スロバキアのデポジット制度が好調。開始からまもなく1年

スロバキアはデポジット制度を今年1月1日から開始した。1月から11月までの合いだに回収された容器は7億8700万以上になるという。販売された対象飲料(ペットボトル・缶)は10億本とのこと。

回収から1年未満で約80%の回収率ということだから、順調といえる。

目標は2025年までに90%の返却率を達成すること。現在3004カ所の回収場所があり、うち1184カ所が強制、1820カ所が任意の回収場所だ。

店舗面積が300平方メートル以上の店舗にのみ回収場所の設置が義務づけられているため、大規模店舗の回収は強制だ。つまり過半が300平方メートル未満の店舗でも、自ら回収場所になっているようだ。

今後回収率を上昇させるためには、この任意の小規模店舗が回収場所になるかどうかにかかっているということだ。

スロバキアのデポジット制度の対象容器は、使い捨てのプラスチック容器と金属容器で、サイズは0.1から3リットル。牛乳やスピリッツの容器は対象から外されている。

日本はデポジット制度でもないのに、ペットボトルでも既に90%近くのリサイクル率を達成している、などと思うのは早計だ。日本の回収率は、海外へリサイクル目的で輸出される分などを加味した単なる「参考値」で、デポジット制度による正確な回収率とは全く精度が違う。

「これほど落ちていて、これほど燃やされているのに、なぜ回収率が高いの?」という疑問を多くの人は感じているだろう。

実際、デポジット制度実施国には、すぐに拾えるところにはペットボトルや缶は落ちていない。それでも回収率は90%を切っている国も多い。「回収率90%」は、デポジット制度が順調に運営されている場合にのみ達成できる数字だ。

順調な運営には、回収拠点の密度とデポジット金額が最も重要な要素となる。

<出所>

https://www.tasr.sk/tasr-clanok/TASR:2022122000000191?eType=EmailBlastContent&eId=a9c8835f-422b-456f-b04e-560b1705dfc8

<参考記事>

ドイツ:公共空間に捨てられる使い捨てプラ製品、自治体が負担する清掃費用は600億円超

使い捨てプラ製品は、自宅に持ち帰らず野外に捨てられるケースが多い。ドイツでは、自宅に持ち帰った場合は拡大生産者責任により回収・処理されるが、野外に捨てられた場合の清掃費用は自治体が負担することになる。

それでは使い捨ては減らないので、ドイツでは使い捨て「プラスチック製品基金法案」を審議。使い捨てプラ製品の製造者や小売業者が、野外に捨てられたそれらの回収、清掃、処理費用を負担すべきだということで、ドイツ連邦環境庁がその費用を調べた。

その結果、自治体が負担している公共空間に廃棄される使い捨てプラスチック製品の回収、清掃、処理は年間4億3400万ユーロ(1ユーロ140円で計算すると607億6000万円に上った。

そのため、それらプラスチック製品群ごとに製造者や小売業者が負担する費用は、使い捨てのプラスチックカップが1キログラムあたり1.23ユーロ(同172円)、プラスチックが含まれるタバコのフィルターについては1キログラムあたり8.95ユーロ(同1253円)になるという。

日本でも似たような費用になるだろう。しかも、日本の場合、拡大生産者責任が徹底されていないので、自宅に持ち帰った使い捨てプラカップの回収費用も容器包装リサイクル法によりすべて自治体が税金で負担している。

使い捨てスプーンやフォークなどのプラ製品にいたっては、回収から処理費用まですべて自治体(税金)負担だ。

使い捨てプラスチックを使わない人も、使う人のために、支払わざるをえないということだ。

<参考>

EICネット(掲載2022.12.16/情報源発表2022.11.30)「ドイツ 使い捨てプラスチック製品に対する製造者や小売業者の費用負担額に関する調査結果が公表」

https://www.eic.or.jp/news/?act=view&word=&category=51&serial=48630

<関連記事>

フランス、ファストフード店で使い捨て容器使用を禁止。拡大生産者責任も強化

さすがフランス。ついにファストフード店で使い捨て容器や皿、カップを禁止するそうだ。

2023年1月1日からということで、既にマクドナルドではポテトの容器がセラミックに、飲み物を注ぐコップがガラスになったとのこと。

店内飲食で使用できるのは、再利用が可能なものだけなので、紙コップや紙皿も禁止だ。

「ハンバーガーやサンドイッチなどを包む包装紙は例外として紙の使用が認められていますが、それでもリサイクル率の高い素材しか認められていない」という。

https://gigazine.net/news/20221220-france-bans-disposable-packaging/

JETROによると、フランスでは2023年1月1日からリサイクル素材の利用率などの情報提供を義務付けるとのこと。この手の包装紙も対象になるのだろうか?

利用率などの情報提供対象となる製品は「家庭用包装、印刷紙、電気・電子機器、建設資材、電気・蓄電池、健康や環境に重大なリスクのある家庭用化学品、家具、衣類、靴など」は2023年1月1日から。

「建設資材、玩具、自動車、小型トラック、二輪車、三輪車、四輪車は2024年1月1日から適用対象となる」そうだ。

拡大生産者責任の枠組みの中で行うということで、目的は「廃棄物の少ない製品への消費を促すこと」。

https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/11/147a98cead18376d.html

なんでも税金で回収し「大半焼却、一部リサイクル」でOKとする日本とは、制度設計がそもそも違うようだ。

<関連記事>

3R + リニューアブル:リニューアブルって何?3Rのどこに入るの?

「3R + renewable」がプラスチック資源循環戦略で提唱され、プラスチック資源循環法でもそのまま基本方針として使われている。

おかげで私程度の語学力でもリニューアブルの意味がわかるようになった・・。あ、リニューアブルってrenewable energy(再生可能エネルギー)以外の時にも使うんだ、という程度には。

しかし、いまだにわからないのは、これが正しく何を指すのか、ということと、3Rの一体どこに入るのか、ということだ。

一般に紙や木などのようにまた生えてくるような資源を指すことは確かなようだ。

では、マテリアルリサイクルのことを再生利用というから、マテリアルリサイクルできるものでもよいのか、というとそうではなさそうだ。ペットボトルはマテリアルリサイクルできるが、ここには決して入れてはならない。

じゃあ他に何かというと、バイオマスプラスチックが入れられていることが多い。原料がバイオマスならば再生可能だというのがその理由だろう。しかし、バイオマスプラの大半はバイオマス100%ではない。5%とか10%とか25%などのように部分的にしか使わない。

仮に原料が100%バイオマスだと言われるポリ乳酸だとしても、化石燃料由来の添加剤を使う上、製造段階で再生可能エネルギー以外のエネルギーを大量に使用する。

これが果たしてリニューアブルといえるだろうか?

しかしここまでこだわると、紙や木も本当にリニューアブルか怪しくなるので、こだわらないことにして、じゃあ3Rのどこにリニューアブルが入るのかと考えると、これまたわからない。

リサイクルの後ろに入れて、4Rという人もいるが、これは少し違う気がする。

一方、コンビニなどの取り組みを見ると、あたかもリデュースの前に入るかのように、ちゃっかり「バイオマスプラ使用」を宣伝するケースが見受けられる。でも、これも違うだろう。

リデュースやリユースより先に来ることなどはあり得ない。

そうであれば、収まりは悪いけれど、リユースの後ろ、リサイクルより前が良いのだろうか?とも思うが、どうなのだろう。それならばそのように環境省は説明すべきだが、そのような説明は聞いたことがない。

わざと玉虫色にして、モノによりけり、ケースバイケースで考えろ、ということか。

気になって仕方がない。

金属カップに商機:繰り返し使えるテイクアウト用容器が当たり前の社会に

脱プラスチックを背景に、スチール製やアルミ製カップが脚光を浴びている。

ビールだけでなく、アイスコーヒーだって金属製カップの方が美味しく感じられる。

日経新聞(2022.12.16)によると

「JFEは鉄素材の魅力やリサイクル性の高さなどをPRすることなどを狙いとして、2021年10月に開催された屋外イベントを皮切りに複数のイベントでスチールカップを提供」「現在は屋外イベントでの提供を通じて、デザインなどの改良を進める「実証実験」のように位置付けている」とのこと。

また、東洋製缶GHDはスポーツ観戦会場や商業施設向けにアルミ製カップの販売を始めたそうだ。

スチール業界はその昔、スチール缶が普及し始めた頃、リサイクルに往生し、デポジット制度に猛反対した。一方、昔からリサイクルしやすかったアルミ缶業界のほうは、リサイクル率が上がる方が得なので、デポジット制度への反発は少なかった。

ペットボトル全盛の今になって、ようやくスチール缶業界もアルミ缶業界も、デポジット制度を潰さなければよかった、と内心後悔しているのではないかと思うが、飲料業界は全体としていまだにデポジット制度に反対だろう。

デポジット制度は拡大生産者責任の一環だから、日本では全く受け入れられないが、使い捨てプラカップの代わりに使う金属製カップならば、デポジット制度は受け入れられやすいのではないか。

利用者に若者が多いカフェならば、LINEの「友だち登録」利用でなんとかなっても、野外イベントでの金属カップ使用は、デポジット制度抜きでは成り立たないのではないかと思う。

<参考>

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC12B9E0S2A910C2000000/

クジラは森林なみの炭素吸収源:食べてる場合じゃない

クジラは「全大陸の森林生態系と同等の炭素を環境から除去していた」ことが明らかになった。

論文が、専門誌「トレンズ・イン・エコロジー&エボリューション」に15日、発表されたそうだ。

クジラが大量のオキアミを食べ、オキアミに由来する鉄分のある排泄物を出すことによって、植物プランクトンブルームが発生。それが大量の炭素を吸収してくれるのだそう。

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/11/post-97409.php

https://www.cnn.co.jp/fringe/35197517.html

気候変動にも役立つ上、まさに生態系の要だ。

クジラといえば、小学校の給食で出たり、脂身部分は夕飯の味噌汁の具材にもなっていた。

子どもの頃によく飲んだ味噌汁は、角切りされた黒い皮付きの脂身とナスが一緒に入れられていて、我が家の夏の定番メニュー。父の大好物だった(私も好きだった)。

ピンク色のクジラのベーコンも懐かしい味だ(これは少し苦手だった)。そういえば、小学校で強制的に食べさせられた肝油もクジラ由来だったかもしれない。

これほどお世話になったクジラだけれど、20年程前にダイオキシン汚染が話題になった際、クジラにダイオキシンが蓄積していると聞いて、それ以来食べていない。

今でも時々食べたくなることはあるが、気候変動の見地からも、生物多様性の見地からも、クジラを食べてる場合ではないようだ。部位によっては今でも必要な部分はあると聞くが、それは死んで漂着したクジラで賄えばよい(今は原則そのまま埋め立て)。

やはり捕鯨はもうやめた方がよさそうだ。

台湾でも英国でも使い捨てカップを禁止

日本ではいまだに使い捨てカップとリユースカップ、どちらが環境に優しいか、など周回遅れの議論をやっている。そんなものは何回使用するかによって変わるから、何回も使えば済む話だ。

日本が足踏みしている間に、海外ではどんどん進んでいる。

台湾・台北では今年12月1日から、使い捨てプラスチックカップが禁止された。

https://www.dep.gov.taipei/News_Content.aspx?n=CB6D5C560DE4D2DD&sms=72544237BBE4C5F6&s=F4E33E8D3319D7C5

台北だけでなく、台湾全域で禁止されたとの報道もある。

https://shipeee.com/blogs/blog/12月1日より使い捨てプラスチックカップでの提供禁止

イギリスではまもなく使い捨てプラスチックの禁止が強化されるそうだ。

https://www.cosmopolitan.com/jp/trends/society/a42248767/singleuseplastic-ban-england-221215-hns/

また、ロサンゼルスではゼロ・ウェイストを目指し、発泡ポリスチレン(発泡スチロール)製品の流通と販売を禁止するようだ。

https://phys.org/news/2022-12-los-angeles-styrofoam-products-zero-waste.html?eType=EmailBlastContent&eId=8926edd4-ecc3-49f4-b50c-63667ca6c316

国連事務総長もいうように、早く「プラスチックの蛇口を閉め」たいものだ。

マイクロプラの健康被害 自閉症など

マイクロプラスチックの人体への影響が明らかになりつつあるようだ。

中国・華中農業大学の動物実験で、「二次マイクロプラスチックの精神疾患または神経変性疾患における潜在的な作用メカニズムを解明」したとのこと。

動物実験には妊娠中のマウスを使った。妊娠中の雌マウスにマイクロプラスチックとナノプラスチックを摂取させたところ、雌マウスの臓器にプラスチックが分布。さらに、ナノプラスチックのみが胎児マウスの視床に蓄積したそうだ。

「妊娠中の雌マウスが摂取したミクロン、ナノプラスチック粒子が雌マウスの消化器、子宮、胎盤に分布するが、ナノプラスチック粒子のみが胎児の視床に蓄積することが分かった。しかしミクロンプラスチック粒子の存在は、ナノプラスチック粒子の胎児の脳内への進入を促した」

「今回の研究により、これらの胎児の脳内に入り蓄積したプラスチック粒子が、その成年後の不安行動を引き起こし、主に新しい物事を模索する意欲と能力が低下することが分かった」(人民網日本語版.2022.7.22)

この研究成果は、国際環境・健康分野の重要学術誌「Environment International」に掲載された。

http://j.people.com.cn/n3/2022/0722/c95952-10126295.html

また、最近発表された韓国の研究でも、マイクロプラスチックは自閉症と関連があるという報告がある。

韓国の実験でもマウスが使われた。マイクロプラスチックを摂取させたところ、マウスの脳にマイクロプラスチックが蓄積し、自閉症(ASD)のような行動が誘発されることを確認したという。

人間の自閉症の増加と関連があるのではないかとのこと。

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0160412022000472#!

自閉症は日本でもアメリカでも急激に増加しているという報告があるので、恐ろしい話だ。

また、日本でもマイクロプラスチックの影響が調べられている。

以前発表された杏林大学のメダカの実験によると、マイクロプラスチックが眼や腎臓に悪影響を与えた。

富山短期大学ではラットを使い、マイクロプラスチックの体内蓄積性などの研究がなされている。

https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=202102263397988501

人体実験はできないから、動物実験の結果から推し量るしかないが、人間への影響が誰の目にも明らかになったときには、既に手遅れなのだろう。

しかも、実際はマイクロプラスチックの物理的影響だけでなく、プラスチックに添加された化学物質の影響もセットで人体を襲うから、実験よりも現実は過酷だ。

近年、プラスチックによく使われるビスフェノール類やフタル酸エステル類の人体影響についての報告が増えている。

例えば↓

https://spap.jst.go.jp/asean/news/210903/topic_na_05.html

フタル酸エステル類は欧州ではかなり規制が進んでいるのに、日本では進まない。日本の政治家や関連部署の役人は、自分の身だけが大事で、子孫に影響が出る話などには耳を傾けないのだろうか。

土曜午後だけ抽選?国会図書館のわけのわからない対応

先日の土曜日、国立国会図書館へ行った。

電車を乗り継いで頑張って行ったにも関わらず、利用を断られた。

理由は「抽選」だからとのこと。

確かにコロナ時代に突入してから長い休館の後、抽選制が始まった。最初は腹立たしいほど厳しく、なかなか当たらなかったが、だんだん人数制限が緩和され、応募したら100%当選した。しかも4時以降は抽選に応募していない人でも入館を許されるようにもなった。

その抽選制も「withコロナ」時代になってから、とっくに解除された、と思っていた。

驚いて受け付けの人に聞いたところ、解除されたのは平日の午前午後と土曜の午前で、土曜の午後だけは抽選制が続いていたという。とんだフェイント・・、意味がわからない。

なぜ土曜の午後だけ?と聞いたら、混むからとのことだ。

しかし、土曜の午後に国会図書館が本当に混むのだろうか?小中学生の行く地域の図書館ならば、土曜の午後や日曜は混むかもしれない。しかし、国会図書館は目的をもった大人以外行くことはないし、土曜は閉館時間も早いから、それ程混むとは思えない。

日曜が休館だからその前に、と駆け込みで土曜に行く人はいるかもしれないが、利用者には調べ物をする会社員も多い。土曜の午後に本当に利用者が密集するのだろうか?

土曜の午後にそれほど混むような所ならば、日曜だって利用者が多いだろうに、日曜はハナから休館だ。

全国旅行支援で旅行は奨励しているのに、図書館は抽選・・ておかしくないですか?

スコットランド、来年8月からデポジット制度開始

いよいよ決定か。ずいぶん延びていたが、スコットランドの飲料容器デポジット制度が、いよいよ来年8月からスタートするようだ。

金額は、デポジットもリファンドも20pで、対象はペットボトル、缶、ガラス製の飲料容器。管理者はCircularity Scotland とのこと。

Circularity Scotland がグラスゴーで主催した会議に、スコットランド全土の飲料メーカーや小売業などの600人以上の代表者が、デポジット制度に備えるため結集したそうだ。

<出所>