自治体のペットボトル回収を見直すべき時期

全国清涼飲料連合会(全清飲)は、2030年までにペットボトルの100%回収・リサイクルを目標に掲げている。

しかし、それを実現するための全清飲の計画は、自動販売機横に専用回収箱を設置することだ。その程度でペットボトルを100%回収できるのか。もし回収できるならば、もうとっくに全量回収されているのではないか。

全清飲の計画では、ペットボトルの川などへのポイ捨てを防いで回収率を上げるため、自動販売機の横に「自販機専用空容器リサイクルボックス」と名称を統一したゴミ箱を設置し、分別回収を呼びかける。2025年度までの目標として代替素材の活用を視野に入れる。

自販機横の回収箱から飲料容器が溢れ出している光景をよく見かける。特に軽いペットボトルは、溢れるとすぐに風で飛ばされ、缶よりもはるか遠くまで転がり、拾うことも難しい。

自販機横の回収箱が散乱ごみの大きな原因の1つになっていることは確かだ。

日本の「高い回収率」は、自治体が税金を使って定期回収しているためだ。とりわけ都市部の自治体は、週に1回という異様なほどの真面目さで頻繁に回収している。住民もその便利さを享受し、回収してもらうのが当然だと思っているようだ。

「だってペットボトルは売れてるのよね?じゃあソンしてないからいいじゃない」と。

しかし、「売れてる」金額よりも、回収に費やす金額(税金)のほうがはるかに大きい。

しかも、自治体の回収方法によっては、回収行程のどこかで、多くのペットボトルがルートから漏れ出し、川に流出し海へ行く。

ペットボトルを袋に入れ、屋外の集積所に出して、カラスよけのネットをかけるだけの方法で回収している自治体のペットボトルは、よくネットがめくれて袋ごと風で飛んでいる。また、自治体が準備したコンテナにバラでペットボトルを入れさせて回収する自治体のペットボトルも、コンテナからペットボトルが溢れ、散らかっている光景を旅行先で見たことがある。

多くの自治体のペットボトル回収方法は万全ではなく、自販機横の回収箱同様、散乱ごみの原因の1つになっているのだ。

しかし、自治体が頻繁に回収するおかげで、高い回収率を維持していることも事実。事業者団体はその「既成事実」を当然と考え、現在の高い回収率を楯に、生産者責任としてまともな回収方法(例えばデポジット制度など)を考えていないようにみえる。

それが今回の決定である「自販機横に専用回収箱を置いて100%の回収を目指す」という甘い方針につながっているのではないか。

自治体が散乱ごみ対策としてできることの1つは、まずペットボトルの定期回収をやめ(あるいは回数を減らし)、回収率を下げることで生産者責任を促すのが、案外一番の近道ではないか、と最近考えている。

少なくとも税金を湯水のように使ってペットボトルを頻回に回収し、ペットボトル生産者の営利事業を手伝っているのはおかしくはないか。

その上、回収した(回収してあげた)ペットボトルを容器包装リサイクル協会へ渡した挙げ句、AだのBだのDだのとランク付けされ、一喜一憂するのは馬鹿げていないか。

自治体には今一度考え直して欲しい。

<参考>

朝日新聞(2018.11.30)「ペットボトル回収・再利用「100%」へ 業界が初目標」

https://digital.asahi.com/articles/ASLCY54TZLCYULFA01M.html

 

 

 

藤前干潟にペットボトルが大量漂着、18万本回収するもまだ残る

以前から藤前干潟には、ペットボトルや発泡スチロールなどのごみが、庄内川や新川などから流れ込むことが知られていた。

今年9月の台風の影響で、大量のペットボトルが藤前干潟に漂着している。

10月以降市民有志などがペットボトルを18万本回収したが、まだ撤去は完了していないため、15日も拾うとのこと。小型ペットボトルが解禁された1996年当時のものも拾われている。

(補筆)15日には1万2000本のペットボトルが拾われたそうだ。問題を知った業界団体・PETボトル協議会も参加した。同団体の事務局長は「衝撃的な量。リサイクルが進んでいるとはいえ、ポイ捨てを防ぐ啓発が重要と実感した」とコメント。しかし、ポイ捨て防止の啓発はこれまでも既に十分なされている。これはモラルの問題ではなく、自治体と消費者に依存しすぎた回収制度の欠陥だ。生産者責任によるデポジット制度が必要だろう。

<参考>

中日新聞(2018.12.13)「朽ちず残る96年製ペットボトル 名古屋・藤前干潟の大量プラごみ問題」

http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2018121302000073.html

中日新聞(2018.12.16)「ペットボトル1万2000本回収 藤前干潟周辺、製造者側も参加」

http://chuplus.jp/paper/article/detail.php?comment_id=607866&comment_sub_id=0&category_id=113&from=news&category_list=113

木材からプラスチックを作る取り組み広がる

オーストラリアの繊維メーカー「レンチング」は、木材から生分解性のある不織布を製造する技術を構築したそうだ。

日本では、清水建設が間伐材からプラスチックの添加剤を抽出する研究施設を島根県に新設する。

また、王子ホールディングスは、木材から糖類のグルコースをつくる技術を開発。生分解性プラスチックであるポリ乳酸に加工することができるそうだ。量産体制をつくり、自社でのプラスチック開発も視野に入れるとのこと。

バイオベースのプラスチックや生分解性プラスチックがすべて良いわけではないが、海洋プラスチック汚染を解決するためにはこのようなイノベーションは必要だろう。

しかし、これまでのような大量生産大量廃棄(あるいは大量リサイクル)では環境汚染も環境破壊も止まらない。

このような技術を利用して、使い捨てのものではなく、必要性の高い、環境負荷の少ないものを生み出してくれることを期待している。

<参考>

サステナブル・ブランド・ジャパン(2018.9.27)「オーストリア レンチング、木材パルプ原料で持続可能な不織布

http://www.sustainablebrands.jp/news/os/detail/1190961_1531.html

日本経済新聞(2018.12.15)「木材由来プラ 広がる 清水建設、島根に研究施設 」

https://www.nikkei.com/nkd/company/article/?DisplayType=1&ba=1&ng=DGKKZO38984780U8A211C1TJ2000&scode=6902

 

 

ドイツのマイクロプラスチックの出所トップ10

11月号の月刊廃棄物(p.83)によると、ドイツのマイクロプラスチック出所源トップ10が、フラウンホーファー環境・安全・エネルギー技術研究所から発表されている(バイエルン放送局ニュース)。

それによると、1位がタイヤ摩損粉1228.5(うち自動車がダントツで998.0、トラック89.0など)、2位が廃棄物管理302.8(うちコンポスト169、瓦礫粉砕27.6、プラスチックリサイクル101)、3位がアスファルト・ビチューメン228.0、4位がペレット遺失182.0、5位がスポーツ・遊戯施設からの遺失131.8(うち人工芝96.6)、6位が建設現場からの放・拡散117.1、7位が靴底の摩損粉109.0、8位がプラスチック包装の摩損粉99.1、9位が道路上の標識マーク91、10位が洗濯時の衣類の繊維76.8、とのこと。*数字の単位はおそらくg/yearか

化粧品類に含まれる意図的に添加されたマイクロビーズは19gで17位とのこと。

検索したところ、このことはいろいろなサイトに出ていた。例えば(ドイツ語)↓

http://www.spiegel.de/wissenschaft/mensch/mikroplastik-der-groesste-verursacher-sind-autoreifen-a-1226400.html

https://www.br.de/themen/wissen/inhalt/mehr-mikroplastik-durch-reifenabrieb-als-durch-kosmetik-100.html

いずれも、靴からの排出量の多さに驚いているようだ。靴メーカーには早急に摩耗しにくい材質の靴底を研究してほしい。(草履や下駄、昔ながらの地下足袋ならば、少なくともマイクロプラスチックの心配は要らないだろうが、まさか毎日履くわけにもいかない・・)

また、欧州化学品庁(ECHA)は、意図的に化粧品や肥料のコーティングとして添加されたマイクロプラスチックは、海洋よりも陸上や淡水域に蓄積しやすいと発表した。

ECHAは2019年初めに、欧州委に対してマイクロプラスチックの使用制限に関する提案を行う予定とのこと。

<出所>

JETRO(2018.11.27)「ECHA、マイクロプラスチックの使用制限に向けた評価を発表」↓

https://www.jetro.go.jp/biznews/2018/11/05aeb9138955de20.html

国連、レジ袋やストロー、食器等の全廃を閣僚宣言案に盛り込む

2030年までに使い捨てプラスチック(容器包装等)を累積で25%削減することを目玉に、日本は目下プラスチック資源循環戦略案についてのパブリックコメントをおこなっている。

この案の具体策については、レジ袋有料化の義務化以外はまだほとんど決まっていない。

しかし、このほど明らかになった第4回国連環境総会の閣僚宣言案は、「2025年までにプラスチック製のレジ袋やストロー、食器の使用をやめた上、最終的には使い捨てプラスチックの全廃を目指す戦略を各国がつくる」というものだ。

使い捨てプラスチックの25%削減などという緩い計画によって、来年日本で開催されるG20サミットでリーダーシップを発揮する、という日本の甘い目論見は、これで完全に打ち砕かれた。

日本はこの国連環境総会の宣言案に署名できるだろうか?

G7の海洋プラスチック憲章のときのように、日米署名拒否という事態が、また再現されるかもしれない。

<参考>

東京新聞(2018.12.15)「25年までにレジ袋全廃をと国連 日本、難しい対応迫られる」↓

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018121501001431.html

共同通信(2018.12.15)「25年までにレジ袋全廃をと国連 日本、難しい対応迫られる」↓

https://this.kiji.is/446458212529898593

<参考記事>

プラスチック戦略のパブコメ、提出のため素案を読んでみた

国連が使い捨てプラ容器使用の完全廃止目指す、世界127ヵ国でがプラスチックを規制、トルコでもレジ袋有料化決定

 

東京国際フォーラム広場で「東京水」が給水できる

東京都水道局が販売しているペットボトル「東京水」。東京都は、何のために水道キャンペーンをしているのか?と首をかしげていた。

しかし今年3月、都水道局は東京国際フォーラム地上広場の水飲み場に、ボトルディスペンサー式水飲栓を設置したそうだ。

ロンドン市やパリ市の脱ペットボトルを謳った給水器に比べ、まだ数は少ないようだが、これからオリンピックにかけて増えるだろうと期待している。

https://www.t-i-forum.co.jp/news/detail.php?id=2c4925b9-fb3d-4997-840c-355324bb542b

 

神奈川県、プラごみゼロ宣言でプラスチック入り名刺を作った?

「かながわプラごみゼロ宣言」から約3ヶ月経過した。そろそろ何か変わるかな?と思っていたが・・・

日経ESG(2018.12. p.15)を読んでいて驚いた。黒岩知事が対談で「まずは石灰石を使う新素材で私や職員の名刺を作った」と答えている。

石灰石で名刺?おそらくLIMEXペーパーのことだろう。これは、石灰石とポリオレフィンを混ぜ合わせたストーンペーパーの一種。

プラごみとは無縁のフツウの紙の名刺を、なぜわざわざプラスチックを使ったもので作り直したのか。

これでは不要になった名刺を古紙回収にだすこともできないし、もし散乱した場合は石灰石部分は問題ないかもしれないが、ポリオレフィン部分はマイクロプラスチックになってしまう。

再生紙で名刺を作った、というならばよく理解できるが、この変更は理解不能だ。

プラごみゼロ宣言で「プラスチック製ストローやレジ袋を廃止」するというので期待していたが、いまだ県内各自治体やスーパーへ「レジ袋廃止」協力を呼びかけた気配もない。

「リサイクルされない使い捨てプラスチックごみをゼロにすることを2030年までに目指す」としているが、むしろ名刺や宣言ステッカーの制作で、リサイクルできないプラごみを増やしているのではないか。

せっかくプラごみゼロ宣言をしたのだから、プラごみ削減に効果のある取組を期待したい。

<関連記事>

神奈川県がレジ袋やストロー廃止を自治体・企業に呼びかけ

 

亀岡市「プラスチックごみゼロ宣言」レジ袋使用禁止を条例化 日本初

京都府亀岡市と市議会が、13日「かめおかプラスチックごみゼロ宣言」をしたとのこと。

2020年までに市内小売店でのレジ袋使用を禁止する条例を施行する方針。

神奈川県による「かながわプラごみゼロ宣言」や鎌倉市のそれは、努力目標で条例化はしていない。亀岡市が条例化すると、日本の自治体で始めてのレジ袋禁止条例となる。

レジ袋廃止のほか、市のイベントでのリユース食器の利用などで、2030年までに使い捨てプラスチックごみゼロのまちを目指すそうだ。

<出所>

毎日新聞(2018.12.14)「レジ袋禁止 亀岡市罰則検討 20年度までに条例施行 宣言賛否」

http://mainichi.jp/articles/20181214/ddn/041/040/029000c

毎日新聞(2018.12.13)「京都・亀岡市が「プラごみゼロ」宣言 自治体初、20年度までにレジ袋廃止」

https://mainichi.jp/articles/20181213/k00/00m/040/057000c?fm=mnm

プラスチック製レジ袋の使用禁止などを目指し、京都府亀岡市と市議会が13日、「かめおかプラスチックごみゼロ宣言」をした。2020年度までに市内の小売店でのレジ袋の使用を禁止する条例を施行する方針。レジ袋を巡っては政府も小売店に有料化を義務づける方針を固めているが、市は廃止に向けてさらに踏み込む。現在、国内の自治体に同様の条例はないという。

宣言には、レジ袋を禁止してエコバッグ持参率100%を目指す取り組みのほか、家庭から出るプラスチックごみの回収率100%達成も明示。市のイベントでリユース(再利用)食器を使用するなどし、「30年までに使い捨てプラスチックごみゼロのまちを目指す」としている。今後協議する使用禁止条例では、罰則を設けることも検討している。

市内にはスーパーやコンビニエンスストア、個人商店など計約760軒(14年度)の小売店があり、市はフランチャイズの店なども含め、すべてでレジ袋を禁止する構え。まず19年度中に全店舗のレジ袋を一律に有料化する予定で、既に協力呼びかけを始めている。

桂川孝裕市長(55)は「(レジ袋禁止で)全国に一石を投じたい」とあいさつ。宣言について市に助言してきた原田禎夫・大阪商業大准教授(43)=公共経済学=は「海洋ごみは海外からの漂着のみならず、国内の内陸部からの流出も多い。宣言で亀岡市が先進都市となり、他地域にも広げるきっかけとなる」と意義を述べた。

亀岡市は京都市の西隣に位置するベッドタウンで人口は約8万9000人。市はプラスチックごみの海洋汚染が近年、社会問題になっていることを受け、12年に内陸部の自治体では初めて「海ごみサミット」を開催した。【国本ようこ】

国連が使い捨てプラ容器使用の完全廃止目指す、世界127ヵ国でがプラスチックを規制、トルコでもレジ袋有料化決定

国連総会の議長は、国連が近い将来、使い捨てのプラスチック容器の使用を完全に止める目論みであることを明らかにした。

既に国連内では、使い捨てプラスチック容器の使用完全廃止キャンペーンに取り組んでいるそうだ。

また、127の国連加盟国が、数年以内に使い捨てプラスチックに対し、廃止などの規制をかける。

先日トルコもレジ袋有料化を決定したようだ。トルコでは年間1人あたり440枚のレジ袋が使われている。いつから有料化を開始するか、期限はまだ決まっていないが、0.05$程度になる予定。

<出所>

Sputnik(2018.12.5)「国連 使い捨てプラスチック容器の使用の完全廃止を目指す」↓
https://jp.sputniknews.com/life/201812095682660/

Sputnik(2018.12.9)「127カ国で数年以内に使い捨てプラ廃止へ」↓

https://jp.sputniknews.com/life/201812095682660/

INDEPENDENT(2018.)Turkey to launch groundbreaking restrictions on plastic bags in fight against pollution;

https://www.independent.co.uk/news/world/europe/turkey-plastic-bags-ban-law-supermarkets-apk-pollution-waste-government-a8676221.html

 

 

 

海洋プラスチック憲章への支持を呼びかける署名、締切間近!

2018年6月、カナダで開催されたG7で、日本とアメリカは「海洋プラスチック憲章」への署名を拒否した。

安倍首相は、この憲章を上回るプラスチック資源循環目標を2019年に日本で開催されるG20で表明すると約束したが、果たして現在パブリックコメント中の案がG7の憲章を上回っているか、甚だ疑問だ。

もし、本当に憲章を上回っているという自信があるのならば、まずは憲章への支持を表明すべきではないか。

一般社団法人JEANでは、日本が憲章に支持表明することを求める署名を来週にも国へ提出するべく、最後の署名呼びかけをおこなっている。署名は12月16日まで。

署名サイト↓

https://www.change.org/p/日本も-海洋プラスチック憲章-に一日も早く署名を

(一社)JEANウェブサイト↓

http://www.jean.jp

現在、憲章への支持の表明は、G7で署名した5か国とEUに続き、9月にジャマイカ、ケニア、マーシャル諸島共和国、ノルウェー、その後もメキシコ、オランダ、セネガル、ナウル共和国、パラオ共和国、カーボヴェルデ共和国で、16ヶ国。
他に20の企業や団体も支持を明らかにしています。プラスチックごみが今や海底まで達し、海洋中でスモッグに例えられるほど劣化してマイクロ化してきた年月を考えたら、近年、俎上に載せられやすい現在の途上国の問題よりも、日本をはじめとした先進国が、半世紀前から
続けてきた使い捨てプラスチック生活が、海洋汚染をうみだしてきた責任を、まず自覚しなければならないでしょう。
しかも、日本は1人当たりの使い捨てプラスチックごみ排出量で世界第2位です。政府はG20で途上国を巻き込む必要を述べていますが、その前にまずはG7先進国の責任として憲章に署名したうえで、G20で各国に呼び掛けるのが国際社会の一員としての行動ではないでしょうか。

<関連記事>

JEANが「プラスチック憲章」への署名を呼びかけ