ。高かったのに、寿命は結構早くきた。エコは結構高くつく。

今度はブラシではなく、シュロ製の大型亀の子だわしにしようと思う。

パーム製の大型亀の子だわしならば100円ショップでも販売されているからパームでもよいが、シュロ製に比べ少し硬いのでキズが心配だ(我が家の浴室の床は少し柔らかい感触のタイル)。

シュロ製はさすがに100円ショップで売られていないが、ネットで検索すると800円ほどで販売されている。今度はこれを試してみたい。

環境ホルモン講演会:「6万越の化学物質のうちテストされたものは250のみ」個人でできる対策は

『生殖危機』の著者、スワン博士の講演を聴いた。

博士によると、6万を超える化学物質のうち、直接テストされたものは250しかないそうだ。

これでは生殖危機が起きても当たり前に思える。

また、よくいわれる「精子半減」は欧米諸国の話で、日本を含む東アジアやアフリカ諸国ではもっと状況が厳しいようだ。

レジュメによると、欧米諸国の精子濃度は1973年から2011年の間に52.4%減少しているが、アフリカ諸国では1965年から2015年の間になんと73%も減少している。

世界98%の国で少子化しているそうだが、日本を含む東アジアの少子化の実態はすさまじい。

もちろん、少子化の原因は環境ホルモンだけでなく、ストレスやたばこなどのライフスタイルなども原因だが、それらがそれぞれどの程度寄与して現在のような結果になったのかはわからないという。

わかっていることは、注意すべき内分泌かく乱物質(環境ホルモン)は、フタル酸エステル類、ビスフェノール類、有機フッ素化合物、農薬、そして難燃剤。

いずれも現状では、完全に排除するのは難しいものばかりだが、なんとかしないと大変なことになる。

とりあえず個人でも出来る対策としては、プラスチックを電子レンジで加熱しないことや「焦げ付きにくいフライパン」を使わないこと、できるだけ有機野菜を選ぶことなどか。フタル酸エステル対策としては、マニキュアをしないこと、香り付き製品を避けること、フタル酸エステルフリーと書かれていない消しゴムを使わないこと、市販のホースを使った水を安易に飲まないことなども有効だろう。