ワールドカップは天然芝が当たり前  人工芝vs天然芝のコスト比較 

ロングパイル人工芝はサッカー場を中心に増えてきた。サッカー関連の方々はよほど人工芝が好きなのだろうと思っていたが、そうではないようだ。

サッカーには縁がないため知らなかったが、ワールドカップの芝は天然芝が義務づけられているそうだ。天然芝であれば、それほど芝の種類にはこだわらないらしい。そのため、国や競技場によりいろいろな種類の天然芝が使われている。

FIFAが天然芝にこだわる理由は、伝統、プレイアビリティ、そしてプレイヤーの幸福に根ざしているそうだ。人工芝に比べ、天然芝はケガをしにくく、衛生的で、涼しく、おまけに環境や生態系にも配慮できる。

では、人工芝と天然芝のどちらがカネがかかるのか。

町田市の実際の競技場(いずれも5000平方メートルに換算)をベースに10年間のコストを比較した議会答弁によると、初期費用は人工芝が1億5000万円、天然芝が3000万円。

メンテナンスなどの年間のランニングコストは人工芝が40万円、天然芝が2000万円。

廃棄物処理費用(10年後の張り替えで不要になった芝の処理費用)が人工芝が1000万円、天然芝はゼロ。

人工芝の場合は張り替え後にまた人工芝を張るとすると、10年後にまた1億5000万円かかるので、合計で3億1400万円かかる計算だ。

一方、天然芝は10年後の張り替えは不要でそのまま使い続けられるため、合計で2億3000万円。

https://www.gikai-machida.jp/g07_Video_View.asp?SrchID=8197

人工芝のプラスチックの芝片には、紫外線吸収剤や難燃剤も使われる(多分PFASも)。それらを含んだ芝片(マイクロプラスチック)を吸い込むことも心配だ。

人工芝より天然芝の方が、財布にも選手にも環境にも優しいのに、なぜ日本では人工芝が増え続けるのか、本当に不思議だ。

<関連記事>

町田市に続き、相模原市でも人工芝で議会質問

私の知る限り、昨年から約10の市町村で人工芝について議会質問がなされている。

昨年12月、隣の町田市で笹倉みどり議員が人工芝について質問をしている。

https://www.gikai-machida.jp/g07_Video_View.asp?SrchID=8197

さすが町田市。

相模原市は?と思っていたところ、今年の3月議会で、相模原市議会の五十嵐千代議員が質問してくれた。

先ほど議会録画を見てみたところ、最初の市長答弁はおざなりな感じだったが、19分後の少し突っ込んだ再質問には担当部署の人が回答していた。

https://smart.discussvision.net/smart/tenant/sagamihara/WebView/rd/speaker_minutes.html?speaker_id=2&search_index=99

回答を聞く限り、担当部署では人工芝やマイクロプラスチックへの理解がまだ不足しているようだ。議会質問は、人工芝を使えば市民が喜ぶ程度に考えていただろう市側にとって、少しは刺激になったかもしれない。

市長答弁によると、相模原市の公共施設での人工芝敷設面積は約65,000平方メートル。96%がサッカー場やテニスコートなどのスポーツ施設だそうだ。ということは、幸い市立の幼稚園や小中学校などでは人工芝を使っていないようだ。

人の血液からマイクロプラと環境ホルモン(国内研究)、血管プラークからもマイクロプラ(海外研究)。心臓発作や脳卒中の原因にも

東京農工大学の高田秀重教授らの研究グループが、人間の血液からマイクロプラスチックを見つけた。これまでは海外の研究で見つかっていたが、日本で見つかったのは初めてだ。

「このうち1人を詳しく調べると血液や腎臓、肝臓などから、プラスチックに添加する紫外線吸収剤やポリ塩化ビフェニール(PCB)が見つかった」とのこと。

https://news.yahoo.co.jp/articles/4020482f9eb630fd7d268330226c3f5ec869521c

ポリ塩化ビフェニールといえば、既に禁止されたはず。「ポリ塩化ビフェニルは有機溶剤(油)の一種で、かつては電気機器や塗料に使われましたが昭和47年(1972年)移行は製造禁止となっています」とここ↓に書かれている。

http://www.miyama-analysis.net/law/2019/12/no10.php

こんな危険なものが今でもまだ体内から見つかる理由は何だろうか。

また、海外では、血管内のプラークからマイクロプラスチックを検出した。サンプルの58.4%(150人)からポリエチレンが見つかったそうだ。

「平均レベルはプラーク1ミリグラムあたり21.7±24.5μgでした。31人の患者(12.1%)も測定可能な量のポリ塩化ビニルを有し、平均レベルはプラーク1ミリグラムあたり5.2±2.4μg」ということで、血管のプラークから塩ビまでが見つかっている。

私たちの暮らしから塩ビを排除するには、まず壁の塩ビ製クロスや床材(クッションフロア)の材質を変えなければと思うが、もしかすると野菜などにも既に入っているのかもしれない。

塩ビは農場でよく使われるプラスチックだ。ポリエチレンの排除は難しいけれど、せめて塩ビだけでも排除したいものだ。

この研究では、「マイクロプラスチックやナノプラスチック(MNP)が検出された頸動脈プラークを有する患者は、MNPが検出されなかった患者よりも、34ヶ月のフォローアップで任意の原因による心筋梗塞、脳卒中、または死亡の複合のリスクが高かった」そうだ。

https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa2309822?logout=true

病気の原因は、マイクロプラスチックが溜まることによる物理的原因と、付着していた有害化学物質による影響の2通り考えられる。

EU、さらなるプラスチック削減目指し包装・包装廃棄物規則案に合意 食品と接触する包装材のPFASも禁止

EU理事会と欧州議会は今月4日、包装・包装廃棄物規則案に関して暫定的な政治合意に達した。法案は、「レストランやカフェなどで消費する飲料・食品やホテルの小分けシャンプーなどに使用される使い捨てプラスチック包装材の禁止、輸送用包装材の最小限化要件、再利用可能な包装材の利用率に関する飲料用や輸送用など包装用途別の目標値、すべての包装材に基準値以上のリサイクル可能性を課す要件、プラチック包装材におけるリサイクル済みプラスチックの最低使用要件など多岐にわたる規制を新たに導入する」とのこと。

https://www.jetro.go.jp/biznews/2024/03/783c82db1560ea37.html

具体的には、ファストフード店で提供される使い捨ての皿、コップ、箱や、ホテルで提供される小型シャンプー、そして食品店で提供される軽いプラ袋も禁止する。

また、「再利用率の目標も設定、持ち帰り店の容器はワインとミルクを除き10%とする。運送用包装の空スペースは最大で50%までとする」などにより、「包装廃棄物を30年までに5%、40年までに15%削減することで合意。30年までに全ての包装を再利用可能にする」とのこと。

さらに、食品と接触する包装材へのPFAS使用も禁止するそうだ。

https://jp.reuters.com/world/europe/LCRL22OCH5LK3A7TW2VHTOJY2E-2024-03-05/#:~:text=%5Bブリュッセル%205日%20ロイター%5D%20%2D,は適用を免除する%E3%80%82

多くの現地メディアは、この法案に関係する多くの業界団体が激しいロビー活動を展開したことを報道している。ワインや包装用段ボールなどが、法的拘束力を持った目標値の対象から除外されたのもその成果だろう。

今後、法案は両機関により正式にする必要がある。採択されれば、施行18カ月後に適用を開始する。実際の適用開始時期は規制によって異なるそうだ(JETRO2024.3.8)。

TDIの見直しを求め、PFASのパブコメを提出。日本は人体実験の場ではない

PFASのパブコメ締め切りが迫っている。どう書こうかと迷っていたが、『週刊金曜日』に文例案があると聞き、読んでみた。

同誌の「食安委のPFAS評価書に異議あり 証拠不十分な有害影響を無視するな」(2024.3.1)によると、食品安全委員会からPFASの耐容1日摂取量が発表され、世界的に見ても高い数値であることが一番の問題だ。

だから、パブコメ文のポイントは「TDIを見直して」ということに尽きるようだ。そのため、文例案はこの2つ。

「科学的に証拠不十分とされた健康影響についても保護されるようTDIを見直してください」「高濃度汚染地域には健康影響を受ける可能性の人たちがいることを念頭にTDIを見直してください」

これで良いならば簡単だ。あとは適宜『毒の水』を参考に、パブコメを書いて送った。

このような未知の毒物に対し「不確実性のある有害リスクは排除する」という日本の姿勢では、我が身を守ることもできないし、次世代への責任も果たせない。

せめて欧米並みに基準を引き上げ、さらに1日も早くPFASグループ全体の使用を禁止してほしい。

いつまでも緩い基準のままでは、日本中PFAS汚染地域だらけになり、日本は人体実験の試験国になってしまう。モルモットにされるのはゴメンだ。

<関連記事>

PFAS汚染、川崎や広島も

広島県東広島市で飲用の井戸水から指針値の300倍ものPFASが検出された。近くに米軍川上弾薬庫があるという(2024.2.27)。

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1019832?display=1

東広島市では「先月27日に採取した水を調べた結果、八本松町宗吉の水路で「PFOS」と「PFOA」が合わせて、国の暫定目標値の80倍となる1リットル当たり4000ナノグラム検出された」そうだ(NHKニュース2024.1.27)。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240127/k10014336361000.html

また、神奈川県川崎市でも1月に実施した市内5カ所の井戸水の検査で、2カ所で暫定指針値(1リットルあたり50ナノグラム)を超えるPFASが見つかっている。

汚染源は不明とのこと(毎日新聞.2024.2.19)。

https://mainichi.jp/articles/20240219/k00/00m/040/288000c

日本全体がPFASに汚染されている気がするが、それでもまだ国の対策は及び腰だ。

<関連記事>

ルーマニアのデポジット制度、順調に進行

昨年11月30日に開始されたルーマニアのデポジット制度は、順調に進んでいるらしい。

今年1月だけで200万個以上の容器が回収されたとのこと。

https://www.romania-insider.com/deposit-return-system-romania-packages-january-2024?eType=EmailBlastContent&eId=5c983eb0-10c0-47a5-a076-cb8cde976f9f

デポジット制度の対象は0.1から3リットルまでのびん、缶、プラスチックだ。

デポジット額は0.50RON(日本円で16円から17円程度)。

消費者が小売店に容器を返却すると、手動の場合は現金で、自動回収機の場合は店のバウチャーか、銀行振込で返金をうけることができる。

ルーマニアのデポジット制度に関する法律は2018年に可決された。

<関連記事>

PFAS汚染、静岡はデュポン系の会社が対策中。相模原市は特定せずうやむや?

泡消火剤以外のPFAS汚染源が各地で見つかっている。

静岡市清水区で見つかったPFAS汚染源は「三井・ケマーズ フロロプロダクツ株式会社」だ。会社紹介を読むと、「1930年代にフッ素化学の歴史を切り拓いた米国デュポン社と三井化学の折半出資による合弁企業として、1963年よりフッ素化学品を半世紀以上にわたってご提供してきました」とのこと。

https://www.mc-fluoro.co.jp/special/life/

同社は責任を認め、PFOS除去対策を取り始めているようだ。

https://www.mc-fluoro.co.jp/news/corporate/1790/

では相模原市中央区南橋本の汚染源はどこだろう?全国的に見ても突出してPFOA濃度が高い。

南橋本には現在、3Mがある。3Mは2000時点までは世界で唯一のPFOSメーカーだった。名前から考えると疑わしいが、他に半導体工場などが南橋本にはかつて存在したと聞くから断定はできない。

調べれば汚染源はわかると思うが、市は調べる気はないのだろうか?

土壌の入れ替えや浄化設備の設置など、今からでもできることはある。汚染した企業には早急に出来る限りの対策を取ってほしい。決して税金でやってほしくない。

相模原市はどうするつもりか、聞きたいものだ。

<3Mについての関連記事>

テフロンのフライパン、PFASは大丈夫?(補筆)

テフロンなどのフッ素樹脂加工のフライパンの安全性について、いろいろ噂が飛び交っている。

「以前のフライパンにはPFOAが使われていたけれど、今はPTFEだから安全だ」というものだ。

本当だろうか?

同じPFASグループの物質なのに、危険性にそれほど違いがあるのか、と疑問に思っていたところ、こんなサイトが見つかった。

「PTFEとPFOAは構造が似ており、PTFE製造時に一緒に出来てしまいます」とのこと。もし本当に製造時に一緒に出来てしまうものならば、使用中にPFOAに変化することは十分ありそうだ。

仮にPTFEの安全性がPFOAよりも高かったとしても、フッ素樹脂加工のフライパンは大量のマイクロプラスチックが使用時に出ることは、2022年に発表されたオーストラリアの研究で判明している。

しかも、食べ物がこびりつかないという機能は新しい時だけで、数年以内にはフッ素樹脂が剥がれ、くっつきやすくなる。危険な上に消耗が激しく、経済的でない。

やはり使わないに越したことはない。

<補筆(2024.3.8)>

原田浩二先生の『これでわかるPFAS汚染』(合同出版, 2023)によると、フライパンに「フッ素樹脂コーティング」と明示されていれば、PTFEが使われており、これ自体は人体に吸収されることはほとんどない。しかし、加工助剤としてPFOAが使われていた。PFAS問題を受け、国内のメーカーでは2013年までにPFOA使用を全廃したため、代わりに今は別のPFASが加工助剤として使用されているそうだ。

また、このようにも書かれている。「ピーフォアはフッ素樹脂の製造工程で助剤として使われてきたほか、ピーフォスを製造する際の副生成物として生成されます」(p.14)

要するに、PTFEは人体にはあまり吸収されないが、製造工程で何らかのPFASが助剤として使用され、かつ、何らかのPFASが副生成物として出ている可能性があるということか。

また、原田先生の別の説明によると「同じPFASでも、PFOAなどは体内に吸収されます。吸収されるかどうかは、物質の分子量(分子の質量の相対的な値)で決まります。PFOAは約400であるのに対し、PTFEは1万以上。分子量が大きいと、胃などの消化管を通り抜けることが難しく、体内に吸収されにくいそうです」とのこと。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/263505

分子量が大きければ、体内に吸収されにくいという説明は理解しやすい。

フライパンや炊飯器、ホットプレートなどに使われているフッ素樹脂コーティング。今思えば、2013年頃に我が家で購入したホットプレートは安売りしていたからPFOAが使われていたかもしれない。

<関連記事>

PFASパブコメ募集中、緩い指標値と『毒の水』

食品安全委員会が、有機フッ素化合物(PFAS)に係る食品健康影響評価に係る審議結果(案)について、科学的な内容に関する意見・情報を募集している。締め切りは3月7日。

https://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc1_pfas_pfas_060207.html

あくまでも科学的な内容に関する情報を募集しているため、感情的な意見は書きにくい。しかし、人が1日に食品や飲料水などから摂取する許容量について、PFHxS(ピーエフヘクスエス)を放置し、PFOSとPFOAの2物質のみそれぞれ体重1キログラム当たり20ナノグラム(ナノは10億分の1)とした指標値の案は承服しにくい。

この数値は、「水道水の暫定目標値の算出で採用した指標を飲食物全体に広げた形だが、欧州食品安全機関(EFSA)が採用する摂取許容量を60倍以上上回っている」という。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/305491

日本の化学物質規制はとにかく遅い。

100頭以上の牛が農場でバタバタと死んでいく有様に危機感を募らせた農場主の訴えを聞いたのを機に、PFAS汚染に20年間も立ち向かった弁護士の実話『毒の水』(日本語訳は花伝社、2023)。この本によると、デュポンがPFASの毒性調査を開始したのは1954年、動物実験を本格化させたのが1960年代だ。

1962年にはラット、65年には犬、78年にはサルで実験。全てで有害性が認められた。

「PFOAが先天異常と関連している」と3M社が政府やデュポンに報告したのは1981年だ。妊娠したラットにPFOAを食べさせたところ、胎児の目に異常が起きたためだ。

報告を受けたデュポンは2週間後、全女性従業員をテフロン部門から撤退させ、血液検査を行った。

さらに、最近出産した7名の従業員の血液データを集め、出生記録を検討した。その結果、全員がPFOAの血中濃度が高かった。しかも7人のうち2名に出生時の障害が見られたのだ。両者とも目の障害だった(p.209)。しかも一人は鼻も半分なかった。

しかし、デュポンはこの結果を政府に報告しなかった。それどころか、同社のラット実験では目の異常が出なかったので、同社はそれを根拠に3Mの実験結果は間違いだったと指摘した。

3M社もそれに同調し、環境保護庁に「報告したラットの先天異常は無効で、さらなる調査は不要だ」と伝えた。それを環境保護庁は鵜呑みにした。

他の部署に短期間、異動していたデュポンのテフロン担当の女性従業員は、またテフロン部署に戻された。

1988年、新たなラット実験で発がん性が判明した。PFOAがラットに睾丸腫瘍を引き起こすことがわかったのだ(p.210)。デュポンは社内で、人間の発がん性もありうると分類したが、このことを政府に伝えなかった。

1993年には、PFOAが睾丸腫瘍だけでなく、肝臓と膵臓の腫瘍を生じさせることがわかった。同社の科学者は論文で、この化学物質の人間への発がんリスクは軽視できないと認めた。しかし、デュポンはその後もPFOAを環境に垂れ流し、そのことを隠蔽し続けた。

2017年、ようやく地域住民の血液数万人分を専門家が7年以上かけて精査した「科学パネル」の結果が発表された。その結果、PFOAのリスクは次の6つの疾患であることが判明した(p.339)。

・腎臓がん

・睾丸がん

・潰瘍性大腸炎

・甲状腺疾患

・高コレステロール

・妊娠高血圧症

これほど顕著な有害性の証拠が既に報告されているにも関わらず、日本の食品安全委員会の評価書(案)には、「発がん性については、動物試験でみられた事象は、げっ歯類特有のメカニズムである可能性がある又は機序の詳細は不明であることから、ヒトに当てはめられるかどう
かは判断できないと評価した。疫学研究から、PFOA と腎臓がん、精巣がん、乳がんとの関連については、研究調査結果に一貫性がなく、証拠は限定的である」(p.7)と書かれている。

しかし、動物実験ではサルも死亡していることから、発がん性は「げっ歯類特有のメカニズム」などではない。サルに当てはまるならば、ヒトにも当てはまるのではないだろうか。

この評価書は納得できない。