EU、さらなるプラスチック削減目指し包装・包装廃棄物規則案に合意 食品と接触する包装材のPFASも禁止

EU理事会と欧州議会は今月4日、包装・包装廃棄物規則案に関して暫定的な政治合意に達した。法案は、「レストランやカフェなどで消費する飲料・食品やホテルの小分けシャンプーなどに使用される使い捨てプラスチック包装材の禁止、輸送用包装材の最小限化要件、再利用可能な包装材の利用率に関する飲料用や輸送用など包装用途別の目標値、すべての包装材に基準値以上のリサイクル可能性を課す要件、プラチック包装材におけるリサイクル済みプラスチックの最低使用要件など多岐にわたる規制を新たに導入する」とのこと。

https://www.jetro.go.jp/biznews/2024/03/783c82db1560ea37.html

具体的には、ファストフード店で提供される使い捨ての皿、コップ、箱や、ホテルで提供される小型シャンプー、そして食品店で提供される軽いプラ袋も禁止する。

また、「再利用率の目標も設定、持ち帰り店の容器はワインとミルクを除き10%とする。運送用包装の空スペースは最大で50%までとする」などにより、「包装廃棄物を30年までに5%、40年までに15%削減することで合意。30年までに全ての包装を再利用可能にする」とのこと。

さらに、食品と接触する包装材へのPFAS使用も禁止するそうだ。

https://jp.reuters.com/world/europe/LCRL22OCH5LK3A7TW2VHTOJY2E-2024-03-05/#:~:text=%5Bブリュッセル%205日%20ロイター%5D%20%2D,は適用を免除する%E3%80%82

多くの現地メディアは、この法案に関係する多くの業界団体が激しいロビー活動を展開したことを報道している。ワインや包装用段ボールなどが、法的拘束力を持った目標値の対象から除外されたのもその成果だろう。

今後、法案は両機関により正式にする必要がある。採択されれば、施行18カ月後に適用を開始する。実際の適用開始時期は規制によって異なるそうだ(JETRO2024.3.8)。

ルーマニアのデポジット制度、順調に進行

昨年11月30日に開始されたルーマニアのデポジット制度は、順調に進んでいるらしい。

今年1月だけで200万個以上の容器が回収されたとのこと。

https://www.romania-insider.com/deposit-return-system-romania-packages-january-2024?eType=EmailBlastContent&eId=5c983eb0-10c0-47a5-a076-cb8cde976f9f

デポジット制度の対象は0.1から3リットルまでのびん、缶、プラスチックだ。

デポジット額は0.50RON(日本円で16円から17円程度)。

消費者が小売店に容器を返却すると、手動の場合は現金で、自動回収機の場合は店のバウチャーか、銀行振込で返金をうけることができる。

ルーマニアのデポジット制度に関する法律は2018年に可決された。

<関連記事>

テフロンのフライパン、PFASは大丈夫?(補筆)

テフロンなどのフッ素樹脂加工のフライパンの安全性について、いろいろ噂が飛び交っている。

「以前のフライパンにはPFOAが使われていたけれど、今はPTFEだから安全だ」というものだ。

本当だろうか?

同じPFASグループの物質なのに、危険性にそれほど違いがあるのか、と疑問に思っていたところ、こんなサイトが見つかった。

「PTFEとPFOAは構造が似ており、PTFE製造時に一緒に出来てしまいます」とのこと。もし本当に製造時に一緒に出来てしまうものならば、使用中にPFOAに変化することは十分ありそうだ。

仮にPTFEの安全性がPFOAよりも高かったとしても、フッ素樹脂加工のフライパンは大量のマイクロプラスチックが使用時に出ることは、2022年に発表されたオーストラリアの研究で判明している。

しかも、食べ物がこびりつかないという機能は新しい時だけで、数年以内にはフッ素樹脂が剥がれ、くっつきやすくなる。危険な上に消耗が激しく、経済的でない。

やはり使わないに越したことはない。

<補筆(2024.3.8)>

原田浩二先生の『これでわかるPFAS汚染』(合同出版, 2023)によると、フライパンに「フッ素樹脂コーティング」と明示されていれば、PTFEが使われており、これ自体は人体に吸収されることはほとんどない。しかし、加工助剤としてPFOAが使われていた。PFAS問題を受け、国内のメーカーでは2013年までにPFOA使用を全廃したため、代わりに今は別のPFASが加工助剤として使用されているそうだ。

また、このようにも書かれている。「ピーフォアはフッ素樹脂の製造工程で助剤として使われてきたほか、ピーフォスを製造する際の副生成物として生成されます」(p.14)

要するに、PTFEは人体にはあまり吸収されないが、製造工程で何らかのPFASが助剤として使用され、かつ、何らかのPFASが副生成物として出ている可能性があるということか。

フライパンや炊飯器、ホットプレートなどに使われているフッ素樹脂コーティング。今思えば、2013年頃に我が家で購入したホットプレートは安売りしていたからPFOAが使われていたかもしれない。

<関連記事>

PFASパブコメ募集中、緩い指標値と『毒の水』

食品安全委員会が、有機フッ素化合物(PFAS)に係る食品健康影響評価に係る審議結果(案)について、科学的な内容に関する意見・情報を募集している。締め切りは3月7日。

https://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc1_pfas_pfas_060207.html

あくまでも科学的な内容に関する情報を募集しているため、感情的な意見は書きにくい。しかし、人が1日に食品や飲料水などから摂取する許容量について、PFHxS(ピーエフヘクスエス)を放置し、PFOSとPFOAの2物質のみそれぞれ体重1キログラム当たり20ナノグラム(ナノは10億分の1)とした指標値の案は承服しにくい。

この数値は、「水道水の暫定目標値の算出で採用した指標を飲食物全体に広げた形だが、欧州食品安全機関(EFSA)が採用する摂取許容量を60倍以上上回っている」という。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/305491

日本の化学物質規制はとにかく遅い。

100頭以上の牛が農場でバタバタと死んでいく有様に危機感を募らせた農場主の訴えを聞いたのを機に、PFAS汚染に20年間も立ち向かった弁護士の実話『毒の水』(日本語訳は花伝社、2023)。この本によると、デュポンがPFASの毒性調査を開始したのは1954年、動物実験を本格化させたのが1960年代だ。

1962年にはラット、65年には犬、78年にはサルで実験。全てで有害性が認められた。

「PFOAが先天異常と関連している」と3M社が政府やデュポンに報告したのは1981年だ。妊娠したラットにPFOAを食べさせたところ、胎児の目に異常が起きたためだ。

報告を受けたデュポンは2週間後、全女性従業員をテフロン部門から撤退させ、血液検査を行った。

さらに、最近出産した7名の従業員の血液データを集め、出生記録を検討した。その結果、全員がPFOAの血中濃度が高かった。しかも7人のうち2名に出生時の障害が見られたのだ。両者とも目の障害だった(p.209)。しかも一人は鼻も半分なかった。

しかし、デュポンはこの結果を政府に報告しなかった。それどころか、同社のラット実験では目の異常が出なかったので、同社はそれを根拠に3Mの実験結果は間違いだったと指摘した。

3M社もそれに同調し、環境保護庁に「報告したラットの先天異常は無効で、さらなる調査は不要だ」と伝えた。それを環境保護庁は鵜呑みにした。

他の部署に短期間、異動していたデュポンのテフロン担当の女性従業員は、またテフロン部署に戻された。

1988年、新たなラット実験で発がん性が判明した。PFOAがラットに睾丸腫瘍を引き起こすことがわかったのだ(p.210)。デュポンは社内で、人間の発がん性もありうると分類したが、このことを政府に伝えなかった。

1993年には、PFOAが睾丸腫瘍だけでなく、肝臓と膵臓の腫瘍を生じさせることがわかった。同社の科学者は論文で、この化学物質の人間への発がんリスクは軽視できないと認めた。しかし、デュポンはその後もPFOAを環境に垂れ流し、そのことを隠蔽し続けた。

2017年、ようやく地域住民の血液数万人分を専門家が7年以上かけて精査した「科学パネル」の結果が発表された。その結果、PFOAのリスクは次の6つの疾患であることが判明した(p.339)。

・腎臓がん

・睾丸がん

・潰瘍性大腸炎

・甲状腺疾患

・高コレステロール

・妊娠高血圧症

これほど顕著な有害性の証拠が既に報告されているにも関わらず、日本の食品安全委員会の評価書(案)には、「発がん性については、動物試験でみられた事象は、げっ歯類特有のメカニズムである可能性がある又は機序の詳細は不明であることから、ヒトに当てはめられるかどう
かは判断できないと評価した。疫学研究から、PFOA と腎臓がん、精巣がん、乳がんとの関連については、研究調査結果に一貫性がなく、証拠は限定的である」(p.7)と書かれている。

しかし、動物実験ではサルも死亡していることから、発がん性は「げっ歯類特有のメカニズム」などではない。サルに当てはまるならば、ヒトにも当てはまるのではないだろうか。

この評価書は納得できない。

3/24、PFASオンライン学習会のお知らせ

PFAS学習会が開催される。詳細は以下の通り。

——–

オンライン勉強会「水の安全について学ぶ~PFASってどんなもの?~」

開催日時 : 2024年3月24日 (日) 13時30分~15時30分 
         *最大延長16時には終了いたします
実施形態 : オンラインZoomミーティング
         *2日前にURLを配信いたします
講 師 : 原田 浩二 氏 (京都大学大学院 医学研究科環境衛生学分野准教授)
参 加 料 : 無 料(事前申込が必要です)
主 催 : 桂川・相模川流域協議会
協 力 : 道保川を愛する会

参加申し込みURL:https://forms.gle/RMkamVWcdjJxkZz19

現在、全国各地で明らかになっているPFAS汚染。
神奈川県でも相模原市、座間市、秦野市など、各地域の地下水、井戸水、
河川で基準値を越える値が検出されており、魚や野菜、他の食品からも検出され
ています。海外の動向を見ると、アメリカの一部の州はPFASが全面禁止となり、
EUではPFASの全面禁止を検討しているところです。
ところが、日本ではPFAS基準値は緩いまま。本当にそれで大丈夫なのでしょうか?
私たちの健康や命に関わることです。国や地方自治体、企業任せにするのではなく、
私たち市民もPFASについて知って、考えていく、そんな学習会になればと思い、
次のとおり勉強会をオンラインにて実施します。多くの方のご参加をお待ちして
おります。

———-

武蔵野市で民間井戸のPFAS調査を来年度実施 PFHxSも

東京都武蔵野市で来年度、市内の民間井戸のPFAS調査を実施すると発表。関連経費582万円を新年度予算案に盛り込んだ。

調べるPFASは、PFOS(ピーフォス)」「PFOA(ピーフォア)」「PFHxS(ピーエフヘクスエス)の3項目だ。

https://www.asahi.com/articles/ASS2F75MGS2FUTIL01F.html

ペルフルオロヘキサンスルホン酸(PFHxS:ピーエフヘクスエス)は昨年12月1日、化審法の第一種特定化学物質に指定された物質だ。施行日は今年2月1日。これにより、製造は原則禁止され、使用にも制限がかかった。今年6月1日からは、一部の製品はPFHxSが使用される場合、輸入できなくなる。

https://www.dowa-ecoj.jp/houki/2023/20231202.html

とはいえ、私たちは死ぬまでPFHxSとは縁が切れない。しかもPFHxSに代わる物質として、これから似たようなPFASが使われるに違いない。そして数年後には、それも危険であるとして禁止されるだろう。

早く、EUのように日本でもPFAS全体を禁止する方向で検討を進めるべきだ。

もちろん、国の規制を待つまでもなく、相模原市もぜひ井戸水と地下水、河川水のPFHxSを調べて欲しい。

調べたEU政治家全員の血液からPFASが見つかる 

EUでは、欧州委員会の副委員長3人、および環境委員、欧州環境庁長官、そして欧州諸国から来た6人の欧州議員が、体内から13のPFAS(パーおよびポリフルオロアルキル物質)が検出されるか、自主的に調べたそうだ。

その結果、11人全員の血液からPFASが検出された。

見つかったPFASは、PFOA、PFNA、PFDA、PFUnDA、PFHxS、PFHpS、PFOSの7種類。5人の政治家が規制の懸念レベルを超えていた。

見つかった7種類のPFASのうち、「PFOAとPFOSはすでにEUでは使用が禁止され、その他の物質(PFNA、PFDA、PFUnDA、PFHxS)については、いくつかの用途が規制されているが、PFHpSはまだEUでも使用が認められている」とのこと。

https://rief-jp.org/ct12/142562

EUは現在、PFASグループ全体を規制する方向で検討している。これで規制に拍車がかかるかもしれない。EUがPFAS禁止を決定すれば、日本も多少変わるかもしれないと期待している。

コカコーラ、「プラスチック汚染企業」6年連続1位

Break Free from Plastic(BFFP)の発表によると、2023年も世界で拾われたプラスチックごみのトップが、コカ・コーラだった。

8,804人のボランティアが、合計53万7719個のプラスチックごみを集め、メーカーを調べた。

世界のプラスチック汚染企業の上位を占めるのはコカコーラの他に、ネスレ、ユニリーバ、ペプシコなど。

https://drive.google.com/file/d/1YFyfRv4m_viZZXa8b1HdpucDX3WEwJzv/view

いずれも飲料や食品を使い捨てのプラスチック製容器包装で提供しているメーカーだ。

日本もドイツのようにこのようなすぐにごみになるものを生産する企業からは、公園や街路の「清掃費」をとるべきだ。

<関連記事>

PFASがプラスチック容器にも 米研究

PFAS(有機フッ素化合物)は、高密度ポリエチレン製(HDPE)のプラスチック容器にもよく使われているそうだ。昨年、アメリカ化学会で発表された。

発表したのは米ノートルダム大学の研究チーム。著名なPFAS専門家でこの論文の著者の一人であるグラハム・ピースリー教授によると、農薬の容器にフッ素化された容器が使われると、農薬を通してPFASが農作物に移行し、それを人間が食べることになるそうだ。

その結果、「前立腺癌、腎臓癌、精巣癌、低出生体重、免疫毒性、甲状腺疾患など、いくつかの健康問題に関連する有害化学物質への重大な曝露の直接的なルートになる」とのこと。

https://news.nd.edu/news/plastic-containers-can-contain-pfas-and-its-getting-into-food/

PFAS濃度の平均合計は、「63.75±13.2 ng/gプラスチック」。家庭用洗剤、農薬、パーソナルケア製品などを調べた結果だ。

https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.estlett.3c00083

日本で使われているプラスチック容器にもPFASが使われていることは間違いないだろう。粘着性のある液体が容器にくっつきにくくするためには、おそらくPFASが役に立つ。

ハンバーガーなどの包装紙にもまだ使っている大手ファストフードチェーンがあるくらいだから、もしかしたら、食品用の容器にも使われているかもしれない。マヨネーズは大丈夫だろうか?

独、使い捨てプラごみの処理費用を製造者に デジタルプラットフォーム運用開始

ドイツでは2022年11月、使い捨てプラスチック製造者に対し、公園や街路の廃棄物処理費用の負担を課す法案が承認された。

https://www.eic.or.jp/news/?act=view&serial=48448&oversea=1

廃棄物投棄への対応に取り組む公共機関にその処理費用を支払うシステムの管理・処理を行うデジタルプラットフォームが、今年4月から運用開始となる。

これにより、連邦環境庁は約56000機関の賦課金支払い対象組織の登録と入金、および約6400機関への処理費用の分配をデジタル処理できるとのこと。

https://www.eic.or.jp/news/?act=view&word=&category=51&serial=49983

日本はなかなか進まないが、ドイツの拡大生産者責任はどんどん進んでいく。

<関連記事>