後進国になったニッポン

バブル時代、日本は先進国だ、と胸を張っていた。私も誇らしく思っていた。

だんだん雲行きが怪しくなってきた、と思ったけれど、でもまだトップランナーグループにはいるはずだ、と信じたかった。

しかし、近年の環境政策は後れる一方で、少なくとも環境行政は途上国なみだ、と思っていたところ、先日、とんでもなく時代遅れの「プラスチック促進法案」が衆院を通過した。

生産者責任などなんのその、製品プラスチックの再商品化費用さえも、事業者に請求できないらしい。それどころか、事業者のだす廃プラも、法律上自治体がリサイクルできるようにするようだ。こんなことがまかり通れば、資源ごみだけでなく、他の産廃まで自治体が処理するハメになりかねない。

おそらくこのまま参院も通過し、成立するのだろう。日本の政策は、産業界の意向で決まるのか?

コロナ対策も後れている。コロナ対策では、日本はもう先進国のフリさえできないでいる。

気候変動対策も同様だ。プラスチック対策と気候変動対策は重なる部分が多いにもかかわらず、かみ合っているようには見えない。

後進国でもいいけれど、せめて環境政策くらいは先頭集団について行ってほしいものだと思う。次世代のためにも。

年末にはベトナムへミックス古紙輸出不可、他の国も追随?

中国へ古紙を全面的に輸出できなくなり、受け皿となっていたのはベトナムだ。そのベトナムにも、今年末にはミックス古紙を輸出できなくなる。

頼みの他の東南アジアの国々も中国の輸入禁止に連鎖反応を起こしているそうだ。

日経新聞(21.5.29)によると

ベトナムも環境規制の波には逆らえない。グエン・スアン・フック首相(当時)は20年9月、雑誌や雑紙などが混ざったミックス古紙については輸入を21年末に禁止することを決めた。ベトナムでも再生資源を名目にした「ごみ」の輸入が問題化。「東南アジアの政府は中国の輸入禁止に連鎖反応を起こしている」(古紙問屋)といい、マレーシアなどでも検討が進む」とのこと。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO72398210Y1A520C2QM8000/

日本には、雑がみ回収によって焼却ごみを減らそうとしている自治体が多い。日本国内の再生紙需要は頭打ちのようで、古紙利用率は横ばいだ。

この先、雑がみ回収はどうなるのだろうかと心配だが、古紙も廃プラも国内処理が原則なのだろう。

イオンがLOOP開始

5月25日からイオンがLOOPを開始する。

近隣のイオンはまだ対象外のようだが、8月末までには関東の多くのイオンが対象になるようだ。

気になるのは商品の種類。LOOPは使ってみたいがほしい商品があるだろうか?

もっと多くの商品がリユース容器入りか、量り売りになってくれると助かるのだが、世論を操作しているのは普段ごみの始末をほとんどしない人達ではないだろうか?

一般の消費者の声など、店にも政治にも届いた試しがないような気がしている。

新プラスチック法案 衆院可決

3月に閣議決定された「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案」が昨日(5/21)衆議院で可決された。

https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/204/meisai/m204080204061.htm

このまま進むと6月上旬には参院を通過、成立する。来年には施行される。

法案を読んでいると、日本がいかにプラスチックを減らしたくないかがよくわかる。「合理化」を求めているのは、あくまでも無料で大量に配布されるものだけなので、具体例としてあげられているのは「ストロー、スプーン、フォーク」のみ。それも禁止ではなく、ポイント還元などによって少しでも減ればよいらしい。

しかし、ポイント還元では減らないことは、レジ袋のときでわかっているはずだ。にも関わらず、以前の説明で、小泉環境相が「有料化など」と発言した途端に反対意見で盛り上がったものだから、その後からは「ポイント還元」がイチオシになったらしく、環境委員会での説明でも「ポイント還元など」といっていた。

また、代替材に替えてもよい、という。しかし、代替材に転換してもごみは減らない。この手のものは代替材ではなく、やはり「使わない」ことを前提に議論すべきだ。

しかも、拡大生産者責任(EPR)のことは、まったくといってよいほど考慮されていない。

立憲から対案も出ていて、立憲案にはさすがに「拡大生産者責任の徹底」と概要に書かれていたが、そのすぐあとに「市町村に対する支援」という文字も。

支援には「お手伝い」というニュアンスがある。共稼ぎの夫婦で、夫が家事を「支援する」といえば、多くの妻は激怒するだろう。まして、EPRを徹底するならば、あくまでも責任は100%事業者にあるはずだ。

100%の責任を負うべきものが、責任はないけれどその方がいろいろ都合がよいからという理由で、物理的な回収を肩代わりさせられている立場の市町村に対して、「手伝う」というのはおかしな話だ。

EPRのもと、物理的には市町村が収集を行うならば、事業者はその費用を支払う責任がある。それは、「支援」ではなく、「補償」や「補填」というべきだ。

しかもこの新法、収集だけでなく、再商品化の責任まで市町村に押しつけようとしているようだ。容器包装リサイクル法では、市町村は分別収集、再商品化は事業者となっていたから、プラスチック製容器包装は従来通りだが、製品プラスチックに関しては、分別収集はもとより再商品化までもが市町村の仕事となる。

市町村の責任ということは、税金が使われるということだ。つまり使わない人が使った人の処理費用までも負担するということ。つまり、何年も大事に使ってほとんどごみを出さずに生活している人に、頻繁にプラスチック製品を購入し、少し汚れるとすぐに捨てて買い換えている人の分のごみ処理費用まで負担せよ、といわれているのだ。

回収からリサイクルまでの費用を製品に上乗せて、それを購入者が支払うのが理想で、多くの国はその方向で進んでいる。しかしなぜか、日本だけが逆行している。

事業者に対しては、「自主回収できる会社はしてね、自主回収しやすい環境は整えるから」といっているように読み取れる。

その程度の責任しか負わなくてよいならば、一体どこの会社が真剣に自主回収するというのだろう?せいぜいが、ポーズとして一部の製品をするだけだ。

しかし、自主回収など真剣にされては消費者も困る。もし、歯ブラシは使い終わったらヨーカドーへ持って行ってね、チューブはイオンよ、などといわれたら、消費者はたまったものではない。市町村のごみにまとめて出すのが関の山だ。

プラスチックのリサイクルを推進するための法律だといわれているが、これで本当にリサイクル量は増えるのだろうか?