日本はリサイクル大国?それとも焼却大国?

日本はリサイクル大国だ、と思っている人が多い。おそらく、消費者に細かく分別させ、手間をかけさせているためと、マスコミなどを通した情報の「スリコミ」のせいだろう。

マスコミで取り上げられるリサイクル率は、業界団体による「大本営発表」の数字である。

例えば、2018年8月22日付け日経新聞「海洋プラ問題に危機感」では、廃プラスチックの有効利用率は「8割を超え」、「リサイクル技術に強みを持つ」などとして紹介されている。

「環境問題は市場拡大の熱気を冷ましかねない。日本がアジアでリーダーシップを取るべきだ」。石油化学工業協会の森川宏平会長(昭和電工社長)は強調する。日本は廃プラスチックの有効利用率が8割を超えるなど、リサイクル技術に強みを持つ。越智仁副会長(三菱ケミカルホールディングス社長)も「アジア各国は日本の回収システムに強い興味を持っている」と、技術面でアジアの化学業界の支援に応じる考えをにじませる。

また、2018年8月25日付け毎日新聞のオピニオン「プラスチックごみ海洋汚染」においても、日本プラスチック工業連盟専務理事の岸村氏は「再利用率は84%」として、その正当性を主張する。

この8割という数字は、サーマルリサイクル(燃やしてそのエネルギーを利用)もリサイクル率に含める日本のプラスチック業界特有のカウント法がベースになっている。

海外ではリサイクル率というと、たいてい材料リサイクル(マテリアルリサイクル)を指すので、海外のリサイクル率と比較するならば日本のプラスチックリサイクル率は23%(2016年)だ(*)。

それにも関わらず、いつも堂々とこの8割(2016年は84%)が海外のリサイクル率(例えば、EUのプラスチックリサイクル率30%程度)と比較され、日本はリサイクル大国だ、という話に仕上がっている。

OECD統計を見ると、日本の廃棄物全体のリサイクル率はOECDの平均にも及ばない。例えば、堆肥化を含む廃棄物のリサイクル率は、日本が21%、OECD平均は36%(OECDヨーロッパ平均は43%)である。それに比べ、同統計のエネルギー回収した焼却率は、日本が70%とダントツだ(OECD平均は20%)。エネルギー回収しない焼却率は、日本が9%、OECD平均は2%。日本のリサイクル率は平均にも達しないが、焼却率はエネルギー回収の有無を問わず、ひたすら高い。

もちろん、廃棄物分野の統計は、国ごとに条件が異なるため、比較は困難である。例えば、日本の21%というリサイクル率は、自治体が回収する一般廃棄物(一廃)のリサイクル率であり、産業廃棄物(産廃)や事業系一廃を含まない(一部の自治体は事業系回収された一廃も家庭系と一緒にリサイクルするため含んでいるが、多くの自治体は含んでいない)。しかし、海外の廃棄物統計は一廃と産廃のくくりが日本と大きく異なり、ほとんどすべての廃棄物がリサイクル率の分母にも分子にも反映されている。

つまり、廃棄物関連の数字は何をカウントし何をカウントしないかが、各国必ずしも同じではないため、このOECD統計も正確ではないが、しかし、日本が「リサイクル大国」だというのは誤解で、実は「焼却大国」だ、という根拠には十分なりうる。

日本の「強み」はリサイクル技術ではなく、焼却技術であり、この強みは、実は日本がマテリアルリサイクルを進めない免罪符ともなっていることに注意が必要だ(その証拠に、マテリアルリサイクルしやすい製品プラスチックはいつまでもリサイクル法の対象にならない)。

プラスチック業界は、処理を焼却技術に頼るのではなく、本当の意味での「リサイクル」に取り組むべきときがきていることに、そろそろ気付くべきだ。焼却に頼っている限り、サーキュラーエコノミー(循環型経済)は実現できない。

*(一社)プラスチック循環利用協会によると、日本のプラスチックリサイクル率の内訳は、マテリアルリサイクル23%、ケミカルリサイクル4%、サーマルリサイクル57%、未利用16%。海外ではサーマルリサイクルという言葉はなく、エネルギーリカバリー、あるいはサーマルリカバリーなどと呼ばれる。ケミカルリサイクルも日本と海外では意味が若干異なり、日本のように高炉やコークス炉で利用するケースをケミカルリサイクルと呼ぶことは、海外ではおそらくない。

<参考>

(一社)プラスチック循環利用協会『プラスチックリサイクルの基礎知識2018』↓

https://pwmi.or.jp/data.php?p=panf

OECD. Stat;

https://stats.oecd.org

 

千葉工業大が水中プラの分離・分析技術を開発

千葉工業大学の亀田豊准教授らは、水中のプラスチックの微粒子を簡単に分離して測定する技術を開発したとのこと。

これにより、今までプラスチックと有機物の選別と識別にかかっていた時間を大幅に短縮できるため、細かいプラスチックを調べることがかなりラクになるだろう。

とりわけ、ナノサイズのプラスチックの環境への影響(人体への影響含む)の研究が容易になると考えられるので、期待したい。

<参考>

日本経済新聞(2018.8.24)「水中プラ、分離・分析簡単に 千葉工大が新技術」↓

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3453772024082018X90000/

 

米最大規模のスーパー 2025年までにレジ袋廃止を表明

アメリカ最大のスーパーマーケットの1つクローガー(Kroger)は、使い捨てレジ袋を2025年までに全店で廃止すると発表した。

クローガーは2017年現在、35の州とワシントンD.Cで2700以上のスーパーを展開し、グループ全体で年間60億枚のプラスチック製レジ袋を使用。

シアトルを本拠とする傘下のQFCチェーン(63店舗)で2019年中に廃止し、段階的に全店舗に広げ、2025年には全廃する。まずプラスチック製レジ袋を紙製に切り替えたり、繰り返し使える買い物袋を1〜2ドルで販売するとのこと。

アメリカでは、毎年380億枚以上のレジ袋(plastic bags)が使用されているという。最大手スーパーが動いたことで、アメリカのレジ袋削減はこれから大きく進みそうだ。

<参考>

npr(2018.8.23)Attention, Shoppers: Kroger Says It Is Phasing Out Plastic Bags;

https://www.npr.org/2018/08/23/641215873/attention-shoppers-kroger-says-it-is-phasing-out-plastic-bags

日本経済新聞(2018.8.24)「プラ製レジ袋、2025年に全廃 米食品スーパー最大手」↓

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34540010U8A820C1000000/

 

東京都 プラごみ削減部会を設置

東京都が24日、使い捨てプラスチック製品の削減や再利用を考える「プラスチック部会」を設置した。小池都知事は、「まず櫂より始めよ。都職員には都庁内の売店でレジ袋の利用をやめてもらう」ことにしたとのこと。

部会は、年内に中間まとめを発表し、パブリックコメントを経て、2019年夏ごろまでに最終答申をまとめる予定。

使い捨てプラスチックの大幅削減を促す仕組みや、プラスチック製品の再利用などを進める方法について、専門家らからなる委員が議論するという。

まず櫂より始めよ、は正解だと思うが、レジ袋はどうなったのだろうか?以前、2020年までにゼロにすることを目標に、「レジ袋削減に向けた意見交換会」を立ち上げたはず。これに関しては、まだ成果も見えない。

プラスチック部会の委員に事業者の名前が、日本チェーンストア協会と東京商工会議所以外はないところをみると、事業者を多数入れたレジ袋削減に向けた意見交換会ではラチがあかないということで、メンバーを一新し、これから本格的に取り組むということだろうか?

そうであればよいが、もしここでも何も決められなければ、税金と時間の無駄遣いになってしまう。

<参考>

朝日新聞(2018.8.25)「都、プラごみ削減へ部会」

東京都(2018.8.24)「プラスチックの持続可能な利用に向けた施策のあり方」諮問書↓

http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/basic/conference/resource/tokyo/index.files/30.8.24-shimon.pdf

同上諮問の用紙↓

http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/basic/conference/resource/tokyo/index.files/30.8.24-syusi.pdf

東京都(2018.8.24)東京都廃棄物審議会 会議次第(当日資料等)↓

http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/basic/conference/resource/tokyo/index.files/30.08.24-haihusiryou.pdf

 

 

コンタクトレンズがマイクロプラスチックの一因に

米アリゾナ州立大の研究チームによると、アメリカの下水に流されているコンタクトレンズは、年間最大33億枚。それらが、細かく砕けて、マイクロプラスチックを増やしている可能性があるそうだ。

アメリカのコンタクトレンズ使用者は約4500万人でそのほとんどがプラスチック製ソフトコンタクトレンズを使用し、そのうち15〜20%の着用者が、流しやトイレに使用済みレンズを流しているとのこと。アメリカだけでも18億から33億6000万枚のレンズが下水に流されている。

下水に流されたコンタクトレンズは、下水処理場で、汚泥2ポンド(約900グラム当たり)2枚程度見つかる。一部は、小さく砕かれ、下水処理場の設備を通りぬけ、水環境に流出するか、汚泥に含まれて処分場の地中などで拡散している可能性があるそうだ。

日本のコンタクトレンズ着用者は、使用後どのように処理しているのだろうか?

<出所>

朝日新聞(2018.8.22)「コンタクト、プラごみの一因か 米の下水に年間33億枚」↓

https://www.asahi.com/articles/ASL8P4HN4L8PULBJ00B.html

北海道の外食チェーン プラ製ストローを廃止

北海道では、プラ製ストローを廃止する外食チェーンが相次いでいる。

外食チェーン「アイックス」は、8月末までに道内外の直営店75店舗でストローを原則廃止する(年間約100万本使用)。子どもや障がい者など必要な人にはメニューにより提供。

また札幌開発は、これまでアルコールと区別するためソフトドリンクにのみプラスチック製ストローをさして提供していたが、紙製に切り替える方針。将来的には、グラスを変更し、両者の区別がつくようにして、ストローを廃止する方針とのこと。

<出所>

日本経済新聞(2018.8.23)「北海道の外食、ストロー廃止 」↓

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO34463300S8A820C1L71000/

日清食品 生分解性プラに切り替え、どのタイプの生分解性プラかはまだ不明?

日清食品ホールディングスが、即席麺の袋やカップに使うプラスチックを生分解性に切り替える考えを明らかにした。価格が高いなどの課題が解決され次第、置き換えに取組み、2〜3年後をメドに考えたい、とのこと。

よいことかもしれないが、しかし、どのようなタイプの生分解性プラスチックに切り替えるつもりかが不明だ。日清食品のホームページにも新聞各紙にも具体的なことは書かれていない。まだ未定で、環境省が打ち出した生分解性バイオプラへの補助金によりその生産コストが下がることを期待しての判断であろうか?

今、必要とされる生分解性プラスチックは、海中や海底でも分解するバイオマス由来のもので、好気性微生物の豊富な工業用(産業用)堆肥化施設などで分解が始まるような従来型のものではない。

しかも、単に海で分解されるだけではダメで、有害な添加剤などが含まれていないものでなければならない。そうでなければ、たとえプラスチック部分が分解されたとしても、海水に添加剤が残ってしまう。

例えば、これまで生分解性プラスチックのエースだったポリ乳酸などは、海中ではほとんど分解しない。しかし、今必要とされている生分解性プラスチックは、もっと確実かつスピーディに海中で(できれば海底でも)分解され、しかも添加剤などの安全性が担保されたものである。

日清食品の続報に期待している。

<参考>

毎日新聞(2018.8.24)「日清食品 カップ麺容器のプラスチックを生分解性に」↓

https://mainichi.jp/articles/20180825/k00/00m/020/091000c

時事通信(2018.8.24)「即席麺容器に生分解プラ使用へ 化学プラ全廃目指す 日清食品HD」↓

https://www.jiji.com/jc/article?k=2018082401046&g=eco

 

生分解性プラに補助金?! 環境省の役割はまず使い捨てプラの規制では?

環境省は、使い捨てプラスチック製ストローやレジ袋を自然界で分解する製品に切り替えるため、紙製や生分解性のバイオプラスチックを製造する企業に補助金を出すそうだ。

これにより、代替品の供給体制を整える。2019年度の概算要求に50億円を盛り込む。補助対象は、原料をバイオマスプラや紙にするための設備や、リサイクル行程にかかった費用の半額から3分の2を補助する。補助金で、コスト増を理由に慎重だった企業の切替を促すとのこと。

開発を進める企業にとっては、結構なことかもしれない。アメとムチでいえば、補助金は明らかにアメの政策だ。

しかし、昨今の日本の政策は、アメばかりに見える。生分解性のバイオプラスチックの開発などは、放っておいても今後大きく進む。従来のプラスチックのみを製造するメーカーも、それを容器包装などに利用する事業者も、いずれ融資を受けられなくなり、株主からも相手にされず、当然市場から落ちこぼれていくからだ。

今、環境省のすべきことは、アメをなめさせるような一過性の施策ではなく、まず従来のプラスチック製レジ袋やストローなど使い捨て製品を禁止することではなかろうか。生分解性のものでなければ市場に出回らないようにすることで、生分解性バイオプラスチックを製造するメーカーを後押しするのである。

日本の政策はこれまでも、国としては規制せず、業界の足並みが揃うまで待ち、足並みが揃った段階で業界が自主規制する・・のが一般的だ。しかし、これでは時間がかかりすぎ、被害が増える可能性が高い。

環境省は、有害性の高いもの(例えば、レジ袋など使い捨てプラスチック製品や、ネオニコ系農薬などの化学物質)に対し、まず「禁止」措置を鮮明にすべきだ。「アメ」を考えるのは、そのあとでいい。

<参考>

日本経済新聞(2018.8.24)「プラ製品 代替後押し 環境省、紙ストローなどに補助金」↓

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO3451510023082018EA2000/

朝日新聞(2018.8.25)「袋やストロー 脱プラ補助」↓

https://www.asahi.com/articles/ASL8S559JL8SULBJ009.html

 

 

太平洋ごみベルトにごみ8万トン集積 日本からは3割

北太平洋のカリフォルニア州沖からハワイ沖にかけてのごみが集まる海域「太平洋ごみベルト」に、約7万9000トンのごみが集まっているという。

オランダのオーシャン・クリーンアップ基金やデンマーク・オールボー大などのグループが2015〜2016年、船を使った採取調査や飛行機による上空からの観察を実施した。ごみ重量は、2014年に別の手法で試算した量の16倍。

ごみベルトに集まった94%がマイクロプラスチックと見られる。数は2014年の試算の約10倍。汚染が進行している可能性が高いとのこと。

ごみの種類は包装用の容器や漁網が多い。また、確認されたごみのうち、最も古いごみは1977年の生産。

表示などから製造場所が分かった386個のうち、日本のものが115個(約30%)と最も多く、中国の113個が2番目に多かった。

<出所>

日本経済新聞(2018.8.20)「北太平洋にプラごみベルト 8万トン集積 」↓

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34360420Q8A820C1CR8000/

海底でも分解するプラスチック 開発進む

従来型の生分解性プラスチックは、土中に好気性の微生物がいて、酸素もたっぷりあり、適当な温度もある環境でなければなかなか分解しなかった。

しかし、現在開発が進む生分解性プラスチックは、海の中でも分解が進むタイプ。レジ袋や食品容器など日用品向けへの応用を目指すが、海中と一言でいっても海面に近い所と海底では酸素の量が異なるため、それぞれ別々に開発が進んでいるようだ。

以下、日経新聞(2018.8.20)より

群馬大学は酸素が少ない環境でも壊れるよう工夫し、海底でも分解できるようにした。東京大学は微生物にプラスチックを作らせ、化粧品や研磨剤にも使えるようにした。

群馬大学の粕谷教授らは、耐久性を向上して、嫌気性の条件で切れるつなぎ目をプラスチックの中に入れて、海底で分解を促す技術を開発した。5年以内の実用化を目指す。

またカネカは、植物の油から微生物が合成する「PHBH」と呼ぶ種類の生分解性プラスチックを開発。海水中でも酸素が多いところならば、12週間で分解する。今月に入って生産能力を5倍にすると発表。

<出所>

日経新聞(2018.8.20)「生分解性プラ、海中でも分解
群馬大、少ない酸素で機能 東大、微生物の合成利用」↓

https://www.nikkei.com/nkd/industry/article/?DisplayType=1&n_m_code=071&ng=DGKKZO34268720X10C18A8TJM000