環境省発表、PFAS16都府県・111地点で基準超え。沖縄県も全市町村結果を発表

環境省は29日、「PFOS」「PFOA」が全国16都府県の河川や地下水など111地点で国の暫定指針値(合算で1リットル当たり50ナノグラム)を超えていたと調査結果を発表した。

環境省が、38都道府県の河川や地下水など1258地点を調査した結果だ。

16都府県は山形、茨城、埼玉、千葉、東京、神奈川、福井、愛知、三重、京都、大阪、兵庫、奈良、熊本、大分、沖縄。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240330/k10014407661000.html

https://news.yahoo.co.jp/articles/67b9bee35ebca12a4275621ac9f5add882ebc463

また、沖縄県でも全41市町村のPFAS汚染結果(水質と土壌)を公表した。

https://news.yahoo.co.jp/articles/313bad1ff208ad5c55e2c58302de1e8c404847a5

「水質調査では、嘉手納町の比謝川で、PFOS、PFOAの合計で1リットル当たり130ナノグラムと、国の暫定指針値の2・6倍の値が検出され」たとのこと。

離島の土壌までもPFASで汚染されていたという。

制服にもPFAS。衣類のPFAS規制に取り組むニューヨーク州、家庭やオフィスビルの人工芝も今年末で禁止

2022年9月に発表された研究によると、アメリカやカナダで販売されていた子ども服のPFASを調べたところ、制服の多くに高濃度のPFASが見つかった。

https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.est.2c02111

この研究結果も影響したのか、ニューヨーク州知事は2022年末、議会で承認されたPFASに関する法律に署名した。PFASを意図的に含んだアパレルの販売を禁止する法律だ。

アパレルには、おむつや下着は含まれるが、厳しい条件下でプロが着るユニフォームや登山などアウトドア用アウターなどは含んでいない。

このようなPFAS規制の動きはアメリカ全土で広がっている。カリフォルニア州でも、PFASの衣類への使用を禁止する法案を2022年に可決している。

ニューヨーク州ではさらに踏み込み、2024年12月31日からPFASを含む、あるいはPFASで処理された「カーペット」の販売も禁止する。

このカーペットには、家庭や商業ビルの内装や外装で使用する人工芝も含まれる。

https://research.hktdc.com/en/article/MTI4OTE3MDUwNg

カリフォルニア州は、州としては人工芝を規制しないが、州内の各自治体で人工芝を禁止できるように法改正がなされた。既にいくつかの自治体で人工芝を規制した。

マサチューセッツ州やバーモント州も、人工芝規制に向かって進んでいる。

欧州ではPFAS全体を禁止する方向で検討しているので、当然PFAS入り人工芝もその対象となるだろう。

一方日本は、欧州のPFAS規制に関するパブコメで、経産省と関連業界が一丸となって規制に反対する大量の意見を送りつけ、欧州の担当者を驚かせた。

日本もスポーツ施設だけでなく、家庭や商業ビルでも人工芝の使用は多い。家庭用なども対象に、日本も早急に人工芝などPFAS入り製品を禁止すべきだ。

人工芝の問題点はPFASだけでない。その他の多くの有害物質を含むことや、マイクロプラスチックの大量散乱も問題だ。

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米フィラデルフィア、「PFASフリー人工芝」はやはりインチキだった

アメリカの各地で、PFASを理由に人工芝を許可するか禁止するかの議論が白熱しているが、南フィラデルフィアの公園の人工芝を巡る議論は面白くなってきた。

PFASを理由に人工芝敷設を反対する人たちを説得するため、業界が人工芝にPFASは使っていないと主張し、データを公表したのだ。

ところがそのデータのもとになったPFASの検査方法は、間違っていると専門家が指摘した。

水を検査する方法で人工芝のPFASを調べたとのこと。

しかも、検出限界値もかなり高く設定されていた。

https://www.inquirer.com/opinion/editorials/turf-ban-pfas-chemicals-cancer-fdr-park-sports-20240321.html

それで、検出されなかったと言われても、誰も納得しないので、議論はまた振り出しに戻っているようだ。公園改修予算は750万ドルなので、どちらも真剣だ。

反対派は「PFASフリーの人工芝など存在しない」といっている。確かに、現在アメリカで調べられた限りでは、すべての人工芝からPFASが検出されている。これから作る人工芝にはPFASを使わない、などと言われても、使っていなかったはずの人工芝からも検出されているので、信じられるはずもない。

フィラデルフィアの新聞であるフィラデルフィア・インクワイアラー紙も社説を読む限り、公園の人工芝敷設に反対している。

フィラデルフィアの公園から目が離せない。

マサチューセッツ州でも「人工芝フィールドの購入と設置に関する州および地方自治体の契約を禁止する法律」が、大詰めを迎えているようだ。

https://malegislature.gov/Bills/193/HD958

ワールドカップは天然芝が当たり前  人工芝vs天然芝のコスト比較 

ロングパイル人工芝はサッカー場を中心に増えてきた。サッカー関連の方々はよほど人工芝が好きなのだろうと思っていたが、そうではないようだ。

サッカーには縁がないため知らなかったが、ワールドカップの芝は天然芝が義務づけられているそうだ。天然芝であれば、それほど芝の種類にはこだわらないらしい。そのため、国や競技場によりいろいろな種類の天然芝が使われている。

FIFAが天然芝にこだわる理由は、伝統、プレイアビリティ、そしてプレイヤーの幸福に根ざしているそうだ。人工芝に比べ、天然芝はケガをしにくく、衛生的で、涼しく、おまけに環境や生態系にも配慮できる。

では、人工芝と天然芝のどちらがカネがかかるのか。

町田市の実際の競技場(いずれも5000平方メートルに換算)をベースに10年間のコストを比較した議会答弁によると、初期費用は人工芝が1億5000万円、天然芝が3000万円。

メンテナンスなどの年間のランニングコストは人工芝が40万円、天然芝が2000万円。

廃棄物処理費用(10年後の張り替えで不要になった芝の処理費用)が人工芝が1000万円、天然芝はゼロ。

人工芝の場合は張り替え後にまた人工芝を張るとすると、10年後にまた1億5000万円かかるので、合計で3億1400万円かかる計算だ。

一方、天然芝は10年後の張り替えは不要でそのまま使い続けられるため、合計で2億3000万円。

https://www.gikai-machida.jp/g07_Video_View.asp?SrchID=8197

人工芝のプラスチックの芝片には、紫外線吸収剤や難燃剤も使われる(多分PFASも)。それらを含んだ芝片(マイクロプラスチック)を吸い込むことも心配だ。

人工芝より天然芝の方が、財布にも選手にも環境にも優しいのに、なぜ日本では人工芝が増え続けるのか、本当に不思議だ。

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人の血液からマイクロプラと環境ホルモン(国内研究)、血管プラークからもマイクロプラ(海外研究)。心臓発作や脳卒中の原因にも

東京農工大学の高田秀重教授らの研究グループが、人間の血液からマイクロプラスチックを見つけた。これまでは海外の研究で見つかっていたが、日本で見つかったのは初めてだ。

「このうち1人を詳しく調べると血液や腎臓、肝臓などから、プラスチックに添加する紫外線吸収剤やポリ塩化ビフェニール(PCB)が見つかった」とのこと。

https://news.yahoo.co.jp/articles/4020482f9eb630fd7d268330226c3f5ec869521c

ポリ塩化ビフェニールといえば、既に禁止されたはず。「ポリ塩化ビフェニルは有機溶剤(油)の一種で、かつては電気機器や塗料に使われましたが昭和47年(1972年)移行は製造禁止となっています」とここ↓に書かれている。

http://www.miyama-analysis.net/law/2019/12/no10.php

こんな危険なものが今でもまだ体内から見つかる理由は何だろうか。

また、海外では、血管内のプラークからマイクロプラスチックを検出した。サンプルの58.4%(150人)からポリエチレンが見つかったそうだ。

「平均レベルはプラーク1ミリグラムあたり21.7±24.5μgでした。31人の患者(12.1%)も測定可能な量のポリ塩化ビニルを有し、平均レベルはプラーク1ミリグラムあたり5.2±2.4μg」ということで、血管のプラークから塩ビまでが見つかっている。

私たちの暮らしから塩ビを排除するには、まず壁の塩ビ製クロスや床材(クッションフロア)の材質を変えなければと思うが、もしかすると野菜などにも既に入っているのかもしれない。

塩ビは農場でよく使われるプラスチックだ。ポリエチレンの排除は難しいけれど、せめて塩ビだけでも排除したいものだ。

この研究では、「マイクロプラスチックやナノプラスチック(MNP)が検出された頸動脈プラークを有する患者は、MNPが検出されなかった患者よりも、34ヶ月のフォローアップで任意の原因による心筋梗塞、脳卒中、または死亡の複合のリスクが高かった」そうだ。

https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa2309822?logout=true

病気の原因は、マイクロプラスチックが溜まることによる物理的原因と、付着していた有害化学物質による影響の2通り考えられる。

EU、さらなるプラスチック削減目指し包装・包装廃棄物規則案に合意 食品と接触する包装材のPFASも禁止

EU理事会と欧州議会は今月4日、包装・包装廃棄物規則案に関して暫定的な政治合意に達した。法案は、「レストランやカフェなどで消費する飲料・食品やホテルの小分けシャンプーなどに使用される使い捨てプラスチック包装材の禁止、輸送用包装材の最小限化要件、再利用可能な包装材の利用率に関する飲料用や輸送用など包装用途別の目標値、すべての包装材に基準値以上のリサイクル可能性を課す要件、プラチック包装材におけるリサイクル済みプラスチックの最低使用要件など多岐にわたる規制を新たに導入する」とのこと。

https://www.jetro.go.jp/biznews/2024/03/783c82db1560ea37.html

具体的には、ファストフード店で提供される使い捨ての皿、コップ、箱や、ホテルで提供される小型シャンプー、そして食品店で提供される軽いプラ袋も禁止する。

また、「再利用率の目標も設定、持ち帰り店の容器はワインとミルクを除き10%とする。運送用包装の空スペースは最大で50%までとする」などにより、「包装廃棄物を30年までに5%、40年までに15%削減することで合意。30年までに全ての包装を再利用可能にする」とのこと。

さらに、食品と接触する包装材へのPFAS使用も禁止するそうだ。

https://jp.reuters.com/world/europe/LCRL22OCH5LK3A7TW2VHTOJY2E-2024-03-05/#:~:text=%5Bブリュッセル%205日%20ロイター%5D%20%2D,は適用を免除する%E3%80%82

多くの現地メディアは、この法案に関係する多くの業界団体が激しいロビー活動を展開したことを報道している。ワインや包装用段ボールなどが、法的拘束力を持った目標値の対象から除外されたのもその成果だろう。

今後、法案は両機関により正式にする必要がある。採択されれば、施行18カ月後に適用を開始する。実際の適用開始時期は規制によって異なるそうだ(JETRO2024.3.8)。

TDIの見直しを求め、PFASのパブコメを提出。日本は人体実験の場ではない

PFASのパブコメ締め切りが迫っている。どう書こうかと迷っていたが、『週刊金曜日』に文例案があると聞き、読んでみた。

同誌の「食安委のPFAS評価書に異議あり 証拠不十分な有害影響を無視するな」(2024.3.1)によると、食品安全委員会からPFASの耐容1日摂取量が発表され、世界的に見ても高い数値であることが一番の問題だ。

だから、パブコメ文のポイントは「TDIを見直して」ということに尽きるようだ。そのため、文例案はこの2つ。

「科学的に証拠不十分とされた健康影響についても保護されるようTDIを見直してください」「高濃度汚染地域には健康影響を受ける可能性の人たちがいることを念頭にTDIを見直してください」

これで良いならば簡単だ。あとは適宜『毒の水』を参考に、パブコメを書いて送った。

このような未知の毒物に対し「不確実性のある有害リスクは排除する」という日本の姿勢では、我が身を守ることもできないし、次世代への責任も果たせない。

せめて欧米並みに基準を引き上げ、さらに1日も早くPFASグループ全体の使用を禁止してほしい。

いつまでも緩い基準のままでは、日本中PFAS汚染地域だらけになり、日本は人体実験の試験国になってしまう。モルモットにされるのはゴメンだ。

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PFAS汚染、川崎や広島も

広島県東広島市で飲用の井戸水から指針値の300倍ものPFASが検出された。近くに米軍川上弾薬庫があるという(2024.2.27)。

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1019832?display=1

東広島市では「先月27日に採取した水を調べた結果、八本松町宗吉の水路で「PFOS」と「PFOA」が合わせて、国の暫定目標値の80倍となる1リットル当たり4000ナノグラム検出された」そうだ(NHKニュース2024.1.27)。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240127/k10014336361000.html

また、神奈川県川崎市でも1月に実施した市内5カ所の井戸水の検査で、2カ所で暫定指針値(1リットルあたり50ナノグラム)を超えるPFASが見つかっている。

汚染源は不明とのこと(毎日新聞.2024.2.19)。

https://mainichi.jp/articles/20240219/k00/00m/040/288000c

日本全体がPFASに汚染されている気がするが、それでもまだ国の対策は及び腰だ。

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PFAS汚染、静岡はデュポン系の会社が対策中。相模原市は特定せずうやむや?

泡消火剤以外のPFAS汚染源が各地で見つかっている。

静岡市清水区で見つかったPFAS汚染源は「三井・ケマーズ フロロプロダクツ株式会社」だ。会社紹介を読むと、「1930年代にフッ素化学の歴史を切り拓いた米国デュポン社と三井化学の折半出資による合弁企業として、1963年よりフッ素化学品を半世紀以上にわたってご提供してきました」とのこと。

https://www.mc-fluoro.co.jp/special/life/

同社は責任を認め、PFOS除去対策を取り始めているようだ。

https://www.mc-fluoro.co.jp/news/corporate/1790/

では相模原市中央区南橋本の汚染源はどこだろう?全国的に見ても突出してPFOA濃度が高い。

南橋本には現在、3Mがある。3Mは2000時点までは世界で唯一のPFOSメーカーだった。名前から考えると疑わしいが、他に半導体工場などが南橋本にはかつて存在したと聞くから断定はできない。

調べれば汚染源はわかると思うが、市は調べる気はないのだろうか?

土壌の入れ替えや浄化設備の設置など、今からでもできることはある。汚染した企業には早急に出来る限りの対策を取ってほしい。決して税金でやってほしくない。

相模原市はどうするつもりか、聞きたいものだ。

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テフロンのフライパン、PFASは大丈夫?(補筆)

テフロンなどのフッ素樹脂加工のフライパンの安全性について、いろいろ噂が飛び交っている。

「以前のフライパンにはPFOAが使われていたけれど、今はPTFEだから安全だ」というものだ。

本当だろうか?

同じPFASグループの物質なのに、危険性にそれほど違いがあるのか、と疑問に思っていたところ、こんなサイトが見つかった。

「PTFEとPFOAは構造が似ており、PTFE製造時に一緒に出来てしまいます」とのこと。もし本当に製造時に一緒に出来てしまうものならば、使用中にPFOAに変化することは十分ありそうだ。

仮にPTFEの安全性がPFOAよりも高かったとしても、フッ素樹脂加工のフライパンは大量のマイクロプラスチックが使用時に出ることは、2022年に発表されたオーストラリアの研究で判明している。

しかも、食べ物がこびりつかないという機能は新しい時だけで、数年以内にはフッ素樹脂が剥がれ、くっつきやすくなる。危険な上に消耗が激しく、経済的でない。

やはり使わないに越したことはない。

<補筆(2024.3.8)>

原田浩二先生の『これでわかるPFAS汚染』(合同出版, 2023)によると、フライパンに「フッ素樹脂コーティング」と明示されていれば、PTFEが使われており、これ自体は人体に吸収されることはほとんどない。しかし、加工助剤としてPFOAが使われていた。PFAS問題を受け、国内のメーカーでは2013年までにPFOA使用を全廃したため、代わりに今は別のPFASが加工助剤として使用されているそうだ。

また、このようにも書かれている。「ピーフォアはフッ素樹脂の製造工程で助剤として使われてきたほか、ピーフォスを製造する際の副生成物として生成されます」(p.14)

要するに、PTFEは人体にはあまり吸収されないが、製造工程で何らかのPFASが助剤として使用され、かつ、何らかのPFASが副生成物として出ている可能性があるということか。

また、原田先生の別の説明によると「同じPFASでも、PFOAなどは体内に吸収されます。吸収されるかどうかは、物質の分子量(分子の質量の相対的な値)で決まります。PFOAは約400であるのに対し、PTFEは1万以上。分子量が大きいと、胃などの消化管を通り抜けることが難しく、体内に吸収されにくいそうです」とのこと。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/263505

分子量が大きければ、体内に吸収されにくいという説明は理解しやすい。

フライパンや炊飯器、ホットプレートなどに使われているフッ素樹脂コーティング。今思えば、2013年頃に我が家で購入したホットプレートは安売りしていたからPFOAが使われていたかもしれない。

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