オランダのプロサッカーリーグ、今年から天然芝でのみプレー

オランダのプロサッカーリーグの1部リーグであるエールディヴィジのすべてのクラブは、2025-26シーズン以降、天然芝またはハイブリッドピッチでのみプレーする。

エールディヴィジとファーストディビジョン(2部リーグ)のクラブは、プロサッカーの総会でこの決定に投票。人工芝でのプレーは完全に終了したことを意味しているそうだ。

「オランダのプロサッカーでは、クラブが天然芝やハイブリッドピッチに切り替えると報酬が支払われるため、人工芝のフィールドの数はしばらく減少している。この移行は、2018年にエールディヴィジ変更アジェンダから始まった」とのこと。

https://eredivisie.eu/news/no-more-artificial-turf-in-the-eredivisie-from-the-2025-26-season/

この報酬については、「2018年には欧州カップ戦のグループステージに進出したチームが受け取れるUEFAの分配金・テレビ放映権料の5%を、天然芝を採用しているチームに補助金として支給するルールができ、天然芝への回帰をオランダリーグ全体で促していった」と、この日本語の記事(2020.5.26)にも記述されている↓

かつての人工芝ブームから一転、天然芝の香りが戻ったオランダ

人工芝が減り、天然芝グラウンドが復活することは、気候変動対策にもなるのでとてもうれしい。

日本では、Jリーグ(日本のプロサッカーリーグ)の公式試合は天然芝グラウンドでのみ行われているが、日本サッカー協会の助成金により、各地のサッカー場は人工芝が多い。日本サッカー協会もそろそろ脱人工芝に舵を切るべきではないだろうか。

人工芝化する校庭の増加理由は、不完全な「学校保健安全法」のせいか

以前は大学などのサッカー部が使うサッカー場を人工芝にする傾向があった。特に強豪校といわれる学校は、人工芝が好きだった。最近では、サッカー部を強くしたい高校のサッカー場も人工芝になってきた、と思ったら、小中学校の校庭まで人工芝にする学校が増えているようだ。

理由は、近隣への砂塵対策などだと聞くが、人工芝化された校庭をもつ学校に通う児童は気の毒だ。

人工芝には内分泌かく乱作用のある化学物質が含まれている。芝葉の部分にはノニルフェノールやUV-328など、ゴムチップにはフタル酸エステルをはじめ、気になる物質がてんこ盛りに含まれる。PFASも含まれている可能性が高い(PFASは芝葉部分に多い傾向)。

人工芝から発生するマイクロプラスチックが大気へ放出されると、そのマイクロプラスチックに付着したこれら化学物質も一緒に放出されることになる。それを吸い込むのは、通っている児童・生徒だけではないが、やはり毎日学校にいる子が多く吸い込みそうだ。

もちろん、すぐに毒性が現れるような物質ではないので、気にしない親も多いだろうが、私ならば我が子を通わせるのは躊躇する。こんな幼い子どもたちまで、なぜプラスチック付けにして育てようとするのか、理解できない。

韓国では日本よりも早く、校庭の人工芝化が始まった。しかし、2008年に環境団体が校庭の人工芝から基準を超える鉛を見つけた。その後、2014年に国の外郭団体が全国調査を行ったところ、約17%の学校の校庭の人工芝から基準値を超えた重金属やベンゾピレンなどの発がん性物質などが見つかった。そのため、基準を超えた人工芝校庭は土の校庭などに戻された(天然芝校庭になった学校もある)。それ以降、多くの自治体が2年ないし3年ごとに校庭の有害物質調査を行い、結果を公表している。

日本ではなぜこのような調査が行われていないのか?と不思議に思い、「学校保全安全法」を調べてみた。この法律には、感染症や事故、衛生問題などは想定されているが、校庭に存在するかもしれない有害物質については考慮されていないようだ。

確かに、昔は校庭の危険性などは、せいぜい砂場の砂の衛生問題(たとえば、砂場にペットが排泄するなど)程度しか考えられていなかっただろう。

しかし、今の校庭は心配な人工物だらけだ。人工芝にゴムチップ舗装、陸上競技用のウレタントラックなど。日本にそれらに含まれる(あるいはそれらから揮発する)有害化学物質の基準値はあるのだろうか?

「学校環境衛生管理マニュアル」(文科省)などを見ても、校庭についてはほとんど触れられていない。「屋上や校庭の側溝等の雨水排水溝について検査を行う」程度だ。

人工芝やゴムチップなどは、施工時は基準値内でも周辺から多環芳香族炭化水素(PAHs)などを吸着し、有害性を増すことが知られている。日本の校庭や公園は、敷設の際に調べられた形跡はないし、敷設後も調べられることはないと思われる。

メーカーから安全性に関する書類を提出させるのかもしれないが、敷設時はもちろん、数年ごとに有害物質調査をする必要がある。

韓国では人工芝だけでなく、校庭の陸上トラックも調べたところ、問題のある物質がいくつもの校庭から見つかった。ウレタン舗装時に早く乾燥させるために使われた薬剤に問題があったようだ。

今のままの学校の安全基準で、子どもたちを守ることは到底できそうにない。至急、校庭の有害物質を調査し、さらに教室内の電磁波なども測定すべきだ。

人工芝と容器包装を減らせば、大阪ブルーオーシャンビジョンは達成できる

2019年のG20大阪サミットで、2050年までに追加的な海洋プラスチック汚染をゼロにまで削減することを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が提案された。

それを達成するには、海洋に流出するプラスチックごみの量を、2035年までに2019年比で32%削減する必要があると、九州大学の磯部先生たちの研究グループが報告している(重量ベース)。

https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/1132/

プラスチックの用途で最も多いのが容器包装で、プラスチック生産量の半分ほどを占めるため、容器包装を減らすのが最も有効だ。海洋への流出も多い。しかし、容器包装に使われているプラスチックをすぐに全廃するのは不可能だ。

そのため、バラ売りやシェアビジネスを増やすなどで容器包装を極力減らし、あとは必要性の高くないプラスチック製品を順次廃止するのがよいはず。

必要性の低いプラスチックの筆頭に上がるのが人工芝だ。健康にも環境にも悪く、使っていてもよいことは少ない。確かにメンテナンスはラクで、一度敷いてしまえばしばらくは維持費が安く済むかもしれないが、膨大な量のマイクロプラスチックを発生させることによる外部費用はバカ高い。

しかも、人工芝にはフタル酸エステルやノニルフェノールなど、内分泌かく乱作用のある化学物質(環境ホルモン)が含まれている。子どもや妊婦などへの悪影響は計り知れない。

さらに、PFASが含まれているという報告もあり、人工芝の販売禁止を決める米国の州も多い。

日本で最も人工芝に前向きなのは東京都で、都庁広場にまで人工芝を敷いてしまった。

東京都は、神宮外苑の木を伐り、人工芝を増やす・・・。まるでヒートアイランドを促進し、クーラーを使わせ、電力消費量を増やそうとしているようだ。それで誰が儲かるのだろうか?

人工芝から発生するマイクロプラスチック対策のための人工芝?!中学生より高齢者を重視

人工芝から発生するマイクロプラスチックを防止するための人工芝、というものがあるらしい。

以前もある事業者のサイトで読み、怪訝に思っていたが、確かに相模原市内のグラウンドでも、外周に、他よりも少しだけ丈の長い人工芝が使われている。

これでどれほど対策になるのかわからないが、メーカーにとってはうまい儲け話であることは確かだ。マイクロプラスチックを警戒する自治体に、防止する方法がありますよ、と持ちかけ、より多くの人工芝を売り込むことができるのだから、これほどうまい話はない。

厚木市の市議会報告を読んでいたところ、この対策用人工芝の話があった。

https://www.city.atsugi.kanagawa.jp/soshiki/gikaisomuka/4/r6_1_houkoku_6/42439.html

質問者が、「人工芝とマイクロプラスチックの関連性が問題視されているが対策は」と聞いたところ、

「劣化や摩擦しやすい人工芝の張り替えを行うことで、マイクロプラスチックの発生を抑制するものである。併せて、通常の人工芝よりも長く密度の高い、外周バリア人工芝をテニスコートの外周に張ることで、マイクロプラスチックが排水溝に流れることを抑制する」と答弁したのだ。

はて?

「外周バリア人工芝」で内側のマイクロプラスチック流出を多少抑制できるとして、その外周バリアの人工芝のマイクロプラスチックはどうなるのだろう?

内側の人工芝から発生したマイクロプラスチックを、バリアで一時的に補足できたとしても、大雨が降れば、せっかく補足した分のマイクロプラスチックにさらに外周バリア分のマイクロプラスチックが加わって、マイクロプラスチックは余計たくさん流れるのではなかろうか。

マイクロプラスチックは、テニスコート上を人が走り回ってのみ発生するわけではない。紫外線や風の影響で誰も触らなくとも発生する。当然外周バリアからも発生する。そのため、外周に背の高い人工芝を張ることは、まともなマイクロプラスチック対策にはなり得ない。

また次も面白い。

質問者「人工芝は滑りやすいが、ハードコートは滑りにくく、中学テニス部の生徒からの評判もいい。環境問題も考え、今後、ハードコートに変えていく考えはあるか。」
【答弁】砂入り人工芝はクッション性があり、足腰への負担が少なく、子供から高齢者まで幅広い世代に適しており、転倒などによるけがのリスクも軽減され、コートの乾きも早く、天候に影響されにくいなどのメリットがあるため、利用者が多く、稼働率も高い南毛利テニスコートは、利用者からも好評を得ている砂入り人工芝が最も適していると考える。

将来のある中学生にとり、国際標準コートであるハードコートは必要だ。それがわかっていながら、市があえて人工芝コートを選ぶのは、おそらく人工芝コートは高齢者に人気があるため、あるいはあると思い込んでいるためだろう。

人工芝は球速が遅く、弾みも悪いため、あまりうまくなくてもラリーが続く。しかし、ハードコートは球速が速く攻撃的なプレーになるため、ラリーは続かない。

趣味で楽しみたい人には人工芝コートのほうがよいだろうが、将来プロをめざすかもしれない若者にとってはハードコートの方が当然よいはず。

市が人工芝コートを選ぶのは、選挙権のない若者よりも、選挙権のある高齢者に配慮しないと議員に叱られるせいだろうか。

しかも、人工芝にはPFASやフタル酸エステルなど、特に若い人に影響が大きい化学物質も含まれている。人工芝で練習しなければならない若い人たちは、本当に気の毒だ。

カリフォルニア州がプラ汚染でエクソンを提訴「リサイクルで解決できない」 フィラデルフィアは人工芝で訴訟

米カリフォルニア州が9月23日、世界的なプラスチック汚染を引き起こしたとして、エクソンモービルを提訴した。

同社は数十年間にわたり、人々にプラスチックの廃棄問題はリサイクルで解決できると人々に信じ込ませてきたことが詐欺や迷惑行為にあたるというものだ。

アメリカのことは好きではないが、プラスチックやPFASなどのメーカーを提訴し、責任を追及する国民性は素晴らしい。

日本人もここまでやれば、多少はマシな社会になるのだろうか?

そういえば、米フィラデルフィア市では今春、住民が市を提訴した。市が自然溢れる大きな公園に人工芝を敷くなどしていることが原因だ。

フィラデルフィア市が一体何を考えて、こんなによい自然公園を破壊しようとしているのかわからないが、この訴訟がどうなろうと、ペンシルベニア州の州議会で現在、PFAS規制の審議が進められている。

人工芝も規制対象になり可決される可能性が高いと聞く。可決されれば2027年からPFASを含む人工芝は使用できなくなるだろう。

人工芝:共産党都議団が都へ申し入れ

今月2日に、共産党都議団が人工芝について、都へ申し入れを行ったそうだ。

「炎天下で周辺環境より高温になる人工芝の都有施設への敷設を見直すよう小池百合子知事、浜佳葉子都教育長宛てに申し入れ」たとのこと。

https://www.jcp-tokyo.net/2024/1003/97212

受け取った都建設局は、「人工芝を敷設した箇所が何度以上になるかを認識していなかったことを認め」たそうだ。

人工芝は夏に60度以上の高温になる。そのため、設置している23区の小中学校では子どもへのやけどを防ぐため、スプリンクラーを設置している学校もある。

本当に知らなかったのだろうか?

人工芝の営業担当は、聞かれなければいわないかもしれないが、教育委員会は当然知っていたはずだ。

これ以上ヒートアイランドを促進しないために、人工芝を早く剥がすべきだと思う。

人工芝の問題はヒートアイランドだけではなく、マイクロプラスチックや、PFASなどの有害化学物質も問題だ。

人工芝:三菱地所が丸の内で危険な社会実験 都庁の都民広場でも

三菱地所は7月25日(木)~ 8月18日(日)まで、丸の内仲通りに人工芝を敷き、社会実験をおこなった。

都会に緑の空間を求めたい気持ちはわかるが、人工芝を敷き詰め、色だけ緑。これではオアシスどころか、ヒートアイランドを激化させるだけだ。人工芝は夏は連日60度を超えるので。

しかも、人工芝にはPFASが含まれているので、アメリカでは人工芝を禁止する自治体が相次いでいる。

2019年から実施とのことだが、来年からは絶対にやめてほしい。

https://www.mec.co.jp/news/detail/2024/07/10_mec240710_msp

また、都民広場でも人工芝を敷くのが恒例行事になっているらしい。

今年も人工芝を敷くと聞いているが、昨年と同じだろうか?

昨年の様子↓

https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2023/09/22/02.html

東京都は、都庁周辺にテラス空間や都民広場などを整備する「都庁周辺の空間再編計画(素案)」を公表したとのことだが、もしかすると人工芝を恒久的に敷くつもりではなかろうか?

まさかとは思うが、神宮外苑再開発や葛西臨海水族園の整備事業などを押し進める都知事のことだから、何をするかわからない。

もし、人工芝を敷くならば、周辺地域のPFAS汚染とヒートアイランドはますます加速されてしまう。

最近の研究では、PFASは皮膚からも吸収されるそうだ↓

https://www.newsweekjapan.jp/stories/lifestyle/2024/07/post-105208.php

「最も広く使用されている17種類のPFASについて実験を行い、うち15種類が皮膚を通じて吸収されることを確かめた」ということは、人工芝に触れただけでも多くのPFASが体内に入るということだ。

街路樹などを伐りたいだけ伐って、色だけ緑にするため地面に人工芝を敷きつめるのは、本当にやめてほしい。

米コロラド州でも人工芝禁止が決定 州内すべての土地でNG

アメリカではPFASを理由に人工芝を禁止する州が増えている。

コロラド州でも今年5月、禁止が決まった。

https://www.jetro.go.jp/biznews/2024/07/e3312aa51fcac115.html

「2026年1月1日以降、州内のいかなる土地にも、PFASを使用した人工芝を設置することを禁止する」とのこと。

業界は2026年までにはPFASを使わない人工芝を開発しようと躍起になっているようだが、すべての過程で使わないのは難しそうだ。

しかし、いずれPFASフリーの人工芝を作ることができるかもしれない。PFASを禁止の理由にせず、マイクロプラスチック発生を理由にしてくれたら、人工芝を永久に追放できるのに・・と思うと、少し残念だ。

それにしても、PFASに甘い日本では、これからもPFAS入り人工芝を使い続けるつもりだろうか。

オランダ、健康と環境に配慮し人工芝を段階的に廃止

オランダでは、スポーツフィールドの人工芝に別れを告げ、代わりに天然芝にする準備ができているそうだ。

https://ministryofsport.com/the-netherlands-to-phase-out-artificial-turf-over-health-and-environmental-concerns/

これは、人工芝に充填されるゴムチップの有害性の研究に起因するとのこと。

オランダのサッカークラブで実施された研究によると、研究に関与した60のクラブのうち、58のクラブで使われていたゴムチップに、発がん性物質が含まれていた。

発がん性物質の濃度は、消費者製品で許容されるものよりも1.5から3.7倍のレベルだったという。ゴムチップには砒素、ベンゼン、カーボンブラック、重金属、鉛、水銀などの有害な元素が含まれ、他にも発がん物質が含まれていた。

また、オランダの男子プロサッカーリーグのトップディビジョンであるエールディは、2025-26シーズンの開始までに人工芝フィールドを禁止することを決めたとのこと。

人工芝では、下半身のケガが増加するため、天然芝への切り替えは有益だそうだ。

https://www.yahoo.com/news/prominent-soccer-league-bans-problematic-063000318.html

オランダは、健康と安全上の理由から天然芝やハイブリッドピッチを支持している。

ロサンゼルスでも、人工芝の禁止可能性を調査

カリフォルニア州では2023年、地方自治体が人工芝を禁止することができるように、州法を改正した。

その後、同州のミルブレーとサンマリノは人工芝禁止に踏み切った。

先月、同州ロサンゼルス市議会のエネルギー環境委員会は、人工芝禁止を視野に、人工芝の健康や環境への影響を調査するための研究を承認した。これにより、人工芝使用による悪影響が人工芝のメリットを上回るか、検討されることになる。

要するに、人工芝に含まれるPFASやその他の化学物質の悪影響が、水使用量の減少という人工芝のメリットを上回るかどうかを調べることになるようだ。