高まる海洋生物の絶滅リスク、温暖化に乱獲が拍車をかける

近頃、生物の絶滅についてのニュースが多い。例えば、温暖化が原因で絶滅した初めての哺乳類として、オーストラリアの「ブランブルケイ・メロミス」が最近話題になった。

サンゴ礁の島に住んでいた哺乳類で、1978年には数百匹が生息していたが、海面上昇で度々浸水したことから、植物が減り、生息域を失ったことが原因だという(東京新聞2019.5.4)。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019050402000153.html

島は約四ヘクタールで、標高三メートルほど。二十世紀末から海面上昇でたびたび浸水。植物が減り、生息域をほとんど失っていたといいます。
国連の科学者組織が六日、報告書を発表する予定です。報道によると、この報告書は「地球上には現在、約八百万種の生物が生息しているが、今後、五十万種から百万種が絶滅の危機にさらされる」「生物多様性の損失と地球温暖化は密接に関連」と指摘します。温暖化で滅びる生物が百万種類になるかもしれないというのです。

陸上生物よりも海洋生物は、絶滅リスクが高いという研究成果も発表された。

米ラトガース大学のチームが400種以上の変温動物を対象に、気温上昇の影響を海と陸で比較したところ、海洋生物のリスクが強く示されたとのこと。海水温が上昇すると、海洋生物は逃げ場がないそうだ。(ナショナルジオグラフィック2019.4.27)

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/042500255/

ピンスキー氏らは海の変温動物88種と陸の変温動物318種の「温度安全域」を計算し、どれくらいの温暖化に耐えられるか、限界はどこかを割り出した。その結果、最も安全域が狭いのは、赤道付近の海洋生物と中緯度に生息する陸生生物だとわかった。

現在の温度でも、多くの変温動物には暑すぎる。論文によれば、温暖化の結果、最も海水温が高い場所では、海洋生物の半数以上がかつての生息地から姿を消しているという。こうした局所絶滅の割合は陸生生物の2倍に達する。

さらに、世界第2位のコウテイペンギンの繁殖地で、ヒナが3年連続してほぼ全滅というニュースもあった(AFP2019.4.26)。

https://www.afpbb.com/articles/-/3222720

これらニュースの中でも、とりわけ気になるのが、日本近海の漁業資源が温暖化で激減し、それに乱獲が追い打ちをかけているというニュースだ(CNN2019.3.1)。

米ラトガース大学の研究チームが、世界の漁業と海面温度に関する統計をもとに、1930~2010年の温度変化による持続可能な漁獲量の変動を分析したところ、地球温暖化が世界の漁業資源に重大な影響を及ぼしていることが分かったという。

「特に減少が激しかったのはアジア近海地域で、東シナ海や日本近海の黒潮では、過去80年の間に漁業資源が15~35%減っていた」とのことである。

https://www.cnn.co.jp/world/35133541.html?fbclid=IwAR1QYjy1v-T_izTeA2R55bGrWMyFd9gjFPmLMUhrMF4JWYsjWqizZpG2B24

<補筆>

中日新聞(2019.5.7)「100万種、絶滅の危機 国連警告」

https://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2019050702000063.html

国連の科学者組織が6日、世界で約100万種の動植物が絶滅の危機にひんし、人の活動に伴う生態系の喪失がかつてない速度で進んでいるとの評価報告書を発表した。

「絶滅の速度は、過去一千万年の平均と比べ数十~数百倍と推定され、評価対象の四分の一に当たる百万種が絶滅の危機にある。陸上の五十万種は生息地が脅かされ、両生類の40%以上と、サメと海洋哺乳類のそれぞれ30%程度が絶滅の恐れがある」とのこと。

さらに、「地球温暖化対策の「パリ協定」の目標を達成し、産業革命前と比べた気温上昇を二度に抑えても、サンゴ礁の面積は1%未満まで縮小すると予測。海洋プラスチック汚染は一九八〇年から十倍に増え、ウミガメや海鳥、海洋哺乳類など二百六十種以上に悪影響を及ぼしている」と分析された。

猛暑のオーストラリア、魚が大量死

今年に入ってから、オーストラリアが猛暑で、ついに49.5度Cが記録されたとのこと。

オーストラリアで年越しで異例の猛暑が連続するのは、豪州大陸の上空を広範囲に覆う高気圧の影響と、太平洋上で発生するエルニーニョ現象により、熱帯海域の海面水温が高温化していることも重なっている。この複合影響で、南オーストラリア州やビクトリア州などを中心に異常高温が続いている。

また、48度cを記録したニューサウスウェールズ州の川では、魚の大量死が相次ぐ。
ついに、水面が魚の死骸で覆い尽くされ、白一色に染まる事態に。今後、数日か数週間にわたり、さらなる大量死の発生リスクがあるそうだ。
原因として、「連邦政府は深刻な干ばつであるとの見方を示す一方、専門家や地元住民らは川全体の水量低下と汚染が原因だと指摘している」とのこと。

<出所>
AFP(2019.1.29)「「数十万匹」規模の魚の大量死、死骸で水面が白一色に 豪」
http://www.afpbb.com/articles/-/3208667

(一社)環境金融研究機構(2019.1.24)「猛暑のオーストラリア、最高気温が50℃直前に。南オーストラリア州で49.5℃を記録。州政府は緊急発電所を設置以来、初稼動へ。川では酸欠で魚が大量死、カンガルーもダウン(RIEF)」
http://rief-jp.org/ct8/86492

ウミガメ、プラスチック片1個誤飲しただけでも死亡の可能性

温暖化でウミガメの99%がメスになる可能性がある、というショッキングな研究結果(ナショナルジオグラフィック2018.1.10)が発表されたのに続き、ウミガメについてまた衝撃的な研究結果が発表された。

オーストラリアの連邦科学産業研究機構が、オーストラリア周辺の海岸に死んで打ち上げられたウミガメ約1000頭を分析した。その結果、体内にプラスチックが14片入ると死ぬ確率は5割になると推計されたという。

たとえ1片でも誤飲すると、死亡確率は22%であるとのこと。あるアオウミガメは、ポリ袋やキャンディーの包装など100片以上が体内から見つかったそうだ。

我々がウミガメを見られなくなる日は、そう遠くないのかもしれない。

<出所>

ナショナルジオグラフィック(2018.1.10)「温暖化でウミガメの99%がメスに、オーストラリア」↓

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/18/011000008/?P=2

JIJI.COM(2018.9.14)「プラごみ、ウミガメ「死の危険」=豪研究機関が初の数値化」↓

https://www.jiji.com/jc/article?k=2018091400683&g=int

 

 

プラごみも温暖化の一因?プラから温室効果ガス放出

プラスチックは劣化が進むとメタンやエチレンなどの強力な温室効果ガスが放出されると、アメリカ・ハワイ大学マノア校の研究チームが発表した。

特にレジ袋などの原料であるポリエチレンが、最も温室効果ガスを放出するとのこと。

プラスチックは海洋を汚染し、生物に被害をもたらすのみならず、地球温暖化も促進するようだ。

<出所>

AFP(2018.8.2)「プラスチック、劣化で温室効果ガス放出 米研究」↓

http://www.afpbb.com/articles/-/3184681

健康にも環境にも悪いパーム油 表示義務を

トランス脂肪酸を減らすため、パーム油を使う食品が増えているそうだ。

それでなくてもパーム油は、「植物油」表示でこれまでも食品に多く使用されていた。

チョコレート、マーガリン、マヨネーズ、カレールー、クッキー、ポテトチップス、アイスクリーム・・などなど、書き出したらキリがないほど使われている。パーム油を避けると、スーパーでは買うものがなくなるほどだ。

パーム油にはBHA(ブチルヒドロキシアニソール)という食品添加物(酸化防止剤)が使われており、ラットに対する発がん性が確認されている。

避けるためには食品表示が必要だが、日本では「パーム油」と書かなくてよいことになっている。代わりに「植物油脂」「植物油」などと書かれているが、それではわかりにくい。

マレーシアやインドネシアではパーム油を生産するアブラヤシプランテーションでの紛争が絶えない。例えばJATAN(熱帯林行動ネットワーク)によると、2016年6月、マレーシア・サラワク州ミリ市内で人権活動家がアブラヤシプランテーション企業関係者と目される人物たちに白昼の市街地で殺された。しかし、容疑者らは証拠不十分で無罪になったという。

泥炭地開発をめぐる環境破壊も、さらには森林火災も、アブラヤシプランテーションに起因するケースが多い。CO2削減のためにも、パーム油を避けたい。

パーム油を避けるために、ぜひ「パーム油」の表示を義務化してほしい。

<参考>

パーム油調達ガイド

パーム油、危険性の警鐘相次ぐ・・・動物実験で発がん性、日本で野放し、表示上は「植物油」

今年のオーバーシュート・デーは8月1日 地球1個分の暮らしを超える日

2018年の「オーバーシュート・デー」は8月1日。あと2日で、地球は赤字生活に入る・・というより、あと2日で私たちは子孫の使うべき資源を借用して使う借金生活に入る。

オーバーシュートとは、人間が地球の収容力(バイオキャパシティ)を超えてCO2を出したり資源を使ったりすることで、オーバーシュート・デーとはちょうど地球のバイオキャパシティを使い果たし、元本に手を付け始める日のことである。

地球のバイオキャパシティの範囲内で暮らしていたならば、地球温暖化は起きなかったはずで、ごみ問題の解決もこれ程難しくなかったはずだ。

子孫に残すべき資源に手を付けても、今の世代の人間がそれを穴埋めすることはおそらくできない。穴は毎年大きくなり、地球のバイオキャパシティはそのうち急落するだろう。

現在人間は、世界平均で地球1.7個分の暮らしを送っており、先進国など資源浪費国はどこも平均を軽くオーバーしている。今の日本人と同じ暮らしを世界中の人たちが送ると、地球は2.9個必要になるそうだ。

<参考>

共同通信(2018.7.26)「あと1週間で地球は赤字 今年の「アース・オーバーシュート・デー」は8月1日」

https://www.kyodo.co.jp/mamegaku/2018-07-26_1845070/

朝日新聞(2018.7.3夕刊)「日本の暮らし、地球2.9個分 環境負荷、独自の単位で数値化」

https://www.asahi.com/articles/DA3S13568752.html

レジ袋規制、禁止・有料化・課税のどれが有効か

海洋ごみ汚染対策や温暖化防止対策の一環として、レジ袋を削減するため、各国・各州ではさまざまな取組が展開されている。
基本的には、有料化、禁止、課税・課金の3種類だ。
課税といっても、どの段階で誰に課税するかはいろいろで、課税分がダイレクトに消費者に課せられる場合を「課税」に分類するケース(アイルランド)と、レジ袋製造者や輸入業者などに課税するケースがある。後者のほうが多く、一般に課税という場合にはこちらのケースも含めていう場合もあるようだ。

しかし、後者のケースの場合、課税の結果、小売店のレジ袋調達費用が上がり、小売店がレジ袋を有料化するため、消費者にとっては「有料化」として認識される。このため、「有料化」にカウントされるケースも多い。また、課税ではなく有料化であったとしても、政府が金額を決めた場合、消費者には課税に見える。このため、新聞などにlevyあるいはtaxなどと書かれるケースもある(例えば、イングランドで有料化された時のケース)。

従って、課税と有料化を分けてカウントする場合、あらかじめそれぞれの定義が必要だ。

どれが有効かについては、おそらくケニアのような罰則を伴う全面禁止が最も有効だろうということは想像に難くないが、これはなかなか難しい。

アメリカでは州により対応が分かれている。例えば、ワシントンDCでは有料化、カリフォルニア州やハワイ州では禁止、シカゴ市では課税である。

JETROによると、シカゴ市の場合、レジ袋(紙袋含む)1枚につき7セント課税され、うち5セントは市に、2セントはレジ袋費用として小売店に入る。
環境保護と同時に、市の税収にもなるという一石二鳥の効果を狙ったものだ。一般財源となるか、環境対策に特化して使われるかはともかくとして、福祉や環境などに有効に利用されるならば、課税も悪くないかもしれない。

いずれの政策がどの程度の効果を生み出すか、どれが最も有効かについては、今後検証されるだろう。
楽しみである。

それにしても、日本の取組の遅さは一体どういうことなのか、理解に苦しむ。最も穏便な方法だと思われる有料化でさえ、コンビニ業界や百貨店業界に阻止されている。

コンビニ業界は、レジ袋削減に取り組んでいると言いはるが、財布を出している間に袋を広げ商品を入れようとするのでレジ袋を断ると、一度広げたものは使い物にならぬとばかりに、店員が客の目の前でごみ箱にレジ袋を捨てる、というコンビニさえある。

コンビニがレジ袋削減に取り組んでいるようには、とても見えない。レジ袋削減を自治体と業界に任せていては、コンビニはおそらくいつまでも取り組まない。

海ごみ対策に取り組むと国会でも答弁したからには、まずレジ袋を国が政策的に規制すべきである。

<シカゴについての出典>

JETRO(2017.2.)「シカゴ市がレジ袋税を導入」↓
https://www.jetro.go.jp/biznews/2017/02/2908205868c2a2b9.html

温暖化で海鳥が減少する可能性

スコットランドの研究者たちの調査によると、アホウドリやツノメドリのような脆弱な海鳥は、温暖化にあわせて繁殖期を変えられないため、ヒナのために食べ物を見つけられない可能性があるとのこと。
これまでこれらの海鳥は、餌となる生物種の豊富な時期に繁殖するパターンができていたが、温暖化により海鳥の繁殖期と餌となる生物種の最も豊富な時期とが一致しなくなる。このため、繁殖期を変えられない脆弱な海鳥は、生存が脅かされる可能性がある。

<出所>

THE TIMES Warming waters threaten seabirds breeding habits;

https://www.thetimes.co.uk/edition/scotland/warming-waters-threaten-seabirds-breeding-habits-g87ctqfpg