来月開催の国連環境総会、日本はどうする?6月のG20も今の戦略案で乗り切るのか

来月(2019年3月11日〜15日)、ケニア・ナイロビで第4回国連環境総会(UNEA4)が開催される。
国連環境計画(UNEP)の専門家グループは、深刻化する海のプラスチック対策のため、法的拘束力のある国際条約の策定を検討するべきだとの勧告をまとめた。
以下、日経新聞(2019.2.18)↓

勧告は問題に取り組む上で「多くの専門家が法的拘束力のある協定が必要だとの見解を示した」と報告。国際協力を強化するための選択肢として、条約づくりを検討するよう求めた。
関係者によると、専門家グループの議論では、プラスチックごみの削減や代替品の普及を国際協調で進め、途上国支援を充実させるために国際条約をつくる必要性を強調する意見が多く出された。一方、条約策定には時間がかかり、実効性が不透明だとの慎重意見もあったという。
勧告はほかに、海のプラスチックごみやマイクロプラスチックの観測、人間の健康や環境への悪影響を検討する科学的な諮問組織づくりも検討するよう求めている。

これについて、日本がどう対応するのか、とても気になる。さらに気になるのが、先日公表された閣僚宣言案だ。
UNEA4での採択を目指す閣僚宣言案では、使い捨てのレジ袋や食器、ストローを2025年までに使用中止し、最終的には使い捨てプラスチック全廃戦略を策定することが求められている。
日本が今検討し、まもなく正式決定しようとしている案は、これよりも緩く、レジ袋は禁止ではなく有料化で、食器やストローについてはまだ具体的に決まっていない。
2030年までに使い捨てプラスチックを累計で25%削減する、などの日本のプラスチック戦略案では到底届かない宣言案を、このまま日本が採択できるのだろうか?
アメリカと一緒に、宣言案をより甘い案に修正(骨抜きに)させる可能性も考えられる。

日本の戦略案は、おそらく2月22日に開催される小委員会で決定されるだろう。
しかし、このような緩い戦略案が正式決定してしまうと、日本の戦略案は、来月の国連環境総会ではもちろんのこと、今年6月に大阪で開催されるG20でも、参加国の間でかなり浮きそうだ。

日本の海洋プラスチックごみ汚染問題対応への本気度が、まもなく国際社会の場で試される。

<関連記事>

国連、レジ袋やストロー、食器等の全廃を閣僚宣言案に盛り込む

<参考>
毎日新聞(2019.2.18)「プラスチック危機 プラごみ「防止条約」勧告 国連環境総会で議論へ」
https://mainichi.jp/articles/20190218/ddm/003/040/074000c

日経新聞(2019.2.18)「国連専門家「プラごみ対策、国際条約を」 慎重な先進国多く」
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO41391560Y9A210C1CR0000/

環境省「中央環境審議会循環型社会部会プラスチック資源循環戦略小委員会(第5回)の開催について」
https://www.env.go.jp/press/106456.html

米オレゴン州の飲料容器回収率、過去最高を記録

オレゴン州はアメリカで初めてデポジット・リファンド制度(以下、デポジット制度)を開始した州である。
そのオレゴン州で、2018年、過去最高の回収率を達成したとのこと。
過去最高とはいってもおそらく、ここ数年以内での最高記録、ということだろう。オレゴン州ではここしばらく回収率がずっと低迷していたが、制度導入当初は高かったので。

オレゴン州でデポジット制度が開始されたのは1972年。
当時の雑誌記事によると、きっかけは、使い捨ての瓶や缶が増え、美しい自然豊かだった州内が、次第に使い捨ての瓶や缶の散乱で汚れていったことだ。
その汚さに耐えかねた市民たちが、議員に相談した。
1969年、デポジット制度を法律にするため、219時間に及ぶ公聴会が開催された。しかし、州議会では可決直前までいったが、否決。
知事はデポジット制に賛成だったとのこと(理由は、自然を美しくするためには缶代を付けるべき)だが、ビールや清涼飲料メーカーは反対。缶メーカー(瓶に市場を取られてしまう)や瓶メーカー、小売店や問屋も反対した。
反対者の影響を受けた議員は「わずかなお金のために空き瓶や空き缶を返しに行く人はいない」と、否決した。

人々がすっかり諦めかけたとき、あるスーパー経営者が私財を投じ、自分の店で実験し有効性を証明した。
自分の店で売った瓶・缶を、1.5セント/個で引き取る、と発表したのだ。
2週間で約5万人が押し寄せ、350万個の空き瓶・空き缶が集まったそうだ。

1971年 再び法案提出。全米から、缶・瓶メーカーや鉄鋼メーカー、アルミ会社、ビール会社、清涼飲料会社(ペプシコ以外)、大手スーパーなど圧力団体がオレゴンに集まり、大金をかけ反対のキャンペーンをしたが、見事に可決された。
1972年に、デポジット制度が開始。開始当時のアンケート調査によると、州民の90%以上が、きれいになった州内を見て、デポジット制度を支持したそうだ。

5セントのデポジット・リファンド額で開始されたが、だんだん回収率が低迷した。おそらく、市民が5セントになれたためだろう。
2017年、10セントに値上げされた。
その成果で、2018年に90%もの高い回収率になったようだ。
回収率増加のもう1つの理由としては、以前は小売店回収のみだったのが、専用の容器回収施設ができたこともある。
そこで効率的に回収できるようになったことも、回収率上昇の原因だと考えられる。

<参考>
THE HILL(20192.4)Oregon bottle recycling rate hits record-high;
https://thehill.com/policy/energy-environment/428377-oregon-bottle-recycling-rate-hits-record-high

ようやく省庁が脱使い捨てプラ、病院や学校は?

先ず「隗より始めよ」と、省庁や国立大学法人など国の関連209機関が、4月から使い捨てプラスチックを少し禁止したようだ。

・売店のレジ袋は、10%以上バイオマス原料入りを有料で配布する→→→禁止したらいいのに。

・弁当容器はそのまま使い捨てプラでもOK、代替品は困難との理由から→→→本当に困難だろうか?庁舎内で食べるならば、容器を返却することは可能なはず。工夫次第でどうにでもできるような気がするが・・。

・食堂での使い捨て食器やストローなどは禁止→→→これは当然。

・外部に委託する会議ではペットボトル入り飲料や使い捨てプラのコップなどを使用禁止とする→→→これはいいけれど、外部委託でない会議でも、当然使わないでね、と願う。

「環境省によると、この改定で年間に最大ペットボトル約8万5000本、レジ袋約100トンの削減効果を見込んでいる」(毎日新聞)とのこと。
まだまだ緩い気もするが、この程度ならば、地方自治体もすぐにできそう。他の組織もあとに続いて欲しい。

最近は病院も、使い捨て容器で食事を提供するところが増えている。人件費の問題らしいが、なんとも味気ない。
また、以前は病棟に給水器や給湯器が置いてあったものだが、今はペットボトルの自動販売機が取って代わった。
入院患者は喉が渇くと、ペットボトルを買うのだそうだ。
ペットボトルに直接口をつけて飲んだ場合、そのまま数時間放置すると雑菌が繁殖する。それをまた飲む患者の体力がもし弱っていたならば、患者の健康が心配だ。
ランニングコストのかかる給水器や給湯器よりも、カネになる自動販売機を置きたい、という病院側の懐事情だろうが、患者の健康と懐も心配してほしい。
大学も、給水器の数を減らし、自動販売機を設置するところが増えている。
大学側が学生に、缶やペットボトルの使い捨てを奨励しているのも同じで、それで環境授業などあったものではない。

さすが世界第2位の使い捨て国家。日本は、省庁を筆頭にタガが外れていた。これを機に元に戻ってほしい、と思う。

<参考>
朝日新聞(2019.2.8)「国209機関、脱プラ義務化 業者の選定条件に」
https://digital.asahi.com/articles/DA3S13886035.html

毎日新聞(2019.2.8)「全省庁で使い捨てプラ禁止 食堂や売店 4月から」
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190208-00000021-mai-env

日本経済新聞(2019.2.8)「食堂で「使い捨てプラ」禁止に 省庁など方針 政府決定 」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO4105615008022019CR0000/

<関連記事>

日本も来年からようやく省庁での使い捨てプラを禁止か

大阪府と大阪市も「プラごみ」ゼロ宣言

亀岡市のプラごみゼロ宣言に続き、2019年1月28日、大阪府と大阪市もプラごみゼロ宣言を発表した。
「おおさかプラスチックごみゼロ宣言」は、レジ袋やストローなど使い捨てプラスチックの削減やリサイクルを推進し、プラごみの排出ゼロをめざすとのこと。
具体的なことはまだあまり決まっていないようだが、朝日新聞(2019.1.29)によると、

府と市は今後、庁舎や関連施設で、紙などの代替品で使い捨てプラスチックの使用量を減らし、ペットボトル回収などのリサイクルも徹底する方針。大阪湾でのプラごみの実態調査も進める。市町村や経済団体にも同様の宣言の実施を求めていくという。

とのこと。
これに合わせ、大阪府はウェブサイトに海ごみ対策のページを新設し、大阪湾の漂着ごみ状況などを紹介している。
それによると、大阪湾に漂着するペットボトルのほとんどは国内製で、ペットボトルやレジ袋など食品包装材は33%を占めている。
宣言したことは評価する。しかし、ペットボトルの回収には取り組んでも、ペットボトル削減には取り組むと発表していないのが残念。
また、亀岡市のような「レジ袋禁止」は打ち出さない様子。
これからに期待したい。

<参考および引用>
大阪府「おおさかプラスチックごみゼロ宣言」
http://www.pref.osaka.lg.jp/eneseisaku/kaiyoplastic/index.html

朝日新聞(2018.1.29)「大阪)府と大阪市「プラごみゼロ」宣言 大阪湾で調査も」
https://digital.asahi.com/articles/ASM1X54VZM1XPTIL00T.html

大阪府「海ごみ対策」
http://www.pref.osaka.lg.jp/kankyohozen/osaka-wan/umigomi.html

トルコ、2023年までにすべての飲料容器をデポジット制で回収

ペットボトル回収率を90%以上にすることが求められつつあるEU(欧州連合)では、デポジット制度の導入が進む。

今年1月からレジ袋を有料化したトルコでは、今度はすべての飲料容器を2023年までにデポジット制度で回収することを発表した。
今までは、自治体ごとに対策が取られていたが(例えば、イスタンブールでは地下鉄駅に設置された自動販売機にペットボトルやアルミ缶を入れると、イスタンブールカードにチャージされ、運賃として利用できる)、今度は国が本格的にデポジット制度を導入する。

<出所>
DAILY NEWS(2019.1.21)Bottles deposit return scheme gets green light in Turkey
http://www.hurriyetdailynews.com/bottles-deposit-return-scheme-gets-green-light-in-turkey-140671

<関連記事>
https://env-eco.net/1791.html

ニューヨークにごみゼロ食料品店がオープン

ニューヨーク・ブルックリンに、ごみを出さずに済むよう容器包装をなくした食料品店がオープンした。
客は自分でマイバッグと食材の容器を持参するか、または店で購入するかを選択できるという。
もし、このような店が日本にもあったら、必ず流行るだろう。
買い物の度、プラスチック製の包装材が大量に出るのにウンザリしている。

<出所>
Waste 360(2019.1.22)Zero Waste Grocery Store Opens in Brooklyn, N.Y.
https://www.waste360.com/business-operations/zero-waste-grocery-store-opens-brooklyn-ny

積水ハウス、「脱ペットボトル」へ

ようやく日本企業も、社内でのペットボトルの使用を規制するようになった。
積水ハウスが社内会議でのペットボトル使用を全面禁止したとのこと。
社内に設置されている自動販売機のペットボトルも、順次なくしていく方針だそうだ。
本社はもちろん、関連29社と子会社7社にも禁止の通達を出した。
環境省の始めた「プラスチック・スマート」キャンペーンに呼応したものだそうだが、このキャンペーンへの参加企業の中で、最も本気で「脱プラ」を考えていそうだ。
ぜひ、他の企業も「脱ペットボトル」のあとに続いて欲しい。

<出所>
alterna「積水ハウス、社内会議でのペットボトル使用を禁止」
http://www.alterna.co.jp/25756

「積水ハウスがペットボトルを禁止。日本企業”脱プラ”のリーダー企業に」

積水ハウスがペットボトルを禁止。日本企業”脱プラ”のリーダー企業に

違うよ スターバックスさん!(ガイアの夜明け)

昨夜放送された「ガイアの夜明け」を見た。

プラスチックごみがたまる一方の廃棄物事業所の状況がよくわかり、興味深かった。

しかし、どうも番組の結論がわかりにくい。番組全体の結論としては、「ライフスタイルを見直し、使い捨てのものなどは使わないように」という消費者へのメッセージのはず。

にも関わらず、番組の結論がまるで「国内循環のリサイクル宣言」になっていた。おそらくスターバックスの店内からでたカップやストロー等のリサイクル実験光景と、それについての職員さんの「決意表明」(まるで、国内で材料リサイクルすることがゴールであるかのような)が、影響しているのではないか。

国内循環自体は廃棄物事業者の結論としてとても正しい。しかし、スターバックスまでがそれでは困る(もちろん店内から出たごみのリサイクルは進めるべきで、海外のスターバックスでは、既にリサイクルしているところもあるはず)。

スターバックスに期待していることは、リサイクルではなく、使い捨てのカップやストローを使わずにすむための、より一層の企業努力だ。

フタの形状を工夫し、プラスチック製ストローの廃止をめざしたことは高く評価している。

だからこそ、冷たい飲物の容器にも使い捨てカップを使わないような工夫や、ストローを使わずに済むような新メニューの開発などの「脱使い捨て」を、業界の牽引役として、もう一歩前に進めて欲しい。

(後日補筆)
店内利用客に対し、ホットコーヒーを紙コップに入れて提供するスタバ店舗がまだあるようだ。
しかも、紙コップにプラスチック製のフタまでつけて・・。
なぜ、熱いコーヒーを飲むのに、フタの穴からチューチュー吸って飲む必要があるのか?まったくわからない。
テイクアウト用として要求された場合はフタを付けることもやむを得ないかもしれないが、店内利用客に対し、確認もせず紙コップにフタまで付けてコーヒーを提供するのはやめてほしい。
リサイクルよりも前に、まずはリユースカップの徹底と、余計なプラスチックを使わないことをお願いしたい。

ポルトガル ペットボトル回収に本腰、2022年からデポジット制度開始か

ポルトガル政府が新しい法案を発表し、再利用不可能なペットボトルの回収を促すプログラムを開始した。

このパイロットプログラムは2019年12月21日まで続くとのこと。

再利用不可能なペットボトルを返却する消費者に、何らかのプレミアム(報償?)が与えられる。

大規模小売事業者は、プラスチックボトルを環境省が決めたプレミアムと交換するスペースを無償提供し、機器を設置することが義務付けられる。どういうプレミアムになるかはまだ未定とのこと。

2022年1月1日から、ポルトガル政府はプラスチックやガラス、スチール、アルミなど再利用不可能な材料でできた飲料容器に対し、デポジット制度を実施する。

<筆者補筆>

詳しい記述がないためよくわからないが、ポルトガルでは今年試験的に、環境省が用意したプレミアムにより、ペットボトルを回収するようだ。2022年からは、缶・びん・ペットボトルをデポジット制度で回収するということか。

<ポルトガルについての出所>

ESM(2019.1.2)Portugal Encourages Return Of Non-Reusable Plastic Bottles;

https://www.esmmagazine.com/portugal-encourages-return-non-reusable-plastic-bottles/69174

ECO(2019.1.1)Returning plastic bottles will be rewarded by the Portuguese Ministry of the Environment;

Returning plastic bottles will be rewarded by the Portuguese Ministry of the Environment

 

プチ「脱プラ」宣言⑥容器をなくしました

今の日本で、個人がいくら頑張っても、脱プラはなかなか難しい。スーパーでキノコ1つ、納豆1つ買っただけでも、プラスチックの容器包装が出てしまう。

トレイはなんとか避けることができたとしても、完全な脱プラを一般のスーパー利用者が実現するのはほぼ不可能だ。

そんな中、果敢に「ネイキッド」(無包装)をすすめている企業がある。残念ながら食品ではなく、シャンプーや入浴剤などのお洒落感覚溢れるバス用品などの店なので、私には少々敷居が高かったが、頑張って店内をのぞいてみた。

液体のものもあるため、プラスチック製ボトル入りの商品もまだあるが、想像していた以上に固形化が進められ、さまざまな無包装の商品が並んでいた(香りが控えめなせいか匂いも気にならなかった)。

固形化により水分を減らしたおかげで、保存料が減らせるなどのメリットもあったようだ。

石けんなどはすべて無包装になったようで、本体がむき出しで並べられている。それがとてもお洒落で、買うと紙でクルクルと包んでくれる。

陳列棚での「包装」は要らなかったことに、あらためて気付かされた。このような企業が増えると、プラスチックごみが大幅に減りそうだ。

そういえば、私も昔、固形石けんで髪を洗っていたことを思い出した(今は泡の出るポンプに液体の石けんシャンプーを入れ、リンスには酢やクエン酸を使用)。また固形石けんに戻してみようか?と考えている。

*今回は、私の脱プラ宣言ではなく、代わりに企業(ラッシュ)の脱プラのご紹介です。

<写真>

↓容器入りの製品の上に乗っているのが、容器をなくした同じ製品。容器がないのに、容器と同じ形に作られ、遊び心も満載

 

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プチ「脱プラ」宣言⑤スーパーで薄い小袋をもらわない