プラスチックが海洋生物の「胚」を殺す 繁殖不可能に

イタリアのアントン・ドールン生態学研究所とイギリスのエクセター大学が行った新しい研究によると、主な7種類の海洋生物にPVC(塩ビ)ペレットをさらしたところ、生存可能な胚をつくることができなかった。

塩ビにさらされた生物は、殻や脊索を作れなくなったり、正しい左右相称が形成できなかったり、何回か細胞分裂を繰り返した後に発達が止まったという。

https://www.newsweekjapan.jp/stories/sdgs/2024/04/post-104323.php

実験に使われた塩ビ製のペレット(プラスチックの小粒)の濃度は、通常の海洋よりも高い濃度だったが、船舶事故によるペレットの流出でこのような事態になることはこれまでも度々あった。

海に流れ込むプラスチックを減らすためには、プラスチック生産量を減らす必要がある。そのためにはまず、私たちがプラスチック製品を買わないことが大事だろう。

EU、家電の「修理する権利」を法制化

欧米では「修理する権利」が認められ始めている。

EU(欧州連合)は2日、冷蔵庫や洗濯機、スマホ、掃除機、食器洗い機などの家電が壊れた場合、消費者の修理する権利が保証されることが決まった。加盟国の代表からなる閣僚理事会と、欧州議会が政治合意に達したのだ。今後両機関の承認を得て施行。EUの官報掲載後2年以内に加盟国は法制化しなければならない。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO78217850T00C24A2EA5000/

サーキュラーエコノミー計画の一環とのこと。

法律が施行されれば、メーカーは適正な価格で修理業者に部品を提供することが義務づけられる。また、メーカーは保守期間中に修理を請け負った場合、そこから1年間追加で保証機関を延長する。保証期間終了後でも、修理屋へ持ち込めば、修理してもらいやすくなるようだ。

日本ではまだ「修理するより新品を買った方が安い」という仕組みのままだが、日本でもこの権利が認められれば、壊れたら即捨てて買い換える「使い捨て」は減るはずだ。

アメリカでも、「修理する権利」に対する意識が高まっている。

ニューヨーク州では昨年7月から、電子機器を対象に「修理する権利」の法律が施行された。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN16D2M0W3A610C2000000/

「修理する権利」を支持するアップルは、「アメリカ・ヨーロッパ向けに、iPhoneなどの自社製品に関する「純正パーツ」を売るオンラインストアをつくり、さらにそこから「修理マニュアル」もダウンロードできるようになっている」とのこと。

https://www.businessinsider.jp/post-263975

残念ながら、日本ではまだ対応していないようだ。

「ストップ!マイクロカプセル香害」署名、P&Gが受け取り拒否

柔軟剤や洗剤、消臭剤、制汗剤などにはマイクロカプセルが使われている。とりわけ、香り付き柔軟剤で被害を受ける人が多い。膨大な量のカプセルに閉じ込められた香り成分が、カプセルがはじける度に匂うため、香りが長続きしてしまう。そのせいで、まるで化学兵器のように香害被害を増やしているのだ。

EUは昨年、このようなプラスチックの使い方を禁止することを決定した。しかし、日本は企業の自主性に任されているため、増える一方だ。「誰かが苦しんでいても、儲かればよい」と国が考えているとしたら、日本はやはり後進国だ。

先日、業界団体とメーカーに『<STOP!マイクロカプセル香害>』の署名を3団体が届けたところ、花王とライオンは受け取ったが、P&Gは受け取りを拒否したとのこと。

P&Gは、消費者の声を聞く気もないようだ。「消費者がどうなろうと、今自分だけ儲かればよい」と考えているとしたら、こんな会社に未来はあるだろうか。このような態度では、世界の投資家から相手にされなくなるのは時間の問題だ。

以下、「消費者リポート便り 」(2024.1.30)を転載。

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記者会見&院内集会『<STOP!マイクロカプセル香害>』(1月23日)と署名提出(1月22日、25日)のご報告

 署名提出ではP&Gジャパンだけが受け取りを拒否

「香害をなくす議員の会」「香害をなくす連絡会」「カナリア・ネットワーク全国」の3団体は、オンライン署名サイトChange.orgで『<STOP!マイクロカプセル香害>メーカーは「マイクロカプセル香料」などの「長続き」製法をやめてください!』というキャンペーンを10月から始め、署名を手渡すために、1月22日に日本石鹸洗剤工業会と花王、ライオン、25日にはP&Gジャパンを訪問しました。残念ながら署名提出では、P&Gジャパンだけが受け取りを拒否しましたので、その後郵送で社長あてに送りました。

1月22、23日の模様は、ユープランが撮影したユーチューブでご覧いただけます。

1月22日
https://www.youtube.com/watch?v=LEng-LkteXA

1月23日
https://www.youtube.com/watch?v=djA-zb1B59E

★詳しくは下記をご覧ください。
https://nishoren.net/new-information/19530

署名サイトはこのまま開設し、随時情報をお送りします。
引き続きのご関心と取り組みをよろしくお願いいたします。
Change.org署名は下記をご覧ください。
https://www.change.org/Stop_Kougai

◎この集会の資料や通信・運営費用は、日本消費者連盟の会費と皆様からのカンパにより賄っています。これを機会に日本消費者連盟への入会をご検討ください。
https://nishoren.net/join

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プラスチックのリサイクル工場はマイクロプラスチックの汚染源

プラスチックを使ってしまった場合は、燃やすかリサイクルするしかない。燃やすよりリサイクルするの方がCO2発生量の見地からマシだろう。

とはいえ、リサイクル工場から大量のマイクロプラスチックが放出されていることが、昨年のイギリスの研究でも判明している。フィルター設置後も、放出量は改善されたとはいえ、それでも相当な量だ。

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2772416623000803

処理量の6%も洗浄水と一緒に放出されている。水だけでなく、大気中に放出してしまう量も多いだろう。

国立環境研究所が、ベトナムのメカニカルリサイクルの工場で行ったマイクロプラスチックの調査結果も気になる。

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0269749122003281

そのため、この記事↓の主張は、残念だがもっともな部分が多い。

https://cigs.canon/article/20230927_7646.html#note1

しかし、ごみ焼却場からもマイクロプラスチックが発生していることは最近の研究で判明している。清掃工場内だけでなく、なぜか焼却灰を埋めた埋立地の浸出水からも検出されているのだ。

高温で焼却しているにも関わらず、なぜマイクロプラスチックが発生するのかわからない。焼却後、灰や煙が通るルートのどこかで、焼却灰や飛灰がプラスチックに触れるようだ。

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今日から相模原市の人工芝軟式野球場がオープン

今日(2024.1.20)から相模原スポーツ・レクリエーションパーク内の軟式野球場がオープンする。

それに伴い、昨日は一般解放日だった。

https://www.city.sagamihara.kanagawa.jp/kurashi/shisetsu/sports/baseball/1029781.html

見学したところ、内野にも外野にも人工芝が敷設され、黒ゴムチップが大量にすき込まれていた。

同じ施設内の人工芝グラウンドの芝に比べ、芝片はツンツンしてなく平面的で長め。周囲に飛び散っていた芝片を拾い、長さを測ったら6.5センチもあった!

黒ゴムチップは少し小ぶりで、サイズはさまざま。古タイヤか、それとも車のドアパッキンの端材だかをグラインダーにかけたような形をしていた。ヘッドスライディングをしたら、細かい破片を吸い込みそうだ。

魚もゴムチップを食べてしまうそうだから、被害は人間だけに留まらない。

こんなものを何トンも環境中にまき、環境を汚染して、地球生態系は本当に大丈夫なのだろうか?心配だ。

EUは昨年、人工芝のゴムチップを「意図的添加のマイクロプラスチック」であるとして、販売禁止を決めた。現在、猶予期間中だからまだ販売されていると思うが、おそらくもう製造は縮小されているだろう。日本も早急に手を打たないと、大変なことになるのではないか。

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福島みずほ氏、公式サイトに北陸電力の回答書を公開

福島みずほ氏が1月8日付けで、北陸電力に志賀原発に関する質問をファックスした。その回答が公式サイトで公開されていると聞き、見てみた。

クリックして85546cc3ce019c08cfbd25969de0ae4c.pdfにアクセス

変圧器から油漏れしたり、原発施設内に段差ができたりしたようだが、大事故には繋がらず本当に良かった。

福島氏にとって北陸電力は因縁の相手。10年程前、北陸電力に志賀原発の視察要請をしたところ、「脱原発の方、視察お断り」と断られたという。

http://www.asahi.com/special/energy/OSK201209050039.html

その因縁の相手は、今回はさすがに「脱原発の方には説明しない」とは言わずに、事故についての質問に一応答えたようだ。

地震で原発にトラブル それでも志賀原発の再稼働方針は「変わらない」

今回の地震で北陸電力志賀(しか)原発(石川県志賀町)施設にトラブルが生じた。しかし、被災地を視察した岸田首相は記者団に原発再稼働について問われ、新規制基準に適合すると認められれば「地元の理解を得ながら再稼働を進める方針は全く変わらない」と答えたそうだ。

https://www.asahi.com/articles/ASS1G5VF3S1GUTFK008.html

しかし、今回の地震でも原発に「想定外」が起き、変圧器が故障した。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/302420

もし、稼働中に地震が起きていたらどんな惨事になっていたか、とゾッとし、停止中で良かったと安堵した人は多いはずだ。

それにも関わらず、再稼働方針は変わらないとする岸田首相は、再稼働に期待する経団連に配慮しているのだろう。

https://www3.nhk.or.jp/lnews/kanazawa/20231128/3020017144.html

経団連がリードする日本は、破滅の道を歩んでいるのではないか。経済界が必死で再稼働させたがるのは、このままでは電力会社に運転経験のない従業員が多くなり、原発を稼働させることができなくなると心配しているせいもあるようだ。

https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/358659

こんな「想定外」の地震ばかり起きる国で、原発を稼働したがっている人たちは、次の事故はどうせ自分の死後だろうとタカをくくっているのではないか、自分さえ儲かれば次世代などどうでも良いと思っているのではないか、と勘ぐりたくなる。

相模原の川魚のPFAS濃度は、中国産アサリよりも高い

東京新聞によると、相模原市東部を流れる道保川(相模川の支流)の上流から約3.5キロ地点で捕った魚やアメリカザリガニのPFAS濃度を調べたところ、カワムツの肝臓に1キロ当たり14万ナノグラム、身には同2万9000ナノグラムものPFASが含まれていた。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/302128

1週間に身を8g食べれば「健康リスク」もあるというレベルだという。8gということは、刺身にしたら1切れの半分も食べられない計算だ(刺身1切れは15から20g)。

昨年、Food Safety Citizen` Watch No.78,(2023.10.27)に掲載されていた中国産アサリの水煮は1450から3678ng/kg、同じく中国産アサリを使った「あさり飯の素」が5132ng/kgだったことを考えると、相模原産の川魚はさらに高濃度だということだ。

昨年調べられた水煮やあさり飯の素は、いずれも中国産のアサリを使い日本企業が日本国内で販売しているものだ。アサリがPFASに汚染されたのは、渤海に流れ込む河川の上流でのフッ素化学工場を含む工業地帯からの排水が原因だと推定されていた。

しかし、一緒に調べられた国産の「活アサリ(三重県産、北海道産、愛知県産)」はそれより1桁濃度が低かったため、「活アサリを食べれば大丈夫」と楽観していた。

ところが、地元の川魚のほうが、心配していた中国産アサリの水煮より1桁から2桁濃度が高かったのだ。

原因は、南橋本に立地している工場の排水だろうか?それとも??

この記事を読んだ後、図書館へ『これでわかるPFAS汚染』(原田浩二編著、合同出版)を借りに行った。昨年末に出たばかりの本で図書館にはまだなかったため、買ってほしい本としてリクエストしようとしたが、「購入するかどうかはわからない」と言われた。

https://www.godo-shuppan.co.jp/book/b636379.html

相模原市の図書館には、最新のPFAS情報を「PFASにおびえる市民」に提供する義務がある、と思うのだが。

<補筆2024.3.8>

相模原市立図書館がようやく『これでわかるPFAS汚染』を購入した。他の人からのリクエストもあったようだ。感謝!

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PFASの危険性を意図的に隠蔽 3M社1950年代から

Minnesota Reformerによると、3M社の科学者たちは1950年代から人間は動物の体内にPFASが蓄積していることを知っていたという。

1979年には3M社は、環境中でPFASが分解しないことや、ガンの発生リスクが高まることを確認しておきながら、人の血液中に含まれるPFASの存在を隠蔽するよう指示を出していたそうだ。

https://gigazine.net/news/20240101-3m-toxic/

PFASで汚染された魚介類を食べる野鳥の血液にPFASが含まれていることが確認され、アザラシなどの哺乳類もPFASで汚染されている可能性があったにも関わらず、隠蔽された。

その結果、現在私たちが食べる魚介類や汚染地域でとれた野菜からもPFASが検出され、私たちの血液からも検出される事態になった。まさに犯罪的だが、3M社はいまだに大企業のまま「2025年末までにPFAS事業から撤退する」などというのんきなプレスを出している。

https://news.3mcompany.jp/2022-12-28

腹立たしい限りだが、PFASは原爆に使われたのが始まりだったそうだから、もともと犯罪的な要素を持った化学物質なのだろう。

相模原市のPFAS汚染は日本の中でもトップレベルのようだが、発生源は米軍補給廠だけでなく、複数あるらしい。同じ発生源ならば、地下水から検出されるPFOAとPFOSの比率は似ているはずだが、似ていない数値も見つかっている。

横浜市は昨年度からPFHxSの濃度も測っているが、相模原市は相変わらずPFOAとPFOSしか測定していない。

https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/sumai-kurashi/suido-gesui/suido/suishitsu/suidosui/yuukifussokekka.html

お金がないためか?それとも関心がないせいで測らないのかわからないが、相模原市議の反応もイチイチ薄いように感じる。これまでは地産地消の見地から、できるだけ地元の野菜を選んでいたが、最近は避けたくなっている。

相模原市でも、せめてストックホルム条約で禁止が決まっているPFHxSも、PFOAとPFOSとともに測定してほしいものだ。

増える柔軟剤ユーザー、VOCは大丈夫?

柔軟剤等の香りに起因する健康被害の訴えが増加している。

それにも関わらず、日本石鹸洗剤工業会が行っている「洗濯実態調査2020」によると、柔軟剤を洗濯の度に使用する人は74.6%、時々使用する人を合わせると93.6%もいたそうだ。2015年の調査では洗濯の度に使用が76.7%、時々使用を合わせると90.3%だった。

つまり、柔軟剤を毎回使う人は少し減ったが、柔軟剤ユーザーは3.3%も増えたということだ。しかも、2倍以上の量で使う人は、相変わらず2割近くもいる。

https://jsda.org/w/01_katud/sentaku_chosa2020-2.html

2倍以上の量で柔軟剤を使う人は既に嗅覚が鈍っているので、まるで「シャブ漬け」状態のようになっているのではないか。鼻がバカになっているから匂わない、もっともっとと欲しくなる・・この調査結果を眺めていて、失礼ながらそんな連想をしてしまった。

ハウスダストからも柔軟剤の香料と同じ成分が検出されていることから、柔軟剤ユーザーの家では衣類や洗濯機からだけではなく、室内のハウスダストからも一日中匂っていることだろう。鼻がきかなくなるのは当然だ。

この手の製品を使い続けられる人は、匂いの検知閾値や認知閾値が相当高い人だと思うが、化学物質に敏感な隣人や職場の同僚はたまらない。自分では柔軟剤など香り製品を使っていないにも関わらず、使用する人の香り成分が自分の衣類に付着してしまう。自宅で服を着替えると、その衣類に付いた香り成分が脱落しハウスダストに混入する。その結果、その人の家の中も他人が使っていた香り成分で汚染されるのだ。

メーカーは、長く香らせるための対応として、吸着性や徐放性を向上させる香料前駆体を活用しているという報告まである(重久ら, 2019)。

汚染をまき散らす犯罪的な製品が、なぜいつまでも野放しにされ、より強力になっていくのかが理解できない。揮発性有機化合物(VOC)の点でも、健康にとって有害だ。

浦野ら(2022)の「家庭用柔軟剤等の使用に伴う揮発成分挙動に関する研究」によると、「製品の使用を停止した後、数回の洗濯で揮発濃度が大きく低下すること」が示され、「適当な頻度での使用停止が臭気室の変化や揮発量の増加抑制に効果的である可能性」が示されたという。

「服を何度洗っても匂いが落ちない」と評判の柔軟剤だが、少なくとも揮発量は減るようだ。柔軟剤の袋には、「危険なので、必ず使用量を守ってください。頻繁な使用は危険です。間隔をあけて使ってください」などの警告表示が必要だ。