タンカー事故(その2) 海産物汚染の怖れ 漁業活動は継続

BBC NEWS JAPANによると、タンカー事故後、沈没した海域で、事故後も何日間にもわたり漁船の操業が続いていたとのこと。

東シナ海周辺の地域では、タンカーから流出した超軽質原油(コンデンセート)で海産物や海洋生物が汚染された可能性が指摘されていた。このため、現場から半径30海里の海域が立入禁止区域になっていたが、漁業活動は継続されていたようだ。

国連食糧農業機関は、流出事故の影響を受けた海産物が市場に出回っているかどうかについてのコメントは控えたとのことだが、見た目で汚染がわからなければ当然出回っているだろう。

一方、グリーンピースは奄美大島に漂着した油の状況を写真入りで報告している。油と一緒に海鳥の死骸やペットボトルも漂着している。

英国のサウサンプトン大と国立海洋学センターの研究グループによると、3月半ばには関東から東北沖まで拡大する怖れがあると予測されている(産経新聞2018.2.3)。

 

タンカー事故(その1)「3月には油が関東沖まで到達?!」

タンカー事故(その1) 3月には油が関東沖まで到達?!

BBC NEWS JAPAN(2018.2.23)「東シナ海のタンカー事故後も漁業活動 海産物汚染の怖れ」

http://www.bbc.com/japanese/43165466

グリーンピース「奄美大島に漂着した油を見てきました」↓

http://www.greenpeace.org/japan/ja/news/blog/staff/blog/61155/?utm_campaign=Others&utm_source=Supporter%20Service%20e-mail&utm_medium=email&utm_term=24022018_Amami-blog

産経新聞(2018.2.3)「沈没タンカーの油、東北沖まで拡大の恐れ」↓

http://www.sankei.com/affairs/news/180203/afr1802030019-n1.html

タンカー事故(その1) 3月には油が関東沖まで到達?!

2018年1月6日に中国沖で発生したイラン企業所有の石油タンカー事故の影響が懸念される。

報道によると、タンカーは香港籍の貨物船と衝突し漂流した後、同月14日、奄美大島の西約300キロの日本の排他的経済水域内で大炎上し、沈没した。軽質原油10万トン超を積むタンカーの沈没は前例がなく、過去数十年間で「最悪」であるとする報道も散見する。

最近の日本の報道はオリンピック一色で、タンカー事故の続報は少なく現時点で油がどこまで拡散しているのか不明だが、1月10日時点で既に鹿児島県内10島と沖縄本島への漂着が確認されている。

グリーンピースによると、爆発と沈没は「重要な魚の産卵場で発生」した。また、別の保全団体の声明によると、この場所は多くの海洋哺乳類の移動経路にあたるという。

英国の国立海洋研究所は、3月には重油は関東沖に達するという拡散予測を公表している。

日本近海の魚介類をはじめとする海洋生態系はこれからどうなるのか。とても気になるが、影響に関する続報はまだない。(追記:続報は下記)

 

タンカー事故(その2)「海産物汚染の恐れ 漁業活動は継続」

タンカー事故(その2) 海産物汚染の怖れ 漁業活動は継続

毎日新聞(2018.2.10)↓

https://mainichi.jp/articles/20180210/ddm/041/040/132000c

朝日デジタル(2018.2.1)↓

https://digital.asahi.com/articles/ASL215G6SL21TLTB010.html

朝日デジタル(2018.2.11)

https://digital.asahi.com/articles/ASL2B5D0XL2BTLTB008.html

EXPRESS: Iran oil tanker causes worst spill in DECADES after ship carrying 1 MILLION barres sinks;

https://www.express.co.uk/news/world/905066/iran-oil-tanker-slick-spill-explosion-sinking-east-china-sea-sanchi-environmental-disaster

 

斑鳩町 ゼロ・ウェイストの危機(その1)

2017年5月にゼロ・ウェイスト宣言(斑鳩まほろば宣言)をおこなった奈良県斑鳩町(いかるがちょう)が、危機に直面している。

ゼロ・ウェイスト宣言とは、ごみの焼却や埋立をゼロに近づけるべく、ごみを極力出さないような仕組みを作ろうという考えのもと、その道筋ができた自治体が決意表明することを指す。

海外では、オーストラリアのキャンベラやカナダ・ノバスコシア州などが1990年代にゼロ・ウェイストを目指し始めた。

日本では、徳島県上勝町、福岡県大木町、熊本県水俣市に続いて、斑鳩町がゼロ・ウェイスト宣言をおこなった。

その道筋のポイントの1つが、できるだけ減らした可燃ごみを民間委託することであった。自前の焼却炉を作ったり、近隣市町村と広域処理をすると、どうしてもごみを減量しようというインセンティブが働きにくくなる。

しかし、民間委託によるトンいくらのごみ処理価格設定で、建設費や維持費もかからないならば、減らせば減らすほど支払う金額がダイレクトに減るので、住民にも減量協力を求めやすい。

実際に斑鳩町は、リサイクルを進めることで、可燃ごみはかなり減量できていた。しかし今、三重県伊賀市からの申し入れにより、そのごみ処理方針の変更が求められている。

確かに、民間の廃棄物処理施設のある伊賀市の「恒常的な搬入は承服できない」との言い分は当然で、よく理解できる。理解はできるが、なんとかならないものか・・とも思う。

斑鳩町は、これから近隣市町村と広域処理を検討し、どこかに大型焼却炉を建設し、ごみ量に応じて費用を割り振る・・ということになるのだろう。

奈良県は、「どこを掘っても遺跡」と言われるほど、焼却施設を建設する適地に乏しい。そもそも、焼却施設建設の適地など、世界のどこを探してもないのだろうが、現在動いている焼却施設をやりくりしつつ、できるだけごみを減らし、焼却も埋立もゼロに近づけていくしか、このような問題を解決することはできない。

日本全体で広域処理を進め、高性能の大型焼却炉を国内に適宜配備し、そこで効率良く回収されたエネルギーを周辺工場や住民が享受できるようにすることは、ゼロ・ウェイストへの過度期には必要かもしれない。しかし、近い将来、焼却炉に頼らずに済むよう、ごみを出さない仕組み作りは必ず必要だ。

にも関わらず、日本では使い捨てのものは増える一方で、ヨーロッパでなされているような使い捨てプラスチック容器の規制も進まない。

頼みの廃掃法は、公衆衛生を主な目的とした清掃法や汚物掃除法を踏襲しているため、焼却が大前提となっている。国は、焼却炉に補助金を出すよりも、使い捨て容器を規制し、ごみのでない買い物ができるような下地作りをすべきである。

ゼロ・ウェイストは日本では不可能か、という気になってくるが、斑鳩町にはなんとか打開策を見つけて欲しいものだ。

<参考>

斑鳩町:ゼロ・ウェイスト宣言↓

http://www.town.ikaruga.nara.jp/0000000728.html

奈良新聞(2018.2.21)↓

f:id:inada5114:20180222173547j:plain

毎日新聞(2018.2.21)「可燃ごみ処理、事前協議書と食い違い」↓

https://mainichi.jp/articles/20180221/ddl/k29/010/494000c

毎日新聞(2018.2.7)「斑鳩町 ごみの県外処理、見直し含め検討表明」↓

https://mainichi.jp/articles/20171207/ddl/k29/010/596000c

<関連記事>

斑鳩町 ゼロ・ウェイストの危機(その2)

斑鳩町 ゼロ・ウェイスト方針は健在

PCB汚染のため、オレゴン州がモンサント社を提訴

モンサント社といえば、ドキュメンタリー映画『モンサントの不自然な食べもの』でも知られる遺伝子組換え作物で有名な企業だが、そのモンサント社がPCBで訴えられた。

オレゴン州は、州内20以上の河川をPCB(塩化ビフェニール)で汚染され、40以上の流域の魚や野生生物を汚染されたとして、モンサント社を提訴した。

米国環境保護庁によると、「PCBは、動物の免疫系、神経系生殖系への影響を含むさまざまな健康問題を引き起こす」。

PCBは脂肪組織に蓄積するため、汚染された魚を食べた人間にも害をもたらす。にも関わらず、モンサント社はその毒性を知らせずに、被害をもたらした。

ローゼンブラム司法長官は声明の中で、既にオレゴン州は、川のPCB除去や魚などのPCB測定に莫大な費用を投じているが、PCBを取り除くのは非常に難しく、完全に除去するにはかなりの時間とリソースが必要で、製造元であるモンサント社が金銭的に支援するのは当然だ、としている。

モンサント社は、1935年から1977年にかけてPCBを生産・販売していたとのことである。

ポートランドを含む米国西海岸の8つの都市がPCBでモンサント社を既に訴えているそうだ。最も早い提訴はワシントンで、2016年12月にモンサント社を訴えている。

<出典>

Oregon sues Monsanto over PCB pollution in waterways, soil (2018.1.4)

http://www.statesmanjournal.com/story/news/2018/01/04/oregon-sues-monsanto-over-pcb-pollution-waterways-soil/1005903001/

Oregon failes $100M suit against Monsanto over PCB contamination(2018.1.5)

https://www.bizjournals.com/portland/news/2018/01/05/oregon-files-100m-suit-against-monsanto-over-pcb.html

 

シャンプーや消臭剤は車の排ガス同様、身体に悪い?

2018年2月16日に配信された英国のTHE TIMESによると、シャンプーやオーブンクリーナー、消臭剤、その他の家庭用品は、自動車同様、大気汚染の重要な発生源になっていることが、サイエンスジャーナルに報告された新しい研究により判明したとのこと。

ロサンゼルスで大気汚染を研究している科学者は、揮発性有機化合物(VOCs)として知られている粒子の半分が、塗料や殺虫剤、漂白剤、香水を含む家庭用品由来のものであったと報告した。

これらの化合物はPM2.5として知られている粒子になり、呼吸に問題をもたらし、毎年英国では29,000人の早期死亡に影響している可能性があるそうだ。

この研究は、ロサンゼルス以外の都市にも当てはまるのではないか、とのことである。

コロラド大学ボルダー校のJoost de Gouwは、都市の大気汚染と闘うために、この予想外の発生源に取り組まなければならない、と語っている。

THE TIMES: Shampoo ‘as bad a health risk as car fumes’;

https://www.thetimes.co.uk/edition/news/shampoo-as-bad-a-health-risk-as-car-fumes-hxzbqlbjf

以前、NATIONAL GEOGRAPHIC(2010.4.30)に、シャンプーにより下水処理施設で発がん性物質が育成されているという記事があった。こちらは、上記で問題になっている揮発性物質とは異なる成分が問題であるようだ。

シャンプーをはじめとする家庭用製品が浄水処理過程で使用される消毒剤と反応して、ニトロアミンという発がん性物質を作るということである。

いずれの研究も、石油由来の物質が使用された合成シャンプーや洗浄剤などを問題にしているので、やはり昔からの無添加無香料の石鹸を、身体用にも掃除用にも使うのが良さそうだ。

まして、洗濯したあと衣類に香りが残る柔軟剤や合成洗剤などは、公害を巻き散らかしているといえよう。

NATIONAL GEOGRAPHIC(2010.4.30)「下水処理で発癌性物質が育成?」

http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/2642/?ST=news

日立市に続いて、武雄市でもプラ分別廃止を発表

佐賀県武雄市がプラスチック製容器包装の分別収集を4月から廃止すると発表した(佐賀新聞2018.2.16)。

茨城県日立市でも3月31日に、プラスチック製容器包装の拠点回収ボックスを終了すると発表している。

2016年度からの和歌山市でのプラ容器分別廃止は、当時多少の驚きをもって報じられたが、今ではもう誰も驚かない。おそらく多くの自治体は、「次はうちも」と考えているのではなかろうか。

武雄市も日立市も、今年度末をもってプラ容器の分別をやめ、可燃ごみとして焼却する方針である。

現在の容器包装リサイクル法は、市町村にとって協力するのがバカバカしいほど不利であることを考えると、廃止方針は理解できる。拡大生産者責任はごく一部にしか適用されていないので、まじめにやればやるほど多くの税金が必要になるからだ。マテリアルリサイクルされている、といえれば市民へのウケも良いが、ケミカルリサイクルの場合は説明すら難しい。

マテリアルリサイクルされた年でさえも、「残渣が多いし、できる製品はたかがしれている」などと聞きかじった市民からいわれる場合もある。どれが容器包装プラなのか、同じプラスチックなのになぜ容器包装だけが対象なのか、市民に理解してもらうだけでも一苦労だ。

いずれにせよ、容器包装リサイクル法は市町村の割に合わない。そのことを多くの市町村が気付き始めた、ということだ。

今のような中途半場な拡大生産者責任ではなく、回収から最終の処理段階まで生産者に責任をもたせる方向で容リ法を改正するしか、日本でリサイクル率を上げる術はない(もちろん、対象を「容器包装」に限定する必要もない)。

このままでは、ペットボトルの回収でさえも中止する市町村が、早晩現れるに違いない。

 

佐賀新聞「武雄市、プラスチック製容器包装の分別廃止」↓

http://www.saga-s.co.jp/articles/-/182206

日立市「プラスチック製容器包装の拠点回収が終了となります」↓

http://www.city.hitachi.lg.jp/shimin/007/002/001/p064328.html

PETのサーキュラーエコノミー戦略

サーキュラーエコノミー(循環型経済)についての話題を各地でよく聞くようになった。

2015年末に採択されたEUのサーキュラー エコノミー パッケージは、確かに画期的だった。経済価値も創出され、環境も雇用も守れるならば、いうことはない。

しかし、最近話題になっているサーキュラーエコノミーは、単にリサイクル率をいかに高めるかが主流になっている気がする。これでは、大量消費・大量リサイクル時代は終わらない。

先日、ヨーロッパのPETバリューチェーンがブリュッセルに集まり、PETのサーキュラーエコノミー戦略について、2日間にわたり200人以上の業界の専門家をまじえ話し合われたとのこと。

詳細な内容はわからないが、デポジット制度による回収と非デポジット制度によるそれとの比較についても話題になったようだ。

リサイクルしやすい製品設計に変えていくことが必要なのは当然だが、消費者からの使用済み製品をいかに回収するかが、サーキュラーエコノミーのカギになるはずである。

次回は、海ごみを減らすためにも、せめて散乱しやすいペットボトルは、デポジット制度により回収することを決議してほしい。

その上で、PET業界のみならず、地球全体が持続可能になるようなサーキュラーエコノミー戦略について考えてほしいものだ。

 

Recycling Magazine: Petcore: Strategy for PETin the Cicular Economy;

Petcore: Strategy for PET in the Circular Economy

 

あぶない油 総選挙!

パーム油(アブラヤシの油)は「植物油脂」として食品や洗剤などさまざまなものに使われている。

パーム油を避けては外食もできないし、おやつも食べられなくなるほど、本当にいろいろなものに使われる。カップ麺、アイスクリーム、チョコレート、クッキー、パン、ケーキ、マーガリン、ポテトチップス、マヨネーズ、カレールー、そして洗剤類・・・などなど。ある団体の調査によると、スーパーで販売されている製品の約半分に入っているとのことである。

しかし、パーム油の多くは熱帯林破壊につながっている。特に「炭素の貯蔵庫」と呼ばれる泥炭湿地帯を破壊し、アブラヤシを植えることで、インドネシアの泥炭湿地帯からのCO2排出量は、日本の年間総排出量にも匹敵するという報告もある。

水を抜くため、最初に水路を作ることで、大量の水が抜け、泥炭地に蓄積されていた有機物が分解し、CO2として排出される。その紙のように乾いた土地にアブラヤシが植えられると、火災が起きやすく、一度火がつくとなかなか鎮火しない。インドネシアの森林火災が頻繁に起きる原因の1つはこれである(プランテーション開発の際、売れる木を伐った後残った樹木等を焼き払うことにより他の森林にまで飛び火し火災となることも多い)。

企業に少しでもまともなパーム油(RSPO 認証パーム油)を使ってもらうため、「あぶない油総選挙!」というウェブサイトがプランテーションウォッチにより開設された。

商品を選んでクリックすると、企業の取組がわかる。がんばってほしい企業に投票すると、「がんばれポイント」が加算され、企業に声を届けられるとのことである。

プランテーションウォッチ「あぶない油総選挙!」↓

http://plantation-watch.org/sousenkyo/

エリザベス女王が、ストローやペットボトルを禁止

エリザベス女王は、プラスチックの使用を削減するため、バッキンガム宮殿で使われるプラスチック製ストローやペットボトルなどのような使い捨てプラスチックを廃止する方針を表明した。

段階的にスタッフの食堂で使われるプラスチック製ストローも禁止されることになる。

英国で最も知られている動物学者・デイビッド・アッテンボロー卿の影響によるとのことだ。

英国は最近続々と意欲的なプラスチック削減方針を打ち出しているが、王室もさすがである。

THE TELEGRAPH NEWS: The Queen declares war on plastic after David Attenbrough documentary;

http://www.telegraph.co.uk/news/2018/02/11/queen-declares-war-plastic-david-attenborough-documentary/

INDEPENDENT: Queen bans platic storaws and bottles on royal estates atter David Attenbrough documentary;

http://www.independent.co.uk/news/uk/home-news/queen-bans-plastic-straws-and-bottles-on-royal-estates-a8205896.html

THE TIMES: If the Queen’s gone green, so can everyone;

https://www.thetimes.co.uk/edition/comment/if-the-queens-gone-green-then-so-can-we-all-mwm9klwh3

スコットランドでも海岸浸食が問題に

国土面積の割に海岸線の長い日本では、海岸浸食が大きな問題になっているが、スコットランドでも問題になっているようだ。

スコットランドの海岸に近い3000以上の家屋と100マイル以上の道路と鉄道は、数十年以内に失われる可能性がある。グラスゴー大学の研究者は、海岸侵蝕により40億ポンド以上のインフラが損なわれる可能性があると予測したという。

日本でも一時期、海岸浸食が大きなニュースになったが(例えば讀賣新聞2016.9.11)、最近は飽きたのかあまり話題の上らなくなった。しかし、浸食が止まったはずはなく、また対策も一部地域にとどまっている。

THE TIMES: Scots homes and roads at risk from rising sea;

https://www.thetimes.co.uk/edition/scotland/scots-homes-and-roads-at-risk-from-rising-sea-m02brmd3d

讀賣新聞「九十九里浜消失の危機」

http://www.yomiuri.co.jp/local/chiba/feature/CO025631/20160912-OYTAT50006.html