PFASパブコメ募集中、緩い指標値と『毒の水』

食品安全委員会が、有機フッ素化合物(PFAS)に係る食品健康影響評価に係る審議結果(案)について、科学的な内容に関する意見・情報を募集している。締め切りは3月7日。

https://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc1_pfas_pfas_060207.html

あくまでも科学的な内容に関する情報を募集しているため、感情的な意見は書きにくい。しかし、人が1日に食品や飲料水などから摂取する許容量について、PFHxS(ピーエフヘクスエス)を放置し、PFOSとPFOAの2物質のみそれぞれ体重1キログラム当たり20ナノグラム(ナノは10億分の1)とした指標値の案は承服しにくい。

この数値は、「水道水の暫定目標値の算出で採用した指標を飲食物全体に広げた形だが、欧州食品安全機関(EFSA)が採用する摂取許容量を60倍以上上回っている」という。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/305491

日本の化学物質規制はとにかく遅い。

100頭以上の牛が農場でバタバタと死んでいく有様に危機感を募らせた農場主の訴えを聞いたのを機に、PFAS汚染に20年間も立ち向かった弁護士の実話『毒の水』(日本語訳は花伝社、2023)。この本によると、デュポンがPFASの毒性調査を開始したのは1954年、動物実験を本格化させたのが1960年代だ。

1962年にはラット、65年には犬、78年にはサルで実験。全てで有害性が認められた。

「PFOAが先天異常と関連している」と3M社が政府やデュポンに報告したのは1981年だ。妊娠したラットにPFOAを食べさせたところ、胎児の目に異常が起きたためだ。

報告を受けたデュポンは2週間後、全女性従業員をテフロン部門から撤退させ、血液検査を行った。

さらに、最近出産した7名の従業員の血液データを集め、出生記録を検討した。その結果、全員がPFOAの血中濃度が高かった。しかも7人のうち2名に出生時の障害が見られたのだ。両者とも目の障害だった(p.209)。しかも一人は鼻も半分なかった。

しかし、デュポンはこの結果を政府に報告しなかった。それどころか、同社のラット実験では目の異常が出なかったので、同社はそれを根拠に3Mの実験結果は間違いだったと指摘した。

3M社もそれに同調し、環境保護庁に「報告したラットの先天異常は無効で、さらなる調査は不要だ」と伝えた。それを環境保護庁は鵜呑みにした。

他の部署に短期間、異動していたデュポンのテフロン担当の女性従業員は、またテフロン部署に戻された。

1988年、新たなラット実験で発がん性が判明した。PFOAがラットに睾丸腫瘍を引き起こすことがわかったのだ(p.210)。デュポンは社内で、人間の発がん性もありうると分類したが、このことを政府に伝えなかった。

1993年には、PFOAが睾丸腫瘍だけでなく、肝臓と膵臓の腫瘍を生じさせることがわかった。同社の科学者は論文で、この化学物質の人間への発がんリスクは軽視できないと認めた。しかし、デュポンはその後もPFOAを環境に垂れ流し、そのことを隠蔽し続けた。

2017年、ようやく地域住民の血液数万人分を専門家が7年以上かけて精査した「科学パネル」の結果が発表された。その結果、PFOAのリスクは次の6つの疾患であることが判明した(p.339)。

・腎臓がん

・睾丸がん

・潰瘍性大腸炎

・甲状腺疾患

・高コレステロール

・妊娠高血圧症

これほど顕著な有害性の証拠が既に報告されているにも関わらず、日本の食品安全委員会の評価書(案)には、「発がん性については、動物試験でみられた事象は、げっ歯類特有のメカニズムである可能性がある又は機序の詳細は不明であることから、ヒトに当てはめられるかどう
かは判断できないと評価した。疫学研究から、PFOA と腎臓がん、精巣がん、乳がんとの関連については、研究調査結果に一貫性がなく、証拠は限定的である」(p.7)と書かれている。

しかし、動物実験ではサルも死亡していることから、発がん性は「げっ歯類特有のメカニズム」などではない。サルに当てはまるならば、ヒトにも当てはまるのではないだろうか。

この評価書は納得できない。

3/24、PFASオンライン学習会のお知らせ

PFAS学習会が開催される。詳細は以下の通り。

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オンライン勉強会「水の安全について学ぶ~PFASってどんなもの?~」

開催日時 : 2024年3月24日 (日) 13時30分~15時30分 
         *最大延長16時には終了いたします
実施形態 : オンラインZoomミーティング
         *2日前にURLを配信いたします
講 師 : 原田 浩二 氏 (京都大学大学院 医学研究科環境衛生学分野准教授)
参 加 料 : 無 料(事前申込が必要です)
主 催 : 桂川・相模川流域協議会
協 力 : 道保川を愛する会

参加申し込みURL:https://forms.gle/RMkamVWcdjJxkZz19

現在、全国各地で明らかになっているPFAS汚染。
神奈川県でも相模原市、座間市、秦野市など、各地域の地下水、井戸水、
河川で基準値を越える値が検出されており、魚や野菜、他の食品からも検出され
ています。海外の動向を見ると、アメリカの一部の州はPFASが全面禁止となり、
EUではPFASの全面禁止を検討しているところです。
ところが、日本ではPFAS基準値は緩いまま。本当にそれで大丈夫なのでしょうか?
私たちの健康や命に関わることです。国や地方自治体、企業任せにするのではなく、
私たち市民もPFASについて知って、考えていく、そんな学習会になればと思い、
次のとおり勉強会をオンラインにて実施します。多くの方のご参加をお待ちして
おります。

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武蔵野市で民間井戸のPFAS調査を来年度実施 PFHxSも

東京都武蔵野市で来年度、市内の民間井戸のPFAS調査を実施すると発表。関連経費582万円を新年度予算案に盛り込んだ。

調べるPFASは、PFOS(ピーフォス)」「PFOA(ピーフォア)」「PFHxS(ピーエフヘクスエス)の3項目だ。

https://www.asahi.com/articles/ASS2F75MGS2FUTIL01F.html

ペルフルオロヘキサンスルホン酸(PFHxS:ピーエフヘクスエス)は昨年12月1日、化審法の第一種特定化学物質に指定された物質だ。施行日は今年2月1日。これにより、製造は原則禁止され、使用にも制限がかかった。今年6月1日からは、一部の製品はPFHxSが使用される場合、輸入できなくなる。

https://www.dowa-ecoj.jp/houki/2023/20231202.html

とはいえ、私たちは死ぬまでPFHxSとは縁が切れない。しかもPFHxSに代わる物質として、これから似たようなPFASが使われるに違いない。そして数年後には、それも危険であるとして禁止されるだろう。

早く、EUのように日本でもPFAS全体を禁止する方向で検討を進めるべきだ。

もちろん、国の規制を待つまでもなく、相模原市もぜひ井戸水と地下水、河川水のPFHxSを調べて欲しい。

調べたEU政治家全員の血液からPFASが見つかる 

EUでは、欧州委員会の副委員長3人、および環境委員、欧州環境庁長官、そして欧州諸国から来た6人の欧州議員が、体内から13のPFAS(パーおよびポリフルオロアルキル物質)が検出されるか、自主的に調べたそうだ。

その結果、11人全員の血液からPFASが検出された。

見つかったPFASは、PFOA、PFNA、PFDA、PFUnDA、PFHxS、PFHpS、PFOSの7種類。5人の政治家が規制の懸念レベルを超えていた。

見つかった7種類のPFASのうち、「PFOAとPFOSはすでにEUでは使用が禁止され、その他の物質(PFNA、PFDA、PFUnDA、PFHxS)については、いくつかの用途が規制されているが、PFHpSはまだEUでも使用が認められている」とのこと。

https://rief-jp.org/ct12/142562

EUは現在、PFASグループ全体を規制する方向で検討している。これで規制に拍車がかかるかもしれない。EUがPFAS禁止を決定すれば、日本も多少変わるかもしれないと期待している。

コカコーラ、「プラスチック汚染企業」6年連続1位

Break Free from Plastic(BFFP)の発表によると、2023年も世界で拾われたプラスチックごみのトップが、コカ・コーラだった。

8,804人のボランティアが、合計53万7719個のプラスチックごみを集め、メーカーを調べた。

世界のプラスチック汚染企業の上位を占めるのはコカコーラの他に、ネスレ、ユニリーバ、ペプシコなど。

https://drive.google.com/file/d/1YFyfRv4m_viZZXa8b1HdpucDX3WEwJzv/view

いずれも飲料や食品を使い捨てのプラスチック製容器包装で提供しているメーカーだ。

日本もドイツのようにこのようなすぐにごみになるものを生産する企業からは、公園や街路の「清掃費」をとるべきだ。

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PFASがプラスチック容器にも 米研究

PFAS(有機フッ素化合物)は、高密度ポリエチレン製(HDPE)のプラスチック容器にもよく使われているそうだ。昨年、アメリカ化学会で発表された。

発表したのは米ノートルダム大学の研究チーム。著名なPFAS専門家でこの論文の著者の一人であるグラハム・ピースリー教授によると、農薬の容器にフッ素化された容器が使われると、農薬を通してPFASが農作物に移行し、それを人間が食べることになるそうだ。

その結果、「前立腺癌、腎臓癌、精巣癌、低出生体重、免疫毒性、甲状腺疾患など、いくつかの健康問題に関連する有害化学物質への重大な曝露の直接的なルートになる」とのこと。

https://news.nd.edu/news/plastic-containers-can-contain-pfas-and-its-getting-into-food/

PFAS濃度の平均合計は、「63.75±13.2 ng/gプラスチック」。家庭用洗剤、農薬、パーソナルケア製品などを調べた結果だ。

https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.estlett.3c00083

日本で使われているプラスチック容器にもPFASが使われていることは間違いないだろう。粘着性のある液体が容器にくっつきにくくするためには、おそらくPFASが役に立つ。

ハンバーガーなどの包装紙にもまだ使っている大手ファストフードチェーンがあるくらいだから、もしかしたら、食品用の容器にも使われているかもしれない。マヨネーズは大丈夫だろうか?

独、使い捨てプラごみの処理費用を製造者に デジタルプラットフォーム運用開始

ドイツでは2022年11月、使い捨てプラスチック製造者に対し、公園や街路の廃棄物処理費用の負担を課す法案が承認された。

https://www.eic.or.jp/news/?act=view&serial=48448&oversea=1

廃棄物投棄への対応に取り組む公共機関にその処理費用を支払うシステムの管理・処理を行うデジタルプラットフォームが、今年4月から運用開始となる。

これにより、連邦環境庁は約56000機関の賦課金支払い対象組織の登録と入金、および約6400機関への処理費用の分配をデジタル処理できるとのこと。

https://www.eic.or.jp/news/?act=view&word=&category=51&serial=49983

日本はなかなか進まないが、ドイツの拡大生産者責任はどんどん進んでいく。

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オーストリア、2025年1月からデポジット制度開始 Sensoneo社の技術を選択

オーストリアは来年1月から飲料容器のデポジット制度を開始する。

対象は、0.1から3Lのペットボトルと金属缶で、デポジット額は0.25ユーロ(0.27米ドル)とのこと。

デポジット制度の複雑なITシステムは、やはりSensoneo社を選択した。同社の技術は現在、欧州のデポジット制度の要となっているようだ。

「オーストリアは、Sensoneoのソフトウェアソリューションを選択した6番目の国で、同社は、スロバキア、マルタ、アイルランド、ハンガリーのデポジット制度のシステムに加え、ルーマニアの世界最大の集中デポジットシステムを含む、ヨーロッパのデポジットシステム6つの公開入札をすべて獲得したと伝えられている」とのこと。

https://www.packaginginsights.com/news/austria-chooses-sensoneo-tech-for-national-drs-launch-in-2025.html?utm_source=Newsletter&utm_medium=email&utm_content=25+Jan+%7C+FEVE+talks+essential+PPWR+changes+%7C+Packmatic+secures+€15M+in+funding+%7C+Austria+chooses+Sensoneo+for+2025+DRS+launch&utm_campaign=2024-01-23+PI+Daily&eType=EmailBlastContent&eId=fcf337f9-7334-4876-920a-faaad2dad365

同社はスロバキアの会社で、2017年に創業。70ヶ国で事業を展開し、スマート廃棄物管理ソリューションを提供しているそうだ。

https://ameblo.jp/s2021751/entry-12801371634.html

昔はデポジット制度の運営は面倒でお金もかかったが、今はIT技術の進歩でだいぶラクにできるようになった。

上記パッケージングサイトによると、オーストリアの飲料容器回収率は現在70%。来年デポジット制度が開始されれば80%になると予想されている。2027年には90%になり、EU目標を達成できる。ペットボトル回収率のEU目標は、2025年までに77%、2029年までに90%だ。

日本もいつまでも「ペットボトル回収率は既に90%以上」などと、過大な予測をしていないで、早くデポジット制度で「真水」の90%回収を達成して欲しいものだ。

どうしてもデポジット制度を導入したくないのであれば、フランスのようにペットボトル使用を半分に減らす半減目標を立てるべきだが、日本は経済界に配慮し、どちらも選ぼうとしない。

「ストップ!マイクロカプセル香害」署名、P&Gが受け取り拒否

柔軟剤や洗剤、消臭剤、制汗剤などにはマイクロカプセルが使われている。とりわけ、香り付き柔軟剤で被害を受ける人が多い。膨大な量のカプセルに閉じ込められた香り成分が、カプセルがはじける度に匂うため、香りが長続きしてしまう。そのせいで、まるで化学兵器のように香害被害を増やしているのだ。

EUは昨年、このようなプラスチックの使い方を禁止することを決定した。しかし、日本は企業の自主性に任されているため、増える一方だ。「誰かが苦しんでいても、儲かればよい」と国が考えているとしたら、日本はやはり後進国だ。

先日、業界団体とメーカーに『<STOP!マイクロカプセル香害>』の署名を3団体が届けたところ、花王とライオンは受け取ったが、P&Gは受け取りを拒否したとのこと。

P&Gは、消費者の声を聞く気もないようだ。「消費者がどうなろうと、今自分だけ儲かればよい」と考えているとしたら、こんな会社に未来はあるだろうか。このような態度では、世界の投資家から相手にされなくなるのは時間の問題だ。

以下、「消費者リポート便り 」(2024.1.30)を転載。

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記者会見&院内集会『<STOP!マイクロカプセル香害>』(1月23日)と署名提出(1月22日、25日)のご報告

 署名提出ではP&Gジャパンだけが受け取りを拒否

「香害をなくす議員の会」「香害をなくす連絡会」「カナリア・ネットワーク全国」の3団体は、オンライン署名サイトChange.orgで『<STOP!マイクロカプセル香害>メーカーは「マイクロカプセル香料」などの「長続き」製法をやめてください!』というキャンペーンを10月から始め、署名を手渡すために、1月22日に日本石鹸洗剤工業会と花王、ライオン、25日にはP&Gジャパンを訪問しました。残念ながら署名提出では、P&Gジャパンだけが受け取りを拒否しましたので、その後郵送で社長あてに送りました。

1月22、23日の模様は、ユープランが撮影したユーチューブでご覧いただけます。

1月22日
https://www.youtube.com/watch?v=LEng-LkteXA

1月23日
https://www.youtube.com/watch?v=djA-zb1B59E

★詳しくは下記をご覧ください。
https://nishoren.net/new-information/19530

署名サイトはこのまま開設し、随時情報をお送りします。
引き続きのご関心と取り組みをよろしくお願いいたします。
Change.org署名は下記をご覧ください。
https://www.change.org/Stop_Kougai

◎この集会の資料や通信・運営費用は、日本消費者連盟の会費と皆様からのカンパにより賄っています。これを機会に日本消費者連盟への入会をご検討ください。
https://nishoren.net/join

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東大などが実験、生分解性プラは深海でも分解。ポリ乳酸は分解せず

東京大学や海洋研究開発機構、群馬大学、製品評価技術基盤機構、産業技術総合研究所、日本バイオプラスチック協会は、様々な生分解性プラスチックを水深の異なる海底に沈め、分解するか実験を行った。

その結果、生分解速度は水深が深くなるにつれて遅くなるものの、全ての深海底で生分解されることも確認されたという。

実験は、神奈川県の三崎沖(水深757 m)、静岡県の初島沖(水深855 m)、伊豆小笠原島弧海底火山付近の明神海丘(水深1,292m)、黒潮続流域の深海平原(水深5,503 m)、日本最東端の南鳥島沖(水深5,552 m)で行われた。

研究成果は、国際科学専門誌「Nature Communications」オンライン版に掲載された。

以上、東京大学HPより↓

https://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/topics_20240126-1.html

これまで生分解性プラスチックは、微生物の少ない深海では分解しないだろうと考えられていた。しかし、この実験によりポリ乳酸以外は分解することが実証された。

今回の結果は長年の懸念を払拭するよい結果だと思う。深海でも分解するならば、地中深くでも分解するだろう。そのため、どうしてもプラスチックを使わざるを得ないものは、生分解性プラスチックを使うのがよいと思う。しかし、強度や耐久性が必要なものにはやはりまだ使えないのではないか。