環境政策で欧州をけん引するフランス、「反浪費法」など新法続々

ヨーロッパ諸国には、スウェーデンやデンマーク、ドイツなど優れた環境政策をもつ国が多い。かつてのフランスは、そのなかでほとんど目立たない存在だった。

しかし、最近のフランスの環境政策は勢いがある。新しい手を次々と繰り出し、EU(欧州連合)をけん引している。

例えば、2015年に制定された売れ残り食品の廃棄を禁止する法律は画期的だった。これにより、店舗の面積が400平方メートルを超えるスーパーは、賞味期限切れなどの食品を勝手に廃棄処分できなくなった。代わりに、慈善団体へ寄付したり、動物の餌として活用することになり、話題を呼んだ。

使い捨てプラスチック削減分野でも、レジ袋の禁止(2016年7月)や、生鮮食品を包むレジ袋以外の使い捨てプラスチックの禁止(2017年1月)など、対応が早かった。

さらに先月(2019.6.4)、フランス政府は、売れ残った洋服や非飲食品の廃棄処分も、2023年までに完全に禁止することを決めた。この法律が施行されると、売れ残りの衣類などもリサイクルかリユース(寄付)などにより処理しなければならない。

「残ったら燃やせばいい、捨てればいい」という安易な大量生産がなくなりそうだ。生産現場でのスケールメリットは、必ずしもエコではない。

また、フランスは、拡大生産者責任の対象商品をさらに拡大する。

JETRO(2019.7.19)によると、現在、生産者の責任で回収・リサイクルが義務付けられている製品群(現行で義務付けられているカテゴリーは電気・電子機器、容器包装、衣料・靴、家具など14種)に、新たに建材、玩具、スポーツ用品、DIY・ガーデニング用品、たばこ、ウエットティッシュなどを加える、ということだ。

また、この法案で、企業から徴収する回収・リサイクルのための拠出金(日本でいうところの再商品化費用だが、フランスでは回収分もほとんど企業が支払っている)を見直す。以下、転載↓

環境に配慮した製品の拠出金は割引し、リサイクルの可能性が制限されている製品には拠出金を割り増しする制度の導入が盛り込まれた。割り増しまたは割引の金額は、製品の販売価格の20%を上限とする。また、特定の製品や資材の市場投入の条件にリサイクル材料の最低使用量を設定することを可能にする。

今朝の日経新聞に記載されている審議中の「新法(反浪費法)」というのは、これのことだろう。消費するプラスチックの量を大胆に減らすため、不要なプラスチックを多く作る企業にはペナルティを与え、環境に良い商品を作る企業は恩恵を受けられる仕組みを作る、とある。

この法律がどのような成果をもたらすことになるのか、とても楽しみだ。

加えてフランスでは、飲料容器のデポジット制度も検討中だ。EU目標である2029年までに90%以上のペットボトルを回収するという目標を達成するためである。そのためのプロジェクト推進委員会が作られた。

「容器の返還方法や対象容器の種類などの具体的内容について協議を重ね、9月から国会で審議予定の「循環経済のための廃棄物削減に関する法案」に盛り込む予定」(JETRO, 2019.6.28)とのこと。

しばらくフランスの環境政策から、目が離せない。

日本の容器包装リサイクル法は、フランスの制度をモデルにしたといわれている。当時のフランスの容器包装令は、企業負担分がドイツに比べ少なかった。ドイツは拡大生産者責任が100%達成されているが、フランスは50%程度だといわれていた。

そのため、生産者の負担を減らす方が制度を導入しやすい日本としては、ドイツではなくフランスをモデルにしたと考えられる。しかし、フランスではその後どんどん生産者の負担割合を増やしていった。

日本の容器包装リサイクル法は、生産者が負担すべき回収費用を自治体が負担しているという点で、1995年当時からあまり変わっていない。再商品化費用よりもはるかに高い回収費用を、相変わらず自治体が税金で負担しているのだ。日本の環境政策の後進性は、最近特に顕著だ。

<参考>

「反浪費法」については日本経済新聞(2019.8.1)「プラごみ汚染どう防ぐ」:「大胆な削減」へ法整備(仏環境副大臣)

https://www.nikkei.com/article/DGXKZO48022860R30C19A7TCS000/?n_cid=DSTPCS001

JETRO(2019.7.19)「生産者による回収・リサイクル責任を強化する循環経済法案を閣議決定」

https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/07/b9538c17bf66d373.html

JETRO(2019.6.28)「容器回収を促すデポジット制度導入に向け、委員会を設置」

https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/06/ecee09ae588092a9.html

 

 

スポンサーリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です