デポジット制度:ノルウェーのペットボトルリサイクル制度

海ごみ対策として、スコットランドがデポジット制度導入を表明したことをきっかけに、英国全土でデポジット制度が検討されている。

BBCニュースで、ノルウェーのペットボトルのデポジット制度が紹介された。96%もの高い回収率を達成していることから、海洋プラスチックごみ汚染問題の解決の一助になるのみならず、資源の節約にもなるという。さらに、飲料メーカーがシステムに必要な費用を支払うため、税金も節約できる。

しかも、この映像にあるノルウェーのペットボトルはキャップが外れないタイプだ。キャップを付けたまま自動回収機に入れられ、工場へ運搬後、リサイクルされる。

日本のスーパーや行政回収では、廃ペットボトルの品質向上のためとして、キャップやフィルムを剥がすことが求められている。しかし、海外でペットボトル回収の際に、キャップ外しを要求されることは少ない(ラベル剥がしを求められることはまずありえない)。なぜ日本のペットボトルリサイクルだけが、消費者にキャップやフィルム外しを過度に要求するのか不明である(もちろん、理由はそれなりにいわれている。要は中間処理施設での圧縮や、工場での選別工程の問題であるが、納得できる理由ではない)。

日本のこのキャップ外しの習慣が、キャップの外れないペットボトルの普及を阻害し、結果として、キャップが大量に川辺や海岸に落ちている原因の1つとなっているのではなかろうか?

BBC News: Plastic bottle plan that could save oceans;

http://www.bbc.com/news/av/world-europe-42968529/plastic-bottle-scheme-that-could-help-clean-the-oceans

<関連記事>

ノルウェーのデポジット制度 高い回収率維持の理由

キャップの落ちないペットボトル

プラスチックごみによる海洋汚染問題は、地球温暖化問題同様、緊急に対処すべき問題である。

どういう種類のごみが多いかについては、数えながらごみを拾う(一社)JEANなどののデータにより判明している。

例えば、ICC2016によると、「ボトルキャップ(プラスチック)」は11番目(破片類を除くと8番目)に多いごみである。これらキャップは、コアホウドリなどの生物に誤食されている。

かつて飲料缶のプルタブは、缶から外れた。しかし、野外に落ちたプルタブで、子どもが足に怪我をしたり、動物が誤食するなどの被害が増加し問題になったことから、今ではプルタブは缶から外れなくなった(背景として、アメリカで、外れるプルタブを禁止する州が増加したことがある)。

キャップの落ちないタイプのペットボトルは既に存在している。特許がらみの問題などもあるのかもしれないが、食環協は、散乱するボトルキャップを減らすため、キャップの落ちないタイプのペットボトル以外では飲料を販売しないというルールを業界内に設けるべきではなかろうか。

もし、食環協が自主的にできないのならば、農水省か環境省が業界を指導すべきである。

ノルウェーの飲料容器自動回収機の映像を見ると、キャップ付きのペットボトルがキャップが付いたまま回収されている。

参考:「デポジット制度:ノルウェーのペットボトルリサイクル制度」↓

デポジット制度:ノルウェーのペットボトルリサイクル制度

ICC2016↓

http://www.jean.jp/activity/result/Jean2016shortR2.compressed.pdf

日本コカ・コーラの「ビジョン」に失望

1月19日の米国のザ コカ・コーラカンパニーの100%回収するというグローバルプランを受けて、日本コカ・コーラも容器の新しい目標を発表した。

しかしながら、これはグローバルプランに比して見劣りのするプランである。

柱は以下の3つ。

■ PETボトルの原材料として、可能な限り、枯渇性資源である石油由来の原材料を使用しません。原材料としてリサイクルPETあるいは植物由来PETの採用を進め、PETボトル一本あたりの含有率として、平均して50%以上を目指します。
■ 政府や自治体、飲料業界、地域社会と協働し、国内のPETボトルと缶の回収・リサイクル率の更なる向上に貢献するべく、より着実な容器回収・リサイクルスキームの構築とその維持に取り組みます。国内で販売した自社製品と同等量の容器の回収・リサイクルを目指します。
■ 清掃活動を通じて、地域の美化に取り組みます。また、容器ゴミ、海洋ゴミに関する啓発活動に積極的に参画していきます。

要するに、原材料に植物由来原料を50%以上使うということの他は、これまでとの違いが不明である。

コカ・コーラはこれまでも、グリーンバードなどの「清掃活動」には一応協力しているはずで、「啓発活動」も1970年代の空き缶散乱問題からこのかた、効果はともかくとして、やっていたはず。

「2030年までに自社製品の包装材を100%回収してリサイクルする計画に着手する」ということが、19日に発表した目標の主旨ではなかったのだろうか?

日本では容器包装リサイクル法(以下、容リ法)により、分別収集は自治体、再商品化は製造・利用事業者、とその役割分担が決められている。例えば、誰かがペットボトルのコカコーラを買って、自治体の分別収集にボトルを出したとすると、それは税金で集められ、税金で選別・圧縮・梱包後にようやく再商品化事業者に有価で引き渡される。有価とはいえ、自治体が負担した費用を取り戻せるほど高額であるはずはなく、自治体は回収のたびに大損をする。しかし、コカ・コーラ社などが負担するペットボトルの再商品化費用などはゼロに等しい。要は、売れば売るほどメーカーは儲かるが、自治体は損をする(税金が使われる)というのが今の日本の仕組みである。

ペットボトルを使う人も使わない人も、もれなく支払う税金を使って分別収集をするということは、税金でコカ・コーラ社などの飲料メーカーを応援しているのと同じなのだ。

多くの研究者や市民団体は、分別収集責任を自治体におく容リ法はおかしい、というが、環境省が非力であるためこれまで改正されてこなかった。19日に米国で発表された目標を聞いたときは、日本コカ・コーラが率先してデポジット制度などの新たな回収スキームを計画し、これまでの自治体任せの回収から抜け出してくれれば、日本の容リ法も「外圧」により改正されるかも?という期待を抱いたが、どうも甘かったようである。

日本の現在の回収率は、自治体の税金による成果である。その上にあぐらをかいたビジョンではなく、せめて自社販売量に等しい量の缶やペットボトルを自費で回収する覚悟を決めてから、ビジョンを発表してほしかった。

世界中の海洋で汚染が指摘されている。ペットボトルは、海洋汚染物質の1つに名指しされている。日本からの流出も多い。

グローバル企業としての責任の果たし方として、19日のグローバルプランは評価に値した。しかし、今回の日本コカ・コーラの発表は、それを消し去ったように見える。

 

「廃棄物ゼロ社会を目指して。日本コカ・コーラ、容器の2030年ビジョンを発表」↓

https://www.cocacola.co.jp/press-center/news-20180129-14-1

 

平成28年度海洋ごみ調査結果

平成28年度海洋ごみ調査結果をまとめた資料が公開された。

環境省報道発表資料↓

http://www.env.go.jp/press/104995.html

27年度の調査結果と比較するとそれほど大きな変化はないが、ザッと見た限りではペットボトルの比率が減少しているようである。

27年度資料↓

http://www.env.go.jp/water/marine_litter/1_h27_hyochakugaiyou.pdf

いずれにせよ、飲料容器をデポジット制度など散乱ごみ対策に定評のある方法で回収することで、少なくともこの分の海洋ごみは激減する。

海洋ごみを警戒し始めた国では、近年続々とデポジット制度を採用し始めた(例えば、オーストラリアのニューサウスウェールズ州など)。

日本でも真剣に検討すべき時期に来ているのではなかろうか。

また、有機ハロゲン系の難燃剤PBDEが、採取した全ての地点のマイクロプラスチックから検出されたとのことである。この結果は、わずかな便利さのために、化学物質を安易に使うことに対する警鐘であると考えられる。