雲のマイクロプラ、破片状のPETとポリカが多かった

早稲田大学理工学術院の大河内 博教授、同理工学術院博士後期課程4年の王 一澤さん、東洋大学理工学部応用化学科の反町 篤行教授、およびPerkinElmer Japan社をはじめとする研究グループは、雲水中に含まれる大気中マイクロプラスチックの存在とその特徴を明らかにした。

自由対流圏に位置する富士山頂(標高 3,776 m)と大気境界層に位置する富士山南東麓(標高1,300 m)、および丹沢大山山頂(標高1,252 m)で2021年から2022年にかけて雲水44試料を採取したとのこと。

3地点の雲水から合計70個、9種類のマイクロプラスチックを検出。ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド6(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン、ポリプロピレンなど。

全体に破片状のものが多い。平均濃度は3地点で6.7から13.9(個/L)で、実粒径は7.1から94.6 マイクロメートル。雲の中は案外マイクロプラスチックが多いようだ。

詳しくは↓

乳児用粉ミルクに含まれるマイクロプラ比較:箱入りより缶入りの方が少ない

以前、プラスチック製の哺乳瓶から大量のマイクロプラスチックが放出していることがわかり、話題になった。

プラ製哺乳瓶にお湯を注ぐのがいけなかったらしい。

今度の研究は、粉ミルクそのもののマイクロプラスチック量も調べている。

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0269749123002270

さらに、箱入りの粉ミルクと缶入りの粉ミルクを比べたところ、箱入り粉ミルクは8±2〜17±1/100gとのこと。一方、缶入り粉ミルクは4±3/100gとのこと。つまり、缶入りは100グラム中、1個から7個程度ということ。この程度ならば、今の時代(母乳や牛乳からもマイクロプラスチックが検出されている時代)では許容範囲かもしれない。

箱入りの方が多かった理由は包装材にあったようだ。プラスチックとアルミのラミネートで、そこからマイクロプラスチックが放出したと考えられるそうだ。

哺乳瓶からの放出とは違い、ガラスに変えればよいという話ではないから、粉ミルクを使用される方は、少なくともマイクロプラスチックの見地からは、箱入りより缶入りを求めた方がよさそうだ。

それにしても、赤ちゃんにまでマイクロプラスチックを食べさせないといけないとは・・。大人の責任は重い。

心臓からマイクロプラスチックが検出される

「心臓からマイクロプラスチックが検出された」というニュースが流れている。

ついに人間の心臓からも・・。これだけあちこちから検出されているのだから、想定の範囲内だが、やはり感慨深いものがある。

心臓に溜まることで、どういう影響があるのかはまだわからないようだが、よい影響などあるはずはない。

中国の病院で手術を受けた15人の患者から、心臓組織をもらって調べたものだ。ついでに患者の手術前と手術後の7組の血液も調べた。

調べた心臓組織は、心膜サンプルを6個、心外脂肪組織も6個、心膜脂肪組織11個、心筋3個、左心房付属物5個。血液は7人の静脈からもらったようだ。

心臓から検出されたマイクロプラスチックの最大サイズは469μm(0.469ミリメートル)と結構大きく、5種類の組織から9種類のマイクロプラスチックが見つかった。

見つかったマイクロプラスチックは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリウレタン(PU)、ナイロン(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)。最多はPETだ。

いずれも、容器包装や衣類、日常品などあらゆるところでフツーに使われているものばかり。

個数は、数個の人もいるが、心膜(Pericardium)から7万個以上が見つかった人もいる。また、何も見つからなかった人もいる。もちろん、すべての人からすべての部位をとって調べたわけではないから、何も見つからなかった人はたまたま蓄積しにくい部位だっただけで、他の部位にはマイクロプラスチックが入っていた可能性は十分ある。

それに比べ、血液はサイズも小さく、数も少なめだ。手術前にも手術後にもマイクロプラスチックは血液に入っていたが、全体に手術後の方が数も種類も増えていた。手術後に圧倒的に増えた人が一人いるが、これは手術室の空気や医療機材がプラスチックで汚染されていたせいだろうか?

他の人はせいぜい数個か10個台だが、手術後に84個ものナイロンが血液から見つかった人がいる。この方の手術前の血液からはナイロンは検出されていなかった。

一過性のものだったらよいが、この方の予後が気になる。追跡調査をしてもらえないだろうか?

手術室からはプラスチックを極力排除する必要があるが、最近の手術グッズはほぼプラスチックでできているのかもしれない。

プラスチックは延命にも役立っているだろうが、私たちはジワジワとプラスチックに殺されているような気もする研究結果だ。

論文↓

https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.est.2c07179

「プラスチックは石けんになる」サイエンスに発表

ポリエチレンやポリプロピレンのようなオレフィン系のプラスチックは、石けんに「アップサイクル」できるらしい。

バージニア大学の研究グループが今月、サイエンスに発表した↓

https://www.science.org/doi/10.1126/science.adh0993

ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)を分解し、約80%の脂肪酸に変換する?よくわからないが、化学構造が似ているのだとか。

https://www.ktnv.com/upcycled-plastic-can-be-turned-into-soap-researchers-find?eType=EmailBlastContent&eId=25889936-a075-47a4-8457-409061931c9c

約120gから130gのプラスチックから100gの石鹸を作ることができるそうだ。

「反応中にすべてのマイクロプラスチックはなくなる」といっているが、使用後に排水中でまたマイクロプラスチックに戻らないかないか心配だ。

もし、戻らないならば、プラスチックの画期的な処理方法かもしれない。

プラ製容器をレンチンすると大量のマイクロプラが発生 離乳食容器からも

プラスチック容器に入れたまま食品を電子レンジにかけると、容器から化学物質が溶出し、食べた妊婦に死産などの被害を与える可能性のあることは既に報告されている。

今度は、プラスチック製食品容器に水や食品を入れ電子レンジにかけると、大量のマイクロプラスチックが放出されたということだ。

研究チームは、アメリカ食品医薬品局(FDA)が承認しているポリプロピレン製の離乳食容器やポリエチレン製の食品容器に、水またはさまざまな食品をシミュレートする3%の酢酸水を入れて、1000Wの電子レンジで3分間加熱したとのこと。加熱後、容器に入った液体にどれほどのプラスチック粒子が放出されたかを分析したところ、大量のマイクロプラスチックが液体に放出されていたという。

「実験結果を分析した研究チームは、わずか1cm2のプラスチックから422万個のマイクロプラスチック(粒子の直径が1μm~5mm)と21億1000万個ものナノプラスチック(粒子の直径が1μm未満)が液体に放出されると推定しました」。

https://gigazine.net/news/20230809-microwaving-released-billions-nanoplastics/

このことはすなわち、プラスチック製容器に入れたまま食品や水を電子レンジにかけると、危険な化学物質がくっついたマイクロプラスチックが食品などにくっついて、人間の体内に入り込み、影響を与えるということを意味している。

妊婦や赤ちゃんはもちろん子どもや大人も、プラスチック容器に入れたまま食品を電子レンジにかけることは、くれぐれも避けたい。

マイクロプラの危険性:ヒトの腸に炎症

マイクロプラスチックの人体への毒性が、次々と明らかになってきている。

「人間の細胞から作り出したミニ臓器である腸オルガノイドを用いた実験により、マイクロプラスチックが腸に炎症作用をもたらすことがわかりました」とのこと↓

https://gigazine.net/news/20230806-microplastics-danger-intestine/

アメリカのタフツ大学の研究チームが、人間の腸の培養組織を使って実験した結果を発表した。

腸管モデルを複数のサイズのプラスチック粒子にさらしたところ、最も小さいプラスチック粒子は腸の内壁を覆う上皮細胞に取り込まれ、さらに「大きめの粒子が腸の免疫応答に関連するマイクロフォールド細胞(M細胞)に取り込まれて腸組織内に侵入」したとのこと。

元論文はこれ↓

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S154996342300031X?via%3Dihub

そういえば、2020年に東京大学の酒井教授が日本財団と一緒にこれとよく似た研究を発表していた。確か、小腸培養組織を使った実験で、最も小さいマイクロプラスチックは上皮細胞を通って血管に入り、大きめのプラスチックはリンパ管に入っていったとのことだった。

当時はまだ、炎症を起こすことまでは解明されなかったが、タフツ大学ではさらに研究を進め、炎症を起こすことを明らかにしたのだろう。

日本でこの手の研究が今どこまで進んでいるのだろうかとググったところ、自治医科大学でもこのような研究を行っていた。

https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20K21725/

結果を早く知りたいものだ。

米コハセットで使い捨てペットボトル水の販売禁止を提案

米コハセットで、1ガロン未満のペットボトルなど使い捨てのプラスチック製ボトル水の販売禁止が提案されている。

承認された場合、2025年1月1日に発効される。炭酸水などは除外され、普通の水だけが対象だ。

インスタグラムによる調査では、70%が禁止を支持しているとのこと。今後、給水ステーションを増やす方針。

違反すると、最初は文書による警告だが2回目以降は罰金で、2回目は100ドル、3回目は200ドル・・と罰金額が増額される仕組みが考えられているようだ。

<出所>

インド・ゴア州でもプラ容器にデポジット制度導入か

これまでインドでは、マハラストラ州のみで200ミリリットル以上のペットボトルと牛乳容器(ミルクパウチ)にデポジット制度が採用されていた(200ミリリットル未満のペットボトルは禁止)。

ゴア州でも現在、デポジット制度を検討しているようだ。

ニレシュ・カブラル環境大臣は、月曜のゴア立法議会で、政府はデポジット制度を導入するため、生分解性の法案を修正すると表明した。

https://www.thegoan.net/goa-news/buying-goods-in-plastic-be-ready-to-pay-a-deposit/102156.html?eType=EmailBlastContent&eId=ff83d943-5896-43d5-aff1-470f252c4fb3

ペットボトルの水を購入する際は、Rs10またはRs5のデポジットを商品代金に上乗せして支払うが、ペットボトルを返却すると返金されるという。

マハラシュトラ州のペットボトルはせいぜいRs1からRs2だから、マハラシュトラ州よりもデポジット額を少し高めに設定するようだ。

東急ホテルでペットボトル廃止 カトラリーも紙製に

セルリアンタワー東急ホテル(東京都渋谷区)が、客室などの飲料水や一部の備品を変更した。

東急ホテルズ&リゾーツ株式会社が掲げるSDGs方針の一環とのことだが、ようやく昨年施行されたプラスチック資源循環法に対応したのだろう。

客室などに置かれていたペットボトルを紙製ボトルに変更し、テイクアウト用に使用しているスプーン・フォーク・カップの蓋などをプラスチック製から紙製に変更した。

また、ランドリーバッグをプラ製から布製にし、繰り返し使えるようにした。ハンガーも木製にしたそうだ。

他に、お風呂のシャンプーなどのミニボトルも順次廃止し、ポンプ式に切り替えるとのこと。

とてもよい変更だと思うが、もっと庶民的なホテルでは、廊下にウォーターサーバーなどが置かれていて、持参した水筒にも給水できるようになっていたりする。紙ボトルよりずっと便利だと思うのだが、どうなのだろう。

<出所>

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002787.000005113.html

歯ブラシやカミソリについては触れていないが、当然何らかの対応を既にしているのだろうと思いググったところ、こんな感じだった↓

https://www.tokyuhotels.co.jp/cerulean-h/guide/greencoin/index.html

コンタクトレンズからも、ペットボトルからもPFAS

最新の調査結果によると、検査した18種のコンタクトレンズすべてから、高レベルのPFAS(有機フッ素化合物)が検出されたそうだ。

https://www.harpersbazaar.com/jp/beauty/health-food/a43953627/contact-lenses-contain-dangerous-amounts-of-forever-chemicals-pfas-230522-lift1/

100ppm以上とのことで、この数値はEPAが安全と認める飲料水に含まれる最大量の約5万倍に相当するという。

どの程度、PFAS入りレンズ着用を心配すべきかわからないそうだが、妊婦や子どもは使わないほうがよいことは確かだろう。

また、ペットボトル入り飲料水からもPFASが検出されたとのこと。

47のブランドをテストしたそうだ。35が水、12が炭酸水。

35の水のうち2つが1兆分の1のPFAS閾値を超え、12の炭酸水のうち7つが1兆分の1のPFAS閾値を超えたとそうだ。

ということは、原水がPFASで汚染されていたというよりも、ペットボトルからPFASが漏れ出した可能性の方が高いということだろうか?この結果を見る限り、炭酸水の方がペットボトルからPFASが溶出しやすいように見えるが、どうなのだろう?