海洋プラスチック憲章への支持を呼びかける署名、締切間近!

2018年6月、カナダで開催されたG7で、日本とアメリカは「海洋プラスチック憲章」への署名を拒否した。

安倍首相は、この憲章を上回るプラスチック資源循環目標を2019年に日本で開催されるG20で表明すると約束したが、果たして現在パブリックコメント中の案がG7の憲章を上回っているか、甚だ疑問だ。

もし、本当に憲章を上回っているという自信があるのならば、まずは憲章への支持を表明すべきではないか。

一般社団法人JEANでは、日本が憲章に支持表明することを求める署名を来週にも国へ提出するべく、最後の署名呼びかけをおこなっている。署名は12月16日まで。

署名サイト↓

https://www.change.org/p/日本も-海洋プラスチック憲章-に一日も早く署名を

(一社)JEANウェブサイト↓

http://www.jean.jp

現在、憲章への支持の表明は、G7で署名した5か国とEUに続き、9月にジャマイカ、ケニア、マーシャル諸島共和国、ノルウェー、その後もメキシコ、オランダ、セネガル、ナウル共和国、パラオ共和国、カーボヴェルデ共和国で、16ヶ国。
他に20の企業や団体も支持を明らかにしています。プラスチックごみが今や海底まで達し、海洋中でスモッグに例えられるほど劣化してマイクロ化してきた年月を考えたら、近年、俎上に載せられやすい現在の途上国の問題よりも、日本をはじめとした先進国が、半世紀前から
続けてきた使い捨てプラスチック生活が、海洋汚染をうみだしてきた責任を、まず自覚しなければならないでしょう。
しかも、日本は1人当たりの使い捨てプラスチックごみ排出量で世界第2位です。政府はG20で途上国を巻き込む必要を述べていますが、その前にまずはG7先進国の責任として憲章に署名したうえで、G20で各国に呼び掛けるのが国際社会の一員としての行動ではないでしょうか。

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JEANが「プラスチック憲章」への署名を呼びかけ

プラスチック戦略のパブコメ、提出のため素案を読んでみた

環境省がプラスチック戦略のパブリックコメントを募集している。どういう意見を送るか考えるため、まず今回の戦略の目玉を整理した。

p.8からp.9にかけて記載されている以下の5つが目玉だと考えられるが、うち1番目が最も重要だろう。

1.消費者はじめ国民各界各層の理解と連携協働の促進により、代替品が環境に与 える影響を考慮しつつ、2030年までに、ワンウェイのプラスチック(容器 包装等)を累積で25%排出抑制するよう目指します。

→参考資料p.54のフローを見ると、2013年の容器包装は426万トンである。25%減の基準年は不明だが、約100万トンの容器包装を減らすということだ。家族経営型の小規模店には手を付けず、スーパーやコンビニ、ドラッグストア、ホームセンター、クリーニング店等のレジ袋を有料化した場合、少なくとも10万トンは減るだろう。また、プラスチック製ストローやカップを廃止し、プラスチック製トレーや使い捨ての弁当容器なども紙製やできればリユースできるものに切り替えることによっても、使い捨てプラスチックは大幅に削減できる。既に、カップ麺のカップやペットボトルを生分解性プラやバイオマスベースに切り替えを進めると表明しているメーカーもある。これらのことを考え合わせると、それほどムリせずとも100万トン以上は削減できるのではないか。

→使い捨てプラスチックについて、韓国は2027年までにゼロに、台湾は2030年までに全面禁止、マレーシアも2030年までにゼロ、インドは2022年までにすべて排除、などとそれぞれ発表している。もちろん「使い捨てプラスチック」と表現するプラスチック製品は各国で異なるだろう。しかし、それらを勘案しても日本の25%減はまだ甘いといえる。この目標値で、来年日本で開催されるG20でリーダーシップを発揮できるようには思えない。

→バイオマスベースのプラスチックが即よいとばかりはいえないし、紙製だからといって安心できるわけではない。しかし、日本の技術力があれば、今のプラスチックに代わるものが生み出せるだろう。イノベーションに期待するためにも、もう一歩、意欲的な目標値が望ましい。

2.2025年までに、プラスチック製容器包装・製品のデザインを、容器包装・製品の機能を確保することとの両立を図りつつ、技術的に分別容易かつリユース 可能又はリサイクル可能なものとすることを目指します(それが難しい場合に も、熱回収可能性を確実に担保することを目指します)。

→熱回収を除いた真水(まみず)の目標値(回収率とリサイクル率)を設定すべき。これでは何をもって達成度をはかるのかわからない。

3.2030年までにプラスチック製容器包装の6割をリサイクル又はリユースし、 かつ、2035年までにすべての使用済プラスチックを熱回収も含め100%有効利用するよう、国民各界各層との連携協働により実現を目指します。

→熱回収を含めず2030年までに60%のプラスチック製容器包装をマテリアルリサイクル(材料リサイクル)、あるいはリユースするということだろうか。EUが2030年までに再資源化率100%を目指していること、そして多くのグローバル企業が2025年までに100%リユース、リサイクル、あるいは生分解可能にすることを表明していることを考えると、2030年までに6割という数字は低すぎるのではないか。

→また、2035年までの目標値が熱回収も含め100%というならば、熱回収抜きの目標値も決めておくべきだ。そうでなければ、ラクな熱回収に頼りきってしまう。熱回収では資源は循環しない。

4.適用可能性を勘案した上で、政府、地方自治体はじめ国民各界各層の理解と連携協働の促進により、2030年までに、プラスチックの再生利用を倍増するよう目指します。

→なぜ地方自治体などまで動員するのか?再生利用の倍増などは、生産者責任によって達成できるはずだ。達成できなかった時の保険として、「地方自治体や国民各階各層の理解と連携協働の促進」などという言葉をコテコテに盛ったように見える。

→ここはスッキリと「2030年までに、生産者責任により、プラスチックの再生利用の倍増を目指します」だろう。これを達成するためには、容器包装以外の製品プラスチック(バケツやハンガー、ストロー、衣装ケースなどのプラ製品)のリサイクル法か、あるいはプラスチックに特化したリサイクル法(容器包装や家電、自動車などに利用されるすべてのプラスチックを対象とする法律)を作る必要がある。

5.導入可能性を高めつつ、国民各界各層の理解と連携協働の促進により、2030 年までに、バイオマスプラスチックを最大限(約200万トン)導入するよう目 指します。

→バイオマスプラスチックの導入を推進するならば、バイオベースの生分解性プラスチックも推進するということか。そうであれば、現在のプラスチックリサイクルとは別に、生分解性プラスチック用のリサイクルルートの確立が必須だ。現在のプラスチックリサイクルルートに、もし生分解性プラスチックが混入すると、マテリアルリサイクル(材料リサイクル)が著しく阻害されるためである。

→リサイクルルートは自治体に頼ることなく、生産者責任において作るのが望ましい。自治体にはどれが生分解性プラスチックか、そうでないかの区別ができないし、自治体抜きで進めるほうがスムーズだ。今一度、容器包装リサイクル法をはじめとする各種リサイクル法を見直すべきだ。

以上、思ったことを記載してみた。

これらに加えて、デポジット制度の導入ペットボトルのキャップをボトル本体と外れないようにデザイン変更することなどについての意見も加えたい。

日米が署名を拒否した海洋プラスチック憲章を上回るはずの環境省の素案だが、比較してみると、言葉尻を巧みに合わせてはいるものの、決して上回っていないことがわかる。海洋プラスチック憲章に数値があまり盛り込まれていない理由は、日本やアメリカが署名しやすくするためであったと考えられる。

海洋プラスチック憲章を上回る目標を設定し、来年日本で開催されるG20サミットでリーダーシップを発揮するというのならば、EUのプラスチック戦略(2030年までにすべてのプラ容器包装のリユースやリサイクルを可能とする、など)を上回る必要がある。

パブコメ締切は12月28日だ。

環境省「プラスチック資源循環戦略(案)に対する意見の募集(パブリックコメント)について」↓

https://www.env.go.jp/press/106186.html

https://www.env.go.jp/press/files/jp/110266.pdf

インドネシア、クジラの死骸から1000個以上のプラスチック

インドネシア・ワカトビ国立公園で発見されたマッコウクジラから、1000個以上のプラスチックごみが見つかった。

クジラが飲み込んでいたのは、プラスチック製コップ115個、レジ袋25枚、ペットボトル4本、ビーチサンダル2足、ビニール紐3.26キロ・・・合計約6キログラムのプラスチックである。

既に腐敗が始まっていたため、死因は不明とのこと。

しかしクジラの健康に、このような大量のプラスチックごみが影響しないことは考えにくい。

プラスチック製カップもレジ袋もペットボトルも、代替品はいくらでもあるし、散乱を減らす有効な方法もある。世界中で早急に対策を進めるべきなのに、日本もインドネシアも遅れている。

<インドネシアについての出所>

The New York Times: 1,000 Pieces of Plastic Found Inside Dead Whale in Indonesia;

BBC「クジラの死体からプラスチックコップが115個も インドネシア」↓

https://www.bbc.com/japanese/46285545

Fobes Japan(2018.12.1)「「プラごみ」で死ぬクジラと、急成長するアジアの責任」↓

https://forbesjapan.com/articles/detail/24165

ニュージーランドでもデポジット制度の気運高まる

ヨーロッパでは今年5月、欧州委員会がプラスチックを減らすため、海岸に散乱の多い「10品目プラス漁具」を対象に、それぞれの製品に応じた規制をかけることを提案した。その法案が今年10月に欧州議会で可決された。

その10品目の1つが飲料容器で、デポジット制度などにより90%の回収率を達成すること、であった。

このため、まだデポジット制度を導入していない国々では、デポジット制度への期待が高まっている。

欧州のみならず、オーストラリアやニュージーランドでも以前からデポジット制度を求める声が大きい。

とりわけオーストラリアではここ数年、デポジット制度を開始する州が相次いでいるが、ニュージーランドでも、デポジット制度の気運が近年高まった。

ニュージーランドの多くの都市で、デポジット制度を模倣するイベントが、地元のゼロ・ウェイストを目指す団体により繰り広げられている。空のペットボトルや缶を持参してもらい、現金と交換するイベントだ。

デポジット制度を求める請願書の署名も全国的に集められ、来週議会に提出する予定とのこと。

ペットボトルなどで汚れた通りや海岸を見るのにウンザリした大勢の人々が、署名をしたそうだ。

デポジット制度は、「海岸や海洋生物を有毒なプラスチックから守るだけでなく、陸上でのリサイクルを促進し、資金調達や雇用創出の面で、コミュニティに広く利益をもたらす。」と、支持されている。

<ニュージーランドについての出所>

Hundreds across country claim cash for bottles;

http://www.voxy.co.nz/national/5/327037

 

味の素、2030年までにプラごみゼロへ

先般インドネシア・バリ島で開催された国際会議で、290以上のグローバル企業や機関が、2025年までにプラスチック製包装材を100%再利用可能かリサイクル、あるいは生分解性に切り替えることを約束した。

しかし、日本の企業は1社も参加せず、世界に日本企業のプラスチック対策の遅れぶりを知らしめた。

とはいえ、日本企業もプラスチック対策について意識はしているようで、先日の日清食品の生分解性プラスチックへの切り替え表明に続き、味の素グループも、2030年までに紙製などに切り替えることを表明した。

日経新聞によると、味の素グループは「リサイクルにも力を入れて廃棄量削減を進める」とのこと。

容器包装リサイクル法(容リ法)の上にあぐらをかいていては「リサイクル」に「力を入れて」取り組むことはできない。

自主回収システムの導入や、あるいは容リ法改正への働きかけなど、今後企業が率先して回収にも取り組んでくれることを期待している。

<参考>

日本経済新聞(2018.11.29)「味の素、プラスチック廃棄ゼロへ 30年に」↓

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38314770Z21C18A1000000/

海洋金融研究機構(2018.10.30)「プラスチック包装を、2025年までに100%再利用可能な素材に転換。290以上の企業・期間等が宣言。インドネシア・バリ島での国際会議で。日本からは1社も参加せず」↓

http://rief-jp.org/ct12/84150

<関連記事>

日清食品 生分解性プラに切り替え、どのタイプの生分解性プラかはまだ不明?

「コンビニ改心」でレジ袋有料化はほぼ完了、次のターゲットは?

昨日の日経新聞の記事「脱レジ袋、コンビニ「改心」」によると、13年前には有料化に猛反発したコンビニも、今回は姿勢を改め「反対する理由はない(日本フランチャイズチェーン協会専務理事)」と述べているとのこと。

これまで各地域のレジ袋有料化協定に誘われても断り続け、コンビニにマイバッグを持参する人などいない、有料化したらコンビニは潰れる、などといっていた態度は一変した。

商店街のパン屋や魚屋、八百屋など小規模店舗では今後どうするか?、レジ袋の価格は?などの課題は残るものの、食品用レジ袋は東京オリンピックまでに有料化することで、これでほぼ決定するだろう。

残りの課題は、食品用以外のレジ袋をどうするか、ということである。ドラッグストアなどは当然有料が義務化されるだろうが、調剤薬局など薬店はどうだろうか?(病院内で調剤されていた頃は、レジ袋を使用せず、白い紙製の小袋に幾種類もの薬を入れて手渡されていた。最近、調剤薬局ではそれをさらにレジ袋に入れて渡している。レジ袋はほしい人だけ有料で買えばよいのではないか。)

また衣類はどうすべきか?日本の衣料品店では、レジ袋を有料で提供している店をまだあまり見かけないが、H&Mではプラスチック製レジ袋を廃止し、紙袋に切り替え、その紙袋を有料にすることを決めた。日本の衣料品店にも同様の方針を決めてほしいところだがいかがだろう?

イオンやイトーヨーカドーにはぜひ衣料品部門でも有料化に取り組んで欲しい。またシマムラは以前から、レジ袋を持っていくと1円で買い取っている。しかし、1円のために、レジ袋をわざわざ持参する人は少ないから、これを機に有料化してほしいところだ。

やはり衣料品部門のレジ袋も、価格を含め、国が有料化を先導すべきだろう。

ストロー、レジ袋・・と続いた海洋プラスチック汚染対策。リスク緩和のための次のターゲットは何か??

おそらく、ペットボトルでは?そうであることを期待している。

<参考>

日本経済新聞(2018.11.28)「脱レジ袋、コンビニ「改心」」↓

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO38261780X21C18A1EA1000/

日本経済新聞(2018.11.29)「レジ袋有料義務化 九州小売から歓迎と注文 」↓

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38300650Y8A121C1LX0000/

朝日新聞(2018.11.13)「H&Mジャパン、レジ袋を有料化へ 紙製に、脱プラ加速」↓

https://digital.asahi.com/articles/ASLCF41QXLCFULFA00V.html

 

容器包装リサイクル法が、熱回収が必要な理由の1つになっている!?

プラスチック製容器包装には、材料リサイクルしにくいものが多い。

例えば、マヨネーズ容器などは複数の素材が層になっているため、せっかくきれいに洗って回収に出しても熱回収以外に他に利用法がない。

シャンプーなどの詰替用が「エコ商品」として売れている日本ではリサイクルしにくいこの手の軟質系プラスチックが多い。業界が熱回収の必要性を力説する気持ちはよくわかる。

今一度、容器包装リサイクル法の対象品目を見直し、容器包装というカテゴリーにこだわらず、材料リサイクルしやすいもののみを選んで回収したらいかがだろう?そうでなければ、いつまでも熱回収をも加えた「プラスチック有効利用率」が環境指標としてまかり通ってしまう。

毎日新聞の11月16日付け「なるほドリ」も、それを主張したくて選んだテーマではないか?

毎日新聞(2018.11.16)「弁当容器、再利用できる?複数素材使用 分別難しく」

https://mainichi.jp/articles/20181116/ddm/003/070/046000c

自治体もプラごみ削減に取組開始

先般(2018.11.7)開催された9都県市首脳会議で、埼玉県知事の提案により、マイクロプラスチックの解決に向けた取組が検討されたようだ。

http://www.9tokenshi-syunoukaigi.jp/a30e1ec26aec84baa36f2c19f2839ce1a55357c5.pdf

議事録は追って公開されるようだが、神奈川県知事も賛同したとのこと。

最近、自治体レベルでもマイクロプラスチックを問題視するところが増えている。

千葉市では、これまで不燃ごみとして有料回収していた製品プラスチック10品目(バケツ、洗面器、風呂いす、ザル、ボウル、ごみ箱など)を、10月から無料でボックス回収(拠点回収)することを決定。材料リサイクルを目指すそうだ。

https://www.city.chiba.jp/somu/shichokoshitsu/hisho/hodo/documents/180920-3-2.pdf

専門部会を設置した東京都は、独自の条例制定も視野に、2019年夏までに総合的な対策をまとめるとのこと。既に2万本の紙製ストローを試験的に庁内のカフェで配布し、来客の反応も調査した。

神奈川県は先般発表した「かながわプラごみゼロ宣言」の具体策として「マイエコ10宣言」をまとめた。これでプラごみが減れば苦労はないが、とりあえず1歩前進と思いたい。

http://www.pref.kanagawa.jp/docs/ap4/cnt/f360478/

埼玉県は、親子向け講座に今年からプラごみ問題の解決を加え、既に夏休みに小学校へ出前講座もしたとのこと。今後、学校や自治会などへの出前講座を重ね、意識啓発に努めるそうだ。

<参考>

日本経済新聞(2018.11.17)「プラごみ削減 自治体も動く」↓

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO37866750W8A111C1L72000/

 

 

プラスチック戦略素案をめぐる攻防、パブコメ募集開始

プラスチック戦略素案が小委員会で承認された。以降、各方面の関係者の感想を見聞きした。中にはある勉強会の場で、「バカか!」と吐き捨てるようにおっしゃった業界団体の方もいた。

公式には10月29日、市民団体(15団体)により「減プラスチック社会提言書」が発表された。11月13日には経団連が「「プラスチック資源循環戦略」策定に関する意見」を発表した。

市民団体の提言書は、黙殺を恐れザッとでも目を通してもらうことを優先(しかもすぐに実現可能であり素案に考慮されることを重要視)したため薄く1枚のみ。経団連のそれは、多少長くても読まれるに違いないことを確信しているから、自信に満ちあふれた11頁にもわたる立派な意見書である。内容も経団連のそれは図表も挿入し、わかりやすい。しかも文の末尾では、宣戦布告することも忘れていない(下記)。

http://www.keidanren.or.jp/policy/2018/098_honbun.pdf

今般、政府が策定する「プラスチック資源循環戦略」は、施策の方向性を示す ものであり、戦略に基づく具体的な制度や施策は今後、審議会等で検討される。 経団連としてもこれらの議論に参画し、持続可能な社会の実現に貢献していく。

経団連は、中西会長が先般表明した「物言う経団連」を取り戻すべく、審議会の場で強硬に素案に反対するつもりのようだ。国際的には「小粒」になったといわれる日本企業だが、国内での経団連の力はまだまだ強力だ。しかし、これまで国が財界を荒波から守りすぎたため、企業の「小粒化」が進んだのではないか、との見方もある。

海外の企業は、プラスチックの大幅削減に邁進している。日本企業も個別には削減に取り組み始めているように見えるが、海外企業に比べ「遅れ」を実感している企業も多い。宣戦布告はそんな「焦り」の裏返しのようにも見える。

環境省の発表した素案の目玉は「使い捨てプラスチックの25%削減」である。ようやく目標とする数値が出て、安堵する思いもあるが、やはり海外の意欲的な目標値に比べ「低すぎる」との感が否めない。

来年日本で開催されるG20で、この数値目標で日本が本当にリーダーシップを取れるのか?笑われるだけでは?と心配になる。しかし、国はおそらくそのあたりはスルーし、プラスチックを熱回収することの意義と効果をアピールすることに専念するのだろう。

<補筆>素案に対するパブコメが開始された。

環境省「プラスチック資源循環戦略(案)に対する意見の募集(パブリックコメント)について」↓

http://www.env.go.jp/press/106186.html

<参考>

●環境省「プラスチック資源循環戦略(素案)」↓

http://www.env.go.jp/water/marirne_litter/conf/c02_14_shiryo03-1.pdf

●市民団体の提言書↓ *デポジット制度にも触れていない簡易なもの。一部誤植も?

環境大臣 原田 義昭 殿

呼びかけ:減プラスチック社会を実現するNGO ネットワーク

国際環境NGO グリーンピース・ジャパン
一般社団法人 JEAN
特定非営利活動法人 パートナーシップオフィス
容器包装の3Rを進める全国ネットワーク
全国川ごみネットワーク
さがみはら環境問題研究会
公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWF ジャパン)
特定非営活動法人プラスチックフリージャパン
ダイオキシン環境ホルモン対策国民会議
NPO 法人 菜の花プロジェクトネットワーク
「ごみゼロプラン静岡」市民ネットワーク
奈良エコライフ研究会
エコハウスしずおか
特定非営利活動法人プロジェクト保津川
認定NPO法人環境市民
※ 2018 年10 月26 日時点までの賛同団体として

はじめに
貴省において審議中の「プラスチック資源循環戦略」(以下、同戦略)について、以下のとおり提言します。
同戦略においては、①先のG7シャルルボワ・サミットで提示された「海洋プラスチック憲章」の内容を超えた取り組み(目標設定)、②使い捨てプラスチック使用量の大幅な削減、③プラスチック容器包装廃棄物の資源有効利用率に熱回収分を加算しないことを明記等すべきです。とくに③で指摘した事項は、現行の算定手法を改めないまま2019年のG20において同戦略を日本モデルとして世界に表明した場合、日本への不信感を招きかねない重要事項です。

提言1.2030年までに「減プラスチック社会」への構造転換を図ること

私たちは、同戦略はこれまでの「大量生産、大量消費、大量廃棄」の経済構造から、EUが提唱する「循環経済」型の社会構造に転換することを国として国内外に宣言するものである、と考えます。その将来的なあるべき姿として「減プラスチック社会」を提唱します。減プラスチック社会への構造転換は、SDGsの目標達成と連動して図られるものであり、新たな雇用や産業の育成・創設にもつながります。

(1) 使い捨てプラスチック使用量の削減
2025年までに、少なくともこれまで国外に輸出していた量に相当する150万トン(累積プラスチック排出抑制30%)の使い捨てプラスチックを削減する。そして2030年までに使い捨てプラスチック使用削減50%以上を目指す。

(2) レジ袋の削減
レジ袋の有料義務化後、使用量削減の一つの指標として「レジ袋辞退率」の採用。2020年を目処にレジ袋の有料義務化が図られたのち、2025年までにレジ袋辞退率を90%以上とする目標を設定する。レジ袋の辞退率を向上させる一連の取り組みを通じて、減プラスチック社会の姿を国民各層において共有し、プラスチック資源循環戦略の各目標の達成を図る。

提言2.法的規制(製造、販売、使用に係る措置)等を課すべき事項

(1)日本の川辺や海岸に多いプラスチック廃棄物(タバコのフィルター、食品容器包装、ペットボトル、レジ袋、プラスチックの使い捨て食器)と漁具及び農業系プラスチック廃棄物について消費削減、市場規制、製品デザイン要求等について規制すること

(2) 2020年までに、マイクロビーズの製造、含有製品の販売及び使用を禁止すること

(3) サーキュラーエコノミーに準じた循環型社会形成推進基本法の見直しをはじめとする、減プラスチック社会への構造転換を図るための法整備を行うこと

提言3.プラスチック容器包装廃棄物の熱回収について改善・推進すべき事項

プラスチック容器包装廃棄物の「資源有効利用率」は84%とされているが、これには熱回収57%が包含されています。パリ協定では今世紀後半の実質的な排出ゼロ、つまり化石燃料からの脱却を目指しており、我が国もこれを受けて、2050年までの温室効果ガス排出量80%削減を目指しています。この文脈によりG7海洋プラスチック憲章でも熱回収がCO2排出に繋がるためリサイクルとしては加算されていません。

(1)適切な指標による国民理解の向上のためにも、プラスチック資源循環戦略(素案)に記載ある「有効利用される割合は、我が国では一定の水準に達している」との認識を改め、資源有効利用率には熱回収分を含めないこと

(2)減プラスチック社会及び脱炭素社会の構築に向けた財源としての炭素税等を確保すること

●毎日新聞「NGO プラごみ「熱回収」に懸念 環境省に提言」↓

https://mainichi.jp/articles/20181030/k00/00m/040/120000c

 

 

 

 

委員が提案したデポジット制度、都は無視?

東京都廃棄物審議会のプラスチック部会第1回の速記録が公開された。

http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/basic/conference/resource/tokyo/index.files/30.09.20-gijiroku.pdf

読むと佐藤さん(弁護士)という委員がデポジット制度について述べている。(p.26抜粋)

大きな議論として、デポジット制をどうするかという問題があります。私は ことしの春にスウェーデンに行きましたが、デポジットが行われています。しかし、デポ ジットの回収場所が余りないんです。地元の人に聞くと、以前よりデポジットの回収場所 が減っているとのことです。
それで、デポジットをどのようにやっているのですかというと、ホームレス的な人に空 容器を寄付して、その人たちが集めて、デポジットの回収場所に持っていくような形もあ るとのことでした。散乱ごみ対策にもなるようです。
それが日本に合うかという問題は別ですけれども、色々な形がありうるという例だと思 いました。いずれにしろ、空容器はポイ捨てされやすいです。散乱ごみの対策としては一 つの選択ではないかと思いました。

非常に適切な意見だ。デポジット制度にはいろいろな形がある。それを知らずに、やみくもに反対する人を見かけるが、それは大きな間違いだ。

デポジット制度とは、「預り金上乗せ方式」などと呼ばれる制度で、散乱ごみの減少に絶大な効果をもつ経済政策だ。散乱ごみが減るのは回収率が上がるためであるが、消費抑制にも期待できる。消費抑制効果は散乱ごみ抑制効果ほどは知られていないが、上乗せしたデポジット額相応の抑制効果があると経済学ではいわれている。

飲料業界団体がデポジット制度に猛反対するのは、この消費抑制効果(販売量減少効果)のためである。

例えば、100円のペットボトルに30円のデポジット(上乗せされる保証金)がついて130円で売られれば、買う人が多少減る、ということだ。ペットボトルを戻せば30円戻ってくることが頭ではわかっていても、その時点では130円支払わなければならないため、購買意欲が多少削がれるのは当然だろう。

デポジット制度の散乱防止効果については、ペットボトルを戻せば30円戻ってくるならば、多くの人がペットボトルを戻すようになる、ということである。もしポイ捨てされた場合でも、拾えば30円戻ってくることがわかっていれば、ホームレス以外でも拾う人がいるはず(多分私も拾う)。そのため、経済政策の中で、最も散乱ごみ効果が高いのはデポジット制度だと言われている。

廃棄物分野では、ポイ捨てなどのため見えないフローへ行くごみを、また正規のルートに戻す仕組みが必ず必要なのだ。

デポジット制度は、1960年代後半から北米で大きな議論を呼び、1970年に入ると、カナダやアメリカで制度を導入する州が相次いだ。日本でデポジット制度が盛んに議論されるようになったのは、1971年に空き缶を対象にデポジット制度が導入された米・オレゴン州の影響が大きい。

飲料業界の猛反対に負けて導入できなかった州も多かったが、反対を抑え導入した州は、それぞれ手探りでデポジット制度をおこなった。

最初はリユースびんもまだ多かったため、飲料容器は小売店で回収され、小売店でメーカー毎に振り分けられ各メーカーに返却された。しかしカリフォルニア州で、「リデンプション方式」などと呼ばれるデポジット制度が導入された頃から様子が変わった。現在、北米で返却場所が小売店のみという州は見当たらない。使い捨て容器を小売店に戻す必然性がなくなったためである。中には、小売店回収を禁じている州すらある。多くの小売店でチマチマと回収していると、それを中間処理施設まで運ぶのにコストがかかりすぎる、など小売店回収にはいくつかのデメリットが存在するためだ。

現在北米では、容器を専門に回収する施設(アメリカではリデンプションセンターなどと呼ばれる場合が多い。カナダでは環境ディポあるいは単にディポなどと呼ばれる)がどこの州にもある。使い捨て容器は、その施設から直接中間処理施設(ウェアハウスなどと呼ばれる圧縮・保管する施設)へ行き、そのあとリサイクル工場に売却される。

小売店で回収されている場合も同様だ。使い捨て容器をメーカーごとに分別しメーカーへ戻すなどという非効率なことはもうとっくに行われていない(にも関わらず、いまだにデポジット制度反対論者は「日本の小売店は狭いからメーカー毎に分ける場所がない」とか「小売店負担が大きすぎる」などという)。

第2回目の同会議の議事録はまだ公開されていないが、傍聴に行った人の話によると、別の委員がハーフバック・デポジット制度について提案してくれたらしい。

ハーフバック・デポジット制度(上乗せしたデポジットを全額返金せず、半額返金)もデポジット制度の優れた1方式で、現在島嶼国の間で最も注目されているデポジット制度である。

このハーフバック制の利点は、返金しないデポジットを他の用途、例えば海ごみ対策などに利用できることだ。

たとえば30円のデポジットならば15円返金し15円残る。また、ハーフバック制は必ずしも半額とは限らないから、20円返金し10円残してその分を海ごみ対策に使うことも可能である。

現在ハーフバック制を導入している地域では、返金しないデポジットをごみ減量に利用したり、あるいは気候変動など環境対策全般に利用するなどしている。

しかし、東京都の第3回目の式次第を見ると、このデポジット制度について審議する様子はない。

もし、都が独自(*)で飲料容器を対象にハーフバック・デポジット制度を導入するならば、返金しないデポジットを海ごみ対策金として活用できるのに・・・残念だ。

*限定された地域内でのデポジット制度導入は難しいため、日本全土での制度導入が望ましい。しかし、東京都程度広ければ可能だと考えられる。

「東京都廃棄物審議会プラスチック部会(第3回)会議次第」↓

http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/basic/conference/resource/tokyo/index.files/30.11.06-siryou.pdf