来春から使い捨てプラ12品目削減へ、やはりザル法?

今年6月の国会で成立した「プラスチック資源循環促進法」により、来春から合理化(削減)するプラ製品が決まった。

合理化(削減)対象となる「特定プラスチック使用製品」は、スプーン、ストロー、フォーク、ナイフ、マドラー、ホテルが提供するヘアブラシ、クシ、歯ブラシ、カミソリ、シャワーキャップ、クリーニング店のハンガー、衣類用カバーの計12品目。

使用量が年間5トン以上の事業者が対象なので、小さい店は対象外。通販や配達サービスも同様に規制対象とのことなので、大手飲食店のデリバリーのスプーンなどは対象になる。

事業者にはまず、12品目を引き続き扱う場合、使い捨てプラ製品の具体的な削減目標をつくるよう求めるそうだ。削減するための方法としては7つの対策の中から最低1つを選ばなければならない(日経2021.8.22)。

とはいえ、7つの対策の中には、消費者の受け取りの意思確認というのも含まれているので、単に「要りますか?」と聞くだけでもいいらしい。

他には、有料化、回収後の再利用、辞退者へのポイント還元など。

辞退者へのポイント還元はあまり有効ではないし、回収後の再利用というのもどこまでフォローできるのか?

ナショナルジオグラフィックの別冊『脱プラスチック』によると、カナダ放送協会(CBC)が回収品の行方を調べるため、プラスチック9トン(すべて選別されベール化されたプラスチックフィルム)を購入し、GPS発信機を取り付けておとり捜査を行ったそうだ。3大回収業者にリサイクルするように依頼したにも関わらず、リサイクル処理施設へ運んだのは1社のみ。残りの1社は廃棄物発電所へ、もう1社は埋立地に直行したとのこと。

「再利用」といっても店内でリユースされるはずはない。「できれば材料リサイクルしてね」と回収業者に依頼するのがせいぜいだ。うまくいけば、パレット(荷物を乗せる台)程度にはなるのだろうが、パレットだってそんなには要らない。燃やされてしまうのも多そうだ。

やはりザル法か?

(8月23日加筆)

今日の審議会の資料によると、提供事業者は4つの「提供方法の工夫」と3つの「提供する特定プラスチック使用製品の工夫」から選ぶ。日経に載っていた「回収後の再利用」はない。代わりに「繰り返し使用を促すこと」と「繰り返し使用が可能な製品を提供すること」というのがある。おそらく、消費者が再使用しやすいようなものを提供して、再使用を促せばよいということのようだ。

しかし、どんなにしっかりした作りのものでも、タダでもらったプラ製品を何度も繰り返して使う人は少ないのではないか。

以下、資料からの転載↓

【提供方法の工夫】
• 消費者にその提供する特定プラスチック使用製品を有償で提供すること
• 消費者が商品を購入し又は役務の提供を受ける際にその提供する特定プラスチック使用製品を使用しないように誘引するための手段として景品等を提供(ポイント還元等)すること

• 提供する特定プラスチック使用製品について消費者の意思を確認すること
• 提供する特定プラスチック使用製品について繰り返し使用を促すこと

【提供する特定プラスチック使用製品の工夫】
• 薄肉化又は軽量化等の特定プラスチック使用製品の設計又はその部品若しくは原材料の種類(再生可能資源、再生プラスチック等)について工夫された特定プラスチック使用製品を提供すること
• 商品又はサービスに応じて適切な寸法の特定プラスチック使用製品を提供すること
• 繰り返し使用が可能な製品を提供すること

<出典>

経産省ウェブサイト「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律の政省令・告示について」↓

https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/haikibutsu_recycle/plastic_junkan_wg/pdf/010_01_00.pdf

これまでの会議資料や議事録の一覧(環境省ウェブサイト:プラスチック資源循環小委員会)↓

https://www.env.go.jp/council/03recycle/yoshi03-14.html

日本経済新聞(2021.8.21)「スプーンなどプラ製12品目、有料・再利用義務 来春から」↓

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA2074J0Q1A820C2000000/

ケベック州、来秋からデポジット制度を拡大

カナダ・ケベック州のデポジット制度が、2022年秋から段階的に拡大される。

日本ではなぜかデポジット制度というと「ドイツ」の話がすぐに出るが、ドイツより実はカナダの方が、デポジット制度の歴史が長い。

ちなみに、欧州がEPR(拡大生産者責任)と言い出すよりずっと前から、カナダでは「スチュワードシップ」(EPRと似ているもの)がかなり定着していた。

カナダのデポジット制度は、州により少しずつ対象や方法などが異なり、わかりにくいためか、日本ではあまり有名ではない。しかし、牛乳パックまで対象にしている州もあるほど熱心な州も多い。

その中で、ケベック州はこれまであまりデポジット制度対象容器の種類が多くなく、熱心ではなかった。対象はワンウェイのソフトドリンクとビールの容器のみで、水やワイン、スピリッツ、ジュース(果汁100%)、牛乳など乳製品の容器は対象外。

ワンウェイのガラスびんは450mL以下のみ対象だった。

しかし、来年秋から対象を拡大する計画だ。

「100ミリリットルから2リットルのサイズのすべての容器は、金属、プラスチック、またはガラス製のものを含め、デポジットの対象となります。ワインとスピリットのボトルは、それぞれ0.25ドルで交換できます。他のボトルは$ 0.10」とのこと。

これまで返却はスーパーなど小売店だったが、小売店のみではこれだけ多くの容器を回収できないため、デポ(専用のデポジット対象容器回収所)も開設する計画だ。

環境保護団体は、この決定を「大きな前進」であると称賛しているとのこと。

<出典>

CBC(2021.8.18)Quebec aims to double recycling capacity with machines that accept wine bottles, cartons and plastic

https://www.cbc.ca/news/canada/montreal/glass-consigne-1.5445587

人の肺からマイクロプラスチックを検出

ブラジル・サンパウロ大学の研究者らが、亡くなった人の肺組織でマイクロプラスチックを発見したそうだ。

食品として食べたものが肺に入ったわけではなく、大気中に浮遊しているマイクロプラスチックを呼吸を通して体内に取り込んだものだ。

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0304389421010888

しかも、繊維状のものよりも粒子状のものの方が多かったというから、想像していたことと大分違う。

ポリプロピレンが最も多く、次がポリエチレン、次が綿だ。綿の粒子をマイクロプラスチックと呼ぶのは変だが、天然繊維でも化学染料で染色したり難燃剤を塗ったりしたことで分解が阻害され、肺に貯まるらしい。

今までは合成繊維を天然繊維に切り替えれば、マイクロプラスチックの暴露はある程度防げると思っていたが、草木染めなどナチュラルなものでなければ安心できないようだ。

ゴールがますます遠のいたような気がする。

しかし、ポリプロピレンやポリエチレンが多いのは想像の範囲内だ。特にポリプロピレンは、食品の容器包装材として多用されているので、多くて当然だろう。

飲料容器は脱プラ?実は「脱ガラス」

最近の海外ニュースで、日本の飲料容器はペットボトルからアルミ缶に切り替わりつつある、というようなことが紹介されていた。

しかし、それはごく一部の話。実際は、「脱ガラス」が進んでいる。

日経新聞(2021.8.2)によると

「お茶や水、炭酸飲料を手掛けるサントリー食品インターナショナル(サントリーBF)は、飲食店やホテルの宴会場などで使う業務用のガラス瓶を全廃する。既に製造は終了しており、流通分が無くなれば飲食店や旅館などから今夏中にも姿を消す見込みだ。ペットボトルは家庭用と同じ生産ラインで製造できるため効率も高い」とのこと。

また、アサヒビールは「6月、チェコからの輸入ビール「ピルスナーウルケル」を瓶に加えて缶で全国販売を始めた」。

これまでは輸入元である欧州では主に瓶で流通しているため、アサヒビールが扱う海外ビールはすべて瓶で販売していたが、これからは缶に変えていくらしい。

もはや「リターナブルびん」どころか、ガラスびん全般を見る機会がなくなりそうだ。小手先のCO2排出量の計算や目先の利便性に目を奪われているのでは?とガッガリする。

脱プラの波は日本を避けてうねっているようだ。

<出典>

日本経済新聞(2021.8.2)「飲料「脱・ガラス瓶」進む お茶など業務用で全廃も」↓

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC26E650W1A520C2000000/

クジラやイルカのPCB濃度は高位安定、ペットボトルのキャップからも環境ホルモン

「2003年から2020年までの珠江河口からの幼生および成体のクジラ類におけるポリ塩化ビフェニル(PCB)の歴史的変化」という論文が発表された。

https://www.sciencedirect.com/journal/science-of-the-total-environment/vol/800/suppl/C

PCBは難分解性で体内に蓄積されやすい環境ホルモンだ。何十年も前に禁止されたとはいえ、まだ水中に残留している。クジラのような食物連鎖の上位にいる生物への蓄積は避けられない。

人間にもおそらく蓄積されているのではないだろうか。

また、同じ論文誌に東京農工大の高田先生たちの論文も掲載された。

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0048969721044478

ペットボトルのキャップなどからベンゾトリアゾール系の化学物質が検出されている。紫外線吸収剤として使用されたもののようだ。

ベンゾトリアゾール系物質はPCBと同様、難分解性で体内に蓄積されやすい。

この手のレガシー汚染濃度は、時間がたってもあまり減らないようで、恐ろしいが、ベンゾトリアゾール系物質はまだ使用中の化学物質だ。

やはりペットボトル飲料などは、使わないに越したことがない。

オランダ、2023年から缶もデポジット制度の対象に

これまでオランダは、大容量のペットボトルなどプラスチックボトルのみを対象にデポジット制度を実施していた。そのため、デポジット制度実施国は?と聞かれた時に、オランダを実施国に入れるべきかどうか、いつも悩んでいた。

しかし、オランダ政府は昨年4月末、今年の7月1日からデポジット制度を拡大し、1リットル未満のプラスチックボトルも制度の対象に拡大すると発表した。

https://www.government.nl/ministries/ministry-of-infrastructure-and-water-management/news/2020/04/30/deposit-on-small-plastic-bottles-to-reduce-street-litter

金額は、デポジットもリファンド(返金)も15セントだ。(※日本食糧新聞(2021.12.28)によると、中小サイズのペットボトルは10セントの統一金額で7月から開始されたとのこと)

実際に7月からデポジット制度が拡大されたかはよくわからない。もしかすると、新型コロナ感染禍の影響で遅れているかもしれない、と思っていたところ、こんなニュースが報道された。

オランダの農業大臣が、ごみを減らすためにパッケージとボトル、ソフトドリンク缶、紙容器に少額のデポジットをかける法案を作っているというのだ。

また、電子機器にもクレジットを付けるか、またはバウチャーを発行するとのこと。

オランダのソフトドリンク缶は、2022年末までにデポジット制度の対象にすることが既に発表されているので、いずれアルミ缶以外にもさまざまな容器包装が、デポジット制度の対象になるかもしれない。(もしかすると、缶以外はデポジット制度ではなく、リファンドのない「投げ捨て税」のようなものかもしれない)

缶飲料に関しては、2022年12月31日までに缶飲料メーカーの責任で少なくとも15セントのデポジットをつけることが決まっている。

https://business.gov.nl/amendment/deposit-on-beverage-cans/

水やソフトドリンク、ビール、その他のアルコール飲料の缶が対象だ。

スーパーは缶(ペットボトルなどデポジット制度対象容器も)を回収しなければならないということなので、多くのスーパーにデポジット機能付きの自動回収機が設置されることになる。小規模小売店やホテル、カフェなどは回収が免除される。

ようやく2023年からオランダも他の多くの国々と同様のデポジット制度が開始されるようだ。

追記

日本食糧新聞(2021.12.28)によると、

https://news.yahoo.co.jp/articles/61d9862e32a362b8e36afc5328354d0e81bfb645

2023年1月1日から缶飲料の購入時にも課金が開始することがまっている。缶飲料への課金は15セントとなっている。ただし現行の法律だと酒類(ビール除く)、ジュース、乳製品およびシロップは課金対象外となる

とのことだ。

迷惑なのはどっち?自販機横回収ボックスのゴミ箱化

自動販売機横の回収ボックスに目的物以外のごみが三割ほど混入しているという。

確かに、レジ袋などがヒラヒラ落ちていると拾ってゴミ箱に入れたくなる。あいにく近くにゴミ箱がなく、自販機横に回収ボックスがあれば、そこに入れたくなるのがフツーの感覚だろう。落ちていたごみを拾って、自宅まで持ち帰りたい人はいない。

自販機で買った飲料をポイ捨てする人も多いから、自販機があるせいで迷惑している人が多い。自販機でペットボトルを買い、自販機前に立っている飲み干している人など見たことがない。たいていは持ったまま立ち去っている。なかにはポイ捨てする人もいるだろう。落ちている他のごみをたまに回収ボックスに入れてもよいではないか、と私などは思うのだが、自販機設置者はそうは思わないようだ。

異物が混入すると、入りきらない容器がどんどん周りに捨てられ散乱を招く、と全清飲は心配してくれるが、それならばそもそも自販機など置かないでほしい。

自販機を設置する人や飲料メーカーは自販機によって儲けられるが、その近隣の人たちの多くはポイ捨てされた飲料容器に迷惑している。回収ボックスに三割程度他のごみが混入する程度は、許容してほしいと思う。

記事によると、

「海中に漂うPETボトルなど海洋ごみは私たち日本人が出した物なのか、世界から流れてきているのか分かりませんし、どのように排出されたものが、どのような経路で海に流れ出すのかなども解明できていません」

とのことだが、海岸にも街にも川にも、しっかり日本のメーカーのラベルのついたペットボトルが多数落ちている。

「ゴミ箱じゃないよ。リサイクルボックスです」という言葉に、わかってるよと思いつつ、少々ウンザリする。

自販機を置くならば、デポジット制度で容器を回収すべきだろう。その方が、回収ボックスを置くよりもずっと回収効果が高い。「ペットボトルの100%有効利用を目指す」というのが本心ならば、すぐにデポジット制度を採用すべきだ。

<参考>

「自販機横のボックスは、ごみ箱じゃない」ペットボトルの100%有効利用を目指して↓

https://gyoppy.yahoo.co.jp/featured/152.html?cpt_n=mailmaga&cpt_m=em&cpt_s=369_1&cpt_c=&cpt_k=ang_252390_159721930_20210811

LOOP、ウェブサイトで8月31日から販売開始

以前、Loopに登録しておいたところ、昨日カスタマーサービスから連絡があった。それによると、Loop ECサイトの実証実験開始が、8月31日(火)に決定したそうだ。

いよいよウェブサイト上で販売が開始されるらしい。現在、3県(神奈川県、埼玉県、千葉県)で2000世帯を上限に二次募集を行っているそう。

「Loop ECサイトには、キッコーマン、味の素、資生堂など新しいブランドを含む17商品が登場予定」とのこと。多少商品が増えたようだ。

早くリユースびんに入った醤油やマヨネーズ、トマトケチャップを買いたいものだ(トマトケチャップのメーカーはまだ不参加?)。

LOOP(ループ)↓

https://loopstore.jp

「プラスチック・ニュートラル」は偽装エコ?

近頃、プラスチック・ニュートラルという言葉を聞くようになった。カーボンニュートラルが市民権を得ているため、それを真似た考えだ。

プラスチックオフセットという言葉も聞いた。プラスチックをどうやったらオフセット(相殺)できるというのか。リサイクルやごみ拾いのために資金提供したらオフセットできるということらしいが・・。

プラスチックを世に出す企業とリサイクルする企業(あるいはごみ拾い団体)の間を取り持つのはコンサルティング会社やNGOらしいが、いかにもインチキくさくないか。

いつまでもプラスチックを生産し続けたい企業にとってはよいアイディアかもしれない。しかし、カーボンニュートラルの考えでさえ批判されている昨今、プラスチック・ニュートラルなどあり得ない。

カーボンはオフセット(相殺)できたとしても、プラスチックは決してオフセットできないためだ。

多くのプラスチックは水平リサイクルできないし、プラスチックは生産した時点から劣化が始まる。どんなにリサイクルしても、どんなにプラごみを拾っても、プラスチック製造と相殺できるとは思えない。

オフセットできないものが、ニュートラル(中立)になどなるわけがない。

そう腹立たしく思っていたところ、フランスの第一線で活躍するプラスチック研究者が書いた『プラスチックと歩む』(ナタリー・ゴンタール、エレーヌ・サンジェ著)の文章が目に止まった。

「現在まで、リサイクルでプラスチックが消えたことは一度もなく、リサイクルされたプラスチックはバージン材の代わりにならないからだ。もしそれが可能なら、シリアルバーの包装の小袋は、間違いなく同じ素材をリサイクルしたプラスチックで作られているはずだ。つまり、どう考えても「プラスチックニュートラル」とは、人を欺く専門用語なのである。」(p.145『プラスチックと歩む』、原書房、2021)

やはり、プラスチック・ニュートラルやプラスチックオフセットは、グリーンウォッシュ(見せかけのエコ、偽装エコ)だろう。

ペットボトルのリサイクル方法、日米の違い

ナショナル・ジオグラフィック別冊の『脱プラスチック』に、ペットボトルのリサイクル方法が少し書いてあり、面白かった。

ナショジオによると「ラベルを剥がすために暖かい石けん水に浸される(ラベルを貼り付けている糊を熱で溶かす)。次にグラインダーにかけ、プラスチックをフレーク状にする。それから溶かし、濾過してナードルにするのだ。ナードルは、新たなプラスチック製品を作る工場に向けて出荷される。」とのこと(p.55)。

ナショジオはアメリカで書かれているのだろうから、これはアメリカのリサイクル方法なのだろう。

日本のペットボトルのラベルは糊付けされていないためか、「暖かい石けん水に浸される」などという行程は聞いたことがない。

この日本シーム(株)のサイトでは、ラベル剥離機で剥がされている↓

https://www.nihon-cim.co.jp/plant-system/pet-bottle.html

自治体が回収しているような住民が自らラベルを剥がした後のペットボトルが多ければ、もしかするとこの行程が省かれ、粉砕後に風力選別機(あるいは水槽式比重選別機)にかけられるのかもしれない。

PETボトルリサイクル推進協議会↓

https://www.petbottle-rec.gr.jp/more/mechanical.html

まさに、所変われば・・・で面白い。