オサガメのお腹からプラシートとお茶PETのラベル

福井県美浜町の海岸に死んで打ち上げられた絶滅危惧種のウミガメ「オサガメ」の体内から、1メートルあまりのプラスチックシートとペットボトルのラベルが見つかった。

ラベルは国産のお茶のペットボトルで、ブランド名もはっきりわかる。好物のクラゲと間違えて食べたのだろうか。

https://digital.asahi.com/articles/ASSDM4DB8SDMULBH004M.html?iref=pc_photo_gallery_bottom

ペットボトルからラベルが勝手に剥がれることはほとんどないため、誰かが剥がしたラベルが回収ルートから環境中に漏れだし、海へ流れ出したのかもしれない。

前々から苦々しく思っていたが、日本ではラベルを剥がすことがまるで良いことのように宣伝されている。リサイクルしやすくするとして、そのように「教育」されるが、ラベルを剥がせばラベルはごみ回収から当然漏れ出しやすくなる。

しかも、剥がされたラベルは他の雑多なプラごみと一緒くたになるため、質の高いリサイクルがなされるか疑問だ。

デポジット制度を導入している国では、返却前のボトルからラベルを剥がすことは禁じられている。ラベルを剥がすとペットボトルの由来がわからなくなるため、デポジットは返金されない。ラベルを剥がさなくとも、当然きちんとリサイクルはできている。

日本のこのラベル剥がしのおかしな習慣は一体誰のためのものなのか、いつも疑問に思う。

PFASとマイクロプラスチックの組み合わせで、毒性がパワーアップ:英研究

英バーミンガム大学の研究チームが新たな研究を発表した。マイクロプラスチックとPFASがミジンコに与える影響を調べたのだ。

その結果、マイクロプラスチック単独でもPFAS単独でもミジンコにとって有害だった(PFASの方が有害性が強かった)。

しかし、マイクロプラスチックとPFASを一緒にミジンコに曝露させると、単独のときよりも毒性が増した。しかも、複合効果は41%が「相乗的」とのこと。

つまり、ミジンコにとってマイクロプラの毒性が5,PFASの毒性が10だとすると、一緒に与えることでミジンコは15の毒性による影響を示すと考えられるが、それ以上の影響を示したということだ。

ミジンコは、成長が遅くなり、生殖への影響もでた。さらに、生存率も低下した。

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0269749124018505?via%3Dihub

まさに「複合汚染」だ。

少し前に中国の研究で、湖にマイクロプラとPFASがセットで存在するという報告があったが、マイクロプラはPFASを引き寄せ、毒性をパワーアップさせているようだ。

この実験で使用したマイクロプラスチックはPET粒子、PFASはPFOSとPFOAだ。一般にPETの化学物質吸着能力は、ポリエチレンやポリプロピレンに比べ低いとされている。この実験では吸着させて与えたわけではなく、単に一緒に与えただけのようだが、もしかすると、PETの代わりにポリエチレンなどを使った方がより毒性がパワーアップしたかもしれない。

いずれにせよ、このままPFASとプラスチックをを使い続けると、ミジンコが激減し、ミジンコを餌にしていた生物も減り、生態系が大きなダメージを受けることは確かだ。

プラスチック国際条約、素案を議長が各国に提示

毎日新聞(2024.11.1)によると、政府間交渉委員会のルイス・バジャス議長が条文の素案の非公式文書を各国に提示した。

やはり生産規制は盛り込まれていない。

生産規制なしではプラスチック汚染など防げるはずないから、多少期待していたのだが。

グリーンピースのいうようにまだ結果はわからないとはいえ、これより良くなることはないだろうと思うと、とても残念だ。

しかし、生産者が製品の使用後にまで責任を負う「拡大生産者責任」だけはしっかり盛り込まれた。拡大生産者責任の考え方を導入し、プラ素材の使用量の削減と、再利用や修理をしやすい設計などを推奨するとのこと。

日本もその点だけは少し変わるかもしれないと期待する。

日本の容器包装リサイクル法は拡大生産者責任が再商品化義務のみだし、プラスチック資源循環法ではその再商品化義務さえ、生産者に負わせていない。回収から再商品化まですべて税金でおこなわれる。環境省は否定するが、同法には拡大生産者責任はゼロだ。

素案については、毎日新聞にしか載っていないようだ。非公式文書のせいか、INCの公式文書が掲載されるウェブサイトにもまだ見当たらない。

https://mainichi.jp/articles/20241101/ddm/012/040/048000c

イルカの呼気からマイクロプラ見つかる

野生のイルカがマイクロプラスチックを呼吸で吐き出したそうだ。

マイクロプラスチックを吸い込むのはわかるが、吐き出した息から見つかったようだ。

サウスカロライナ州チャールストンにあるチャールストン大学などが発表し、PLOS ONEに掲載された。

クジラ目の動物がマイクロプラスチックに暴露される有力な経路として吸入を調べた初めてのものだそうだ。

https://www.cnn.co.jp/fringe/35225106.html

https://www.sciencedaily.com/releases/2024/10/241017113845.htm

EU、ペットボトルのキャップ規制がまもなく始動

3リットル未満の容器のキャップを対象として、EU規制がまもなく始まる。

2018年に発表されたEU指令の1つで、開栓後もキャップが本体に付いたままになっていなければならない。

従来タイプのペットボトルは、開栓時にキャップが落ちやすく、散乱ごみになりやすかった。

ようやく7月3日から規制が開始される。

街や海岸を歩いていると、キャップが落ちているのをよく目にする。海鳥など野生生物にも誤食されやすく危険だ。日本も早くこの規制を導入してほしい。

瀬戸内海4県から年間60トンのプラごみが回収できず海へ どんな意見交換をしたの?

瀬戸内海に面する岡山・広島・香川・愛媛の4つの県から出た海洋プラスチックごみのうち、回収できなかったごみが年間約60トンあったそうだ。

日本財団が4県と取り組んでいる海洋プラスチックごみ対策のプロジェクトで、2020年11月から2021年4月にかけて、4県にある河川の全長およそ1200キロでごみの調査を行った。

その結果、年間388トンのプラごみが海洋に流れ出していると試算された。

しかし、これまでに公的機関やプロジェクトなどが回収したプラごみは年間322トン。従って、約60トンのプラごみが回収できなかったと考えられるという。

https://www3.nhk.or.jp/lnews/okayama/20240515/4020020278.html

大雑把とはいえ、約60トンという数字が把握できたのはよかったと思うが、このニュースに違和感を覚える。

日本財団のプロジェクトの一環で、県内の中・高校生およそ80人が岡山市に集まり、これについて話し合われたようだが、このNHKニュースを見る限り、その結論は「みんなでごみ拾いに取り組もう」ということだったようだ。

もちろん清掃活動は重要だ。しかし、高校生が話し合ったならば、ごみの出ない法整備、たとえば「散乱しやすい使い捨てプラスチックを禁止しよう」とか「飲料容器はデポジット制度で回収しよう」、あるいは「マイボトル・マイカップ・マイ弁当容器を利用できるよう店に働きかけよう」などのような根本的な内容にまで踏み込んでほしいものだ。

落ちていたプラごみにどのようなものが多いかは、把握できたのだろうか?

国際プラ条約会議閉幕。話まとまらず釜山の前に追加の話し合いか

第4回国際プラスチック条約会議(INC-4)が昨日、カナダ・オタワで閉幕した。

プラスチック汚染をなくすために最も効果が高いプラスチック生産制限は、やはり話がまとまらなかった。中東の産油国や中国が反対したためだ。

最後のプラスチック条約会議となるINC-5は、今年11月25日から韓国・釜山で開催されるが、それに先立ち8月末頃タイ・バンコクで追加協議になるという。

バージンプラスチックの生産制限を強く主張したフィリピンなどの提案に多くの国が賛同した。フィリピンはプラスチック汚染で最も苦しんでいる国の1つだ。

プラスチックで儲ける国と、プラスチック汚染に苦しむ国の間で、落としどころは見つかるのだろうか。

プラスチックで儲けようとする国や企業は、プラスチック汚染や気候変動で苦しむ国々のことはもちろん、自分の子や孫たちが苦しむことさえ気にしないようだ。

SDGsのゴール「誰1人取り残さない」はやはり難しいと、現地に参加していたNGOらの話を聞いてつくづく思う。

プラスチック汚染企業トップはコカ・コーラ、56社で過半を占める:サイエンス

日本を含む世界84ヶ国に落ちていたごみのブランドを調べたところ、コカ・コーラなど56社のごみが50%以上を占めていたことが、米科学誌「サイエンス」に掲載された。

調査期間は5年間で、2018年から2022年にかけ行われた。10万人以上のボランティアが調査に参加し、ごみのブランド名を調べた。

その結果、トップはコカ・コーラのごみで全体の11%を占め、続いてペプシコが5%、ネスレとダノンがそれぞれ3%、米たばこ大手アルトリア・グループの2%。これだけで24%を占めている。

企業のプラスチック年間生産量とプラスチック汚染の間には、明確で強力な関係があり、食品・飲料会社が不釣り合いに大規模な汚染者となっているとのこと。

「最大の汚染者による寿命の短い使い捨てされるプラスチック製品を段階的に廃止すれば、世界のプラスチック汚染は大幅に削減される」ことが判明した。

<出典>

https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.adj8275

独、使い捨てプラごみの処理費用を製造者に デジタルプラットフォーム運用開始

ドイツでは2022年11月、使い捨てプラスチック製造者に対し、公園や街路の廃棄物処理費用の負担を課す法案が承認された。

https://www.eic.or.jp/news/?act=view&serial=48448&oversea=1

廃棄物投棄への対応に取り組む公共機関にその処理費用を支払うシステムの管理・処理を行うデジタルプラットフォームが、今年4月から運用開始となる。

これにより、連邦環境庁は約56000機関の賦課金支払い対象組織の登録と入金、および約6400機関への処理費用の分配をデジタル処理できるとのこと。

https://www.eic.or.jp/news/?act=view&word=&category=51&serial=49983

日本はなかなか進まないが、ドイツの拡大生産者責任はどんどん進んでいく。

<関連記事>

東大などが実験、生分解性プラは深海でも分解。ポリ乳酸は分解せず

東京大学や海洋研究開発機構、群馬大学、製品評価技術基盤機構、産業技術総合研究所、日本バイオプラスチック協会は、様々な生分解性プラスチックを水深の異なる海底に沈め、分解するか実験を行った。

その結果、生分解速度は水深が深くなるにつれて遅くなるものの、全ての深海底で生分解されることも確認されたという。

実験は、神奈川県の三崎沖(水深757 m)、静岡県の初島沖(水深855 m)、伊豆小笠原島弧海底火山付近の明神海丘(水深1,292m)、黒潮続流域の深海平原(水深5,503 m)、日本最東端の南鳥島沖(水深5,552 m)で行われた。

研究成果は、国際科学専門誌「Nature Communications」オンライン版に掲載された。

以上、東京大学HPより↓

https://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/topics_20240126-1.html

これまで生分解性プラスチックは、微生物の少ない深海では分解しないだろうと考えられていた。しかし、この実験によりポリ乳酸以外は分解することが実証された。

今回の結果は長年の懸念を払拭するよい結果だと思う。深海でも分解するならば、地中深くでも分解するだろう。そのため、どうしてもプラスチックを使わざるを得ないものは、生分解性プラスチックを使うのがよいと思う。しかし、強度や耐久性が必要なものにはやはりまだ使えないのではないか。