長野・上田古戦場公園も神奈川・秦野市も人工芝化の要望書。なぜ全国次々と

欧米では人工芝に一定の歯止めがかかっているが、日本は逆行している。

今、世界はプラスチック汚染や地球温暖化に対処するため、必要性の低い(しかも有害性の高い)プラスチック製品は極力減らす方向で進んでいる。

人工芝はPFASなどの危険性がある上、ヒートアイランドや熱中症の危険もある。その上、マイクロプラスチックを盛大に発生させる。

農薬やPFASも同様だが、海外が規制し始めると日本はますますゆるめて受け入れる傾向がある。人工芝もまさにその様相を呈している。国内メーカーだけでなく、欧米のメーカーも日本に営業をかけているかのようだ。

昨年、長野県上田市の古戦場公園の多目的グラウンドを人工芝にするよう地元のサッカー協会が要望を出した

https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2024112800064

その後、地元自治会も要望書を出した。家の近くをプラスチックで覆うことに賛成するとは信じられないが、マイクロプラスチックなどの影響を知らないせいだろう。

おやおやと思って見ていたところ、神奈川県内でも秦野市に要望書が出されてしまった。

https://www.townnews.co.jp/0610/2025/05/29/786793.html

こちらは野球団体関係者とのこと。「人工芝ならば少しの雨でもできる」というのが要望書提出理由だ。

雨の日に人工芝の芝片やゴムチップにまみれながら、子ども達に野球をさせるつもりのようだ。

人工芝のパイル(芝)やゴムチップにどのような化学物質が入っているか、調べてみたのだろうか。

危険を顧みない行為だ。

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中国で小学生1000人対象にプラスチックの影響を調査 校庭の人工芝化の危険性

昔は大事に(過保護に)育てることを、「真綿でくるむように育てる」といった。今の子どもたちは、プラスチックに包まれて育てられているようだ。

決して大事にされているわけではない。あくまでも大人の都合で、プラスチックまみれにしているだけ。

その典型が校庭の人工芝化だ。土だと服も校舎も汚れる、雨の後は使いづらい、近所から砂埃の苦情が来る、などの理由で人工芝が大人気。

それならば、天然芝にしたらよいものだが、それはそれで手間がかかって面倒だ、と嫌う。

危険を察知した保護者らが反対するケースもあるが、保護者の意見が通ることは滅多にない。

学校側(教育委員会?)は人工芝を選ぶ。

その結果、日本のプラスチック消費量は減らず、子どもたちの体の中はマイクロプラスチックだらけだろう。

当然、そのツケは子どもが払うことになる。

中国・瀋陽で子ども(6歳から9歳)1000人を対象に疫学調査が行われた。尿中にマイクロプラスチックがたくさんある子は、行動や社会性に問題を抱える傾向があるという結果だったという。

情緒や行動、多動、対人関係に問題があり、他者への思いやりや協調性などは低いという結果だ。

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0147651325004336

近年の研究で、プラスチックは健康にも影響を与えることがわかっているが、性格や行動にも影響を与えるようだ。

にも関わらず、日本の小学校はなぜ校庭までプラスチックで覆おうとしているのか。理解できない。

マイクロプラスチックが子どものADHDと関連する可能性

2025年4月に発表された中国の研究によると、マイクロプラスチックは、ADHD(注意欠陥多動性障害)などの症状と関連がある可能性があるようだ。

6〜9歳の子ども1000人の尿中のマイクロプラスチックを調べた。保護者へのアンケートも行って、尿中のマイクロプラスチックと回答とを付き合わせた結果だ。

尿中マイクロプラスチックの中央値は、100mLあたり9個。尿中マイクロプラスチックの粒子数の増加は、情緒問題、行動問題、過活動、対人関係問題のスコアの上昇と正の相関が見られた。

調べた尿中のマイクロプラスチックは、ポリアミド(ナイロン)、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル(PVC)。

主な結果は以下の通り。

• 情緒的問題では、ポリアミド(PA)とポリプロピレン(PP)が正の関連。総マイクロプラ濃度も有意な正の関連。
• 行動問題はマイクロプラ曝露と一貫して有意に関連しており、特にPPで最も高い関連が見られた。
• 過活動はすべてのマイクロプラの種類と正の関連があり、総マイクロプラ濃度の影響が顕著。
• 対人関係問題は、すべてのMP種類と有意に関連しており、総マイクロプラの関連が最も強かった。
• 向社会的行動は保護的関連を示し、尿中マイクロプラの増加は向社会的行動の低下と関連。

これまでナイロンは丈夫で長持ち、化学物質の問題もあまりないプラスチックだと思っていたが、そうでもないようだ。

それにしても、なぜポリエチレンを調べなかったのだろうか。尿には多くのポリエチレンのマイクロプラスチックが含まれているはずなのに。

<出典>

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0147651325004336

「資源の高度化法」施行されたはよいけれど、大丈夫?

今年2月、「資源の高度化法」(資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律)が施行された。

https://www.env.go.jp/press/press_04242.html

しかし、この法律、大丈夫なのか?

UNEPの報告書によると、プラスチックから検出される化学物質は1万3000種類以上にのぼるとのこと。うち、「約7000種類のプラスチック関連物質に関する広範な科学データは、そのうち3,200種類以上が懸念される有害性を持つ」と書かれている。

要するに、1万3000種類のうち、データがあるのは約7000種類で、約6000種類は有害性の有無の分析すらされていないということだ。

https://www.unep.org/resources/report/chemicals-plastics-technical-report

そんな中、リサイクルばかり進めて大丈夫なのだろうか。とりわけ、プラスチックのリサイクルを進めるのは非常に不安だ。

特に日本は、内分泌かく乱化学物質についての規制が海外に比べ非常に緩い。まず、問題のある化学物質を禁止し、それでプラスチックが使えなくなるのであればプラスチック以外のものに代替し、その上でリサイクルを進めてほしい。

プラスチックを循環させると言うことは、プラスチックに使われている1万3000種類以上の化学物質も、用途を限定せず循環させてしまうことを意味する。あまりにも危険だ。

国際プラスチックごみ条約会議の再会、8月に決定

プラスチックごみ条約会議が8月5〜14日に再会されることになった。場所はスイスのジュネーブ。

INC-5.2という位置づけだ。昨年暮れに韓国で開かれたINC-5では、プラスチックの生産削減や有害化学物質の排除など、大事な点で紛糾したため、何も決まらなかった。

サウジアラビアやロシアなどが反対したためだが、日本や中国、米国の態度も曖昧だった。こういう大事な局面で、曖昧な態度しかとれない日本にも失望するが、今回米国はどう出るのだろうか。

もし、意欲的な内容で決まっても、真っ先に「批准しない」といいそうな大統領がいる。少なくとも4年間は、アメリカには何も期待できそうにない。プラスチックの生産削減すら決まらないようであれば、未来の地球はマイクロプラスチックと有害化学物質で覆われていそうだ。

マイクロプラスチック汚染と消費行動

メリーランド大学の最近の研究によると、大気汚染と消費行動は関連性があるそうだ。買い物による満足感で、空気の質の悪さによって引き起こされる不快感を払拭しようとするため、金遣いが荒くなるらしい。

https://today.umd.edu/study-consumer-spending-rises-with-air-pollution

ということはマイクロプラスチック汚染のひどい日は、無駄遣いが増える可能性が高い。消費者にとっては踏んだり蹴ったりの日だが、石油や天然ガスを「掘って掘って掘りまくれ」というトランプや、イーロン・マスクのような資本家にとっては、儲かる日なのだろうか。

国際プラ条約、合意できないまま閉幕

韓国・釜山で開かれていた国際プラスチック条約会議。

期待していたにも関わらず、合意できないまま閉幕した。日本の姿勢は終始消極的で、参加国の半数以上が賛成していたプラスチック生産を削減することにも賛成しなかった。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD301N40Q4A131C2000000/

これではまるで、日本が産油国などと足並みを揃えたように見える。とても恥ずかしい。

プラスチックは地球の三大危機に直結することが報告されている。気候変動、生物多様性喪失、汚染だ。地球環境あっての経済だということを、日本は理解していないのだろうか。

昨夜遅く(今朝早く?)グリーンピースが、声明を発表した↓


PFASとマイクロプラスチックの組み合わせで、毒性がパワーアップ:英研究

英バーミンガム大学の研究チームが新たな研究を発表した。マイクロプラスチックとPFASがミジンコに与える影響を調べたのだ。

その結果、マイクロプラスチック単独でもPFAS単独でもミジンコにとって有害だった(PFASの方が有害性が強かった)。

しかし、マイクロプラスチックとPFASを一緒にミジンコに曝露させると、単独のときよりも毒性が増した。しかも、複合効果は41%が「相乗的」とのこと。

つまり、ミジンコにとってマイクロプラの毒性が5,PFASの毒性が10だとすると、一緒に与えることでミジンコは15の毒性による影響を示すと考えられるが、それ以上の影響を示したということだ。

ミジンコは、成長が遅くなり、生殖への影響もでた。さらに、生存率も低下した。

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0269749124018505?via%3Dihub

まさに「複合汚染」だ。

少し前に中国の研究で、湖にマイクロプラとPFASがセットで存在するという報告があったが、マイクロプラはPFASを引き寄せ、毒性をパワーアップさせているようだ。

この実験で使用したマイクロプラスチックはPET粒子、PFASはPFOSとPFOAだ。一般にPETの化学物質吸着能力は、ポリエチレンやポリプロピレンに比べ低いとされている。この実験では吸着させて与えたわけではなく、単に一緒に与えただけのようだが、もしかすると、PETの代わりにポリエチレンなどを使った方がより毒性がパワーアップしたかもしれない。

いずれにせよ、このままPFASとプラスチックをを使い続けると、ミジンコが激減し、ミジンコを餌にしていた生物も減り、生態系が大きなダメージを受けることは確かだ。

アイルランド「海岸のペットボトルとアルミ缶が大幅に減少」ペットボトルはキャップ付きのまま回収

今年2月にデポジット制度が導入されたアイルランドでは、「合計6億3500万個のペットボトルとアルミ缶がデポジットリターンスキームに返還」された。同国の環境・気候・通信省の新しいデータだ。

これは、顧客に返還された1億1000万ユーロの預金に相当するとのこと。8月の回収率は、その月に市場に出回った飲料の73%に相当する。

今年6月に発表された最新のアイルランドの調査結果によると、このスキームの導入により、路上に捨てられた飲料缶が30%、ペットボトルが20%減少したという。

今年2月から始まったアイルランドの飲料容器デポジット制度は、ペットボトル、アルミ缶、スチール缶を対象とし、ガラスびんや乳製品は対象外だ。

ガラスびんは既に80%以上回収されているため、デポジット制度の対象外とされた。

ペットボトルと缶のデポジット額は以下の通り。

 ○飲料容器≥150mLおよび≤500mL:15¢ユーロ

 ○飲料容器>500mL:25¢ユーロ

EUではペットボトルのキャップは開栓後もボトルに残ったままでないと今年7月からは販売できない。返却時も、キャップが付いたまま返却するよう呼びかけられている。

ボトルに付いたキャップは、適正にリサイクルされるそうだ。

<出典>

https://www.citizensinformation.ie/en/environment/waste-and-recycling/deposit-return-scheme/

https://www.rte.ie/news/2024/1024/1477146-bottle-collection/

プラスチック国際条約、素案を議長が各国に提示

毎日新聞(2024.11.1)によると、政府間交渉委員会のルイス・バジャス議長が条文の素案の非公式文書を各国に提示した。

やはり生産規制は盛り込まれていない。

生産規制なしではプラスチック汚染など防げるはずないから、多少期待していたのだが。

グリーンピースのいうようにまだ結果はわからないとはいえ、これより良くなることはないだろうと思うと、とても残念だ。

しかし、生産者が製品の使用後にまで責任を負う「拡大生産者責任」だけはしっかり盛り込まれた。拡大生産者責任の考え方を導入し、プラ素材の使用量の削減と、再利用や修理をしやすい設計などを推奨するとのこと。

日本もその点だけは少し変わるかもしれないと期待する。

日本の容器包装リサイクル法は拡大生産者責任が再商品化義務のみだし、プラスチック資源循環法ではその再商品化義務さえ、生産者に負わせていない。回収から再商品化まですべて税金でおこなわれる。環境省は否定するが、同法には拡大生産者責任はゼロだ。

素案については、毎日新聞にしか載っていないようだ。非公式文書のせいか、INCの公式文書が掲載されるウェブサイトにもまだ見当たらない。

https://mainichi.jp/articles/20241101/ddm/012/040/048000c