「拡大生産者責任とデポジット制度の実現を目指す全国ネットワーク」が解散

「拡大生産者責任とデポジット制度の実現を目指す全国ネットワーク」(通称:デポネット)から10年ぶり?に封書が届いた。会を解散したという。運営委員会で決まったそうだ。

中心になって会を立ち上げた人が亡くなってからはほとんどそれらしい活動はなかったので、解散はむしろ遅すぎたくらいだろう。

解散できなかった理由は、会費の残金があったからとのこと。

「2014年以降は会費をいただいておりませんが、これまでにいただいた貴重な会費で2022年度までの東京都消費者月間事業実行委員会への参加が出来ました」とのこと。

「東京都消費者月間事業実行委員会」なるものを知らないが、環境展か何かに出展していたのだろうか?よくわからない。

それでもまだ少し残金があるそうなので、活動を引き継ぐ人に寄付してくれるそうだ。

立ち上がった時は、新聞でも大きく報道され、地方在住者も会員になることができ、当初はそれなりに活発に活動していたが、ここ10年以上の間の活動はよくわからない。

発足当時の団体名には「拡大生産者責任」は入っておらず、「デポジット制度」だけだった。それがある日突然この名前に変わったという知らせが届いた。変わった理由は不明だが、デポジット制度だけでも難しいのに、さらに拡大生産者責任まで入れてどうするつもりだろう?と思った記憶がある。

そもそも、デポジット制度は拡大生産者責任の1形式なのだから(日本のローカルデポジットを除く)、わざわざ拡大生産者責任などという言葉を入れてハードルを上げる必要はなかったはず。

現在、世界では多くの国がデポジット制度を導入しているか、導入準備中だ。日本が導入できないのは、飲料容器の処理に責任を持ちたくない事業者が反対するからで、事業者に忖度している環境省や経産省も動かないためだ。

デポジット制度が導入されると、販売時の飲料価格にデポジット(保証金)が上乗せされるため、販売量が落ちるから事業者に嫌われるということも指摘されている。

導入しない後付けの理由として、日本は既に90%以上回収しているからデポジット制度にする必要はない、ということも言われている。しかし、本当にこれだけ回収されているのだろうか?ごみとなったものの回収量など、正確にはだれもわからない。アンケートや貿易統計などを見て、推定に推定を重ね、こうだったらいいなぁ、これならおかしくないかも、という数値を出しているものと思われるが、これがデポジット制度になったら正しくわかるはずだ。

正しい数値を知りたくないし、知らせたくないということも、事業者のデポジット制度反対理由の1つではないかと想像している。

折しも、中国の「プラスチックフリーチャイナ」が発表した論説に「世界的な飲料包装回収「デポジット制」がブームになっていますが、あなたは参加したいですか?」(2023.2.6)と書かれていたと聞いた。

世界では、「ブーム」といわれるほどびん・缶・ペットボトルを対象としたデポジット制を導入する国が増えているのに、日本ではこの有様。

この団体の残金がいくらあるのかは知らないが、デポジット制度の実現に向けて活動する若い人たちが残金を引き継ぎ、新たな会を立ち上げてくれればよいと強く願っている。

マサチューセッツ州、デポジット額を上げる法案提出

マサチューセッツ州で先週、デポジット額を5セントから10セントに上げる法案が提出された。

アメリカやカナダでは、まだ5セントで飲料容器のデポジット制度を運営している州がある。マサチューセッツ州もその1つ。

40年程前に開始された時は、5セントでも返却インセンティブとして機能したが、近年5セントでは機能しにくくなっている。

そのため、10セントに上げる州が増えているが、業界の反対が強い州はなかなか上げられない。

マサチューセッツ州の環境擁護者は、少なくとも20年前から制度の近代化を求めているという。

確かに5セントでは難しいと思うが、5セントでもデポジット制度が実施できているだけ日本よりマシだ。

日本では、スーパーやコンビニの前に置かれているペットボトル自動回収機をデポジット制度だと誤解している人が多い。あれは単なる店側の顧客サービスで、デポジット制度ではない。そのため、せいぜいが1本当たり0.25円だ。

<参考>

https://www.wamc.org/news/2023-01-26/bill-filed-in-massachusetts-legislature-to-increase-bottle-deposits-to-10-cents-expand-to-more-beverage-containers?eType=EmailBlastContent&eId=97661751-d58d-44a5-8322-dd7d1c8acbd1

英政府、デポジット制度の概要を発表 2025年から開始

イギリス(イングランド、ウェールズ、北アイルランド)で2025年10月1日から飲料容器のデポジット制度が開始される予定だ。

英国政府が、デポジット制度についての意見公募の政府回答を発表した。

回答者の83%が新しいシステムに賛成しているという。

デポジットの対象は、プラスチックと缶(スチール、アルミ)から作られた使い捨て飲料容器だ。2024年夏までにシステムを運用する機関を決める。

デポジット制度により、導入3年後には廃棄される飲料容器ごみが85%減になるのを目指す。

ガラスびんはイングランドと北アイルランドではデポジット制度 によって回収されず、ガラスのリサイクルに関連して生産者に目標を課す拡大生産者責任の対象となるとのこと。

しかし、ウェールズではガラスびんも対象になるようだ。

https://www.daera-ni.gov.uk/news/deposit-return-scheme-drinks-containers-progresses

以前の発表によると、スコットランドは今年8月16日から開始される。対象は、ペットボトルとアルミ缶、スチール缶、ガラスびんで、デポジット額は20ペンスだ。

<英国政府ウェブサイト>

https://www.gov.uk/government/news/deposit-return-scheme-for-drinks-containers-moves-a-step-closer

https://www.gov.uk/government/consultations/introduction-of-a-deposit-return-scheme-in-england-wales-and-northern-ireland

<関連記事>

スロバキアのデポジット制度が好調。開始からまもなく1年

スロバキアはデポジット制度を今年1月1日から開始した。1月から11月までの合いだに回収された容器は7億8700万以上になるという。販売された対象飲料(ペットボトル・缶)は10億本とのこと。

回収から1年未満で約80%の回収率ということだから、順調といえる。

目標は2025年までに90%の返却率を達成すること。現在3004カ所の回収場所があり、うち1184カ所が強制、1820カ所が任意の回収場所だ。

店舗面積が300平方メートル以上の店舗にのみ回収場所の設置が義務づけられているため、大規模店舗の回収は強制だ。つまり過半が300平方メートル未満の店舗でも、自ら回収場所になっているようだ。

今後回収率を上昇させるためには、この任意の小規模店舗が回収場所になるかどうかにかかっているということだ。

スロバキアのデポジット制度の対象容器は、使い捨てのプラスチック容器と金属容器で、サイズは0.1から3リットル。牛乳やスピリッツの容器は対象から外されている。

日本はデポジット制度でもないのに、ペットボトルでも既に90%近くのリサイクル率を達成している、などと思うのは早計だ。日本の回収率は、海外へリサイクル目的で輸出される分などを加味した単なる「参考値」で、デポジット制度による正確な回収率とは全く精度が違う。

「これほど落ちていて、これほど燃やされているのに、なぜ回収率が高いの?」という疑問を多くの人は感じているだろう。

実際、デポジット制度実施国には、すぐに拾えるところにはペットボトルや缶は落ちていない。それでも回収率は90%を切っている国も多い。「回収率90%」は、デポジット制度が順調に運営されている場合にのみ達成できる数字だ。

順調な運営には、回収拠点の密度とデポジット金額が最も重要な要素となる。

<出所>

https://www.tasr.sk/tasr-clanok/TASR:2022122000000191?eType=EmailBlastContent&eId=a9c8835f-422b-456f-b04e-560b1705dfc8

<参考記事>

金属カップに商機:繰り返し使えるテイクアウト用容器が当たり前の社会に

脱プラスチックを背景に、スチール製やアルミ製カップが脚光を浴びている。

ビールだけでなく、アイスコーヒーだって金属製カップの方が美味しく感じられる。

日経新聞(2022.12.16)によると

「JFEは鉄素材の魅力やリサイクル性の高さなどをPRすることなどを狙いとして、2021年10月に開催された屋外イベントを皮切りに複数のイベントでスチールカップを提供」「現在は屋外イベントでの提供を通じて、デザインなどの改良を進める「実証実験」のように位置付けている」とのこと。

また、東洋製缶GHDはスポーツ観戦会場や商業施設向けにアルミ製カップの販売を始めたそうだ。

スチール業界はその昔、スチール缶が普及し始めた頃、リサイクルに往生し、デポジット制度に猛反対した。一方、昔からリサイクルしやすかったアルミ缶業界のほうは、リサイクル率が上がる方が得なので、デポジット制度への反発は少なかった。

ペットボトル全盛の今になって、ようやくスチール缶業界もアルミ缶業界も、デポジット制度を潰さなければよかった、と内心後悔しているのではないかと思うが、飲料業界は全体としていまだにデポジット制度に反対だろう。

デポジット制度は拡大生産者責任の一環だから、日本では全く受け入れられないが、使い捨てプラカップの代わりに使う金属製カップならば、デポジット制度は受け入れられやすいのではないか。

利用者に若者が多いカフェならば、LINEの「友だち登録」利用でなんとかなっても、野外イベントでの金属カップ使用は、デポジット制度抜きでは成り立たないのではないかと思う。

<参考>

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC12B9E0S2A910C2000000/

スコットランド、来年8月からデポジット制度開始

いよいよ決定か。ずいぶん延びていたが、スコットランドの飲料容器デポジット制度が、いよいよ来年8月からスタートするようだ。

金額は、デポジットもリファンドも20pで、対象はペットボトル、缶、ガラス製の飲料容器。管理者はCircularity Scotland とのこと。

Circularity Scotland がグラスゴーで主催した会議に、スコットランド全土の飲料メーカーや小売業などの600人以上の代表者が、デポジット制度に備えるため結集したそうだ。

<出所>

コカコーラのすべきことは、ごみ拾いやCOP27の後援ではない

コカコーラは5年連続で世界最大のプラごみ汚染メーカーだ。

https://www.swissinfo.ch/jpn/ネスレ-プラスチック汚染企業のワースト3位に/48062096

「5年連続で行われた「プラスチック汚染企業」の2022年調査には、世界6大陸の44カ国で1万4760人のボランティアが協力し、約43万個のプラスチックごみが記録された。メーカーを確認できたごみを集計した結果、1位は5年連続でコカ・コーラだった。2位にペプシコ、3位にネスレが続く」

そのコカコーラは、クリーンアップの団体とごみ拾いをしたり、COP27の後援をしたりしているが、コカコーラが今すべきことはそんなことではないはずだ。

グリーンウォッシュと批判されても当然だろう。

https://www.campaignjapan.com/article/cop27を後援するコカ・コーラに-グリーンウォッシング-と批判の嵐/481774

コカコーラは世界最大のプラスチック汚染企業としての自覚を持ち、まず商品をプラスチック容器に入れないこと、入れた場合は必ずデポジット制度で責任持って回収すること、この2つを徹底してほしい。

しかし、多くの国で、コカコーラはこれまでデポジット制度の機運に水を差し、積極的に潰す方向に動いていた。

ごみ拾いなどをやっているヒマをあったら、自社製品の容器が散乱ごみにならないように早く対策してほしい。

シンガポール、デポジット制度導入か

シンガポールの環境庁が、飲料容器にデポジット制度を導入することについて、パブリックコメントを募集している。

デポジットの金額は 10 から 20 シンガポール セント (7 から 14 セント) で、対象はアルミ缶とペットボトルだそうだ。紙パックやガラス瓶は、あとで対象にするかを検討するとのこと。

回収方法は、基本的に自動回収機を使うが、大規模なスーパーでは店頭での返金も求められている。

<参考>

recycling today(2022.9.22)

https://www.recyclingtoday.com/article/singapore-beverage-deposit-return-recycling-aluminum-plastic/

オーストリア、2025年からデポジット制度導入(追記)

オーストリアでは2025年1月1日からデポジット制度を導入するそうだ。

オーストリアはこれまで、リユースできるビンはデポジット制度で回収していたが、使い捨てのワンウェイビンはデポジット制度ではなかった。

デポジット制度の対象は、0.1Lから3Lの容器に入った下記の飲料だ。

ビールとビールのミックス
アルコール飲料ミックス
サイダーおよびその他の発酵飲料
ジュース
ソフトドリンク

ワインとスピリッツ

金額は25セントから30セントと発表されていたが、主に0.25ユーロになるようだ。

<追記2023.1.19>

オーストリア政府は、デポジット制度の構築と運営をオーストリア全体で「使い捨て容器デポジット協会」に委託したとのこと。

JETROによると、同協会は「飲料品製造者協会、連邦産業院(WKO)食料品販売委員会、飲料品メーカーのコカ・コーラ、レッドブル、エッガー、オッタークリンガー、ワルドクエレー・コベルスドルフ、小売り大手のレーベ(ビラ-など)、スパー、リドル、ホーファーなどが会員になっている」。

https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/09/9a637ed48f3cb463.html

<関連記事>

何か変!リチウムイオン電池の自治体回収広がる

リチウムイオン電池の自治体回収が全国的に広がっている(日経2022.8.29)。

自治体にとっては、これ以上火災が増えてはたまらないから、回収したくなる気持ちはよくわかる。

しかし、このようなものの回収に税金を使うことが、腹立たしくてならない。

小型充電式電池は、もともと生産者責任の下、電気店などで回収されることになっているはずだ。

回収店舗が少ないため、一般にはあまり認識されていないようで、ついそのまま自治体が回収するごみに出す人が多い。そのため、発火事故が後を絶たない。

町田市でも、まだ完全に復旧していない。先月、清掃工場を見学した際も、火災現場がまだ生々しい状態で残っていた。

リチウムイオン電池を使用する製品は、医療機器などを除き、生活必需品よりも嗜好品や贅沢品が多い。

スマホを頻回に取り替えたり、ゲーム機を買い換えたりする人の尻拭いを税金でさせられているような気がしてならない。

小型家電リサイクル法がどうしようもない法律なので、この手のことが起きるのだろうが、リチウムイオン電池などを使用している製品は、生産者責任によるデポジット制度で、税金を使わずしっかり回収してほしい。

日経新聞(2022.8.29)↓「リチウムイオン電池の廃棄 事故防止へ分別回収が拡大」

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO63833440Z20C22A8EAC000/