環境省が、自治体に産廃の廃プラ焼却を要請する、という報道に愕然とした。
バーゼル条約の対象に、汚れた廃プラを加えることを日本とノルウェーが提案し、採択されたことから、G20に向けて、日本もようやくプラごみ対策に本腰を入れると思っていた。しかし、違っていた。
海外向けにはプラスチック対策をしています、という姿勢を示し、削減はほどほどにして、出てしまった廃プラは自治体の焼却炉で燃やしましょう、ということだったのか。
要するに、廃プラ焼却を国が奨励するということである。
これまで環境省は、容器包装リサイクル法の対象であるプラスチック製容器包装を分別回収から焼却に切り替えた和歌山市などの自治体を非難していた。しかし、これから先は非難できないだろう。今後、プラスチック製容器包装のリサイクルをやめ、焼却に切り替える自治体が増えることは間違いない。
廃プラの処理を依頼した企業から自治体が焼却代(処理費用)を取るのは当然だが、廃プラを受け入れた自治体には環境省が財政支援までするとのこと(毎日新聞2019.5.16)↓
関係者によると、家庭ごみの分別が徹底されてきたことで、自治体が所有する焼却炉は稼働率が低水準のものも多く、事業ごみの廃プラを焼却する余力があるという。このため環境省は、緊急避難的に廃プラの処理を市区町村に要請することとした。受け入れた自治体には財政支援をするほか、処理費用の徴収なども認める。
以前から、国が自治体に焼却施設の余剰について尋ねているというウワサは聞いていた。しかし、それはあくまでも緊急避難的措置で、現在溜まっているどうにもならない廃プラを焼却するだけだろうと思っていた。
自治体は今後産業界から出た廃プラまで燃やすことになるのだ。今は「お願い」という形だが、いずれは廃棄物処理法が改悪され、「義務化」される可能性もあるのではないか。
もしそうなれば、生産者責任など、少なくとも廃棄物処理に関しては、日本にはないということになる。
自治体にできることは、やはり脱焼却を目指し、焼却施設を作らない方向に舵をきることだ。
それにしても、日本の環境政策はなぜこれほど「退行」するのだろう?
欧州議会は、2020年から廃棄物処理や焼却施設への財政的支援を結束基金から排除する、と聞く。カナダでも、焼却施設の建設に、国から補助金が出ることはない、と聞いたことがある。
しかし日本は、焼却施設の建設に際し、国が補助金を出すのが当たり前になっている。国の補助金を使用していると、焼却施設に余力のある自治体は、今回の環境省による廃プラ焼却要請も断りにくいかもしれない。
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<参考>
毎日新聞(2019.5.16)「廃プラ、産廃も焼却要請へ 環境省、市区町村に 全体の8割占める」
http://topics.smt.docomo.ne.jp/article/mainichi/politics/mainichi-20190516k0000m010010000c?fm=topics
日本経済新聞(2019.5.16)「環境省、自治体に産廃のプラ焼却要請 来週にも通知へ」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44900660W9A510C1000000/
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