脱プラを進めるべき時代に、プラ製「芝生広場」が人気?日本人の肺からマイクロプラ

一体何を考えているのだろう?

先般のプラスチックの国際条約会議(INC-5.2)は、結論が出ないまま流会になり、直後は残念そうな論調のニュースが多かった。にも関わらず、各地の人工芝「芝生広場」を礼賛するニュースがちまたに溢れているのは、人工芝がプラスチックだと知らない人が多いせいだろうか?

東京都の都民広場の人工芝は多少批判があったようだが、他の地域ではあまり批判を聞かない。すんなり採用され、好意的な論調のニュースが流れている。

例えば、横浜の広場↓

https://topics.smt.docomo.ne.jp/amp/article/www_watch/trend/www_watch-2052466

環境配慮型人工芝を採用したというから、調べてみた。しかし、どこに「環境配慮」がなされたのか、さっぱりわからなかった。メーカーは「エシカル」と宣伝しているようだ。

また、長野県松本市でも花時計広場に人工芝を採用したそう↓

https://news.yahoo.co.jp/articles/c96c52df9c6cd4f3ae9aa464a396f40a057d90d7

市民や観光客の憩いの場になっているとのことだが、本当だろうか。

栃木県那須塩原駅前も人工芝を設置する↓

https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/shimotsuke/region/shimotsuke-20251004171431

私ならば、マイクロプラスチックが飛び交っていそうな人工芝広場には、極力近づきたくない。吸い込んでしまいそうだから。

設置者は「観光客のため」「住民の憩いの空間」などとのんきに構えているが、事態は既に緊迫している。

各国の大気中のマイクロプラスチックは、憂慮すべきレベルにまで達したそうだ。

https://www.businesswire.com/news/home/20250929293829/ja

これまで各国の人々の脳や内臓からマイクロプラスチックが見つかっていたが、ついに日本人の肺からも、マイクロプラスチックが見つかった。しかも、調べた人全員から。

肺の病気を診断するために生理食塩水を気管支から注入して回収したそうだ。14人でおこなったところ、すべての人からマイクロプラスチックが見つかったという。

長崎大学病院の医師によると、粒子濃度が高いほど血液中の炎症反応が強くなるそうだ。

https://news.yahoo.co.jp/articles/cf52047f20bb9c759a2413d1174b466a895429b5?page=1

世界中でプラスチックが問題になっている時代に、特に必要性が高いとも思えない「広場」をわざわざ人工芝にする理由がわからない。

人工芝は、マイクロプラスチックやPFAS、それ以外の多くの化学物質の温床だ。

ロドリゲス、人工芝のリスク回避のため欠場か

コロンビア代表のハメス・ロドリゲスの欠場が波紋を広げているそうだ。

現地では、ティフアナの本拠地エスタディオ・カリエンテの人工芝でプレーするリスクを恐れて遠征を避けたと報じられ、物議を醸しているとのこと。

ケガをしやすい人工芝の上でプレーしたいと思うプロ選手など、おそらくいない。何が何でも練習時間を確保し、1試合でも多く闘いたい高校生の部活とは違うのだ。

リスクを回避し、より大事な試合に備えることは、立派な戦略だと思うが、現地ではそう受け止められていないようだ。

「クラブへの献身が足りない」などと怒るファンもいるらしい。理不尽な話だ。

<出典>

https://web.gekisaka.jp/news/world/detail/?437281-437281-fl

<関連記事>

名古屋市、砂入り人工芝からハードコートへ転換 PFASフリー人工芝ってあるの?

1年後のアジア・アジアパラ大会(愛知・名古屋大会)でテニスの競技会場となる名古屋市の東山公園テニスセンターでは、砂入り人工芝コートをハードコートに改修している。

大会の規格に沿ったものにする必要があり、人工芝は規格に合わないためだ。

https://www.chunichi.co.jp/article/1135697

以前から、元テニス選手の伊達公子さんも、砂入り人工芝コートだらけの日本の現状を憂い、世界基準のハードコートに改修するよう求めている。人工芝コートが、若手選手の世界進出の妨げになっているそう。

https://www.nippon.com/ja/japan-topics/g01106/

人工芝にはPFASやフタル酸エステルなどが含まれている。

米コネチカット州では2021年、ウッドビレッジの公立高校(Amity Regional High School)に「PFASフリー」として売られていた人工芝を敷いた。だが、近隣の側溝の水を検査したところ、敷設前よりもPFOAやPFOSの濃度が上昇したという(マサチューセッツ大学ローウェルセンター, 2024年8月)。

人工芝のような繊細なプラスチック製品を作るにはPFASが必要だ。今のグレードを保ちながら、PFASを使わずに人工芝を製造したら、今の何倍もの製造コストが必要になる。米ノートルダム大学のピースリー教授も「PFAS抜きで人工芝のような製品を作るのは難しい」といっている。おそらく、現在使われているすべての人工芝からPFASが検出されるはず。

相模原市の鹿沼公園のテニスコートも再開発に合わせ改修される。その際は、ぜひハードコートにしてほしいものだ。公園が、PFASとマイクロプラスチックの発生源になってはかなわない。

カリフォルニア州上院、家庭用品からPFASを排除する法案を可決 テフロン加工フライパンも禁止対象

米カリフォルニア州は環境先進地域だが、なぜかPFASに関しては出遅れていた。ようやく上院議会で、家庭用品や調理器具に含まれるPFAS禁止が可決された。

知事の署名後、法案は成立し、2028年以降段階的に禁止される。

「調理器具は2030年から、清掃用品は2031年から、その他の製品は2028年から、PFASが意図的に添加された製品の販売・配布を禁止する」とのことなので、PTFE(いわゆるテフロン)加工のフライパンも2030年1月1日以降、カリフォルニア州で販売・流通できなくなるようだ。(カリフォルニア州で販売されている日本製炊飯器も内釜がPTFE加工である限り、対象となるようだ。日本メーカーはPTFEの代わりに何を使うのか、楽しみだ)

以前、せっかく可決された人工芝に関する法案に知事が署名しなかったが、今度はそういうことはないだろうと期待している。

<出典>JETROビジネス短信(2025.9.17)

https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/09/d0794894cc2efa64.html?previewDate=null&revision=0&viewForce=1&tmpCssPreview=0%2F%2Fbiznews%2F%2F%2Fbiznews%2F%2F%2F%2Fbiznews%2F%2F%2F%2F

ネイマール「証明された…人工芝はクソだと!」

ブラジル1部サントスの同国代表ネイマールは、「人工芝のピッチでのプレーは、けがの有無にかかわらず、どの選手にとっても不快なことなんだ」と出場に拒否反応を示していた。

https://news.yahoo.co.jp/articles/6147836e91b0e653e9bfb394f693b009bd2b6c4e

頑張って出場したが、やはり人工芝はプロ選手にとって鬼門だった。ネイマールは開始直後、ピッチに足をとられて滑るような形になり、捻った足首を負傷しかけたという。

倒れ込んだものの試合を続行した。しかし、1-1の引き分けに終わった試合後に「証明された…人工芝はクソだと!」とSNSに投稿したそうだ。

https://www.msn.com/ja-jp/sports/soccer/33歳ネイマール-足を捻って苦痛に顔を歪めるあわやのシーン-人工芝は最悪-と酷評/ar-AA1MxSUS?apiversion=v2&domshim=1&noservercache=1&noservertelemetry=1&batchservertelemetry=1&renderwebcomponents=1&wcseo=1

アジアサッカー連盟(AFC)は今年6月、AFC制度下での一部公式大会において人工芝の競技場での試合開催を認めないと発表した。

https://www.vietnam.vn/ja/afc-chinh-thuc-khai-tu-san-co-nhan-tao-o-cac-giai-dau

ブラジルも早く公式試合のピッチを天然芝に変更すべきだ。プロ選手の多くが天然芝を支持しているのに、なぜチームは人工芝ピッチにこだわるのだろうか。ブラジルでの報道も人工芝にずいぶんと気を使っているような気がする。

https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/qoly/sports/qoly-l57emt8n-iks-1

<関連記事>

どうなる?英ウェールズの人工芝禁止方針

米ロサンゼルスでもまだ人工芝禁止をめぐり議論されているが、英国ウェールズの人工芝の動向からも目が離せない。

2023年の「State of Nature報告書」によれば、ウェールズで記録された3,897種のうち約18%が絶滅の危機にあり、ウェールズの植物種の42%は過去よりも生息域が狭まっているとのこと。

使い捨てプラスチック製品の規制を進めるウェールズの気候変動大臣ジュリー・ジェームズ議員は2023年6月、使い捨てプラ製品禁止法に人工芝も適用できるか検討したいと発言。しかし、数日後にこの方針を撤回した。(使い捨てプラ製品禁止法は同年6月に成立。皿・カトラリー・ストロー・飲料かき混ぜ棒・風船スティック・綿棒・発泡スチロール製のカップ・テイクアウト容器などの使い捨て製品は同年10月30日から禁止)

その後、人工芝を含むマイクロプラスチック問題に関してどのような研究が行われているかを把握するため、Environment Platform Walesに対し、マイクロプラスチックに関するイベントの開催を依頼。2025年3月にイベントが開催された。

英国は、生物多様性を最重要視するお国柄だ。ウェールズでも、自然回復目標や気候変動対策を盛り込んだ新たな法案が準備されており、人工芝の規制強化も含まれる可能性があるとのことだが、まだ具体的な規制はないようだ。

ウェールズの今後の動きを注視したいが、あまり情報が入ってこない。

<参考>

https://business.senedd.wales/documents/s154752/Research%20brief.pdf?utm_source=chatgpt.com

https://news.sky.com/story/artificial-lawns-could-be-banned-in-wales-minister-says-12898818?utm_source=chatgpt.com

恥ずかしい大阪万博 人工芝の上に子ども達の絵画

大阪・関西万博の会場で、参加158国・地域と日本の子どもたちが、友情や平和を主題に共同制作した巨大絵が展示されたそうだ。

https://www.kobe-np.co.jp/news/society/202508/0019313642.shtml

よりにもよって、人工芝の上に、だ。

スイス・ジュネーブで開催中の国際プラスチック条約では、プラスチック生産量に制限をもうけるかが議論のカギとなる。未来をうたいながら、万博会場に人工芝を敷いたこと自体とても恥ずかしいのに、子ども達の絵などを飾ったら、人工芝がより目立ってしまう。

日本は世界の子どもたちの未来など知らない、プラスチックにまみれようがどうしようが構わない、とアピールしているようなものではないか。

日本政府はあくまでも、プラスチック問題は海洋汚染問題であり、不適切な廃棄物処理の問題だとして、プラスチックをあちこちに使えるよう「配慮」し、生産量を増やそうとしているように見える。

中国の「デフレ輸出」の影響で最近、アメリカでシェールガスから作ったポリエチレン樹脂が、中国経由で日本にも入ってきているのではないか。人工芝もそれで安く作られそうだ。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB144I70U5A710C2000000/

人工芝はヒートアイランド現象をも加速する。この猛暑を少しでも緩和するため、人工芝などさっさと剥がし、本物の草木を植えてほしい。

プラスチック中毒になった生物

最近の研究で、プラスチックの味を学習する生物の話があった。

プラスチックの味を学習すると、マイクロプラスチック入りのエサの方が美味しいと感じるようになり、積極的に選ぶようになるそうだ。

香港の香港理工大学(Hong Kong Polytechnic University)で行われた研究によって、動物がマイクロプラスチック入りの餌を繰り返し食べることで、やがて汚染された餌を「おいしい」と認識し、積極的に選ぶように学習してしまう可能性が明らかになりました。(ナゾロジー2025.7.22)

元論文はこれ↓

https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.estlett.5c00492

人間も既にしっかりプラスチックの味や感触を学習し、食べ物も環境もプラスチックだらけの方が落ち着くのかもしれない。

そうでなければ、ペットボトルや人工芝などこれほど売れるはずがないような気がする。

環境も心配だが、プラスチック中毒になった人類の健康への影響が気になる。

中国で小学生1000人対象にプラスチックの影響を調査 校庭の人工芝化の危険性

昔は大事に(過保護に)育てることを、「真綿でくるむように育てる」といった。今の子どもたちは、プラスチックに包まれて育てられているようだ。

決して大事にされているわけではない。あくまでも大人の都合で、プラスチックまみれにしているだけ。

その典型が校庭の人工芝化だ。土だと服も校舎も汚れる、雨の後は使いづらい、近所から砂埃の苦情が来る、などの理由で人工芝が大人気。

それならば、天然芝にしたらよいものだが、それはそれで手間がかかって面倒だ、と嫌う。

危険を察知した保護者らが反対するケースもあるが、保護者の意見が通ることは滅多にない。

学校側(教育委員会?)は人工芝を選ぶ。

その結果、日本のプラスチック消費量は減らず、子どもたちの体の中はマイクロプラスチックだらけだろう。

当然、そのツケは子どもが払うことになる。

中国・瀋陽で子ども(6歳から9歳)1000人を対象に疫学調査が行われた。尿中にマイクロプラスチックがたくさんある子は、行動や社会性に問題を抱える傾向があるという結果だったという。

情緒や行動、多動、対人関係に問題があり、他者への思いやりや協調性などは低いという結果だ。

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0147651325004336

近年の研究で、プラスチックは健康にも影響を与えることがわかっているが、性格や行動にも影響を与えるようだ。

にも関わらず、日本の小学校はなぜ校庭までプラスチックで覆おうとしているのか。理解できない。

オランダのプロサッカーリーグ、今年から天然芝でのみプレー

オランダのプロサッカーリーグの1部リーグであるエールディヴィジのすべてのクラブは、2025-26シーズン以降、天然芝またはハイブリッドピッチでのみプレーする。

エールディヴィジとファーストディビジョン(2部リーグ)のクラブは、プロサッカーの総会でこの決定に投票。人工芝でのプレーは完全に終了したことを意味しているそうだ。

「オランダのプロサッカーでは、クラブが天然芝やハイブリッドピッチに切り替えると報酬が支払われるため、人工芝のフィールドの数はしばらく減少している。この移行は、2018年にエールディヴィジ変更アジェンダから始まった」とのこと。

https://eredivisie.eu/news/no-more-artificial-turf-in-the-eredivisie-from-the-2025-26-season/

この報酬については、「2018年には欧州カップ戦のグループステージに進出したチームが受け取れるUEFAの分配金・テレビ放映権料の5%を、天然芝を採用しているチームに補助金として支給するルールができ、天然芝への回帰をオランダリーグ全体で促していった」と、この日本語の記事(2020.5.26)にも記述されている↓

かつての人工芝ブームから一転、天然芝の香りが戻ったオランダ

人工芝が減り、天然芝グラウンドが復活することは、気候変動対策にもなるのでとてもうれしい。

日本では、Jリーグ(日本のプロサッカーリーグ)の公式試合は天然芝グラウンドでのみ行われているが、日本サッカー協会の助成金により、各地のサッカー場は人工芝が多い。日本サッカー協会もそろそろ脱人工芝に舵を切るべきではないだろうか。