寝屋川病:『廃プラ・リサイクル公害とのたたかい』から考えるリサイクルのリスク

以前から気になっていた寝屋川病。

ようやく先日、昨年11月に刊行された「廃プラ処理による公害から健康と環境を守る会」の『廃プラ・リサイクル公害とのたたかい ー大阪・寝屋川からの報告ー』(せせらぎ出版)を読んだ。

寝屋川病は、廃プラ由来の公害病。廃プラのマテリアルリサイクル工場が2004年に稼働したことに端を発した。2008年には4市(寝屋川市、枚方市、交野市、四條畷市)が運営する容器包装を中間処理する施設が、同工場のすぐ近くで操業を開始した。

近隣住民はこれらの施設から流れてくる化学物質により健康を害したという。

化学物質過敏症を「気のせい」「精神的な問題」などという人がいるが、化学物質に日常的にさらされていたら体調は当然悪化する。もちろん、体質的にそういうものに影響されにくい人もいる。ヘビースモーカーでも長生きする人がいるくらいだ。しかし、影響されにくい人がいることと、それが無害であることとは全く別の話。

この本によると、

「住民の生活圏に建設された廃プラのリサイクル処理施設から出る悪臭に悩まされ、眼・鼻・喉などの異常、湿疹などの疾患が発生することを体験しています。これらについて医師団は、シックハウス症候群に類似した症状という診断をされました」

また、杉並病でも「廃プラを圧縮梱包した時に発生する有害ガスにより、健康被害が生じることを認め」ている。さらに、今回の寝屋川の住民運動でなされた調査により

「廃プラのリサイクル処理が有害ガスが空気汚染を起こすこととともに、あらたに施設から発生したブタン類などの揮発性有機化合物(VOC)が太陽光などにより2次反応を起こし、猛毒のホルムアルデヒドや光化学スモッグ発生の原因になっている可能性が明らかになりました」とのこと。

これらのことについてはその通りだろうと、理解できる。

理解できないのは、本来関係ないはずのこのプラ関連の2施設が、なぜセットのようにこの住宅地付近に建設されることになったのか、ということだ。

容器包装リサイクル法では、自治体の責任は家庭から回収した容器包装プラスチックの収集、圧縮、保管までだ。それより先は、落札した事業者が圧縮した廃プラを取りに来て、工場へ持ち帰る。その工場は、必ずしも地元にあるとは限らない。九州の自治体の廃プラが北海道へ行くこともありうる話だ。

「リサイクル・アンド・イコール社」(イコール社)が、まるで4市の容器包装プラを引き受ける専用施設であるかのように、なぜ同時に建設が進められたのか、全く理解できない。

もし、4市の容器包装プラを引き受けるつもりで作られた工場ならば、4市が運営する施設で圧縮・梱包する必要はないはず。4市はわざわざ中間処理施設を作らずに、市が集めた容器包装プラを直接この工場へ運んで、そのまま引き渡す方がよほど合理的だ。環境省には、容リ協会を通さずに独自処理ルートで処理します、といえば済む話だ。

思うに、イコール社は4市以外の出した廃プラ(工場などから出た産業廃棄物や他市町村の容器包装プラなど)もリサイクルするため、4市以外の廃プラ量が増えすぎて、イコール社が4市の容器包装プラを万一リサイクルできなくなった場合の保険で、4市は容リ協会を通して処理しようとしたのではないか。

しかし、住民にはこの2施設はセットであるかのように説明したようだ。当時の寝屋川市は、よほどイコール社を誘致したかったのだろう。

この話の経緯はどうもよくわからないが、わかったことは、

1.リサイクルは万能ではないこと

2.廃プラ施設は、空気の流れを外に漏れ出させないような管理の行き届いた施設ですること

3.居住地の近くに廃プラ処理施設を建設してはならないこと

4.安易にリサイクルするのではなく、まずプラスチックを削減することに努めなければならないこと

5.プラスチック製品を作る際、添加剤に注意すること

などだ。

スタバ、アイスドリンクの使い捨てカップとフタ、スプーンを廃止。渋谷エリアでは持ち帰り用もリユース可能に

海外では2025年までに使い捨てカップを全廃するなど、環境への意欲的な取組目標を示すスターバックスだが、日本ではこれまであまり環境への意欲を示さなかった。

しかし、日本のスターバックスもようやく今日、全アイスドリンクの使い捨てカップとフタを廃止すると発表した。店内での利用者には繰り返し使える樹脂製のグラスで提供するとのこと。

4月18日から国内106店舗で試験導入する。

また、持ち帰り用の取組としては、昨年秋から丸の内エリア10店舗で実施しているリユースカップの取組を、4月4日から渋谷エリアの9店舗でも実施する。

さらに、これまでのポリスチレン製の使い捨てカトラリー(ナイフ、フォーク、ヨーグルト用スプーン)をステンレス製に切り替える。3月中旬頃から在庫状況に応じて、順次切り替えるそうだ。

これらは2030年までに廃棄物を50%削減するという目標に向けたものであるとのこと。

詳細は以下↓

https://www.starbucks.co.jp/press_release/pr2022-4613.php

スタバは最近、「え!こんなところにまで?」と驚くほど、各地の文化遺産や名所旧跡に出店している。

周囲の景観に配慮した店構えにしているとはいえ、なぜ?の思いも拭えない。文化財や名所をごみで台無しにする前に、店内使用はもちろんのこと、持ち帰り用でも使い捨てを廃止し、リユースを徹底してほしい。

それがこういう所に出店する店の責務だと思う。

持ち帰り用のカトラリーは、カネカの生分解性プラを利用するようだが、そんなことでお茶を濁さず、ごみが出ないようにもっと工夫すべきだ。

飲料自販機に回収ボックスがない!

最近、自動販売機横にあるはずの回収ボックスが減っている。

気になって調べたところ、商店街では約半分の自販機に回収ボックスがない。

住宅街や大きな通りに面したところでは3割はなく、平均すると、約4割の自販機に回収ボックスがないようだ。

数年前に「ポイ捨て禁止条例」が緩和された相模原市の傾向だろうと思っていたところ、先日出かけた藤沢市でも回収ボックスのない自販機が目に付いた。

他地域の人も同じような感想を持っていたところを見ると、どうも全国的な傾向のようだ。

条例で、回収ボックスの設置を義務づけ、自販機設置を自治体に届け出る義務のある自治体でない限り、「異物混入」や「置くスペースがない」ことなどを理由に、回収ボックスは避けられているようだ。

しかし、回収ボックスを置かないならば、「飲料自販機を置く権利はない」ことを設置者は認識すべきだろう。

ごみの垂れ流しはやめてほしい。ペットボトルはもちろんのこと、飲料缶にもプラスチック(塗料)が使われている。

缶もマイクロプラスチック汚染の原因物質だ。

神宮外苑再開発について、都知事が答弁。意味不明

東京新聞(2022.3.9)によると、小池都知事は9日、神宮外苑の再開発について議会で質問された際に、「新たな神宮外苑として、次の世代につなげていくことは創建の趣旨にかなう」と答えたとのこと。

小池知事は

「民間事業者は先人の思いや歴史にも思いをはせながら、1本1本の樹木を大切に扱い、樹木の状態などの詳細な調査を行って極力保存または移植をし、事業を進めることとしている」

と述べたそうだが、1000本もの樹木を気遣う気が本当にあるのか疑問だ。

もし、本当にその気があるならば、神宮球場と秩父宮ラグビー場の場所を入れ替えるような大がかりなことはしないはず。入れ替えなければ、伐採せずに済む樹木は相当あるはずだ。

また、高層ビルの建設も中止するはず。

こんなことが、「次世代につなげていくこと」に本当になるのだろうか。都内は、他に旨みのある開発地がなくなったから、こんな歴史的な風致地区にまで手を伸ばしたのではないか。

<出典>

東京新聞(2022.3.9)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/164694

男前豆腐、過剰包装では?

名前が気に入らないので滅多に買わないが、気になっていた「男前豆腐」を購入した。

味は確かに豆の味がする。昔懐かしい味でおいしいが、気になるのは豆腐容器の構造だ。

豆腐がガーゼ状のものに包まれているが、引っ張ると破れやすいから布ではなさそう。パッケージの表示を見ると「吸水紙」と書かれている部分があるので、この吸水紙だろうか?

吸水紙というのは、100%紙なのか?気になる。

この布状のもので包まれた豆腐の下にはプラスチック板が敷かれていて、その下に水がたまるようになっている。全体は普通のプラスチック容器なので、このプラ板と吸水紙が容器の特徴のようで、豆の味の秘訣はこの包装にあるらしい。

パッケージに書かれた表示によると、プラマークの隣には「容器、中板、フィルム」とあり、その隣に紙マークがついている。紙マークの隣には「吸水紙」とある。

美味しくしようと工夫したことはわかるが、やはり過剰包装だ。

豆腐を持参した鍋で買って、それを布巾に包んで好きな具合に水切りし、好みの堅さで食べられるようになればうれしいが、そんな時代にはもう戻れないとしたら残念だ。

使い捨てプラは環境汚染の「時限爆弾」、マイクロプラは免疫系の病気に影響

使い捨てマスクやウェットティッシュがポイ捨てされている。先日、藤沢市の環境団体が行った「数えるごみ拾い」に参加したところ、筆者も町中でマスクを5枚ほど拾った。

BUSINESS INSIDER(2022.3.7)によると、

「世界中で毎月1290億枚のマスクが使用されている。これはざっと毎分300万枚の計算」で、「2021年の経済協力開発機構(OECD)の報告によれば、コロナ禍が始まってから世界における使い捨てプラスチックの消費量は4倍に急増した」とのこと。すごい量だ。

https://www.businessinsider.jp/post-250818

ウミガメもマスクを飲み込んでいるということが以前報道されていたが、ウミガメ以外の生物もさぞ迷惑しているだろう。

同記事によると「プラスチック業界は、コロナ禍をチャンスと捉えました。政策立案者や一般の人たちに対して、再利用可能なマスクは汚くて危険だから、安全のためには使い捨てプラスチックを使う必要があると必死に働きかけた」とのこと。

一昨年、レジ袋有料化や廃止を妨害するため、日本でも欧米でも、まるでマイバッグにコロナウイルスが付着しているかのように喧伝されたことを思い出す。

プラスチック業界にとって、使い捨てプラスチックをなくすことなど、あってはならないようだ。使い捨てマスクを使うか、リユースできる布製マスクを使うかは時と場合によると思うが、プラ業界の宣伝に踊らされないように気をつけたい。

マイクロプラスチックが人体にも悪影響を与えることは既にわかってきている。免疫系の疾患にも影響を与えているようだ。

今年、国際学術誌に発表された中国の研究によると、食品や大気に含まれるマイクロプラスチックは、炎症性腸疾患(IBD)にも影響を与えている。

https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.est.1c03924

炎症性腸疾患とは、「ヒトの免疫機構が異常をきたし、自分の免疫細胞が腸の細胞を攻撃してしまうことで腸に炎症を起こす病気」とのこと。比較的若い人が発症するそうだ↓

https://www.mitsuihosp.or.jp/division/department/digestive-i/ibd/

使い捨てプラスチックは、環境汚染にとっても人類の未来にとっても「時限爆弾」だ。

米国プラスチック協定が、廃止すべき11品目を発表。発泡スチロールやPFASはダメ

サーキュラーエコノミーをめざす「U.S. Plastics Pact(米国プラスチック協定)」は今年1月、「不要で問題のある材料」リスト11品目を発表した。

この11のプラスチック包装アイテムは、現在のアメリカでは再利用もリサイクルも堆肥化もできないという。これらのアイテムは2025年までに段階的に廃止される可能性があるとのこと。

その11品目とは、再利用・堆肥化・リサイクルできないカトラリーやストロー、マドラーと、意図的に添加されたPFAS入りの製品、そしてカーボンブラックなどの検出できない顔料、不透明あるいは着色されたPET(透明な青または緑以外)、オキソ分解性プラ、発泡スチロールを含むポリスチレン、ポリ塩化ビニルを含むPVC(塩ビ)・・・などだ。

PFAS(ペルフルオロアルキル物質およびポリフルオロアルキル化合物)とは、「永遠の化学物資」と呼ばれる有機フッ素化合物だ。何千年も分解されず、発がん性が指摘されている。

日本でも、沖縄や大阪、東京の水道水でPFAS汚染が確認されているが、ほとんどの人の血液中からも検出されているというから、調べれば他の地域でも検出されるのではないか。

撥水加工や防汚加工された製品には特に注意が必要だ。

<参考>

https://www.wastedive.com/news/us-plastics-pact-problematic-materials-list/617652/

神戸市、カフェでマイボトルを推進。なぜ横型ロッカー?

神戸市が市役所内のカフェ(萩原珈琲)でマイボトルを預かって洗浄・保管し、注文を受けたときに飲み物を入れた状態で渡す実証実験を開始している。

消費者は、最初に2500円で専用の「マイボトル」を購入。同ボトルには実証実験の期間中は2000円分の飲食ができるポイントが付くというから、実質500円のようだ。

アプリで注文すると、店が450円(同店のコーヒー一杯分の料金)でコーヒーを詰めたマイボトルを専用ロッカーに入れてくれる。QRコードをかざすと、注文した客はドリンクを受け取れるという仕組みだ。

実証実験は4月末まで続くという。

映像を見ると、専用ロッカーはボトルを横に寝かせて入れる仕組み。しかし、なぜ横なのか?横にするとボトルの蓋部分(おそらくプラスチック)と飲料が接触する。プラスチックには添加剤が当然使われているので、飲料次第では添加剤が溶出する可能性がある。プラスチックに接触した熱い飲み物などあまり飲みたくないと思う人は多いはずだ。

同店では、このサービスを利用せずに自分のボトルを持参すると50円引きになるようだ。ボトルを洗う手間を惜しまない人ならば、50円引きしてもらう方がよいと思うが、手間と時間を惜しむならば、このサービスを利用するのも悪くないかもしれない。

<参考>

神戸経済ニュース(2022.2.15)

https://news.kobekeizai.jp/blog-entry-10520.html

映像↓

欧州のペットボトルキャップは、本体から外れないタイプが増えそう。日本は?

EU指令によりEU加盟国内では、コーラやミネラルウォーターなどのペットボトルは2024年までにキャップが本体から外れないようにしなければならない。

そのため、コカコーラもドイツとスペインの工場を改造したとのこと。次はイタリアとギリシャの工場を改造する予定。

新しいキャップの付いたペットボトルは数ヶ月以内に店頭に並ぶそうだ。

スイスはEU加盟国ではないが、秋にはスイス工場も切り替えられる予定。

日本にも波及してくれると、キャップの散乱が減ってうれしいが、どうだろうか?

日本の容器包装リサイクル法では、キャップとラベルを剥がさないと自治体回収に出せないことが決まっているが、つくづくおかしな法律だと思う。

そんことだから、自治体は容器包装リサイクル協会ルート(指定法人ルート)を避け、サントリーなど飲料メーカーに直接引き渡したくなるのだろう。

このようなペットボトルが日本でもスタンダードになった暁には、指定法人ルートでリサイクルする自治体に住む住民は、無理矢理キャップを本体からむしり取って出すことになる。

<出典>

https://www.fm1today.ch/unterhaltung/lifestyle/deckel-fuer-die-pet-flasche-bald-nicht-mehr-abnehmbar-145364804

『ダムと民の五十年抗争』と奈良県水道事業広域化

遅ればせながら、浅野詠子著『ダムと民の五十年抗争』(風媒社, 2017年)を読んだ。

ダム建設にまつわる住民同士の対立は、原発建設と同じだ。

巨大ダムの治水効果は限定的で、しかもかえって危険なことさえあるようだ。

半世紀にも及んだ大滝ダムの総事業費は3640億円。かなりの部分が国の負担だが、奈良県の負担分も相当な額だ。

計画段階では過剰な水需要が試算されていたらしいが、実際の水需要はとても少ない。

なぜ事業費が異常に膨れ上がったのか。調べようにも、保存年限は10年ほどのものが多く、既にダム完成前に相当の文書が廃棄されていたという。

以前から、日本の公文書管理はひどいと思っていたが、公文書を残したくない人たちがわざと保存年限などを短くして、できるだけ開示させないように仕組んでいるのではないか、と邪推したくなる。

目先の利益のためには、自然や文化を破壊しても構わないとする風潮に、神宮外苑の再開発事業にも似たものを感じる。

奈良県知事が進める奈良県の水道事業の広域化計画は、この大滝ダムの水をもっと県民に飲ませるためのものだと指摘する声があるそうだ。確かに、ダムの水を県民にもっと活用させ、県の財政に少しでも貢献させようという県の思惑が見え隠れしているように感じる。