香港・台湾の環境団体 ペットボトル散乱で中国メーカーに申し入れ

香港のNGO8団体と台湾のNGO3団体が合同で、香港と台湾の海岸清掃を行ったところ、ペットボトルごみの3分の2(約66%)に簡体中国語のラベルがついていた。中国本土から漂着したものとみられるという。

そのため、香港と台湾の環境保護団体が、中国本土の飲料メーカーにプラスチックごみ削減のための対策を講じるよう呼びかけたそうだ。

中国の研究チームが海水でも溶けるプラスチックを開発し、その技術を中国メーカーに提供したというニュースもあるが、分子として残るということから完全に分解するわけではなく崩壊して見えなくなるもののようだ。それでは、マイクロプラスチック問題は根本的に解決されない可能性がある。

技術開発が大事であることはいうまでもないが、日本も中国も、技術に頼る前にまずきちんとした回収システムを構築するべきだろう。

香港の回収システムは知らないが、台湾は拡大生産者責任(EPR)が徹底しているため、メーカーの支払ったお金を利用して様々な方法で回収されている。そのため、回収率は100%近い。台湾のビーチに台湾製のペットボトルがほとんど落ちていなかっただろうことは容易に想像がつく。

個人のモラルに頼る回収システムは、理想的かもしれないが、うまくいかないことは、容器包装リサイクル法制定後20年を経た今、日本の海岸にペットボトルなどのプラスチックごみや飲料缶が大量に落ちていることからもわかる。

回収システムの根底には、生産者責任の徹底が必要だろう。

<参考>

Record China(2018.9.6)「香港・台湾のビーチのペットボトルごみ、3分の2が中国から―香港紙」↓

https://www.recordchina.co.jp/b640940-s0-c30-d0139.html

人民網日本語版(2018.9.6)「中国人科学者が海水に溶けるプラスチックを開発」↓

http://j.people.com.cn/n3/2018/0906/c95952-9498126.html

プラごみ回収船が出発 太平洋ごみベルトへ

2018年9月8日、オーシャンクリーンアップが開発したプラスチックごみ回収装置をけん引した船が、太平洋ごみベルトに向かってサンフランシスコを出発した。

装置は、直径1メートル20センチ、長さ12メートルの巨大なパイプをつないだもので、全長およそ600メートル。目的の海域に達すると、両端を船でゆっくりと引いて海面付近を漂うごみを囲い込み、回収するとのこと。

半年以内に最初のプラスチックごみをサンフランシスコに持ち帰る計画。

ごみと一緒に海洋生物まで回収されないか心配だが、それよりもマイクロプラスチックになる前に回収する必要があるということだろうか。

以前の発表では、太平洋ごみベルトの中で製造国のわかるごみのうち、日本のものが3割で最も多いということである。

<参考>

NHK NEWS WEB(2018.9.9)「海に漂う““プラスチックごみ”回収船が出発 米」

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180909/k10011620101000.html

<関連記事>

太平洋ごみベルトにごみ8万トン集積 日本からは3割

韓国 使い捨てプラを2027年までにゼロへ

韓国が、2018年から27年までの10カ年国家戦略「第1次資源循環基本計画」を発表した。使い捨てのプラスチック製コップとストローの使用を段階的に禁じ、大型スーパーなどの過剰包装を法的に制限するなどの取り組みを進めることを決めた。

代替可能な製品のある使い捨てプラスチック製品の使用を段階的に禁じ、27年までに「ゼロ」にする目標。業界は既に自主的な協定で過剰包装を控えているそうだが、今後は法律で制限し、管理を強化する。

生ごみは、減量効果が確認済みの電子タグを使った従量制を、一定規模以上の集合住宅に22年までに義務付け、27年までには戸建て住宅や小規模飲食店にも拡大する方針。リサイクル製品は、公共の買い取りの割合を現行の49%から70%に引き上げるとのこと。

韓国は既にレジ袋廃止も発表しており、インドや台湾とともにアジアの脱プラスチックの取組を牽引している。

<出所>

聯合ニュース(2018.9.7)「使い捨てプラ製品を27年にはゼロへ 韓国が基本計画」↓

http://japanese.yonhapnews.co.kr/headline/2018/09/04/0200000000AJP20180904001500882.HTML

<関連記事>

韓国 年末からレジ袋禁止

化学業界 海洋プラごみ対策の協議会を設立

環境省の審議会(中央環境審議会循環型社会部会プラスチック資源循環戦略小委員会)が、プラスチック削減の数値目標を年度内に決めることを受け、化学業界5団体(日本化学工業協会、日本プラスチック工業連盟、石油化学工業協会、プラスチック循環利用協会、塩ビ工業・環境協会)は、海洋プラスチック問題に対応するための協議会「海洋プラスチック問題対応協議会(JaIME)」を設立した。

協議会は、5団体の他に個別企業(三井化学、旭化成、JXTGホールディングス、三菱ケミカルホールディングスなど)も加わった約40の企業や団体。

ストローの使用中止などで注目されるプラスチック問題について、アジアで日本のリサイクル技術の普及などに取り組むとのこと。

また、海洋プラスチックの健康への影響についての委託研究も進めるそうだ。

この協議会が、国のプラごみ削減戦略の圧力団体にならないことを願っている。

<参考>

日本経済新聞(2018.9.8)「海洋プラで協議会設立 化学5団体、リサイクル戦略検討」↓

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO35136290X00C18A9FFN000/

毎日新聞(2018.9.7)「プラスチックごみ 国内化学メーカーが対応協議会」↓

https://mainichi.jp/articles/20180908/k00/00m/020/185000c

 

日本のイケアも使い捨てプラ 販売中止

イケア本社の決定(関連記事参照)を受け、イケア・ジャパンも2020年までにストローやゴミ袋、フリーザーバッグなどの販売を中止する。

既に製造は中止しており、在庫を売り切り次第、販売を終了するそうだ。

悪いと知りながら「消費者が欲しがるから」と売り続けるメーカーや小売店が多い中、イケアはさすがだ。

<出所>

毎日新聞(2018.8.29)「イケア プラ製ストロー販売中止へ ごみ袋も20年までに」↓

https://mainichi.jp/articles/20180829/k00/00e/020/318000c

<関連記事>

イケア 使い捨てプラスチック製品全廃、ビーズソファは?

神奈川県がレジ袋やストロー廃止を自治体・企業に呼びかけ

神奈川県は、鎌倉市由比ガ浜に打ち上げられたシロナガスクジラの赤ちゃんの胃の中からプラスチックごみが発見されたことを受け、プラスチック製のレジ袋やストローの利用廃止を自治体や企業に呼びかけている(かながわプラごみゼロ宣言)。

SDGs未来都市である神奈川県は、2030年までのできるだけ早期に、リサイクルされず廃棄されるプラごみをゼロにすることを目指す。

神奈川県内は、スーパーとレジ袋有料化協定を締結している市町村が少なく、マイバッグ持参率も低い。そんななかで、この「かながわプラごみ宣言」はとても画期的だ。これを受け、各市町村や企業がどう応えるか、期待している。

いっそのこと、県が「プラごみゼロ条例」を作り、「レジ袋一斉廃止」などを主導してくれたらよいのだが・・県は規制や義務化に向けたルールは策定せず、イベントなどでの「啓発先行」で進める意向とのことである。

1.コンビニエンスストア・スーパーマーケット・レストラン等と連携し、プラスチック製ストローやレジ袋の利用廃止や回収などの取組を進めていきます。
2.県内で行われる環境イベント等において、プラスチック製ストローの利用廃止や回収などを呼びかけていきます。
3.海岸利用者に対して、海洋汚染の原因となるプラごみの持ち帰りを呼びかけていきます。

<出所>

神奈川県(2018.9.4)「「かながわプラごみゼロ宣言」ークジラからのメッセージ―」↓

http://www.pref.kanagawa.jp/docs/r5k/sdgs/plasticgomizero.html

「かながわプラごみゼロ宣言」↓

http://www.pref.kanagawa.jp/docs/r5k/sdgs/documents/kanagawaplasticgomizerosengen.pdf

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母乳しか飲んでいない赤ちゃんクジラからプラスチック片

業界団体 中学生のプラスチック授業を支援・・それって大丈夫??

中学校の理科教育のカリキュラムに「プラスチック」が加わり7年目になるそうだ。時間枠は3時間までで、PETやPPなど各樹脂の性質を教えることを求められているとのこと。

教員にはハードルの高い授業であることから、化学やプラスチックの業界団体が連携して運営する「プラスチック教育連絡会」が、先生方対象に出前授業や工場見学会などを行い、喜ばれているという。

見学会のお土産として、樹脂の違いを知るための実験キットなども人気が高く、授業を機に子どもたちにプラスチックの正しい使い方や処分方法も浸透させ、理科やプラスチックに関心をもってもらうのが狙い・・・と、よいことばかりに聞こえる。

確かに子どもたちは実験で好奇心を刺激される。それはそれで役立つだろう。だが、中学生のプラスチック授業のネタ提供を、使い捨てプラスチックを減らすことに消極的な業界団体にのみ任せることは不安がある。脱使い捨てプラスチックを進める市民団体にも出前講座などをしてもらうのがよいのではないか。

プラスチックは今のところ確かになくてはならないものだろう。しかし、その性質ゆえに、多くの問題を内包する。おそらく業界団体に任せていては、問題点は過小に、便利さが過大に、先生や子どもたちの頭にインプットされそうだ。

例えば、プラスチックに添加される化学物質の中には有害なものも少なくないことや、リサイクルしにくいため8割を越す日本のプラスチックリサイクル率は、実は焼却時のエネルギー利用と製鉄所の高炉やコークス炉での利用をも含めてリサイクルとしてカウントされたものであり、海外ではそれらはリサイクルとは呼ばれていないことなどは、子どもらに正しく伝わっているのだろうか?

また、焼却炉もプラスチックを燃やすようになってからは高度なダイオキシン対策が施されるようになり、それがひどく高額で、しかも焼却炉はほぼ30年で新しくしなければならないため、その度に多額の税金がかかり、しかも焼却場を作る場所もなかなか決まらない地域が多く、各地で紛争の種になっていることも伝わっているだろうか?

そして何よりも、マイクロプラスチックが海洋を汚染したことから魚介類も海鳥もプランクトンでさえもプラスチックを食べているため、人も魚介類を通してプラスチックを食べている可能性が高いこと、さらに大気や水もプラスチックで汚染されたことから、水道水にもビールにもハチミツにもマイクロプラスチックが入りこんでしまったことは正しく伝わっているだろうか?

これらはやはり業界団体による出前講座や見学会では困難で、きちんと伝えるには、やはりプラスチックの悪影響を学んだ市民団体などが適当ではないか。

使い捨てプラスチックは使うべきでないことを、しっかりと子どもたちに伝えるためにも、中学生がプラスチックについて偏ることなく学べる環境が必要だ。

<参考>化学工業日報(2018.8.22)

中学校でのプラスチック教育さらに

 

 

東京都 脱プラ製ストローのアイディア募集

東京都がプラスチック製ストローを使わずにすむための方法や代替素材のアイディアを募集している。使い捨てプラスチック削減について考えるためとのこと。

募集期間は9月3日から10月12日まで。

次回はぜひ、不要なプラスチック製品とそれをやめるための有効な方法についてのアイディアを募集してほしい。不要なプラスチック製品リストがあれば、企業も参考にするだろう。

脱プラ製ストローの公募についての詳細は東京都環境局↓

http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/resource/recycle/single_use_plastics/straws.html

 

石塚硝子 ペットボトル需要増で生産を拡大

缶コーヒーもペットボトルが増え、ノンアルコールビールもペットボトルで売出しはじめた。

使い捨てプラスチック削減のかけ声はあるが、ペットボトルは増え続けている。

石塚硝子がペットボトル需要の増加に対応するため、東京工場の生産ラインを1本増やし、全体の生産能力を5%引き上げることを決めた。これにより来年4〜5月頃から、年間3億5000万本もペットボトルの生産量が増えるそうだ。

既に同社は、岩倉工場でも生産ラインの増設を決めているとのこと。

近年ペットボトルのリサイクル工場も増設されているが、どんなにリサイクル施設を増やしても、それ以上にペットボトルが増える。

おそらく日本の場合、ペットボトルはプラスチックごみを減らす戦略会議の俎上にすら乗らないだろう。散乱ごみの見地でいえば、もっとも減らすべき製品であるはずだが・・・

<参考>

日本経済新聞(2018.8.31)「石塚硝子、ペットボトル増産 ボトルコーヒー需要増」↓

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34840190R30C18A8L91000/

ノルウェーのデポジット制度 高い回収率維持の理由

飲料容器の回収に、デポジット制を採用している国・地域は多い。ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、ドイツ、オーストリア、オランダ、イスラエル、アメリカ(10州)、カナダ(イヌイット自治準州を除いたすべての州・準州)、オーストラリア(実施あるいは実施予定のない州は2州のみ)・・・などなど、書き切れないほど多くの地域で、デポジット制度が実施されている。

それらはすべて異なる方法で行われている、といっても過言ではない。対象容器や回収方法、運営方法など、どの地域もそれぞれの考え方や状況に合わせ、少しずつ変化させている。

なかでもカナダのデポジット制度は、州ごとのバリエーションが豊かで、しかもデポジット対象容器の種類が多いので、私は最も気に入っている。しかし、「回収率の高さ」という点で、ノルウェーのデポジット制度を成功事例として取り上げるケースが多い。

確かにノルウェーのデポジット制度は回収率が高く、現在97%を超えている。デポジット制度実施国とはいえ、たまに8割を切るケースもある中、ノルウェーは恒常的に高い。

同国の高回収率の理由の一つに、国の税制が関係しているのではないか、とある記事(下記にURLを掲載)を読んで思った。

ノルウェーのプラスチック製造業者は、環境税を支払うことになっているが、リサイクル量が増えれば増えるほど税率は低くなる。95%を超えると環境税の支払いはゼロになるそうだ。既に7年間にわたり95%を超えたため、環境税を支払っていないという。

このことが、ペットボトルを利用する飲料メーカーの回収意欲を増している可能性がある。

デポジット制度を実施すると、回収率はたいてい急上昇するが、運営方法次第ではその後低迷するケースもある。デポジット額(預り金額)やリファンド額(払戻額)が物価と見合わなくなった場合や、回収ポイントの設置状況が適切でなかった場合には、回収率は当然低下する。

ノルウェーが恒常的に95%以上を維持できているのは、運営主体に高い回収意欲があり、常に回収率向上に気を配っていることが想像される。

ノルウェーの事例は、適切に課税し、正しくデポジット制度を実施することで、プラスチックでも100%近くの回収率が達成できることを証明している。

ひるがえって、日本の容器包装リサイクル法の下では、生産者は躊躇することなく、安易にペットボトルを採用することができる。回収量が多かろうと少なかろうとメーカーはほとんど関係ない。逆に、交通の便の悪い島などでヘタにペットボトル回収量が増えると、メーカーはかえって再商品化費用を余分に支払うハメになる。

これでは日本のメーカーは、売れれば売れるだけペットボトルを使い、回収には真剣に取り組まない。水やお茶、コーラ、果汁飲料、ノンアルコールビール、コーヒー、アルコール飲料・・・最近はお米までペットボトルに入れて売られている。

日本企業がペットボトルを好んで使う反面、デポジット制度を嫌がり、ペットボトルは散らかるままでよいと考える理由の1つは、いつまでも改正されないまま時代遅れとなった容器包装リサイクル法にあるのではないか。

<スウェーデンの環境税の参考>

HUFFPOST(2018.8.22)Norway Has A Radical Approach To Plastic Pollution, And It’s Working;

https://www.huffingtonpost.com/entry/norway-plastic-pollution_us_5b7c07e0e4b05906b41779ee

<関連記事>

デポジット制度:ノルウェーのペットボトルリサイクル制度