東大などが実験、生分解性プラは深海でも分解。ポリ乳酸は分解せず

東京大学や海洋研究開発機構、群馬大学、製品評価技術基盤機構、産業技術総合研究所、日本バイオプラスチック協会は、様々な生分解性プラスチックを水深の異なる海底に沈め、分解するか実験を行った。

その結果、生分解速度は水深が深くなるにつれて遅くなるものの、全ての深海底で生分解されることも確認されたという。

実験は、神奈川県の三崎沖(水深757 m)、静岡県の初島沖(水深855 m)、伊豆小笠原島弧海底火山付近の明神海丘(水深1,292m)、黒潮続流域の深海平原(水深5,503 m)、日本最東端の南鳥島沖(水深5,552 m)で行われた。

研究成果は、国際科学専門誌「Nature Communications」オンライン版に掲載された。

以上、東京大学HPより↓

https://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/topics_20240126-1.html

これまで生分解性プラスチックは、微生物の少ない深海では分解しないだろうと考えられていた。しかし、この実験によりポリ乳酸以外は分解することが実証された。

今回の結果は長年の懸念を払拭するよい結果だと思う。深海でも分解するならば、地中深くでも分解するだろう。そのため、どうしてもプラスチックを使わざるを得ないものは、生分解性プラスチックを使うのがよいと思う。しかし、強度や耐久性が必要なものにはやはりまだ使えないのではないか。

プラスチックのリサイクル工場はマイクロプラスチックの汚染源

プラスチックを使ってしまった場合は、燃やすかリサイクルするしかない。燃やすよりリサイクルするの方がCO2発生量の見地からマシだろう。

とはいえ、リサイクル工場から大量のマイクロプラスチックが放出されていることが、昨年のイギリスの研究でも判明している。フィルター設置後も、放出量は改善されたとはいえ、それでも相当な量だ。

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2772416623000803

処理量の6%も洗浄水と一緒に放出されている。水だけでなく、大気中に放出してしまう量も多いだろう。

国立環境研究所が、ベトナムのメカニカルリサイクルの工場で行ったマイクロプラスチックの調査結果も気になる。

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0269749122003281

そのため、この記事↓の主張は、残念だがもっともな部分が多い。

https://cigs.canon/article/20230927_7646.html#note1

しかし、ごみ焼却場からもマイクロプラスチックが発生していることは最近の研究で判明している。清掃工場内だけでなく、なぜか焼却灰を埋めた埋立地の浸出水からも検出されているのだ。

高温で焼却しているにも関わらず、なぜマイクロプラスチックが発生するのかわからない。焼却後、灰や煙が通るルートのどこかで、焼却灰や飛灰がプラスチックに触れるようだ。

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ペットボトルから大量のマイクロプラ、だけどプラスチックに付着した化学物質はそれより怖いかも

米科学アカデミーの紀要(PINAS)に、大量のマイクロプラスチックがペットボトルから検出されたとの研究結果が掲載された。

https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2300582121

メディアはマイクロプラスチックのみに注目しているが、本当の問題はそこに留まらない。プラスチックに付着あるいは添加されていた化学物質が何か、ということも問題なのだ。

PET樹脂には可塑剤は使われないから安全だ、とよく聞くが、そんなことは決してない。ペットボトルから、いろいろな化学物質が検出されている。

例えば昨年、熊大の研究で分析されたフタル酸エステル類は、胎児や子どもの発達、生殖能力などにも影響を与える環境ホルモンだ。

熊本大学の研究チームの研究「Polymer types and additive concentrations in single-use plastic products collected from Indonesia, Japan, Myanmar, and Thailand」(インドネシア、日本、ミャンマー、タイから集められた使い捨てプラスチック製品の樹脂の種類と添加剤濃度)↓

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0048969723026049

しかも、PINAS論文によると、ペットボトルの水で見つかったプラスチックはPETだけではなく、ナイロンやポリプロピレン、ポリスチレン、塩ビまでもが見つかっている。ナイロンは水をろ過する際に使われたのかもしれないが、ポリスチレンや塩ビはなぜだろうか?ちょっと怖い気になる樹脂だ。

しかし、最近はコマーシャルの影響か、日本でも「水は買うのが当たり前」になっていると聞く。プラスチックに入れられた水の方がよほどアブナイと思うのだが・・。

「安心」な環境に慣れすぎたせいで、危険かもしれないプラスチックに心が動くのだろうか?怖い物みたさ?それとも「プラスチック中毒」の人が増えているのかもしれない。

ファミマの環境対応:スプーンなど有料に。「ファミマのレシートにはビスフェノール類が入っていなかった」

ファミリーマートはスプーンやストローなどを今月29日から有料化する。

価格は4円から6円。まずは全国にある直営店およそ100店舗を対象に始め、全国およそ1万6000店に順次、広げるそう。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240119/k10014327161000.html

ファミリーマートの「脱プラ」対応は、セブンなどに比べ進んでいる。やはりカトラリーは有料にするか、EUやカナダなどのように原則禁止にすべきだ。

そういえば、先日参加したTウォッチの環境ホルモンセミナーで、感熱紙のビスフェノール類の話があった。

日本はビスフェノールAがそうそうにやめたが、代わりにビスフェノールSを使ったというのは有名な話だが、ビスフェノールSの毒性もビスフェノールAとそうは変わらない。

そのため、その講師が所属する団体ではあちこちの感熱紙レシートのビスフェノール類を調べたそう。

その結果、大手コンビニの中では、ファミリーマートのレシートにビスフェノールAもSも含まれていなかったという。ただそれが、調べたそのファミマの店舗だけのことなのか、ファミマ全体なのかはわからないとのこと。

スーパーは、調べた店すべてでビスフェノール入りレシートが使われていたが、自治体の施設の感熱紙レシートは、ビスフェノール類を使っていない自治体も多少あったらしい。

感熱紙を使っている限りビスフェノール類から逃れられないと思っていたため、それまで普通紙に印字されたレシート以外はこわごわ触れていた。しかし、ビスフェノール類フリーの感熱紙もあるというのは朗報だった。

もし、ファミリーマート全店でビスフェノール類フリーのレシートを使っているならば、もっとファミマ広報部は宣伝すべきだ。

今日から相模原市の人工芝軟式野球場がオープン

今日(2024.1.20)から相模原スポーツ・レクリエーションパーク内の軟式野球場がオープンする。

それに伴い、昨日は一般解放日だった。

https://www.city.sagamihara.kanagawa.jp/kurashi/shisetsu/sports/baseball/1029781.html

見学したところ、内野にも外野にも人工芝が敷設され、黒ゴムチップが大量にすき込まれていた。

同じ施設内の人工芝グラウンドの芝に比べ、芝片はツンツンしてなく平面的で長め。周囲に飛び散っていた芝片を拾い、長さを測ったら6.5センチもあった!

黒ゴムチップは少し小ぶりで、サイズはさまざま。古タイヤか、それとも車のドアパッキンの端材だかをグラインダーにかけたような形をしていた。ヘッドスライディングをしたら、細かい破片を吸い込みそうだ。

魚もゴムチップを食べてしまうそうだから、被害は人間だけに留まらない。

こんなものを何トンも環境中にまき、環境を汚染して、地球生態系は本当に大丈夫なのだろうか?心配だ。

EUは昨年、人工芝のゴムチップを「意図的添加のマイクロプラスチック」であるとして、販売禁止を決めた。現在、猶予期間中だからまだ販売されていると思うが、おそらくもう製造は縮小されているだろう。日本も早急に手を打たないと、大変なことになるのではないか。

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アイルランド、2月1日からデポジット制度開始

アイルランドでは、予定通り2月1日から飲料容器のデポジット制度が開始される。対象となる飲料容器の種類は、プラスチックとアルミ、スチールの3種類だ。ガラスは除外された。

サイズは150mLから3リットルまで。150mL以上500mL以下のデポジット額(保証金額)は15セントユーロ、500mLを超える容器は25セントユーロになる。

デポジット付き容器にはロゴが印字されている。印字のない容器は、返金を受けることができない。牛乳などの容器はデポジット制度の対象外だ。

容器の返却場所は、販売店やスーパーなど。自動回収機に破損していない空き容器を入れると、レジで換金できるバウチャーが発行される仕組みだ。自動回収機でなく、店頭に持ち込んだ場合でも、容器が破損していないことを確認後返金されるという。

ガラス容器に関しては従来通りのルートで回収されるそうだ。

EU指令後、EU域内ではデポジット制度を導入する国が相次いでいる。

参考↓

米ニューハンプシャー州、生産者責任の下 デポジット制度法案進行中

アメリカ・ニューハンプシャー州では今年、デポジット制度の新たな法案が進められている。

下院法案1636は、プログラムを監督する生産者責任組織(PRO)を設立し、飲料生産者と流通業者を貢献メンバーとした。

制度を運営する費用は政府機関ではなく、生産者が負担するものとする。

法案の提案者の1人であるシェリー・ダジー・ローズ州下院議員は、「政府がシステムを設定して管理する従来のモデルは、とりわけ予算の制約上、ニューハンプシャー州では効果的ではない」と述べているそうだ。

https://www.sentinelsource.com/state_news/new-bottle-bill-shifts-responsibility-to-beverage-producers/article_e59a57d5-77c5-5163-89d8-0180aae5ac7e.html?eType=EmailBlastContent&eId=6cae144f-60cf-4ef9-a917-f14397808cc6

30年前に導入されたデポジット制度には生産者責任の考えが含まれていないものもあったが、これからのデポジット制度は当然、生産者責任の下で行われるべきだ。ニューハンプシャー州の法案に、生産者責任の考えが取り入れられたのは当然だろう。

相模原の川魚のPFAS濃度は、中国産アサリよりも高い

東京新聞によると、相模原市東部を流れる道保川(相模川の支流)の上流から約3.5キロ地点で捕った魚やアメリカザリガニのPFAS濃度を調べたところ、カワムツの肝臓に1キロ当たり14万ナノグラム、身には同2万9000ナノグラムものPFASが含まれていた。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/302128

1週間に身を8g食べれば「健康リスク」もあるというレベルだという。8gということは、刺身にしたら1切れの半分も食べられない計算だ(刺身1切れは15から20g)。

昨年、Food Safety Citizen` Watch No.78,(2023.10.27)に掲載されていた中国産アサリの水煮は1450から3678ng/kg、同じく中国産アサリを使った「あさり飯の素」が5132ng/kgだったことを考えると、相模原産の川魚はさらに高濃度だということだ。

昨年調べられた水煮やあさり飯の素は、いずれも中国産のアサリを使い日本企業が日本国内で販売しているものだ。アサリがPFASに汚染されたのは、渤海に流れ込む河川の上流でのフッ素化学工場を含む工業地帯からの排水が原因だと推定されていた。

しかし、一緒に調べられた国産の「活アサリ(三重県産、北海道産、愛知県産)」はそれより1桁濃度が低かったため、「活アサリを食べれば大丈夫」と楽観していた。

ところが、地元の川魚のほうが、心配していた中国産アサリの水煮より1桁から2桁濃度が高かったのだ。

原因は、南橋本に立地している工場の排水だろうか?それとも??

この記事を読んだ後、図書館へ『これでわかるPFAS汚染』(原田浩二編著、合同出版)を借りに行った。昨年末に出たばかりの本で図書館にはまだなかったため、買ってほしい本としてリクエストしようとしたが、「購入するかどうかはわからない」と言われた。

https://www.godo-shuppan.co.jp/book/b636379.html

相模原市の図書館には、最新のPFAS情報を「PFASにおびえる市民」に提供する義務がある、と思うのだが。

<補筆2024.3.8>

相模原市立図書館がようやく『これでわかるPFAS汚染』を購入した。他の人からのリクエストもあったようだ。感謝!

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相模原市、今年度の地下水と河川のPFAS濃度を公表。南橋本の汚染源はどこ?

気付かなかったが、今年度(2023年度)の相模原市の地下水と河川のPFAS濃度が発表されていた。

https://www.city.sagamihara.kanagawa.jp/kurashi/1026489/kankyo/1026503/jyokyo/1023819.html

昨年同様、最も濃度が高いのは南橋本の地下水だ。1400ng/Lと突出している。昨年は1500ng/Lだったから、多少マシになったのか、それとも誤差の範囲なのだろうか。

相模原市の場合、以前新聞に書かれていたように、各地で検出されるPFOSとPFOAの比率が明らかに異なっているから、汚染源は複数だと考えられる。PFOSが優勢な地域の汚染源は米軍補給廠などが由来の泡消火剤だと思われるが、南橋本の汚染源はどこかの工場だろう。

PFASを使う工場はどこなのか。市は汚染源を把握し、指導しているのか。もし、市がまだ何も手を打っていないとしたら・・恐ろしい。

市が測定するPFASはPFOSとPFOAのみだが、昨年11月に第一種特定化学物質に指定することが閣議決定された「PFHxS若しくはその異性体又はこれらの塩」も調べて欲しい。少なくとも、市内の飲み水だけでもPFHxSを調べるべきではないか。

安心な水道水の享受は、住民の権利のはず。

横浜市の水道水の検査項目を見ると、PFHxSも昨年度から追加された。神奈川県も県内3カ所の浄水場でPFHxSを調べているようだが、これだけでよいのか不安が募る。

川崎に首都圏最大級のプラスチックリサイクル工場を建設

J&T環境株式会社、東日本旅客鉄道株式会社および株式会社JR東日本環境アクセスの3社は、株式会社Jサーキュラーシステムを共同で設立。1月4日から川崎にリサイクル施設の建設を開始した。

首都圏最大級となる200t/日の使用済みプラスチック処理能力を有し、選別から再商品化まで一貫した事業を行う計画だという。

回収したプラスチックに応じ、マテリアルリサイクルでもケミカルリサイクルでも対応できるらしい。

今年(2024年)10月にケミカルリサイクル用原料製造施設(圧縮・固化)を先行稼働し、来年の4月には高度選別設備を稼働する。

https://www.jfe-eng.co.jp/news/2024/20240109.html

プラスチックはサーキュラーエコノミーにそぐわない素材だが、プラスチックを使っている限りはこの手の施設が必要だということは理解できる。それでもやはり、プラスチックのリサイクルを「サーキュラー(循環)システム」と呼ぶのは悪い冗談のように聞こえるのでやめてほしい。

プラスチックのリサイクル工場は、マイクロプラスチックの一大発生源だ。焼却よりマシだとはいえ、発生したマイクロプラスチックは環境中に流出し、海底や川底に溜まるだけでなく、風に乗って地球を「循環」するものもある。